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『ドラゴンクエストⅩ』青山さん&齊藤さんプロデューサーバトンタッチインタビュー(ニンテンドードリーム2018年12月号より)

2018年8月2日で6周年を迎えた『ドラゴンクエストX』(以下『DQX』)。新旧プロデューサーにご登場していただき、交代の経緯やそれぞれの思いを伺いました。
ニンテンドードリームウェブでは、ニンドリ2018年12月号に掲載した内容に加筆・修正してお届けします。

2代目プロデューサー 青山公士さん(写真左)
テクニカルディレクターとして長年開発チームのリーダーとして活躍。2018年10月1日付けで2代目プロデューサーに昇格
Twitter:kojibm
初代プロデューサー 齊藤陽介さん(写真右)
開発初期からずっと見守り続けてきた初代プロデューサー(愛称:よーすぴ)。現在はバーチャルアイドル「GEMS COMPANY」を育成中
Twitter:SaitoYosuke_Z
2018年8月25日に行われた「ドラゴンクエスト夏祭り2018 WEST」にて、齊藤(通称「よーすぴ」)さんがプロデューサーを辞め、青山さんが新プロデューサーに就任することが発表されました。冒険者の広場に掲載された「開発・運営だより-第44号-」で交代の経緯は大まかに語られていますが、さらに詳しくお話を伺いました。

プロジェクトスタートから見守り続けてきた齊藤さんが退任

―― まずはプロデューサーが交代になった経緯を教えてください。
齊藤 8月25日に大阪で行われた「ドラゴンクエスト夏祭り2018」でも説明しましたが、急に決まった話ではありません。一昨年の冬頃から考えていて、青山に相談をしていました。プロデューサー業務の全部を青山にやってほしいとは思っていましたが、青山は全然違う仕事をしてきたので、いきなり全部ではなくて、いまやっている延長上の開発チームの統括プロデューサーをやってもらい、外向けのプロデューサーは別の人にやってもらえばいいかなと思っていました。
―― 交代の話を聞いた青山さんはどう思われたのでしょうか?
青山 自信過剰かと思われるかもしれませんが、齊藤がプロデューサーを辞める話を聞いたとき、プロデューサーは私以外にいないと思いました。引き受けると返事をしたのは、年が明けて春頃になりますね。
齊藤 青山からは「社内外の両面でプロデューサーとしての業務を任せて貰えるならばやりたい」という返事を貰いました。私としてはもちろんその方がいいですし、じゃあお願いしますということになりました。プロデューサーの仕事は開発チームをまとめたり、予算の管理などがあるのですが、それらは問題なく出来るだろうと思いました。ですが、「DQXTV」など外向けの仕事はいままで青山はやってこなかったので、時間を掛けて慣れていくようにやっていきました。
―― 「DQXTV」で「教えて!青山さぁぁぁぁぁん!」のコーナーが出来たのは、そういうことだったのですね。
青山 「超DQXTV」になったタイミング(2017年11月6日)から、自然に出てきましたよね(笑)。
齊藤 あと、バージョン4になったタイミングで、竹若元博さんを新MCに迎え、椿彩奈さんとMCを2人体制にしたんですよ。
青山 実は「プロデューサーをやってみない?」という話は、2016年夏にも齊藤から一度言われたことがあったんです。その時は冗談話だと思ったのですが、一昨年の年末にもう一度話をされたので、プロデューサーの交代は本当だったのかって思いましたね。
齊藤 私は青山がずっと『DQⅩ』のチームに残らないだろうなって思っていました。それは後進の育成や、開発チームの活性化などのためです。じゃあ青山の次のキャリアパスって何だろうと考えたら、新しいプロジェクトでのテクニカルディレクターになるだけじゃなく、プロデューサーという選択肢もあるかなって思っていました。
青山 実は『DQⅩ』開発チームから抜ける準備は進めていて、ゲームの企画を考えたりしていたんです。齊藤から内部プロデューサーの話を頂いたのですが、トップが2人いるのはありえないと思っています。「組織はどこを切ってもそのトップの能力に従う」というポリシーを持っていますので、私がプロデューサーになったら、社内だけでなく外向けの仕事が苦手だとしても権限は貰い、外向けの仕事は得意な人に任せればいいと思いました。チームには優秀な人が多いですしね。
―― 青山さんは外向けの仕事は苦手意識があるんですか?
青山 実は…コミュ障なんです(苦笑)。女性を口説くよりコンピューターをいじっている方が楽しいですし(苦笑)。
齊藤 すぐ慣れるから大丈夫。あと、お客さんの前で同じ話題を共有できるって楽しいでしょ?
青山 楽しいですね! 私は何でも楽しくしてから臨む人なので、今は楽しんで超DQXTVに臨んでいるので大丈夫です(笑)。
―― 齊藤さんはDQXTVで「踊ってみた!」みたいなこともチャレンジして、本当に何でもやるプロデューサーだなって感じました。
齊藤 これはネタのように話すのですが…、土日とか休みがあったら誰とも話したくないんです(笑)。月曜日の朝に背中のスイッチを押して、金曜日の夜のエネルギーが切れたらいいなと思っていて。最近は土日も関係なくやっているので、1週間ぐらい誰とも口を利かない時間が本当は必要なんじゃないかとか(笑)。
青山 齊藤さん、仕事しすぎですよ! あと、齊藤を見ていると歌って踊れないとプロデューサーになれないって誤解している人がいるかもしれませんが…そんなことはないですからね!
一同 (笑)

齊藤さんが青山さんを後任として選んだ理由

―― 齊藤さんは「わたしが選択できる中でのベストな人選」として青山さんを指名されたそうですが、どういう仕事を見てそう感じたのでしょうか?
齊藤 やっぱり、物事に細かいことと数字が得意なところですね。青山は開発の現場を誰よりも知っていますし。あと、青山って1日の時間が他の人より長いんですよ(笑)。青山なら有意義に時間を使ってプロデューサーの仕事をしてくれると思いました。それで『DQX』プロデューサーの仕事の枠のなか、時間が空くようだったら、新しいことをすればいいと思います。
青山 私の自覚としては、プログラマーの中では日本語を喋っていると思います(笑)。規模が大きい開発チームですので、私がプログラムを組んでいる場合じゃないんですよ。テクニカルディレクターをやっていた頃は、プログラムを組まない人にプログラムで何が起きているかを翻訳して説明することが多かったですね。
齊藤 開発の中では、諦めなければならないことも多々あります。青山はプログラマー出身なので、そういう部分では多少の諦めが付くかもしれませんね。
―― 制作過程を理解しているだけに。
齊藤 プログラマーはゲームデザイナーが考えたことを実装するのが主な仕事です。ゲームデザイナーと相談しながら決めるとはいえ、仕様決定はゲームデザイナーだったりします。プロデューサーも、ディレクターが考えたことに対してどう思っても、決定権はディレクターなんですよ。ただ、物に対するこだわりみたいなものがあると、やっぱりつまらない仕事に見えてしまわないかなという危惧はありますね。それでも青山がいままでやってきたスタンスで考えれば、ゲームデザイナーを尊重して実装してきたので、プロデューサーになっても違和感はそんなにないと思います。
青山 細かい技術で「私だったらこうするのに!」っていうことはでてくるかもしれませんが、そこはテクニカルディレクターを引き継いでもらった西岡(信賢さん)が優秀なので、完全に信頼しています。そこは心配していないですね。
―― プログラマーがプロデューサーになることは珍しいのでしょうか?
齊藤 スクウェア・エニックスでは珍しいかもしれませんが、ゲーム業界ではプログラマー上がりの社長とか、結構いますよね? なのでプログラマー出身のプロデューサーは少なくないと思いますよ。
青山 弊社では最初からプロデューサーってことが多いですね。
齊藤 エニックスと合併前のスクウェアが、プロデューサーという肩書きでディレクターの仕事をしていました。なのでどちらかというと、プロジェクトマネージャーがプロデューサー寄りの立ち位置でしたね。
―― 齊藤さんがプロデューサーだった期間で一番手応えのあった仕事は?
齊藤 一番手応えがあったのは…開発を内製にしたことですね。『DQ』シリーズの開発は、社内にシナリオスタッフだけいて、それ以外はアウトソースですから。『DQX』も最初はシナリオスタッフしかいなかったですし。
―― 『DQX』がWiiで発売されることが発表された時も、開発会社はどこだ? ってざわついていたのを覚えています。
齊藤 弊社には「分科会」という、社内のリーダークラスが集まってプロジェクトの垣根を越えて横串をさす会があったんです。プランナー分科会、デザイナー分科会、プログラマー分科会などがあって、そこで「新しい『DQ』チームを作るのでスタッフをください」って延々と呼びかけていました(笑)。
―― 仲間探しからやっていったんですね。
青山 私も分科会のメンバーの一人だったんですけど、新しいことってわからないので、人の出しようが難しくて…。あと私自身が「『DQ』のオンラインゲームだったらやりたいです」って分科会のメンバーには言っていたんですけど、齊藤が来た時には私がその場にいなくて(苦笑)。その後、吉田(直樹さん。初代『DQⅩ』チーフプランナー)経由で齊藤と飲むことになり、『DQ』のオンラインゲームをやりましょうということになりました。
―― その出会いが運命の分かれ道だったかもしれないですね。
青山 当時私は『プレイオンライン』のディレクターをやっていたのですが、齊藤とは面識があったので、まったく知らないままってことはありませんでしたけどね(笑)。
―― 青山さんへの引き継ぎはどんなふうに行われたのでしょうか?
齊藤 開発チームには今年の春ぐらいに、8月の「DQ夏祭り」でプロデューサーが変わりますと伝えました。その時点から今まで私しか出席していなかった打ち合わせなどに青山も同席してもらい、情報共有しながらこの半年ぐらいやってきましたね。あとは外向きの仕事は慣れてもらうとして、人事評価などすでに青山が行っていた部分は結構あるので、その範囲が広がったってイメージです。とはいえ、人数が多くなってたいへんだとは思いますが。そこは頑張ってください!
―― 管轄が少し広がるような形で引き継ぐことが出来たわけですね。
齊藤 プログラマーたちは青山がまとめてくれていたので、ひどいエスカレーションはなかったのですが、デザイナー陣は結構多くてたいへんですよ(苦笑)。
青山 青山体制になることを話してから、私の元へガンガン相談などが来るようになりました。

↑2011年9月5日に行われた『DQⅩ』発表会の様子。齊藤さんが概要を説明しました

齊藤さんの思いを受け継ぎ開発チーム力を上げる

―― プロデューサーの交代は結果的に6周年というタイミングになりましたね。
齊藤 お客さんから見ると、なんでバージョン4の途中で交代するんだ? って思われるのですが、みなさんがバージョン4を遊んでいる頃はもうバージョン5の開発が動き出すタイミングですから。いつ交代しても中途半端になるのはしょうがないんですよ。
青山 バージョン4をやりきったタイミングですと、バージョン5が相当出来ていないといけませんからね(苦笑)。
―― 齊藤さんは基本的に開発現場に任せるプロデューサーでしたが、青山さんはどういうプロデューサーになっていこうと考えていますか?
青山 開発初期はともかく、齊藤は『DQX』以外のタイトルも多く抱えているので、それに比べると私は『DQX』に専任できますし、今までより現場に近づけるプロデューサーになるかなと思います。ただやりすぎてもいけないですし、任せるところは任せるつもりです。ついつい口を出してしまわないように、技術系の定例会議とかは意図的に外して出ないようにしています。
齊藤 時間があると、つい口を出したくなっちゃいますし(笑)。あと、私がなんで開発現場に口を出さないかっていうと、1つのタイトルのことを100%考えているディレクターと、3つのプロジェクトを抱えていて1つあたり33%しか頭を使えていないプロデューサーがいたとして、仮にプロデューサーが200%働いたところで、100%考えているディレクターの方が絶対面白いものを考えてくれますから。ただ、ディレクターがどうするか迷ったときは、それに対して○か×かを決める決断力を、責任取る代わりに決めてあげられるのは重要な部分かなと思います。
―― そういう意味では齊藤さんと青山さんは結構異なるプロデューサーになりそうですね。
齊藤 そこは青山が今後どう時間を使っていくかですね。
青山 そうですね。別にゲームの中身に口を出す気はないですし、技術に関しても同様です。
―― 青山さんはずっと開発チームを育成しているように感じましたが、今後はどうするつもりですか?
青山 テクニカルディレクター時代は、プログラマーチームの育成はもちろん考えていました。プロデューサーになった今は、開発スタッフ全体のチーム力を上げていかないとなって思って、いろいろ模索しているところです!
―― プロデューサーになって、以前と比べて変わったことはありますか?
青山 プロデューサーって判断のセンスが必要だなと感じました。テクニカルディレクター時代はいろんなことが出来ていなかったので、『DQX』のプレイ時間を増やしたり、ほかのゲームをプレイしたり、映画を観たり、積極的にやっていこうと思いました。あと、テレビとかもあまり見ていなくて、芸能人に詳しくなかったので勉強しようと思います(苦笑)。
齊藤 あと、ほかのオンラインゲームのプロデューサーたちや、堀井さん(雄二さん。『DQ』シリーズのゲームデザイナー)とも仲良くなってください(笑)。
青山 堀井さんってすごく気さくな方で、話を聞くのが上手すぎて、堀井さんの前で『DQI』がいかに素晴らしいかを語ってしまいました(笑)。
一同 (笑)

新プロデューサー青山さんが語る『DQⅩ』の今後

―― 最後にこれから『DQX』をどういう風にしていきたいと考えていますか?
青山 いまは齊藤が作ってくれたあったかい世界を壊さないようにしなきゃなってのが第一にあります。まだまだ盛り上げられることはあると思うので、実際にみなさんの前に出るのは何か月も先になってしまいますが。積極的にやっていきたいなと思っています!
齊藤 私が抜けた後、メテオを落としたり(※)しないでよね?
一同 (笑)
※MMORPG『ファイナルファンタジーXIV』が改修のため一時サービス終了するにあたり、物語の一環としてメテオ(月の衛星)が世界に落ちて幕を下ろしました


齊藤さんに訊く
「ニンドリ乱取り組」のスローガンに込めた思いと真相

6年前に齊藤さんに考えて頂いた「ニンドリ乱取り組」のスローガン「プクリポの プクリポによる プクリポのための ぱふぱふを 実現するために一生懸命頑張ります! ニンドリ定期購読よろしくね!」。ぱふぱふの特技は新職業「遊び人」の特技としてVer.4.3で実装されたし、このスローガンは実現出来たのでしょうか!? インタビューの最後に齊藤さん本人に聞いてみました!

(↑2012年11月発売号掲載のニンドリより)
齊藤さんによると、実は「ニンドリ定期購読よろしくね!」だけがニンドリ乱取り組のスローガンの真の目標で、最初の一文は枕詞だったことが6年経って明かされました。「チームの中に定期購読をしている人がいるか確かめて、1人でもいたら青山に新しいスローガンを考えてもらってください」とのこと。
チームメンバーの方で定期購読してたら…ニンドリ乱取り組Twitterにご一報ください!
(アンケートハガキでご報告してくれた方、ありがとう!)
 
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参考記事 ドラゴンクエストX「ニンドリ乱取り組」チームについて
 

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