『ファイアーエムブレム0(サイファ)』川出Pセミナー【テレビゲーム開発者がTCG(トレーディングカードゲーム)を作ったら】振り返りレポート

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2018年12月13日。『ファイアーエムブレム0(サイファ)』15弾の発売日ですね。
第15弾といえば、2018年12⽉8⽇に配信された「TCG ファイアーエムブレム0(サイファ) 第15弾発売直前生放送」では、「2018年を振り返って」というテーマで番組が放送されました。
そこで、NDWでも2018年に開催された『ファイアーエムブレム0(サイファ)』関連のイベントの中から、「TCGフェスティバル2018」で9月1日に⾏われた、川出亮太プロデューサーのセミナーの振り返りレポートを掲載します。
「TCGフェスティバル2018」:千葉県・幕張メッセにて2018年9月1日(土)~2日(日)開催)

【テレビゲーム開発者がTCGを作ったら】

セミナーは【テレビゲーム開発者がTCG(トレーディングカードゲーム)を作ったら】というテーマで語られました。
当日は家庭用ゲームにあまり詳しくない聴講者に向けて、川出プロデューサーは「テレビゲーム」という言い方で話されていたので、表現はそれに準じています。


「川出亮太プロデューサー」プロフィール
株式会社インテリジェントシステムズ所属。『マリオストーリー』(NINTENDO 64)や『ペーパーマリオRPG』(ゲームキューブ)、『スーパーペーパーマリオ』(Wii)などのチーフディレクターを務め、現在は「TCG ファイアーエムブレム0(サイファ)」のプロデューサーとして、カードの開発だけでなく「サイファ公式生放送」や全国各地で開催される公式イベントなどにも出演中。

インテリジェントシステムズについて
ゲームソフトメーカーとして主に任天堂が発売するゲームを開発。創立から約32年、ゲーム以外にも開発ツールや、ゲーム関連グッズなども手がける。
代表作は『ファイアーエムブレム』や『ペーパーマリオ』、『メイド イン ワリオ』、『ファミコンウォーズ』シリーズなど。
過去にファミコンの『テニス』やファミコンディスクシステムの『メトロイド』、『パネルでポン』や『カエルの為に鐘は鳴る』、『カードヒーロー』なども手掛ける。


『ファイアーエムブレム』と『TCG ファイアーエムブレム0』

「シリーズ第1作となるファミコン版『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』(1990年発売)は、ロールプレイングシミュレーションというジャンルを作った草分け的な存在のゲームだと思います
シリーズは今年で28年を迎えますが、スマートフォン向けアプリとして『ファイアーエムブレム ヒーローズ』というタイトルがありますし、2019年には最新作『ファイアーエムブレム 風花雪月』(Nintendo Swtch)の発売が予定されています。
その『ファイアーエムブレム』シリーズをトレーディングカードゲーム(TCG)化したものが『TCG ファイアーエムブレム0(サイファ)』です。シリーズ歴代のキャラクターが登場するのが特徴になっています」
と、テレビゲーム『ファイアーエムブレム』と『TCG ファイアーエムブレム0(サイファ)』(以下『サイファ』の関連性を説明する川出さん。2018年6月に発売された第13弾までで、すでにイラスト違いや加工違いなどを含めると約2000種類ぐらいのカードが出ています。
カードの開発は、TCGの開発会社などではなく、テレビゲームの『ファイアーエムブレム』や『ファイアーエムブレム ヒーローズ』と同じくインテリジェントシステムズ内で開発されていることも語られました。

インテリジェントシステムズがTCGを作ることになった理由

『ファイアーエムブレム』をもっと多くの人に知ってもらいたい、ファンの人たちにより多く話題を提供したい。テレビゲーム以外でも『ファイアーエムブレム』の魅力を伝えたい、そう考えていたインテリジェントシステムズのスタッフが選んだのがTCGでした。その理由を川出さんはこう語りました。
『TCGというのは戦略性、キャラクター性、コレクション性というものが重要な要素を占めています。テレビゲームの『ファイアーエムブレム』も同じように、戦略性、キャラクター性、コレクション性が大事な要素となっています。そういった点で『ファイアーエムブレム』のファンに適した商品であると感じました』
テレビゲームの開発は短くても1年、長い場合は2年~4年といった時間が必要になります。その間にシリーズへの興味が下がることがありますが、TCGだと数か月に一度発売することが可能で、定期的にファンに『ファイアーエムブレム』の話題を提供できるという所もTCGを選んだ理由の一つだそうです。
テレビゲームの『ファイアーエムブレム』は基本的に1人でプレイすることが多いですが、TCGは人同士が対戦して遊ぶので、『ファイアーエムブレム』ファン同士の交流のきっかけになって欲しい、との思いも語られました。

テレビゲーム制作者から見たTCGのゲームデザイン

続いて、テレビゲームのクリエイターである川出さんが、テレビゲームの『ファイアーエムブレム』をもとにどのようにTCGのゲームデザインを考えたのか、その基本が語られました。
「『サイファ』は、テレビゲーム『ファイアーエムブレム』に登場する歴代のキャラクターたちで軍団(デッキ)を使って対戦し、勝敗を競います。
一番の特徴としては、プレイヤー自身が主人公ではなくゲームの盤面に主人公というものを立てて戦うことが挙げられます。
わりと珍しいと言われるのが、射程の概念です。このカードゲームには遠距離攻撃・近距離攻撃というのがあり、味方の後衛から敵の前衛に攻撃したり、前衛同士が戦ったりします。盤面に置かれたキャラクターが後ろに下がったり前に移動することで、射程と組み合わせて戦闘を戦略的なものにしています。
また、クラスチェンジでキャラクターがパワーアップしたり、相手を攻撃しても、必ず成功するかどうか事前にわかるわけではなく、戦闘の結果がランダムに決まります」
主人公が相手に敗れるとゲームオーバーになるルールや射程の概念、クラスチェンジや戦闘結果のランダム性など、『サイファ』のルールはテレビゲーム『ファイアーエムブレム』の要素を取り入れたことで特徴的になっていったそうです。

ゲームで重要な3つの「わかりやすさ」

そして、川出さんがテレビゲームを作るうえで注意している「遊び方がわかりやすい」「面白さがわかりやすい」「どう楽しんだらいいかがわかりやすい」という、3つの「わかりやすさ」について説明がなされました

1番目の「遊び方がわかりやすい」というのは、
「『サイファ』は従来のTCGの遊び方と新しい要素の組み込み方のバランスに苦心しましたが、それをより多くの人に遊んでいただけるように、できる限りルールを理解しやすいようにしました」
と川出さんから発言があったように「触ってすぐに遊ぶことができる」ようなものをイメージしています。
2番目の「面白さがわかりやすい」については、
「ゲームを遊んでいて、興奮するシーンや爽快感を得るシーン、達成感を得るシーンなど」
を指しています。ただし、ゲームなどを楽しく感じるにはそれに対する経験や技量がある程度必要になりますが、『サイファ』ではプレイヤーの経験値が少なくても面白く感じられるようなものを目指しているとのこと。
そして3番目の「どう楽しんだらいいかがわかりやすい」については、2番目の「面白さがわかりやすい」が「提供されたものを楽しい」と感じる受動的なものに対して、
「TCGだったら、こういうデッキが組みたくなるとか大会に行きたくなる、そういったお客さん自身(受け手)がどういったことを楽しんだらいいか、それがわかりやすいということが大事だと思っております」
と、話されたように「自分がこれからどう楽しめばいいかわかりやすい」という能動的なものになっています。

・3つの「わかりやすさ」を作るための4つのキーワード
3つの「わかりやすさ」を実現するため、川出さんは『サイファ』を作るにあたって、「キャラクター」「見立て」「ナラティブ」「交流」という4つのキーワードを設定していました。
1つめのキーワード「キャラクター」について。
「たとえば、みなさん漫画やアニメをご覧になると思うんですけど、ストーリーや作画を評価する以前に、お気に入りのキャラクターが1体いるかどうかで評価がまったく変わってくる、という経験があると思います。そういった意味で、キャラクターというのはとても大事です。
『サイファ』の全てのカードは、キャラクターだけで構成されています。これは、パックからキャラクターが出てきたほうが買われた方のテンションあがるだろうと考えた結果です」

テレビゲームの『ファイアーエムブレム』シリーズとは違い、自分の好きなキャラクターを主人公にできるようにしたことや、キャラクターのカードが前衛と後衛を移動できるようにすることで、キャラクター同士が戦っている雰囲気をTCGで再現することを狙っているそうです。

2つめのキーワード「見立て」
「「見立て」というのはあんまり馴染みのない言葉だと思いますが、ゲームのプレイやルールがどんな状態をイメージして作られたのか、テレビゲームのステージのどういった要素を再現しているのか、そういった理由付けのようなものになります。
『サイファ』では戦場と呼ばれる場所でキャラクター同士が戦います。実際には戦争は大人数で行うのですが、これは戦場の最前線にある最重要な場所での戦いを現しているという風に、『サイファ』では見立てています」
『サイファ』のカードに書かれている「戦闘力」と「支援力」と呼ばれている数値も、テレビゲーム同様に味方のキャラクターの支援を受けていると「見立て」ることで2人が協力して戦っているとイメージしたり、「支援力」の数値によって戦闘結果が左右されることで、テレビゲーム『ファイアーエムブレム』の確率1%の攻撃があたったり99%避けられるはずの攻撃を受けてしまうといったランダムな要素を、『サイファ』でも感じられるようにしています。

『サイファ』で同じキャラクターのカードを2体以上戦場に出せないルールも、基本的に同じキャラクターが2人戦場にいるのはおかしい、という「見立て」によるものです。
また、退避エリアにカードが置かれた場合も、ダメージを受けたキャラクターが退避エリアと呼ばれる場所にいったん後退しているという「見立て」なので、テレビゲームの『ファイアーエムブレム』と同様に、回復魔法を使うことで退避エリアのカードを手札にして再び戦場に出撃することができるようになっています。
このようにテレビゲームの『ファイアーエムブレム』に関連付けることで、ユーザーが『サイファ』のルールをイメージしやすくなったり、場面ごとの処理や動きを理解しやすくなることを狙っています。


3つめのキーワード「ナラティブ」
「耳慣れない言葉だと思いますが、文芸理論の用語で「物語」という意味です。個人的には、物語性とかストーリー性という言い方のほうが、わかりやすいのではないかと思っています。
説明が難しいんですが人それぞれに、思い入れや思い出、記憶に残るゲーム展開ができるようなものを「ナラティブ」と言っています」
テレビゲームの『ファイアーエムブレム』を遊んだときの、「俺はあのキャラクターとこのキャラクターで苦労してあいつを倒した」「俺のドラマの中では、アイツはここで死んでしまった」など、プレイヤーごとに体験するドラマのことになります」
川出さんは『サイファ』の比較的短いプレイ時間でも、テレビゲームと同じように「ナラティブ」を感じられるように作ることを心がけています。
そのポイントになるのが「キャラクター」と「見立て」です。それにより、『サイファ』の対戦をキャラクターたちが活躍した物語のように思ってもらうことで、対戦が面白く感じられるだけでなく、対戦を振り返った会話や『ファイアーエムブレム』トークをするきっかけになることを願っています。

4つめのキーワード「交流」
「『ファイアーエムブレム』のトークをするために、『サイファ』をプレイしているというお客さんも多いと聞いています。
そういった点で、『サイファ』は交流という要素をとても重要視しています。交流といっても、対戦後のトークのようにカードショップでの交流だけでなく、いろいろな形で交流できるようにしています。
たとえば「サイファ祭」という、年に1回開催される大きなイベントには『サイファ』のプレイヤーだけでなく、『ファイアーエムブレム』シリーズのファンの方も多く来場されていて、そういった方々がリアルの交流をはかる場所になっていたりします。
イベントでは弊社のテレビゲームのサウンドスタッフがライブを行ったりしていますが、『サイファ』は『ファイアーエムブレム』シリーズのファンの方だけでなく、スタッフも交流をはかっていきたいと思っているので、こういった企画もやっています。
また、「サイファ」の交流会というのも開催しています。こちらでも対戦よりも『ファイアーエムブレム』談義を熱く交わされているお客さんもたくさんいらっしゃいます。そして、比較的女性のお客様が多いということから、定期的に「女子会」というものを開催しております」

テレビゲームの『ファイアーエムブレム』では難しかったファン同士の「交流」を『サイファ』が担っていきたいと語った川出さん。
イベントでは『サイファ』のルールを知らない『ファイアーエムブレム』ファンにも楽しんでもらえるように考え、『サイファ』のカードを台の上にのせて戦うトントン相撲「トントン・カード・ゲーム(TCG)」なども開催。また、ニコニコ生放送やYouTubeで定期的に配信している「サイファ公式生放送」は、ユーザーと開発者との交流の窓口を目指しているそうです。

『ファイアーエムブレム』と『サイファ』の相乗効果について

セミナーの最後は、川出さんからテレビゲームとTCGを同じ場所で開発することの利点や『サイファ』の近況などが語られました。
「『サイファ』とテレビゲーム『ファイアーエムブレム』を同じメーカーが開発することで、新作のタイトルや新要素をいち早くカードゲームに取り入れることができます。
『サイファ』の第1弾とテレビゲームの『ファイアーエムブレムif』を同じ日に発売したり、来年発売されるテレビゲームの最新作『ファイアーエムブレム 風花雪月』を『サイファ』にも収録します、という発表もさせていただいております。
こうやってテレビゲームのノウハウを駆使して、テレビゲーム開発者によって作られた「サイファ」は、テレビゲームのいい所とTCGのいい所、両方のいいとこ取りのゲームになったと僕は思っています。
販売も順調で2018年の6月に発売3周年を迎えることができました。『サイファ』はロングテール型と言って長い期間売れる商品です。3年前に発売した第1弾のブースターパックもいまだに売れていて、トータルでは最初の1か月に発売した数の何倍かになっています。
最後になりますが、『ファイアーエムブレム』はテレビゲームやアプリ、関連グッズを含めて総合的に盛り上げ中です。『サイファ』も今後とも頑張っていきますので、どうぞよろしくお願い致します」

ファイアーエムブレム0(サイファ)公式 https://fecipher.jp/

TCGFES http://tcgfes.com/

(C) Nintenodo / INTELLIGENT SYSTEMS

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