『星のカービィ Wii デラックス』Return to Dream インタビュー【前編】

11年の時を経て、『星のカービィ Wii』がパワーアップして帰ってきた!
今回はハル研究所と任天堂の開発スタッフ計5名に登場していただき、本作に込めた思いをたっぷり語っていただきました。(ニンドリ2023年5月号掲載)

『星のカービィ Wii』をデラックスにするまでの道のり

インタビューに入る前に『星のカービィ Wii デラックス』をおさらいします。
『星のカービィ Wii デラックス』は、2011年10月27日に発売された『星のカービィ Wii』のデラックス版。グラフィックは現行機にあわせて強化され、新たなコピー能力の追加、10種類に増えた新旧サブゲーム、そしてクリア後は新たな物語が展開する「マホロアエピローグ」が楽しめるようになっています。

本作ではカービィ以外にデデデ大王、メタナイト、バンダナワドルディでも遊べます
虹色に輝く敵をすいこむと「スーパー能力」が使えるようになるのも本作の特徴
「わいわいマホロアランド」では新旧いろんなサブゲームが10種類楽しめます
本編クリア後はマホロアが主役の新モード「マホロアエピローグ」が遊べるように!

おさらいしたところで、濃厚な開発者インタビューをじっくりお楽しみください♪

登壇者プロフィール

『星のカービィ Wii』のパワーアップ版ができるまで

—— 「星のカービィ」30周年の最後を飾るタイミングで、Wiiの名作をSwitchで蘇らせることになったお話を聞かせてください。

熊崎 まず元となる『星のカービィ Wii』は、当時11年ぶりに据置ゲーム機で出た「カービィ」シリーズ本編だったんです。 世に出なかった3作(※1)の「カービィ」の開発が終了し、4作目でいよいよ世に出たというものでした。ですので当時発売されたときは喜びもひとしおで、ハル研全体が沸き立ったような感じでした。本作の開発に挑むにあたっても、私の気持ちは「いいものを作るぞ!!」と、驚くほど当時と変わらなかったです(笑)。
思い返せば、『星のカービィ Wii』から制作スタイルは変えてないんです。まず、自分でゲームデザインを考え、シナリオのテキストを書き、絵やサウンドなど全体のディレクションをするというスタイルです。当時と変わったことと言えば、Wii版開発時は企画者がほかに2人いて、計3人でやっていたところ、少人数だったので「作ったぞ!」という達成感がすごかったんです。
最近のゲーム開発では、なかなかそんな気持ちを味わうことが難しいかなと思いました。なので本作の開発でその達成感を味わってほしいと思い、渡辺と谷藤にはいろんなことを任せて頑張ってもらいました。今回私も頑張りましたが、実は彼らのことを思いながらいっしょに成功させようという気持ちでプロジェクトを進められたのはひとつの変化かなと思います。

(※1)1作目はゲームキューブで4人同時に遊べることをコンセプトにしたゲーム。2作目はカービィを完全な3D空間に置いて箱庭の中を自由に動き回れるようにするゲーム。3作目は絵本の中から飛び出したような遊べるアニメーションのゲーム。当時、任天堂公式サイトで公開された「社長が訊く『星のカービィ Wii』」でその内容が見られます。

中西 『星のカービィ Wii』は久しぶりの「カービィ」シリーズ新作だったこともあり、「『星のカービィ』シリーズのいい部分ってここだよね」というところを多数盛り込んだ「決定版」を目指したタイトルでした。また、当時は「Wiiの特徴を活かして多人数で遊べる」という点もテーマに掲げており、それが今のSwitchを持つお客様が求められていることに近いのではないかということから、今回Switchで作ることに繋がりました。

—— 『星のカービィ Wii』は当時のゲーム機名を入れたシンプルな名称でしたが、Switch版となった本作でも「Wii」を外していません。どんな思いで「Wii デラックス」というタイトルに決めたのでしょうか?

熊崎 実は最初から企画書の段階で『星のカービィ Wii デラックス』って書いてあったんです(笑)。いろんな人とも相談をして、ハードウェア名を冠したゲームタイトルですので、お客様の誤解を招かないかなど、かなり慎重に議論しました。

二宮 本作のタイトルは苦労した部分のひとつですね。『星のカービィ Wii』は、日本で2011年10月27日に発売されてからもう11年以上経っており、Wii自体がなにかわからないお客様もいらっしゃると思うので、Wiiを付けるべきかどうかはだいぶ話し合いをしました。

熊崎 たとえば…『New 星のカービィ』みたいな名称でも良いのではないかという意見もありましたが、ゲーム内容は『星のカービィ Wii』ですからね。購入されるお客様が迷わないようにとか、期待と違ったものにならないようにと配慮して、最終的にはWiiの名称を残しました。

—— 2022年4月27日にKADOKAWAから発売された小説版ではWiiの名称はなく「天駆ける船と虚言の魔術師」というサブタイトルが付いていましたね

熊崎 実はWii版開発時も、小説版みたいなサブタイトルを付ける案も考えられていたんです。ですが、そのハードを代表する『星のカービィ』ということでWiiを付けました。いまは『星のカービィWii』をご存じの方も多くいらっしゃるかと思いますので、それがデラックス版になったという、ストレートな企画意図が通じるような名前にしました。

—— ちなみに海外版の名称は?

熊崎 『Kirby’s Return to Dream Land Deluxe』です。Wii版は、欧州では『Kirby’s Adventure Wii』、北米では『Kirby’s Return to Dream Land』という名称だったのですが、Switch版では『Kirby’s Return to Dream Land Deluxe』で統一しました。

渡辺 「デラックス」以外の名称アイデアもいろいろ考えていたんです。今回はデラックスな『星のカービィ Wii』にしたいと思っていたので、任天堂さんと擦り合わせをして、企画書の段階で付いていた『星のカービィ Wii デラックス』に決まりました。

—— Switchのハードウェアの恩恵はありましたか?

熊崎 ゲームテンポを上げながら常時60フレームでゲームが楽しめることもそうですけど、当時『星のカービィ Wii』のコンセプトにしていた「4人でワイワイ遊べる」が、Switchの特徴である「おすそわけプレイ」にピッタリでした。この4人で遊ぶという長所をさらに伸ばせると考え、「わいわいマホロアランド」という4人でサブゲームが遊べる新モードを作りました。Wiiリモコンを持ち寄る以上にお手軽だと思ったので、遊びのコンセプトを変えるどころか、進化させて遊べるようにと考えました。

渡辺 ほかにも、純粋にハード性能が上がったことで、グラフィック表現の幅が大きく広がり、ゲーム全体のクオリティを上げることができたと思います。あと、本作特有のグラフィックとして、キャラクターなどにアウトライン(フチ)が入っているんですが、あれは結構コンピューター上での処理に負荷が掛かるんです。そこもハード性能のおかげで無事クリアすることができました。

谷藤 ハード性能が上がったことで、開発スタッフのやりたいことが多くなって、最終的にプログラムの処理は結構大変だったんですけどね(笑)。でも苦労した甲斐あって、お客様の思い出の中のWii版に劣らないか、それを超えるようなものにできたかなと思います。

熊崎 私はデザイナー出身のディレクターなのですが、渡辺と谷藤はプログラマー出身なので技術的に考えてくれます。私もやれることは詰め込みたい派で、いつも処理負荷とかをプログラマーにすごく心配されるんですが、今回もプログラマー陣は頼もしかったです。実現可能な落とし所を見つけてくれました。

二宮 手軽に多人数プレイで遊べるのがSwitchの特徴なので、Wiiの頃よりもっと気軽にマルチプレイが楽しめると思いました。

中西 気軽にマルチプレイを遊んでいただくために、こだわったところとして、本作は「わいわいマホロアランド」と「ストーリーモード」をボタンひとつで簡単に切り替えられるようにしました。たとえばお子さんが「わいわいマホロアランド」で遊んでいて、それを見ていた親御さんがちょっといっしょに遊んだり。遊び終わったら抜けて、今度は「ストーリーモード」を進めて…みたいな。より気軽にいっしょに参加できる環境で遊んでもらえたらいいなと思っています。

—— セクションディレクターとは、どういう役割なのでしょうか?

渡辺 ゲームの開発規模が大きくなってくると、1人のディレクターがすべての要素を直接監修するのが厳しくなってくるんです。本作ではセクション単位でディレクターを立て、サブゲーム部分の「わいわいマホロアランド」は谷藤にお願いしました。彼もプログラマー出身なので、実はセクションディレクター以外のプログラムにもいろいろ携わっており、とあるボスの挙動も谷藤に作ってもらいました。

谷藤 自分でもいろんなことをやりたくなっちゃいまして(笑)。あと、ほかのプログラマー陣を巻き込んで、「こんなこともできます」と逆に提案をしたりもしましたね。

—— Wii版の開発時にプログラマーをやっていた谷藤さんが、中身を知り尽くしているからなのでしょうか?

谷藤 それもありますね。Wii版の実装を把握できていたのは開発時にすごく役立っていると思います。

—— 渡辺さんはSwitch版のディレクターとして、どのように本作を仕上げていこうと考えましたか?

渡辺 『星のカービィ Wii』は、近代の『カービィ』シリーズ本編の原点となるタイトルだと思っています。実は私がハル研に入社して間もない新人のときにWii版の開発が始まったのですが、当時は別のプロジェクトに配属されていたので、『星のカービィ Wii』には関わっていないんです。
熊崎はディレクターとして、谷藤はプログラマーとして関わっていて、ほかのセクションリーダーたちもWii版の開発に結構関わっている人が多いんですけど…なぜかディレクターの私だけはWii版に携わってないという(笑)。

一同 (笑)

渡辺 当時は別のプロジェクトをやりながらも、Wii版の開発状況をすぐ近くで見ていましたので、『星のカービィWii』に込められた当時の開発スタッフたちの思いはすごく感じてました。なにより、多くのカービィファンに支持されている作品ですから、その作品を作り直すディレクターとして開発を担当することになったときは…正直プレッシャーがものすごかったです。プレッシャーに押しつぶされそうになった時期もあったんですけど、やるからには単なるリメイクではなく「デラックスな『星のカービィ Wii』にする!」という決意を持って開発に臨みました。

—— どういう部分をデラックスにしていこうと考えたのでしょうか?

渡辺 新要素の「わいわいマホロアランド」「マホロアエピローグ」「おたすけマホロア」には当然力を入れましたし、Wii版にあった既存要素についても、より良くできるところは手を加えようと思いました。例えば、元の『星のカービィ Wii』のプレイヤー挙動の良さを残しつつ、さらに快適な操作感になるようにチューニングをしていきました。新要素と改善要素の組み合わせによって、デラックスな『星のカービィ Wii』を目指しました。

熊崎 彼らにお願いしたキーワードのひとつに「思い出フィルター」があります。『星のカービィ Wii』を愛してくださったお客様は、きっと楽しかった思い出を抱いていらっしゃると思うんですよね。だからそんなお客様の想像を超えるものを目指さなくてはいけないと考えました。
いまWii版をプレイすると、ちょっと調整が甘かったところなどが見つかるんですよ。まずはそこを良くしていこうとしました。同じものとして蘇らせるのではなく、今の時代の新作タイトルとしても通用するぐらい良くし、さらにサービス精神旺盛にやらないと「お客様の心の中にある『星のカービィ Wii』の思い出」に負けてしまう、という話を開発チームにずっとしていました。「思い出フィルターを超えていけ」って(笑)。

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