FE風花雪月インタビュー vol.2-2【フォドラの世界ができるまで 後編】〜フォドラに魂を与えた緻密な設定たち〜

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 世界の背景から人物たちの発する一言まで、さまざまな部分で垣間見える、作り手のこだわり。『ファイアーエムブレム 風花雪月』におけるフォドラの世界と、そこに生きる人々が形作られるまでの道のりについて、改めて尋ねました。
※こちらはニンドリ2020年5月号に掲載されたインタビュー記事のアーカイブです

『ファイアーエムブレム 風花雪月』開発者インタビュー トップ

任天堂 
横田弦紀さん(よこたげんきさん)

インテリジェントシステムズ
草木原俊行さん(くさきはらとしゆきさん)

スタッフの『FE』に対するあふれんばかりの愛と熱量が『風花雪月』に魂を与えた

── 本作は第二部の戦争編で4つにルートが分かれますが、それぞれの物語で描きたかったテーマを教えてください。

草木原 エーデルガルトのルートは文字通り「覇道」がテーマになっています。自分の大義や信念があり、たとえ知り合いが障害となって立ちはだかってもすべてなぎ倒していくような道ですね。その対比として、ディミトリのルートは「王道的」にしたいという考えから始まりました。ただ、序盤は傷つきやすいディミトリが境遇のせいでああなってしまう…というギャップも入れつつ。

一同 (笑)

草木原 一度堕ちたところから曲折を経て真の王道に目覚めていく流れになっています。覇道の逆説として王道ルートを作りたかった、という感じですね。クロードは当初は謀略の寵児というキーワードで、もっと裏でいろいろ策略するような、憎めないけれど悪い奴というつもりだったんですけど…書いているうちに当初の予定よりはピュアな良い人になりました(笑)。

横田 それぞれはそういうコンセプトなのですが、大元の構想として「前後編に分けて戦争編をやろう」と思い至ったのは、『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』(以下、『聖戦の系譜』)を意識した部分はあります。僕らは2人とも『聖戦の系譜』が好きなので、あの貴族のキラキラした感じを、いま新作でやったらどうなるかなっていう期待もあったんです。一部と二部で劇的なことが起こるところなども、『聖戦の系譜』を意識しています。でもまったく同じだと面白くないのでルート分岐を作ろう、というように最初の企画段階で決めていました。


ファイアーエムブレム 聖戦の系譜(1996年5月14日発売/スーパーファミコン)
ユグドラル大陸を舞台に多くの国家が連なる戦争を描いた、シリーズ第4作。グランベル王国シアルフィ家の公子シグルドが主人公の前編と、その息子であるセリスが主人公の2部構成で物語が展開する。

草木原 貴族社会的な物語にすることで、立場の違いから生まれるドラマを描きたかったんです。世界観やバックボーンをきちんと作って、貴族は何を考えているか・平民は何を考えているかを全部設定したうえで初めて成立するドラマ性のようなものが、今回はうまく描けたなと思っています。


貴族というと横柄な印象を抱きがちだが、今作を通して貴族への見方が変わった人も多いのでは?


── そこにはもちろん宗教も絡んできますし。

草木原 はい、宗教についてはだいぶ勉強しました。

── 草木原さんはもともとファンタジー的な戦記ものがお好きで、横田さんも『聖戦の系譜』のような世界観がお好きで…というお二人の想いがうまく噛み合って、今作の世界観が生まれたんですね。

横田 そうです。なので、企画が始まった時から軸はブレずに最後まで行けたな、と達成感はあります。

── もちろんコーエーテクモゲームス(以下、コーエーテクモ)さんもそういったジャンルは十八番ですし。

横田 そうですね、本当に良い形に料理してくださいました。コーエーテクモさんの中でも、『FE』がすごく好きな方がチームに集まってくださったんです。

草木原 チームの熱量がすごく高くて。みなさん本当に頑張ってくださいました。

横田 シナリオチームであれば過去作のお約束を研究してくださってるし、プランナーやプログラマーは『FE』の遊び部分の手触りも「あのタイトルはこういう手触りだったけど、今回はこっちでいいですか?」と提案してくださって、イズのプログラマーさんは「じゃあこういうので」と意見を出したりして、すごく有意義なやり取りがあったり。時にはぶつかることもありましたけどね(笑)。

草木原 そりゃあ、いっぱいぶつかっていますよ(笑)。

── それぞれの好き好きもありますし。

横田 それで僕とかがまあまあ、ってやったりとかね。

一同 (笑)

草木原 こちらが設定した根底部分に、開発メンバーの情熱や思い入れも相まって想定以上に膨大なデータが注ぎ込まれた結果、今作は生き物みたいなゲームになったなと思っています。開発メンバーの中でも完全な意味で今作の全貌を把握している人間はいないんじゃないかなと思います。開発中にもどんどん変わっていく様子を見ていて、「魂を持ったな」と感じていました。

表記からイントネーションまで 1つ1つの言葉に込められた戦記物語への細かなこだわり

── 変わっていくといえば、プレイ状況や支援の解放度合いによって、細かいセリフが変化するのもすごいですよね。

草木原 従来の『FE』における支援会話って、支援会話の外には影響を与えないものが大半だったので、もっと「この人の会話でこういう話題が出たら、他の人にも影響するようにしたい」というように、横のつながりを出してほしいという話をシナリオチームと初期から相談していました。それをうまく入れてもらった形になっていると思います。


『聖戦の系譜』では特定のユニット同士が会話することで、ユニットのステータスが上昇することがあった。『風花雪月』における横のつながりを意識した会話も、
このシステムを参考にしたのだという

横田 クラシックモードでユニットがいなくなってしまった場合でも会話が成立するようになっていたり、難しいことしているな〜って思いました(笑)。

草木原 いろんな状況に対処できるように用意されていますね。


たとえばドロテアとイングリットの支援会話では、アネットとイングリットの支援会話(化粧にまつわる話)をBまで見ていると、上の画像のようにセリフの一部が変化する


── 今作はセリフの中で比較的難解な熟語が使われていたり、逆に横文字が使われていないのはなぜですか? たとえば、チーズは「乾酪」と表現されていたり。

横田 それも草木原さんのこだわりですよね。

草木原 今回は対象年齢をちょっと上げたいんです、と相談しまして、シナリオチームが歴史モノ的なイメージとして演出してくれました。固有名詞や造語は聞いた時にピンときにくいので、学級名などは読みをカタカナにすることで逆に違和感を出したりしました。なかなかうまくハマったんじゃないかなと思ってます。

横田 学級名も覚えるまでに少し時間がかかりますけどね(笑)。

草木原 ボイス収録に立ち会ったシナリオ担当は皆、熟語のイントネーションなどにもすごくこだわってくれていました。

── 以前ニンドリで声優の子安武人さんにお話をお伺いした時にも、イントネーションについてはたくさんリテイクが出たとおっしゃってました。ふだんはなかなか注意されないような言葉のイントネーションも細かく注文されたということでしたが、それが固有名詞以外でも多々行われたわけですね。

横田 読みにくい漢字とか、常用漢字じゃないものもあったので大変だったと思います。テスターからは心配する声も上がっていたんですけど、でも今作はそのほうが雰囲気が出るかなと思ったのでそのまま行こう、いう風に決断しました。

草木原 黒鷲遊撃隊(シュヴァルツァアドラーヴェーア)とかもみなさん発音に苦労していて。シュバル“ツ”アドラーベーアって発音するとNGが出るんですね。“ツァ”です、と。

一同 (笑)

草木原 でも、バルタザールを演じていただいた木村昴さんは一発で完璧に読んでくれました。あとで経歴を見て、ドイツ育ちと知って納得しました。

横田 おお、面白いエピソードですね。

── ちゃんと元となった言語に基づいた発音のカタカナ表記になっているんですね。

横田 そうですね。あとちょっと方向性は違いますけど、固有名詞でいうと僕は「天刻の拍動(てんごくのはくどう)」が印象に残ってます。というのも、僕はずっと「てんこく」だと思っていたんです(笑)。

草木原 見慣れないワードを作る時に、聞き覚えのある読みにすると覚えやすいので、天国に引っ掛けて「てんごく」という読みにしています。

横田 草木原さんはそういう細かいところまでこだわっているので、すごいなぁと思います。開発資料として、ストーリーで語られている以外の出来事もまとめたフォドラ年表を最初に作成されてたりもしてるんですよ。それこそ本編の時代から何千年も前にあった出来事まで書いてあるようなすごいやつ。

草木原 トータル一万年ぶんくらいはあると思います。この年表は表には出せないやつですが(笑)。

── 考察好きのユーザーたちはゲーム中に見えた断片的な情報から考察して、だんだん穴埋めをしていってね、と。

草木原 そうですね。逆に僕らはだんだん忘れていってしまうから、最終的にはユーザーの方のほうが詳しくなっちゃうんじゃないかなと思います(笑)。

横田 それはまぁ、しょうがないことだと思いますよ(笑)。

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