『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』2Dモード開発者インタビューSPECIAL

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国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズ最新作『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』(以下『DQXI S』)。ニンテンドードリーム2020年2月号では、スクウェア・エニックスの『DQXI S』開発ディレクター・八木さんと、2Dモード開発会社であるアルテピアッツァの眞島さん&杉村さんにご登場していただき、2Dモードの開発秘話を掲載しました。

NDWでは、本誌に載せきれなかった内容を中心に掲載していますので、あわせて手にとっていただければと思います。

(NDW×ニンテンドードリーム2月号 連動企画)

プランニングディレクター 杉村幸子さん(写真左)
アルテピアッツァ取締役副社長。『ドラゴンクエスト』の生みの親、堀井雄二さんの初代秘書。『ドラゴンクエストⅣ』~『ドラゴンクエストⅦ』『トルネコの大冒険3』ではシナリオ制作も担当し、リメイク版『ドラゴンクエストⅠ』~『ドラゴンクエストⅦ』ではゲームデザインにも携わった。

アートディレクター 眞島真太郎さん(写真中央)
アルテピアッツァ代表取締役社長。これまでに『ドラゴンクエストⅤ』~『ドラゴンクエストⅦ』の他、『ドラゴンクエスト』リメイクシリーズに携わり、現在は『ドラゴンクエストライバルズ』のカードキャラクターデザインも手掛ける。今作では2Dモードのアートディレクター。

開発ディレクター 八木正人さん(写真右)
1994年にスクウェアに入社。『ルドラの秘宝』『ファイナルファンタジーⅦ』『聖剣伝説 RISE OF MANA』など、スクウェア・エニックスのRPG開発に25年以上携わる。3DS/PS4版『ドラゴンクエストXI』ではチーフプランナーを務め、『DQXI S』は開発ディレクターを担当。

アルテピアッツァとは?
エンターテインメント作品の制作を主業務とする企画開発会社。数多くの『DQ』シリーズの開発に関わり、ゲームソフトの企画開発、デザイン、イラスト、シナリオなどを手掛ける。その他の代表作は、Wii『オプーナ』、DSiウェア『ピンボールアタック!』、3DS『アクセルナイツ2 フルスロットル』など。
http://www.artepiazza.com/


『ロマサガ3』と並行して作った『DQXI S』の2Dモード

八木 まずはHDリマスター版『ロマンシング サガ3』(以下『ロマサガ3』)の開発、お疲れさまでした。

眞島 …脱魂しましたね(笑)。

八木 私は1994年に新卒でスクウェア(現:スクウェア・エニックス)に入社したのですが、同期が『ロマサガ3』の開発チームに配属されたんですよ。私は大阪開発部だったのでSFC『ルドラの秘宝』に配属されたのですが、当時『ロマサガ3』はいろいろやっていて凄いなあ! って思っていました(笑)

一同 (笑)


↑『ロマンシング サガ3』。左がスーパーファミコン版、右がHDリマスター版

―― スーパーファミコン時代のスクウェアのRPGって、続編物も新規タイトルも、名作ばかりでした。

八木 あの当時って、各担当者が割とやりたいことをやらせてもらっていた気がするんです。だからエネルギーが凄かったのかもしれませんね。『ルドラの秘宝』でも、自分は当時マップ班だったのですが、上司から「最低限これさえ守ってくれればいいから」と言われただけで、結構好きにマップを作っていました(笑)。

―― ええっ!?

八木 ただ、当時はROMの容量がそれほど大きくなくて、マップで使えるメモリにも限りがありましたから、「八木は何キャラ×何キャラでマップを作れ」って言われて。それで方眼紙にマップを描いて作っていました。

眞島 あの頃は、方眼紙で描いていましたね(笑)。

八木 紙に描いたものをデザイナーに見せて発注し、パーツをエディタで組み合わせてマップを作っていました。すごく楽しかったですよ(笑)。

眞島 あの頃ってあの会社は次にどんなソフトを出してくるのかを気にしていましたね。発売されたらそれを見て、「じゃあ俺たちはここを凝ってやろう」…と。 業界全体がすごく熱かった。

八木 そうですね。「この会社がこんな事をやってくるなら、うちらはこうしよう」と。

眞島 スクウェアさんが2Dマップにレンダリングの要素を入れてきた時とか。『ファイナルファンタジーⅥ』(以下『FFⅥ』)を見て、「これはゆくゆくは3Dを狙っているな」と思いつつも、『MYST』(※1)までいくのは大変だろと思いながら (笑)

八木 あの頃のスクウェアは、同じ会社の中なのに、ほかのチームにそれほど気を遣わなかったのがよかったです(笑)。例えば、『ルドラの秘宝』(※2)って『FFⅥ』より後に発売されたじゃないですか。

―― 『FFVI』が1994年4月2日発売で、『ルドラの秘宝』が1996年4月5日発売ですね。

八木 私の先輩たちは『ファイナルファンタジーV』(以下『FFⅤ』)を参考にして『ルドラの秘宝』を開発していたんですが、そこに『FFVI』が発表されて。「おいおい、こんなすごいRPGが『ルドラの秘宝』より先に発売されるのかよ!」…って思いました。

一同 (笑)

※1 アメリカのCyan社が1993年に発売されたパソコン用パズルアドベンチャーゲーム。その後さまざまなプラットフォームに移植されている
※2 スクウェア(現:スクウェア・エニックス)が1996年4月5日に発売したSFC『ルドラの秘宝』。八木さんが一番最初に手掛けたRPGで、現在はWii Uバーチャルコンソールで楽しめる

―― 『ルドラの秘宝』はSFC末期のタイトルの割に、キャラクターの見た目が少し小さめだと思っていたのですが、『FFⅤ』の仕様がベースになっているからなのでしょうか?

八木 …と、聞いています(笑)。ただ、『FFV』のROM容量は16メガ(※3)でしたが、『ルドラの秘宝』は開発が進むにつれてやりたいことが増えて、それだと足りなくなってきて。最終的には24メガでも足りなくなってしまいました(笑)。

※3 スーパーファミコンのROM容量の単位はメガビット(Mb)。例えば、16メガビット(Mb)なら2バイト(MB)

―― 確かSFCのROMは24メガの次は32メガですよね?

八木 そうです。相談して、ROMの容量を32メガにしてもらったんです。

眞島 最後の最後でROMの容量を1段階上げるか否かという議論は、あの頃は必ずありましたね。SFC版『ドラゴンクエストVI 幻の大地』も容量がギリギリで、マップのパターン数でいうと、あと200パターンも入らないぐらいでした。お城の外壁にあるツタとヒビを、パレット替えでヒビに見えるように工夫したりして、容量を節約していましたよ(笑)。

一同 (笑)

眞島 当時は他社さんで、しかもライバル同士だった会社が、当時どうやってゲームを作っていたかっていう話、面白いですね。

八木 私も不思議に思っています。スクウェアでRPGを作っていた自分が、今『DQXI』を作ったんですから(笑)。

眞島 エニックスさんは開発部隊を持たない会社で、スクウェアは開発部隊の塊みたいな会社でしたからね。ある意味真逆の会社で、スクウェアさんはハワイに開発スタジオもあって。「なんで彼らはハワイで映画を作ったりしているのに、俺は幡ヶ谷で徹夜かぁ…」って思っていました。

八木 それはそれでいろいろあったんですよ(笑)
一同 (笑)

―― 前回のインタビュー(ニンドリ11月号掲載)で、『DQXI S』開発スタッフのみなさんが「眞島さんのドットの話がすごかった」という話題が出まして。今回はそのお話を直接お聞きさせていただけたらと思います。
八木 まず、最初に私たちが眞島さんと打ち合わせをした時に、「2Dモードのグラフィックを、可能であれば全部制作していただきたい」と相談したんです。そのお返事は「期間的にどう考えても難しいけれど、でも可能であれば作ります」でした。その席で内川(毅さん。『DQXI』『DQXI S』ディレクター)が「SFC版『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…』(以下『DQⅢ』)のグラフィックがよかったので、そのイメージでお願いします」とアルテピアッツァさんに依頼したんです。その時に眞島さんがお城の玉座の話を熱くされて。


↑SFC版『DQⅢ』の画面

―― それはどんな話だったんですか?

八木 「2Dって上から見た一枚絵だし、あまり細かく表現できないから、適当に描くと何だか分からないものになってしまう。だからここはどういう構造なのか、パーツ構成などもきちんと考えてグラフィックを描かないといけないんですよ」とおっしゃって。長年ゲーム開発をやられてこられた方の意見はすごいなと思ったんです。

―― 近年はドット職人と呼ばれる人はとても貴重な存在ですしね。

八木 そうですね。今回はすべてを制作することはできなかったのですが、 3DS版にはなかった、新しく作られた過去作の世界(冒険の書の世界)に、この2Dに対する熱い話がしっかり再現されていて、感動しました!

眞島 映像って、実は4Kも8Kも(※4)「画素」なので、基本的にはドット絵なんですよ。近年はドット絵が再注目されているじゃないですか。ある意味「昔風なドット絵」という絵の様式が生まれたのだと思います。例えば、モノクロで描かれた絵を、色がないから絵としては古いとはいいませんよね?

※4 2K(フルHD)は1920×1080=約207万画素、4Kは3840×2160=約829万画素、8Kは7680×4320=約3318万画素

―― 確かに。

眞島 紙に描いた絵がデジタル絵のような最新技術じゃないから古いタイプの絵だ、ともいわないですよね? それと同じように、少ないドット数で四角いマス目で描くのが、今では一種の絵のスタイルになったんでしょうね。当時はやむを得なく表現できなかっただけで。例えば、伊藤若冲さんの絵はあえて格子の細かいもので表現しているものもありますからね。そう考えた時、ドット絵というスタイルが活きる描き方と向いていない描き方があるんです。スクウェアさんがSFC時代にレンダリングしたグラフィックを採用していたじゃないですか。あれを最初に見た時にすごく感心したと同時に、すごく苦労しているんだろうなぁと思いました。あれ、リダクション(色数を落とすこと)に苦労してますよね?

八木 そうだと思います。

眞島 色を16色に落とすのはすごく難しい作業です。16色のうち、1色はだいたい透明に使うので、実質は15色です。これを「Photoshop」などのツールでやると、全部茶色になっちゃいますよね。高解像度の絵を一般的なツールで単純にリダクションしてもきれいなドット絵には表現できません。その少ないドット数や色数に合わせて、元からドットを打っていくものにはなかなか勝てないですね。

―― もはやドットは職人技ですよね。

眞島 僕らが描いているものと、ユーザーさんが見るものの間に乖離があったらアウトです。グラフィックを描いている時は頭の中にすごい世界があって、それを心の丈そのまま描いちゃうとユーザーさんが見た時に「なんだこのゴチャゴチャした絵は」となっちゃいますので、いらない要素は全部外して、シンプルな骨格にして、その時にドットをわずかに右に打つか左に打つかでちょっとしたトゲたとか、風景の一部になじませるためのドットだとかを客観的に落とし込んでいかないといけない。それがとても難しいんですよ。

八木 もうここまでの話だけでもすごく面白いです(笑)。

―― 現代はドットが打てるクリエイターが少なくなってますし、貴重なお話ですね。

八木 当時のスクウェアでは、入社した新人デザイナーはスパルタ教育でドットを打っていたようですよ(笑)。ドットって色の置き方や線によって、ぼんやり見えたり、くっきり見えたりするじゃないですか。そういう教えを先輩たちから受けながらやっていましたね。

眞島 1ドットが1ドットに見れるように打てるのは当たり前で、0.5ドットが描けるようになったらそこそこ、0.3ドットが描けるようになったらバッチリ。0.1ドットが描けるようになったら完璧ですね。

―― 0.1ドット!

眞島 縦16マス×横16マスでドットの人物を描くというのは、ドットのない部分の「0.数ドット」をどう表現するみたいなところがあるんです。例えば、任天堂さんの『スーパーマリオブラザーズ』では、1キャラクターに3色しか使っていないですよね。これが16色使えるようになると、中間色をうまく使うことによって「0.1ドット」が感じさせられるようになるんですよ。

↑『スーパーマリオブラザーズ』

八木 0.1ドットというのは、1ドットなんだけど0.1の細さに見えるということですよね?

眞島 そうです。ドットは隣にくる色のコントラストに引っ張られるので、どのくらい引っ張らせるかが「0.1ドット」の世界です。これは本当にさじ加減の話になるのですが…、例えば服を描くときもグレーの服を着ていた場合、真っ黒なジャケットを羽織っていたらグレーが明るく見えますが、白のジャケットならグレーが暗く見えますよね? つまり対比される色によって印象が変わるんですよ。

―― なるほど…!

眞島 SFC時代と現在で違うのはディスプレイです。当時はいわゆるコンポジット画質で画面がにじみますから。だから、色がにじむことも計算して絵を表現しているんです。でも現在のディスプレイはクッキリした映像表現ができるので、にじみを計算しない部分というのが出てくるんです。

八木 眞島さんはファミコン以前もゲームを作っていて、ドットを打っているじゃないですか? 具体的にはPCソフトの『地球戦士ライーザ』(※5)や『ジーザス』(※6)なのですが、その頃もにじみを計算してドットを打っていたんですか?

※5 エニックスから1985年にパソコン用に発売されたRPG。ファミコン版は『銀河の三人』というタイトルで任天堂から発売された
※6 エニックスから1987年に発売されたアドベンチャーゲーム。ファミコン版はキングレコードから発売された

眞島 あの頃は、色のにじみを計算しないと絵が描けませんね(苦笑)。だって8色しか使えないんですから。初期のパソコンゲームをみると、だいたいグラフィックは8色で描かれています。しかも僕は「ライン&ペイント」という、いま言っても誰もわからないような手法を使っていました。

―― それはどんな手法だったんですか?

眞島 領域を決めて、その領域の中をある色で塗る…という手法です。ただ画数が決まっているので、細かい絵が描けなくて…。だからこそ、絵の構成力が求められましたね。中間色は「タイリング」で表現していました。

八木 色を格子状にする表現方ですね。

眞島 そうです。パッと見るとピンク色だけど、それをアップで見ると赤と白の2色なんです。当時はとにかくにじみをどう使うかに注力して描いていました。…それで某社のディスプレイが嫌いになったりとか

一同 (笑)

眞島 某社のディスプレイはアスペクト比が独特だったんですよ。 シアンやマゼンタが強すぎる…とかも。当時の広報用の画面写真って、ディスプレイを直接カメラで撮影していたのですが、某社のディスプレイで撮ると色が全然違うものになっちゃいました(苦笑)。

八木 ちなみに、眞島さんは独学でドットの打ち方を覚えていったんですか?

眞島 僕らより上の世代のゲームクリエイターって、堀井さん(雄二さん。『DQ』シリーズの生みの親)たちの世代になるので、ゲーム開発の技術は誰にも教わっていないですね。教わる場所もなかったですし、全部経験しながら現在までやってきましたね。あとは…、どれだけ貪欲になるかですね(笑)。例えばスクウェアが『クルーズチェイサー ブラスティー』(※7)を発売した時は、いろいろと分析していましたよ。

※7 1986年にスクウェアが発売したパソコン用RPG。現在はD4エンタープライズが提供しているプロジェクトEGGで遊ぶことができる

―― ライバル会社が新作ソフトを発売したら、それを研究していったんですね。
眞島 当時のクリエイターは、みんなライバル会社のソフトは見ていたと思います。印象的だったのは『イース』(※8)で、発売時はあの色の秘密を全部分析したりしましたね。

※8 日本ファルコムから発売されているアクションRPGシリーズ。眞島さんが仰っているのは、1987年に発売されたPC版第1作のこと。現在はプロジェクトEGGで遊ぶことが出来る

―― 眞島さんがご自身で経験を積まれていったと。

眞島 FCやSFCに関しても、誰から何かを教わったことはありませんね。一生懸命ドットを打って、データをロムに焼いて、それをチェックしてを繰り返していました。

八木 当時はロムに焼くのもめちゃくちゃ時間かかりましたよね? しかも、たまに焼きミスがあったりして(苦笑)。

眞島 1~2日ぐらい悩んだり考えたりして打ったドットを、確認するためにロムを差して焼いて、ディスプレイに表示されたのを見て、ダメだなって思ったらやり直しですよ。1~2日掛けた作業が数秒でパーです(苦笑)。にじみの表現をコントロールできるようになるまで、毎日こんな感じでやっていました。

―― すごい話です…!

眞島 だって、描いた絵がすぐ見られないんだもの!

一同 (笑)

眞島 今は作った絵がその場ですぐ確認出来ていいですよね。絵描きにとって、その点では本当に便利になったと思います。逆にサボれませんよ(笑)。

生まれ変わった『DQⅠ』~『DQⅥ』の世界

―― ニンドリ本誌では『DQⅦ』~『DQⅩ』について掲載しており、NDWでは『ドラゴンクエストⅠ』(以下『DQⅠ』)~『ドラゴンクエストⅥ 幻の大地』(以下『DQⅥ』)までの世界(冒険の書の世界)の開発エピソードを聞いていきます。

眞島 『DQⅠ』の世界は、3DS版ではFCテイストでしたよね。それを今回のイメージで描き直すには、全部設計し直さなければなりませんでした。壁の高さも根本的に違うので、見えなくなる部分が多かったです。特にFCの頃は、1マスだけ外に隠し通路があったりすることもありましたよね。だから壁の高さの取り方が変わるとアウトです。2Dで立体的に成立するように見せつつも、嘘をどう残すかみたいな部分がけっこうあって、そこが苦労しましたね。でもすごく面白かったですよ。


↑3DS版『DQⅠ』冒険の書の世界

杉村 一番大変な部分(お城)を最初に作ったので、素材は結構ありましたね。

眞島 だから試行錯誤をする時間がたくさん取れましたね。あと考え方を大きく変えなくちゃいけなかったのは『DQⅡ』のロンダルキアの洞窟ですね。画面の縦横比が変わるだけでも命取りなんですよ。FC時代まだ暗闇の壁という見えない壁があったじゃないですか。

八木 確かに、元が2Dであるものを改めてやるほうが画面比率を考えると大変かもしれないですね。

眞島 だからといってマップが広すぎちゃうとダメですし。例えばムーンペタの町にあるこの家(画面右中央の犬がいるところ)ってすごく狭いじゃないですか。これを1マス右に広くしたらそれの余波を受けて町の規模が大きくなってしまうんです。ためしに壁がもっと高いパターンも作ってみたんですが、そうすると、SFC版『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…』ぐらいの感じに見えなくなってしまって。


↑勇者の実家。左がSFC版『DQⅢ』、右が『DQXI S』

杉村 そこ、めっちゃ揉めましたね(笑)。最初の半年ぐらいはずっとそのことでデザイナーと詰めていました。

眞島 思いの丈をぶつけていくと、どうしても広いマップになってしまうんです。

杉村 狭くする勇気がないんですよ!

一同 (笑)

眞島 狭ければ狭いで、今度は人がいるので通りにくいとか、そういう問題が起きます。

八木 訊いてみたかったのですが、FCから今回の形にするのと、SFCから今の形になるのとでは、苦労は違ってくるんですか?

眞島 SFC版『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』(以下『DQⅤ』)あたりになってくると、キャラクターの背が高くなってくるじゃないですか。町が全体的に背が高くなっているんですよ。 実はFC版『ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち』(以下『DQⅣ』)からやってはいるんですけど、『DQⅤ』は立体構成を取り込んでいるマップが多いんです。

―― SFCになると、そういう表現が出来るようになりましたからね。

眞島 『DQⅤ』では最初に登場するサンタローズの村の橋の下をくぐれたじゃないですか。そういうことを当時からやっているので、立体的な部分に関しては『DQⅠ』~『DQⅢ』よりは楽…って訳じゃないですけどね(苦笑)。あと、絵がリアルになってくると、ドット絵といえどもリアルさが入ってきます。そうなると当たり判定が分かりにくくなったりするんですよね。自然な形にしようと思うと角を削るのですが、そうすると行けないような場所が行けそうな気がしちゃったりして。『DQⅠ』~『DQⅢ』までは必要なところ以外はほぼ無駄がないマップで作られていて、例えるならご飯とみそ汁とおかずを正しく食べるみたいなイメージです。それがSFCの『DQⅤ』の頃になってくると、デザートまでついてしまうんですよ(笑)。

一同 (笑)


↑SFC版『DQⅤ』サンタローズの村

眞島 だから今回は、サンタローズの村の外観を作ったのは、開発時期的にはかなり後の方です。先にお城、その次にダンジョンを作っていきましたから。お城は構造物なので、人工物のパーツの分割と構成の仕方を勉強でき、ダンジョンは自然物の質感と自然物を違和感なくつなげる構成の勉強ができます。土壁や自然物のノウハウがある程度固まってから、ようやく『DQⅤ』の世界を作っていったという流れです。

杉村 当時はマップも素材のパターンが決まっていて、配置でしかマップに差がつけられなかったんです。プランナーがマップを考える際、一番重要なのは配置が他の町と違うかどうか、なんです。だから『DQⅣ』までは配置の違いがはっきりしていますね。

眞島 『DQ』のすごい発明のひとつは「赤い床」だと思っています。実際に現実の町を歩いて、レンガみたいな色の床ってありますよね? でもあんなえんじ色みたいな赤い床ってないですよね。でも、変にリアリティに囚われて、石だからと言ってグレーとか茶色で描くと、『DQ』のマップってすごく分かりづらかったと思います。

―― 言われて見れば…確かに!

杉村 あれは堀井先生がテラコッタがお好きだからではないでしょうか。偶然かもしれませんが、勝手な想像です(笑)。

↑SFC版『DQⅠ・Ⅱ』(左が『DQⅠ』のラダトームの町、右が『DQⅡ』のサマルトリア城)

眞島 だから『DQⅠ』や『DQⅡ』の世界を描き直すにあたり、絶対にやりたいと考えたのが「床に赤みを残したい」ということです。ただ『DQⅤ』あたりになってくると、造形自体がリアリティを持ってくるので、ますます難しくなっていきますけどね(苦笑)。

―― ちなみに、みなさんが『DQXI』でお気に入りのキャラクターは誰でしょうか?

八木 僕は新規イベントがかっこよかったのでカミュです!

眞島 やっぱカミュですね~!

杉村 一人だけ変えておかなければと思いながらも…カミュです!

―― 3人ともカミュだった!


↑12月21日発売のニンテンドードリーム2月号では、そんなカミュの活躍する『DQXI S』新シナリオの2Dモードのイベントシーンについて御三方が語っているのであわせてチェックを!

読者へメッセージ

八木 「昔ながらのドラゴンクエスト」という形で作ったら、どうなるかを見せていると思います。3Dで作られていたものが2Dになるとどう翻訳されているかを見て楽しんでいただければなと思います。

眞島 映画でリブート作品ってあるじゃないですか? 同じ話を別の監督が作ったりしますよね。同じモチーフだけど違う作家が違う手法で作った、という視点でみるのも面白いと思います。

―― 2019年12月20日~2020年1月5日までセールをやっていますので、未プレイの方へもメッセージをお願いします。

八木 3DS版とはまたちょっと違って、ハイスペックな3Dと、高品質な2Dがひとつのパッケージで遊べます。それを同じストーリーで出来るって…なかなかないと思います。眞島さんが言っていた、「頭の中に描かれている3D世界が、2D世界で見るとこういう表現になる」というイメージ体験が『DQXI S』で体感できますので、是非楽しんでください。

【セール情報】
 「ニンテンドーeショップ」にて、2019年12月20日~2020年1月5日までの期間限定で、ダウンロード版『ドラゴクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』がお求めやすい価格に。通常版が25%オフの6499円(込)、ゲーム本編にボイスドラマなどのDLCがセットになったゴージャス版が31%オフの7499円(込)で購入可能に!未プレイの方はこの機会にぜひロトゼタシアの世界へ!


ここで『DQXI S』2Dモード開発者インタビューはおしまいですが、せっかくアルテピアッツァの眞島さんにご登場いただいたので、現在Nintendo Switchでも遊べる『ドラゴンクエストライバルズ』(以下『DQライバルズ』)のお話もいろいろ訊いちゃいました!

眞島さんに訊く『DQライバルズ』の開発エピソード

―― まずは眞島さんが『DQライバルズ』で担当していることについて教えてください。

眞島 主にカードのキャラクターのイラストを描いています。また、タイトル画面の絵とかも描いていますよ。

杉村 職種としては、カードキャラクターデザイナー、アートディレクターですね。

眞島 いろいろやっています(笑)。あと、定期的に開催される大会「勇者杯」のスリーブも毎回僕が描いています。それから、弊社のイラスト制作チーム(本作のイラスト全般を担当)のディレクションと、背景CGや当初のUIイメージのデザインや監修などもやっています。

―― 眞島さんは『DQXI S』の開発をしながら『DQライバルズ』の絵も描いていたということですよね?

眞島 はい。大変ですけれど、いくつかの案件を並行してやるほうがいいんですよ。例えば『DQXI S』で煮詰まったものが『DQライバルズ』で解決するとかね。ひとつの案件だけやってて煮詰まっちゃうと、本当に進行が止まっちゃうんですよ(苦笑)。

杉村 そこにHDリマスター版『ロマサガ3』も並行して開発していましたね(笑)。

―― 3タイトルともたいへんな案件ばかりじゃないですか!

杉村 『DQXI S』も『DQライバルズ』も『ロマサガ3』も、ぜんぶ描くものがまったく違うんです。描き方も違えば、画風も違いますからね。眞島はいつも同じ画風で描くということができないタイプなので…ちょうどいいのかなと(笑)。

―― 逆にいい気分転換になるんですね。

眞島 仕事を1つ渡されて、これが終わったら次って言われて、今の仕事が終わらないと次に進めないって逆に辛くないですか?

杉村 それとは別に、新規提案も多いですね。いきなり戦国時代が舞台の仕事も来たりして。

眞島 それを週明けまでにお願いとか言われたりね(苦笑)。

杉村 12月半ばぐらいにお話を頂いて、年明けに企画を出したいので企画用のイメージ絵をお願いしますとかもありましたね。

眞島 会社で除夜の鐘決定! …だったね。

一同 (笑)

眞島 いい意味で適当に描けばいいんでしょうけれど…僕は描くとなると資料を集めちゃうタイプなんですよ。その時は世間はクリスマスで賑わっている時期に、一生懸命ペリーの画像を集めていました。

一同 (笑)

―― 最新の第9弾「再会と誓いの世界(ロトゼタシア)」では、新職業「盗賊」でカミュが参戦したり、魔法使いのアナザーリーダーにベロニカが出てきましたね。

杉村 『DQXI』にフォーカスした弾なので、原作の再現のように見えるカードもあるんですけれど、さっき眞島が言ったみたいに「そのイラストの中に前後のシーンを想像するような表現をしたい」と思って描いているので、フレーバーテキストを含めて楽しめるようにこだわって描かせていただいていますね。

―― アルテピアッツァさんで、フレーバーテキストも書いているのですね。

眞島 縦読みすると声優さんの名前になっていたりとか。

―― それは気が付きませんでした…!

杉村 それぐらいでいいんです(笑)。

眞島 カードゲームって、カードの1枚1枚が印象に残らないと、カードが増えていくほど不利になっていくようなところがありますよね。だからテキストで補強して、カードの絵はできるだけ印象が強く残るようにするのを大事にしています。例えば、本編だとある一定時間をかけて語られるキャラクターの性格ってあるじゃないですか? それをカードの1枚絵で描かなければならないんです。だからそこの圧縮が必要なんですよ。

杉村 基本的にカードの能力が先に決まるんです。どんなキャラクターで、能力はこうだっていう指定がまずやってきます。でも、イラストの構図などの指定は一切ないんですよ。それを弊社の方で考案させていただいています。追加パックは約3か月間隔で出るので、最初の1か月ぐらいは弊社プランナーと構成を練るところに時間を掛けていますね。

眞島 有名なモンスターならある程度の知識はみなさんお持ちかなと思いますが、中にはマイナーなモンスターもいますよね。そんなモンスターも、これを機に印象に残るキャラクターに育ってくれたらいいなと思うところがあるので、絵で掘り下げていっています。

杉村 アニメーションで言ったら、原画と動画を両方やっているようなものですね(笑)。

眞島 『DQライバルズ』のカードの絵は、全部動画だと思っています。対戦中の状況ってつねに遷移するじゃないですか? ということは、カード自体も動画だと思うんです。動いている一瞬の中で、印象に残るところを切り出さなくてはならないわけです。

―― そこまで考えてらっしゃるのですね。

眞島 はい。『DQライバルズ』の場合は、スマートフォンで遊ばれる方が多いので、スマホのサイズでしかもその小さな画面の中にカードが表示され、モンスターが表示されるので、そのサイズで見た時にわかるようにしなくちゃいけないんですよ。その時に「何だか楽しそう」とか「怖そう」とわかる絵を描くということが大きいですね。

―― 『DQライバルズ』ファンにメッセージをお願いします。

眞島 第9弾は、結構凝った絵が多いです。構図や光の演出など、わりと美味しいところを食べていただけるんじゃないかと思います。

杉村 『DQXI S』の2Dモードを遊びながら、スマホで『DQライバルズ』もやっていただくとより楽しんでいただけるのではないでしょうか(笑)。

眞島 ちなみに『DQライバルズ』のユーザーさんって、1枚1枚のカードに対しての思い入れが強いんですよね。「こいつは使えるか」という部分が、『DQ』本編より強くなりますからね。カードゲームならではの圧を感じますよ。

―― カードゲームとしてみると、それは確かに…!

眞島 『DQライバルズ』は、ほかの『DQ』タイトルに比べると10代のプレイヤーさんが多いんです。『DQライバルズ』で初めて『DQ』に触れる人も結構いて、カードイラストを見ながら「こういう背景があるんだ。じゃあ原作をやってみよう」って流れになって、スマートフォンで配信されている『DQ』本編シリーズをプレイしてくれることが結構多いです。カード1枚の絵だけで物語をイメージできるという声はよく聞きます。

杉村 通常のカードは、カードに記載されたキャラクターやアイテムなどの説明が主な内容ですが、プレミアムカードは原作の物語をほうふつとさせる内容になっていたりします。プレイしたことない方は、原作に興味を持っていただけたら嬉しいなと思います。


ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S 公式サイト
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