【CEDEC 2023】ポケモンS・Vのディレクターが直接解説!パルデア地方の作り方

ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2023」にて行われた講演【ポケットモンスター スカーレット・バイオレット】 パルデア地方を描き出す――見た目の仕組みを徹底解説! を、さらにわかりやすくご紹介します!

*講演内容について、より理解を深めるための表現を用いているため、実際の内容と若干異なる場合があります

『ポケモンS・V』が目指した「描き出す」工程を紹介

講演者は、最新作『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(以下ポケモンS・V)のディレクターを務めた前澤圭一さんです。

プロフィール

前澤 圭一 さん
株式会社ゲームフリーク
研究開発部 CGテクノロジーラボ ディレクター

<受講者へのメッセージ>
「技術」を「表現」に変えるには、多くの工夫が必要になります。
工夫のためのヒントとして、今回は我々の知見の一端を、具体的な実装事例を通じてお伝えできればと思います。

本作がシリーズ初のオープンワールドであることに触れつつも、その新たな冒険の舞台「パルデア地方」をどのように作り上げたのかが語られました。

パルデア地方を描く上で重要な「ルックコンセプト」

この「ルックコンセプト」とは、見た目の基礎部分をルール化したようなもの。
数多くのスタッフがゲーム開発に関わっても、その世界のイメージを崩さずに作業を進めることができます。とても重要な要素ということがわかりますね。

開発者が目指した「パルデア地方を描き出す」とは?
1. ルックコンセプトの実現(『ポケモンS・V』らしさを追求する)
・『ポケットモンスター』の世界から逸脱しないこと
・今までのシリーズと異なるものを作り出すこと
・その上で十分に魅力的なものであること
2. 「遊び」の実現(遊びに付随して見た目が変わる)
・見た目と連動している「遊び」部分を、どういった機能を使って構築するのか

上記の1と2における描画機能と、ワークフローを整備することを「描き出す」と題した前澤さん。
このキーワードをもとに、どのような開発形態でゲームが作られていったのか、講演が進んでいきます。

リアルとデフォルメ
・背景の質感や形状などは、前作よりもリアルにしたい
・ただ、ポケモンや人物は完全にリアルにはしない
・背景のリアルさと、キャラクターのデフォルメ感がマッチする世界を目指す
グラフィックの質感
・基本的にはリアルに仕上げる
・シルエット(形)とのバランスを見て調整する必要あり

『ポケモンS・V』のルックコンセプトには、こんなテーマがあったんですね!
こういった目標を達成するために、どういった機能が実装されたのでしょうか?

基本表現:マテリアル(質感)

マテリアルとは、グラフィックソフトで使われる用語で、キャラクターモデルなどの質感を指します。
以前制作されたリアルなマテリアルと、今作のテーマが合致していたので、以前の質感をそのまま採用したそうです。

基本表現:ライティング(光源)

そして、景観や人物に使われたライティングのお話に続いていきます。
前作『アルセウス』で採用していたライト(Irradiance Volume)については、『ポケモンS・V』では必要ないとの判断で、使用しなかったとのこと。

実際に使用されたライトがどのように実装されていたのか、可視化した画面も紹介されました。
これらの情報をもとにライティングを施して仕上げる、というのが基本の流れのようです。

ポイントライトの配置例(右下の写真の球形部分)

さらに、時間帯による色調の変化に対応するため、ここにも工夫が凝らされていました。
色情報を最初から全て盛り込むわけではなく、グレースケール(明暗情報)に別途色を乗せるといった手法で朝・昼・夜を表現したそうです。

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