【インタビュー】「シレンらしさ」を追求し行き着いたのは「原点回帰」『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』

入るたびに地形や落ちている道具、出現する敵など、あらゆるものが変化する「不思議のダンジョン」を攻略していくダンジョンRPG「風来のシレン」シリーズ。14年ぶりの完全新作となった『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』の開発者インタビューを、発売当時に行われたニンドリ本誌より再録してお届けします。(ニンテンドードリーム2024年3月号より)
※ソフト発売(2024年1月25日)前に収録されたものになります。再録にあたり一部修正しています。
Nintendo Switch Online加入者が遊べる「いっせいトライアル」にて、2025年5月9日12時〜2025年5月11日17時59分まで無料でプレイすることができます。

原点回帰に込めたその想いとは
◾️登壇者プロフィール

—— 『シレン6』は「原点回帰」をテーマにして開発されたとのことですが、その経緯を教えてください。
冨江 完全新作としては14年ぶりなんですけど、シリーズを重ねてきて、続編を作るときは今までの道具や要素を継承して作っていたのが現状でした。それが今回の『シレン6』に関しては、開発が決まったときに若手たちをリーダー陣として起用しました。そして彼らが始めたこととして、まずは『シレン6』のコンセプトをちゃんと決めようと、そこから話し合ったんです。
—— それはどんな内容だったんですか?
冨江 「不思議のダンジョンの魅力」です。話し合って出た結果としては、やはり一番おもしろいところは常に何度も違うドラマを感じる、やるたびに違う冒険になっていく。やはりそこなんじゃないのかなと。
武器育成とかも楽しいんですけど、究極的なおもしろさの根っこはやはり道具を持ち込まないでダンジョンに行くところじゃないかって。それだったら、やっぱり『初代シレン』を見習って、そこを意識してやっていこうとしたのが開発の始まりでした。
櫻井 原点回帰って、今ではもう大々的にいってますけれども、最初のころはあまり意識していなくて、「シレンらしさって何だろう?」というのを本当に再分析し直したというところがあって。結果的に『初代シレン』に近くなってきたところがすごくあるかなと思ってます。
—— そんな『シレン6』のストーリーを冨江さんはどういうふうに書こうとしたのでしょうか?
冨江 そうですね。先ほどいった『シレン』のおもしろさを一番引き出すためのシナリオにしたいなと思いました。
私が過去に手掛けた『ポケモン不思議のダンジョン』シリーズでは、どちらかというとストーリーで持っていくぜという、形態的にRPGなところがありました。『シレン6』では、お話も大切ではあるんですけど、それよりはちゃんと『シレン6』の仕様とシステムを活かすシナリオにしました。一番意識したのはそこですね。
—— Switch版『シレン5plus』に登場する「新作の壺」には、冨江さんからの隠しメッセージで「初代シレン、シレン2、アスカなど評価の高い作品に迫れるぐらいの…(中略)ファンの納得できるようなものを提供できるようがんばります」とありました。『シレン6』が完成した今、どうですか?
冨江 『シレン5plus』のコメントには「迫れるんじゃなくて超えてくれ!」って声が届きましたね。
一同 (笑)
冨江 超えているかどうかというのは、それはお客さんが決めることなので、私がどうこういうところではないですね。ひとついえるとしたら、「やっぱりこれが『シレン』だよな」「『シレン』ってこうだよな」って思っていただけるんじゃないかなと思います。
ロゴとサブタイトルの変化について
—— 今回「とぐろ島探検録」というサブタイトルが付いていますが、そこに込めた思いを教えてください。
冨江 サブタイトルも含めて、今回の『風来のシレン6』はみんなで決めていったのですが…、当初はサブタイトルにあまりいいアイデアが出なくて苦労しました(笑)。
櫻井 メインの舞台なので「とぐろ島」を入れたいというのは、結構強かったですね。あと、できるだけ短くしたいというのもありました。
篠崎 『風来のシレン4 神の眼と悪魔のヘソ』(以下『シレン4』)や『風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス』(以下『シレン5』)が非常に長いサブタイトルでしたので、まず「○○と○○」は長いので、開発スタッフの中でも短くしたいという意見は大きかったですね。
櫻井 『シレン5』は「フォーチュンタワー」とか「ダイス」とか、カタカナいっぱいでしたね。

篠崎 今回は和風な世界観といったところもありますので、ここにカタカナでガッツリと入るのはちょっと違うのかなぁと思いました。
冨江 「探検録」って、システムとして今回はあるから、それがちょうどいいんじゃないかって。だからめちゃくちゃ強い思い入れがあるサブタイトルというよりは、いろいろ悩んでみんなで「これじゃないかな」って決めましたね。
—— 今までロゴは初代から同じデザインが踏襲されてきましたが、今回は黒になっていたので驚きました。
冨江 ロゴもみんなで話し合いましたね。従来のロゴと今回のロゴをテーブルに並べて「どちらがいいか?」ってやったときに、やはり『シレン6』はより一層がんばっているんだよ! ということがちょっと言いたかったのです(笑)。あと、実はナンバリングの「6」を付けるかどうかも議論しました。
—— なんと!?
冨江 付けないほうがいいんじゃないかという案もあったんですよ。新規の方が入りづらいんじゃないかって。結局「6」は付けることになったんですけど、でもあまり「6」を表に出すよりは裏側に回したほうがいいという意見も出ました。
そこで櫻井君が、ロゴの「6」の上に風来のシレンの文字をバーンと乗っけて「これでどうだ!」と提示してくれて。そこから「いいんじゃない!」って決まったんです。
篠崎 『風来のシレン』シリーズのナンバリングの数字って、だいたい右端に数字があることが多いんですが、今回は真ん中「6」を持ってきたんです。
冨江 最初の案では従来通りの右端で考えていました。
篠崎 正直、ここに至るまで紆余曲折ありました。「6」のパターンだけでも、ざっと30種類以上の候補があり、最終的に現在のものに至りました。後ろのとぐろ島のシルエットもあわせて、単体で見ても「6」でとぐろ島を表現できているのが最終的にはとても気に入っています。
櫻井 「6」を取るか取らないかで相当揉めましたね(笑)。
—— でもファンとしてはやっぱり「6」があったほうがうれしいですね。
櫻井 そうですね。シリーズを知っている人は本当に喜んでもらえていると思いますが、その反面で「6」って付くと、過去作をやっていないからなぁって二の足を踏んでしまう人もいるかもしれません。
篠崎 なので「6」と付いているから前作を遊んでいないと楽しめないとか、分からないとか、そういうことはないですよと、皆様にしっかりお伝えできたらと思っております。
物語とグラフィックが決まるまで
—— 今回の『シレン6』は『風来のシレンGB 月影村の怪物』(以下『シレンGB』)の後のお話ということですけど、物語の時系列をこのタイミングにした理由は?
冨江 まず『シレン6』を作るにあたって、社内から「アスカ(※)を出してください」という意見があったんです。安請け合いをして「出します」って答えちゃったのがキッカケです。
そこから物語を考え始めて、アスカを出すんだったら『風来のシレン3 からくり屋敷の眠り姫』(以下『シレン3』)の普通口調も悪くないんだけど、今回は『シレン2』のござる口調でやってみたいという気持ちがありました。そこで、どこら辺の時間軸がいいかなと探っていたときに、私は『シレンGB』が大好きなので、その後ぐらいがちょうどいいかなと思って決めました(笑)。
※風来修行の旅を続ける女剣士。『風来のシレン2』でシレンの仲間になり、その後『不思議のダンジョン 風来のシレン外伝 女剣士アスカ見参!』で主人公となる
—— 新作の度に『シレンGB』の月影村の後の物語みたいになっちゃいますね?(笑)
冨江 好きな作品ではあるので、そういう繋がりがあるといいなという感じですね。
—— 「風来のシレン」シリーズは大きく1本のストーリーに繋がっていると思うんですけれども、その辺はなにか意識しているんですか?
冨江 一応ありますよ。私の中にはシレンの大きなターニングポイントがあるんですけど、そこのエピソードはまだ触れずにやってきています。『シレン6』ではほんのちょっとなんですけど「あれ?」って思うことが、もしかしたらあるかもしれません。

—— そして『シレン6』のグラフィックはWiiの『シレン3』以来の3Dになりましたね。『シレン4』と『シレン5』が最初に発売されたのがニンテンドーDSだったということもあったと思うのですが、今回3Dになった経緯を教えてください。
櫻井 直前の開発体制がずっと3Dでゲームを作ることが多かったのが主な理由です。開発体制としてしっかり3Dの舞台が作れているということで、『シレン6』では3Dを採用したところが大きいかなと思います。あと、見下ろしだけじゃなくて、イベントシーンでキャラクターをしっかり立ててあげたい気持ちもあり、3Dをより推していきました。
篠崎 「風来のシレン」シリーズは、ドット絵だと歩く方向が8方向あります。基本的にキャラクターのドット絵は、左右反転して使うものが一般的に多いと思うんですけれども、シレンは右手に武器を持って左手に盾を持ち、三度笠には切れ目があるとか、そのまま反転して使えなかったりします。
—— 仮にシレンだけのドットを作ると、どれぐらい期間がかかるんでしょうか?
篠崎 1か月以上はかかってしまいますね。ほかの仲間や村人、モンスターまで全部ドット絵で制作しますと……
—— 『ポケモン不思議のダンジョン 赤の救助隊・青の救助隊』の開発時、開発期間の6割を386種類のポケモンのドット絵制作に費やしたというお話もありましたね。
篠崎 もちろん私たちもドットは好きで、『シレン6』を作る一番初めにドット絵にしようかどうかは議論に上がっていました。3D開発のノウハウが溜まっていたといったところもありますが、ゲーム速度の快適さが保てるかどうかをしっかり考え、そこにある程度目処が立ったので、3Dで開発することになりました。
—— サクサク遊べて操作していて気持ちよかったです。
冨江 『シレン6』を開発する前は『ポケモン不思議のダンジョン 救助隊DX』の開発をやっていました。そのとき3Dだけど和紙や絵本みたいな表現をしていました。
和風の世界観の『シレン6』も似たような表現が合うんじゃないかなって思ったので、その表現で行きたいなと思ったんですけれど、長谷川(薫さん。シリーズのキャラクターデザインを担当)から「ポケモンダンジョンと差別化したいので、クレイアニメ(※)みたいな表現はどうですか」といわれてしまって。私、長谷川君に言われたらなにも逆らえないんです(苦笑)。
一同 (笑)
※クレイ・アニメーションの略。粘土やそれに近しいもので、被写体となるキャラクターをパラパラ漫画のようにして見せる動画表現のこと
—— 長谷川さんの意見が大きく?
冨江 結構ガッときましたね(笑)。じゃあ『シレン2』みたいな感じになるのならいいかなって。
櫻井 アートディレクターの立場からは『シレン2』をより正統進化させていったらどうなるか? ということを意識して作っています。

「デッ怪」がでっかいのはなぜ?
—— ダンジョン攻略中にいきなりでかいモンスターが出てきてビックリしました。新要素の「デッ怪」についても教えてください。
冨江 経緯としては、まず「めちゃくちゃ強くて戦う理由もあまりない存在を置くことで、巡回するルートをユーザーに考えさせたい」という要望が上がったのがキッカケでした。その要望では、亡霊状態と呼ばれていました。ただ既存モンスターに「亡霊武者」がいるのに、亡霊状態の敵ってよくわからないですよね。
そこで開発チームの若手たちと話し合って、やっぱりモンスターが大きければ怖いだろうということで、「デッ怪」となりました。関わっちゃいけないんだ、という感じも出ますしね。
—— 『シレン6』は日本だけでなく海外でも発売されますよね。海外では「デッ怪」はなんというんですか? BIGなんとか? ……になるんでしょうか? 名称とかもローカライズは大変そうですね。
篠崎 Behemothです。『シレン3』や『シレン5plus』などは海外でも発売されていますので、違和感がないようにローカライズさせていただいています。翻訳の話をちょっとだけお話しさせていただくと、アメリカ市場で『シレン6』は少し幼い感じに見えてしまうんです。
—— ゲーム内のキャラクターが少しデフォルメされているからですね?
篠崎 はい。『風来のシレン』シリーズは、大人向けのゲームでもあるので、見た目より少し大人向けの翻訳を意識していますね。

まだまだ続く新要素のアレコレ
—— シレンがおにぎりを食べまくると強くなる「ドスコイ」状態については?
冨江 そこは満腹度の遊びを見直そうというところからはじまっています。シレンはお腹が空いたらおにぎりを食べる、これは「風来のシレン」シリーズの基本で、初代からずっと同じ繰り返しですよね。そこにテコ入れをしたいなと考えました。
—— 満腹度で遊びの幅を広げるってことですか?
冨江 はい。あとは性能をどうするかというのは試行錯誤でしたね。
櫻井 『シレン5』にあった「スーパー状態」(※)にテコ入れしたいという気持ちもあり、それもあわせて考えていきました。狙ってできるスーパー状態みたいなところを、結構意識しましたね。メリットとデメリットはしっかり持たせたいですし。
※「スーパー状態」になるとオーラに包まれて、攻撃力アップ状態・防御力アップ状態など効果がランダムで追加される
冨江 スーパー状態については、解除の条件もわかり辛かったし。
篠崎 一定の確率をたまたま引いて楽しいっていう、遊技機でいうところのフィーバーみたいな状態でしたね(笑)。『シレン6』ではどちらかというと、自分で取捨選択するところがポイントになっています。

—— 続いて初登場の「神器」(青の神器、金の神器)についても聞かせてください。ようはレアリティの高い武器や盾ですよね。
櫻井 「神器」については、まず『シレン4』や『シレン5』にあった武器成長システム(※)を、『シレン6』ではなくしたところからスタートしています。武器成長システムはどうしても1回のゲームプレイが長くなってしまうんですね。ダンジョンでやられてしまうことのストレスがすごく大きいというところもあって。
※モンスターを倒したりすると熟練度が上がり、武器や盾の強さが上がるシステム
—— それはたしかに。
櫻井 それであれば、最初からある程度強い状態で武器や盾を拾うほうが、ゲームの楽しさがすごく膨れ上がるので、「神器」を導入しました。
冨江 拾うときのワクワク感も大きくなりました。
櫻井 そうですね。「神器」を見つけたときに「おっ!」って、必ず拾わなきゃという駆り立てられる演出もできたので、よい形でまとまったかなと思います。

自分救助の搭載とパラレルプレイ
—— 「風来救助」は『風来のシレンGB2 砂漠の魔城』で初登場してからずっとあるお助けシステムですが、『シレン6』では自分で自分を救助できちゃうというビックリな仕様が登場しましたね。なぜ自分を救助できるようにしたのかを教えてください。
冨江 実は「ポケモン不思議のダンジョン」シリーズでもできていたんですよ(笑)。
櫻井 「風来のシレン」シリーズには何故か採用されていなかったんです。例えば難しくて深い階層で救助依頼を出すと、なかなか救助されない状態のままのこともあるのですが、その待ち時間をなんとか解消したいなと思いました。
—— 待っている間に自分でやっちゃえということですか(笑)。
櫻井 はい(笑)。すでに『ポケモン不思議のダンジョン』でノウハウもありましたので、『シレン6』にも導入しました。
篠崎 初期の「風来のシレン」シリーズでは、セーブデータをコピーすることができた(※)のですが、「風来救助」が初登場した『風来のシレンGB2』以降はセーブデータのコピーはできなくなったんですよね。『シレン6』で自分のセーブデータで「自分救助」ができるということは、プレイヤーにとってはとても重要であると思います。
※冒険に出る前にセーブデータを別ファイルにコピーしておけば、もしダンジョンでやられてしまって道具をロストしてしまったとしても、コピーしたセーブがバックアップとなり、道具を失う前の状態からやり直すことができた
—— やられたとしても、「自分救助」で助かるので、道具を失うリスクが低くなると思いますが、むしろこれぐらいがちょうどいい感じですか?
篠崎 今回の『シレン6』は、道具の持ち込みをせずにダンジョンに入って、自分がどこまで行けるかや、もう一度立ち戻ってまた最初から繰り返すといったような、何度も遊んでいただくといったところがコンセプトになっています。
救助に関しても、そこを気軽にして、自分で救助してもいいですし、ほかのプレイヤーに依頼していただいてもいいと思います。これで少しは『シレン6』を、恐れずに楽しくプレイいただける流れになったんじゃないかなぁと感じています。
—— そして「パラレルプレイ」というなにか凄いシステムが初登場しましたね。
櫻井 「風来のシレン」シリーズは、コミュニティがしっかりしていて、いろんな人が実況配信などをやっていたりしますね。『シレン6』では、なにか複数人で関わる要素を入れたいなっていう話が開発中にもありました。しかし対戦のような内容では、自分と相手が1ターンずつ順番に行動するゲームである『風来のシレン』では、リアルタイム性と相性が悪いだろうと。
それであれば、セーブデータの途中からリレーのようにプレイするというやり方だったらおもしろいのではないか? という案が出まして。利用方法は本当にプレイヤーに委ねるところが強いんですけど、このシステムを使うことで、例えば複数人同時に同じ条件で冒険する、みたいなこともできたりします。いろんな発展性が高そうだというところで採用しました。
冨江 実は開発当初から入れたシステムではなく、「通信を使ってなにかやりたい」って話から実現した仕様のひとつです。ほかにも別のアイデアがいくつかあったのですが……費用対効果が悪いなって(笑)。
一同 (笑)
冨江 アイデアのひとつに、みんなで集まってリレー方式でプレイするみたいな内容があったんです。おもしろそうだけど、それはそれでマッチングでちゃんと人が集まるのかどうか、ゲームをプレイしていない人はただ観戦しているだけなのかなど、話し合いを進めていくうちに「パラレルプレイ」の仕様だったらサーバーやマッチング問題も解決だし、いいよねってことで採用されました。
篠崎 パラレルプレイをどう使うかはお客さん次第ですね(笑)。
冨江 我々が「こうやって遊んでね」と提示するよりかは、「お客さんが自由に好きに遊んでね」というふうにしたほうがいいなぁと。
櫻井 「便利なツールを提供します」というと、お客さんがいろいろ使い方を試行錯誤してもらえるかな? という部分は強いですね。自由度の高い形で実装ができてよかったです。

今回も一新されたサウンド秘話
—— サウンドについては、前作『シレン5』に続いて今回も一新されていますね。
篠崎 サウンドの担当者と、『シレン6』はどういった曲がいいか? といったところをかなり詰めながら制作をしていきました。過去の楽曲も使えればもちろん私たちもいいなという気持ちは正直あります。けれど、今回は心機一転で今までとは異なる制作体制で作っていますから。
—— レベルアップのME(ミュージックエフェクト)も、前作『シレン5』でリニューアルされましたが、もう14年経っていますので耳が慣れちゃって(笑)。
篠崎 『初代シレン』から『シレン4』までが「よ〜お、チャチャチャ チャチャチャ チャチャチャッチャ、はっ!!」(三三七拍子)で、『シレン5』では初めて変わって「よ〜お、ドンドンドンちゃかちゃかちゃかドドドンドドン、はっ!!」、そして今回も新しくなりました。
メロディラインを違和感なく残すといったところは、とても制作に苦労しましたが、レベルアップがうれしいといった表現は同じですので、今回の新しいレベルアップMEも、違和感なく聴こえると思います。
冨江 新しく作る前は相当ハードルが高いなって思っていました。サンプルを6案ぐらい作ってくれたのですが、そのうちのひとつが現在の原曲でした。
—— たぶん、長いことプレイしていけばまた耳が慣れるとは思います(笑)。
冨江 阿波踊りの掛け声みたいな感じに聴こえるかも(笑)。原曲を聞いて、女性や子供の声とか、鐘の音とかを入れてみようとリクエストして、まあいうのは簡単なんですが、仕上がってきたMEを聴いたら……この人(作曲者)は天才だなってあらためて尊敬しました。
気になる本作のバランス調整について
—— 冒険の序盤で「剛剣マンジカブラ」や「妖刀かまいたち」とか、過去作ではレアな武器だったものが、今回は序盤でふつうに拾えてビックリしました。ゲームバランスについてはどう調整されていったんですか?
冨江 今回はその辺に結構落ちてますね(笑)。
櫻井 毎回の冒険がガラッと変わるのが『風来のシレン』の魅力ですよね。毎回の冒険が違う内容になるという、振れ幅の広いところは狙って調整しています。『シレン6』ではすごくいい武器がぽろっと出てくることもあれば、本当になにも拾えないこともあります。
—— それだと運が悪いときだとゲームプレイがキツくなりますよね?
櫻井 そこはかなりていねいに調整しています。仮になにもいい武器や盾などが拾えないときも、代わりにどこかでなにかが落ちているはずなので、それをうまく駆使すればダンジョンを突破できるバランスになっています。
—— 歴代シリーズをプレイしているとすぐわかるのですが、『シレン6』は振れ幅がすごいなと感じました。その辺も狙った通りなんですか?
冨江 そうしたかったんですね。例えば、前作『シレン5』の変化の壺では、しょうもない道具ばかり出たりしましたが、そこで「おおっ!」って思わせるうれしい道具が出たりします(笑)。
—— 変化の壺に矢とか石を1個ずつ入れて、いい道具を出るのをお祈りするのはシリーズ恒例ですね(笑)。
冨江 『風来のシレン』というゲームは、山登りの天気といっしょなんですよ。順風満帆で「もう絶対にやられないぞ!」と思ってたら、急に雲行きが怪しくなってきてあっという間に倒れちゃった…みたいなことがよくあります。それがやっぱり『風来のシレン』だと思います。
シナリオのお話について付け足すと、『初代シレン』のときもそうだったんですけれども、旅仕立ての冒険にしたくて。今回はとぐろ島の構図と道筋を見て、山があったり谷があったりしたので、ちょっと旅している感じのお話にしたいというのは意識をしていました。
櫻井 ところどころにいい景色があって、みたいなのですね。
—— ちなみになんですけど、合成の壺って落ちているんですか? 武器と盾を合成せずにエンディングまで辿り着いちゃったんですけど(笑)。そういえばマゼルン(※)とも遭遇しませんでしたね。
※武器や盾、道具をふたつ食べさせて倒すと、腹の中で合成が行われる特殊能力を持つ
篠崎 『初代シレン』と同じ(※)ですね(笑)。とある道具やモンスター種に関しては、一部シナリオを進めないと出てこない設定になっています。例えば「合成ができない状態でストーリーがクリアできた!」といったようなところも、楽しんでいただけるかなと思っています。
※『初代シレン』では人間国宝ガイバラのイベントを進めることで合成の壺が完成し、その後お店やダンジョンに登場するようになるというものだった

—— なるほど、これは一発解き(クリア)の難易度が上がるかもしれませんね(笑)。
篠崎 『シレン6』は何度も冒険を繰り返すことで、攻略に有利な道具が手に入るようになっています。それを活用しながら、強い武器や盾、便利な道具を集めていき、最後のボスを倒すというのも可能です。お客さんによって、どういった状況でストーリーをクリアできたかといったところも、シレンの旅のひとつなのかなと感じています。
冨江 開発中は「倒れた後のモチベーションをどうしたら上げられるか」を常に考えていました。その要素のひとつとして、倒れた後もシナリオが進むようにしています。物語が進めば、やる気が戻ってくるんじゃないかなぁと思いました。
今後のシレンはどうなっていくのか
—— 「風来のシレン」シリーズを今後どうしていきたいですか?
篠崎 『シレン4』と『シレン5』は短い開発期間で発売されたのですが、今回に関してはすぐに『シレン7』が控えているみたいなことはありません(笑)。ですがいつの日か、また続編を作っていきたいと思っております。いまは『シレン6』を遊んでいる方々とともに育てていき、ユーザーに寄り添った形で長く楽しんでもらうところを目指していきたいなと思います。
櫻井 やっぱり「パラレルプレイ」で盛り上がってほしいですね。結構RTA(※)向けだと思うので、いろんな人に競争プレイを楽しんでもらえればと思います。あとは、長く楽しんでもらえるといいなぁ。
※リアルタイムアタックの略称でプレイスタイルの一種。 ゲーム内時間ではなく、クリアまでの実時間で計測する遊び方。
篠崎 実況配信については、全面的に(収益化含めて)配信OKというふうにさせていただきたいと思っております。自由に配信プレイしていただきながら、『シレン6』の魅力を多くの人にお伝えいただきたいです。
今回の「パラレルプレイ」を通じて配信者とユーザーとのつながりも感じながらプレイしていただく、といったような遊び方もできますので、そのあたりをぜひ楽しんでいただけるとうれしいです。
冨江 これはシナリオを書いている立場からの思いなんですけど、さっきお話しした大きな転換期エピソードが自分の中にはシレンの歴史の中にあるんです。
そこをいつか書いてみたいと思いつつも、『風来のシレン』は長いお話を見せるようなゲームでもないんですね。ですので、ゲーム性を考えるとそのエピソードはなかなか触れられないかなぁとは思うんですが、いつの日かやれるといいなというぐらいの感じで思っています。
最後にみなさんから読者へメッセージ
冨江 『風来のシレン』は、いつも倒れて、また挑戦して、また倒れて…。たくさんの失敗を繰り返すゲームですので、これをすごく楽しんでいただいて、そういった中で一縷の突破口を見つけて成功したときのよろこびというのを感じるとともに、人生においても自分もがんばればなんとかなる!っていうふうに、みなさんに思っていただけるとうれしいかなと思います。
シナリオに関しては、私をずっと成長させてくれたシリーズであるので、非常に感謝していますし、これからもなにか力になれることがあったら関わっていきたいなと思っております。
櫻井 『風来のシレン』ってターン制のゲームなのに、アクションゲームのようなすごいサクサク感が求められます。その割に緊張感があるのに、すごく難しいパズルだという。なんてややこしいゲームなんだと思います(笑)。
3Dになったからテンポが悪いんじゃないか? って、不安に思っているお客さんが多いのかなと感じていますが、そこは快適に遊べるようにと強く意識して開発していますのでご安心ください。倒れて最初からになっても、もう1回! という、再挑戦しやすいゲームのサイクルにしっかりなっていますので、ぜひ楽しみにしてもらえればと思っています。
篠崎 私はもともと『風来のシレン』が好きで(旧)チュンソフトに入社しましたので…、簡単にいえば人生を変えた作品だと思っています。約14年ぶりの完全新作ということで、『シレン6』を皆様にお届けできることをとてもうれしく思いつつ、どんな評価をいただけるのかを緊張しているのが正直なところです。
前作から長い年月が経った中で、お客さんの心の中で「こういう『シレン』になっていてほしい!」という思いはとても感じています。少しでも本作がいいなと感じていただけたならうれしいなと思っております。
キャラクターデザイン秘話はこちらをお楽しみください!

<関連リンク>
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<商品概要>

対応機種:Nintendo Switch
発売日:2024年1月25日
価格:パッケージ版、ダウンロード版ともに6,985円(税込)
ジャンル:ダンジョンRPG
発売元:スパイク・チュンソフト
CERO:12歳以上対象
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