『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』開発者SPECIALインタビュー(2019年11月号より)

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国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズ最新作『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』(以下『DQXI S』)。開発スタッフに登場していただき、新要素やボイスドラマなどについてお届け!

(ニンテンドードリーム 2019年11月号より)

・記事は修正している箇所もありますが、基本は掲載時と同じものになります。


プロデューサー 岡本北斗さん(写真左)
2011年入社。『スライムもりもりドラゴクエスト3』『いただきストリートWii』『ドラゴンクエストⅩ』(カジノ関連)『ドラゴンクエストⅩ 冒険者のおでかけ便利ツール』『シアトリズム ドラゴンクエスト』などにも関わる。PS4版『ドラゴンクエストXI』に引き続き『ドラゴンクエストXI S』でもプロデューサーを担当。

開発ディレクター 八木正人さん(写真中央)
1994年にスクウェアに入社。『ルドラの秘宝』『ファイナルファンタジーVII』『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』など、数多くのRPG開発に携わってきた。3DS/PS4版『ドラゴンクエストXI』ではチーフプランナーを務め、今作は開発ディレクターを担当。

ディレクター 内川毅さん(写真右)
『ドラゴンクエストⅨ』と『ドラゴンクエストⅩ』ではともにシナリオアシスタントを務め、『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2』以降もディレクション。3DS/PS4版『ドラゴンクエストXI』では総合ディレクターを担当し、『ドラゴンクエストXI S』はディレクターを務める。


発売から2年を経て生まれた『S』

―― まずはサブタイトルの後ろに「S」を付けたところからお話を聞かせてください。

岡本 『DQXI』は2017年7月に3DSとPS4で同時発売したのですが、3機種目のSwitchではどういう風にしようか、考える期間を含めたら時間が掛かってしまって…。Switch版の発売を待っていた人たちに向けて、3DS版やPS4版と同じ内容を遊べるようにしただけでは納得してもらえないだろうと思ったんです。

―― 発売して2年ですしね。

岡本 はい。だったら、発売後の反響も受けたうえで、お客さまの改善案や要望を取り入れたうえで、リメイク的な立ち位置で出すべきだろうと。タイトルは変えられないですけど、3DS/PS4版とは違うものだよと表現するために「S」というタイトルを付けました。

―― 企画当初から「S」だったのですか?

岡本 「S」にするかどうかは、堀井(雄二さん。『DQ』の生みの親。今作もゲームデザイン&シナリオを手掛ける)さんと一緒に結構迷いました。そもそも『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』ってタイトル名が長いじゃないですか(笑)。

―― ゲームタイトルとしては長い方になりますね。

岡本 あれこれ堀井さんとどうするかを考えていた時に、「しゃべるし、Sでいいんじゃない?」っておっしゃって(笑)。

一同 (笑)

岡本 ただ、さすがにそれだけの理由では…ということで、「S」はSwitchやSPECIALという意味に繋がるし、もうこれは何でも「S」に紐付けようということで「過ぎ去りし時を求めて S」という名称になりました。


―― 『DQXI S』の開発にあたり、改善点はどのように決めていったのでしょうか?

内川 まずは僕が開発チームの中で『DQXI』に追加したら、もっと遊びやすくなる、もっと面白くなると思う要素を、スタッフアンケートという形でまとめました。

―― なるほど。

内川 それをまとめて、「出来るか」「面白いか」の観点から取捨選択し、堀井さんと一緒に内容を詰めていきました。最初の構想としてはSwitch版ということもあり、「スイッチする」ということで2Dと3Dを行き来することが根っこにあって。そこから追加要素として、何が相応しいかを検討して決めていった形です。

―― それを受けた八木さんはどう答えたのですか?

八木 内川から、他にもやりたいことが要望として企画書になっていて、まずそれを受け取りました。決められた開発期間で、このボリュームを新たに作るのはなかなか大変だなと感じましたね。PS4版を担当した開発会社のオルカさんと相談し、スケジュールを調整し、現実的なまとめ方をしていった感じです。

―― まず出来るか出来ないかをジャッジしたんですね。

八木 はい。企画書に書かれていることは全部わかるし、実装できたらすごく面白くなるのはわかるのですが、私の方でスケジュール的に厳しいもの、新規で追加するには大変だというものなどをまとめ直し、夢と現実がうまい具合に混じる形にしてから堀井さんに相談して仕様を決めていきました。

内川 3DS/PS4版の開発時に出来なかったことや思い残したことがあった風に聞こえてしまうかもしれませんが、そんなことはありません(きっぱり)。ただ、発売した後のお客さんの様子を見ると、改めて「こうした方がよかったよね」とか思うことがあり、そういった反省点を盛り込んだという考え方です。

八木 そうですね。お客さんの視点で、取捨選択していったというところはありますね。

―― お客さん視点という話が出ましたが、「ネタバレイトショー」(※1)の意見もフィードバックされているのでしょうか?

岡本 あれは『DQ』シリーズでネタバレありの公式イベントは初めての試みでしたね。有料イベントならできるかといったら、それも違うかなぁと思ったし、だからといって無料イベントだと歩留まりが大きくなってしまうし…。そこで『DQXI』で一緒にプロデューサーをやっていた齊藤(陽介さん。通称よーすぴ。同社取締役執行役員)から「まずは、応募時にお客さんに熱い思いをアンケートに書いてもらおう」と提案がありまして(笑)。

―― よーすぴさんらしいですね(笑)。

岡本 それを関門にして、そこを抜けて応募した人だったら確実にイベントへ来てくれるかなと思ってやったイベントでした。だから、もう熱い思いを信じられないくらい長い文字数で書いていただいて。ありがたいなぁと思いながらも「もっとこうしてほしい!」みたいな意見もたくさん寄せられ、それを内川や八木に共有しました。

※1 3DS/PS4版『DQXI』の発売後、2017年9月29日夜に行われたイベント「ネタバレするとはなにごとだ! ドラゴンクエストXI ネタバレイトショー」のこと。

またロトゼタシアに行ってほしい思い

―― 3DSやPS4で遊んだ人には、どんな風に楽しんでもらいたいですか?

八木 最初に3DS版で遊んだ方には、まずPS4版に近い3Dモードで美しいグラフィックを、PS4版で遊んだ方には2Dモードで遊んでもらいたいですね。3DS版の2Dモードより解像度が上がっていますので、想像しているよりきれいに見えるはずです。

―― PS4版は2Dモードがなかったですし。

八木 あとはPS4版をプレイした人が『DQXI S』の3Dモードをプレイする場合は、細かい調整や修正が追加されているので、そういうところを探していただくのも楽しいかなと思います。3DS版で2Dモードを遊んだ人が『DQXI S』の2Dモードを見ると、同じ内容なのにこんなにきれいな2D画面で遊べるのかって思いますよ。

内川 PS4版で遊んでくれた方は、「過去作の世界」にも注目してほしいですね。2Dのドット絵で描かれた、これまでの『DQ』の懐かしい雰囲気をぜひ楽しんでいただきたいです。

―― 過去作の世界では音楽がすべて8bitなサウンドになりましたね。

内川 そうなんです。サウンド面もこだわってます!

岡本 あれは…ゴリ押したね(笑)。

―― 何があったんですか?

岡本 もともとなぜ『DQXI』を3DSとPS4の2機種で作ったかというと、今までの『DQ』シリーズが好きだったものを、自分の好きな形で楽しんでくださいねっていう意図がありました。じゃあ『DQXI S』はその全てを楽しんでもらいましょうと、両方遊べるようにしたんです。ならば音楽も今までの『DQ』のものを楽しんでいただきたいなと思って、オーケストラとシンセサイザーの切り替えを加えたのですが…、ファミコン音源の部分をどうするかって部分もあって。そこで過去作の世界では、音楽を全部作り替えて新しい楽しみ方を提供できないかなって思ったわけです。

―― 16bitテイストに統一する案はあったんですか?

岡本 スーパーファミコンテイストのBGMをそのまま今のゲーム機に載せても、それは劣化版のシンセサイザーにしか聴こえないんですよ。それでもいいって方もいるかなとは思うんですけどね。それは逆に今のシンセサイザーとの差があまり感じられなくて。だったら、今までファミコン音源で聴いたことがない音楽を作ろうと思い、『DQⅤ』以降の世界で流れるBGMを全部ファミコンテイストにしました。

―― 音楽担当のすぎやまこういちさんの反応は?

岡本 「面白いね」って言ってくださりましたが、同時に「どうするんだろうね」ともおっしゃられて(笑)。

一同 (笑)

―― 『DQⅩ』の世界が2D表現で描かれるのはインパクトありますね。

岡本 やってみたら、いい感じに出来たなぁ。

内川 2Dで表現されてること自体がなかったですからね。(八木さんの方を向いて)そこらへんで苦労したことは?

八木 そもそも「『DQⅩ』の世界を2Dで表現していいんですか?」って話を、『DQXI S』に過去作の世界を入れようと決めた際にしていましたね。あと3DS版では『DQⅦ』以降の世界が3Dで描かれていたのですが、これはどうしようかという話もですね。3DS版の内容をそのまま持ってくるのか、PS4のグラフィックに近い形で新しく作るのか…。

―― 確かに、それは悩ましい問題ですね。

八木 やっぱり、新規で作るか? …って思った瞬間に「そんなスケジュールはどこに?」と自問自答しました(笑)。

岡本 だからといって、3DS版のグラフィックでそのままというのは、3DS版の3Dモードもすべて収録しなければならないし、それは容量的にも開発期間的にも現実的じゃなかったですし…。

八木 それで、私は全部の作品が「もしかしたらあり得たかもしれない『DQ』」みたいな感じで、2Dテイストで作れないかなという話をしてましたね。

岡本 だから方針が出るまでは時間が掛かったよね。

八木 2Dの絵が出来上がったら、これは結構いいんじゃないかと思いましたね。開発スタッフも、あの2Dのグラフィックを見た時に納得されました。

岡本 もう、この2Dテイストで全部やりたいよねって(笑)。

一同 (笑)

―― 開発を担当したのは、3DS版を手掛けたトイロジックではなくアルテピアッツァに変わったのは?

岡本 それは単純に開発会社さんのスケジュールの都合ですね。

内川 アルテさんの社長である眞島(真太郎さん。代表取締役社長)さんの打つドットは天才的ですね。そういう開発スタッフの布陣もあり、このドットの絵で描かれた過去作の世界が実現できたのかなと思います。

岡本 眞島さんが語ったドット講義、面白かったですよ。

―― どんなお話だったんですか?

岡本 「3DS版の2Dモードのドットをスーパーファミコンっぽく見せましょう」という作り方をした時に、3DS版のドットを見てもらったんです。それでスーパーファミコンのドットとどう違うのかという話とかを眞島さんの観点から「ここはこうやってやるべきだ」「デザインはこうやって作るべき」…という話を伺いました。あれは勉強になりましたね。

思い出を残す新要素「フォトモード」

―― 新要素のひとつである「フォトモード」は、どのような経緯で搭載することになったのですか?

八木 最初はもっとシンプルで、「フォトモード」というほどのものでもなかったんです(苦笑)。『DQⅩ』でも実装されている機能ですし、昨今のさまざまなゲームで写真を撮る機能は、意外と遊ぶお客さんが多いんですよ。それで『DQXI S』でもやれないかっていう話が飛んできて。

―― それは岡本さんからですか?

岡本 PS4版はPS4本体機能に標準搭載されていて、3DS版はMiiverseを介して撮ることが出来たんですけど、Switchは本体のスクリーンショットでしか撮れなかったので、もう一声なにかということで…(笑)。

八木 それぐらい簡単な機能でいいからと言われたので、それだったらできるかなという話をしていざ開発してみたら…思ったよりも作り込んでて(笑)。

一同 (笑)

岡本 そういう「さくせん」なんですよ!

八木 どうせ作るなら、できる限りやれた方がお客さんも楽しめるんじゃないかなって思いました。スケジュールや人員確保のこともあるけれど、開発の合間にスタッフを説得しながら作り、今の形になりました。

岡本 (八木さんの方を向きながら)あのシンプルな撮影機能を作って、触ってみて面白かったから八木さんもやる気になってくれたんですよね?(笑)

八木 まぁ…そういうことにしておきます(笑)。

内川 僕はプレイヤーが仲間たちと一緒に冒険するってところが『DQXI』の大きい要素のひとつだと思っています。だから彼らとの冒険の思い出を写真として残していくことは、作品的にも価値がある機能だと理解しましたね。

八木 あと、仲間と旅している感を強化したいという話が最初に出ていたので、『DQXI S』はフィールドで仲間たちが後ろからついてくるようになった(※2)のですが、それもあって、なおさらフォトモードで写真を撮れた方が仲間と旅している気分になれるかなぁと。

―― 写真はSwitchのアルバムを開いて、パッと見られるのがいいですよね。

八木 そうそう。開発していた頃は、ちょうど任天堂さんから『スーパーマリオ オデッセイ』が発売された時期でした。遊んでみたら、「スナップショットモード」がめちゃくちゃ機能がいっぱい付いていて! 『DQXI S』もあれぐらいやるのかどうか、議論はしたのですが…残念ながらそこまでは作れず…ということで、現在の形になりました。

内川 そこは『DQXI S』ならではの落としどころで実現できているかなと。

岡本 「こっち向いて」機能は『DQ』っぽいよね。

八木 堀井さんは「はい、ホイミ!」とか、「はい、パルプンテ!」とかの方がいいんじゃないかって言ってましたね。

※2 PS4版は主人公のみしか描写されなかった

パワーアップした「しばりプレイ」

―― 「超はずかしい呪い」(※3)が新登場しましたね。戦闘中に語られる仲間たちの恥ずかしいエピソード、ものすごいボリュームになったのではないでしょうか?

内川 テキスト量で言うと、「超はずかしい」と「町の人にウソをつかれる」が多いですね

八木 これはぜひやってほしいですね(笑)。

岡本 開発中、本来しゃべれない状況のヤヒムのテキストが出ちゃったことがあったよね。システムがウソついちゃった(笑)。

一同 (笑)

八木 製品版では修正済みですけどね(笑)。

内川 堀井さん珠玉のウソネタも入っているので、ぜひ「町の人にウソをつかれる」をやってほしいですね。じつは名前のある特別なキャラには専用のウソがあって、例えば、エマもそのひとりです。

岡本 エマがウソつくの!? って(笑)。個人的には、クレイモランのシャール女王の嘘が気に入ってます。

内川 私のメガネは××が××××って内容だよね(笑)。あれは面白かったなあ。あとは、教会の神父に話しかけた時、神父に、あるウソをつかれることもあります(笑)。

―― 「しばりプレイ」を達成してエンディングを迎えると、何かあるのでしょうか?

内川 3DS版やPS4版と同じですね。おめでとうございますと表示されます。

岡本 今回は難しいですよ。クリアできたスタッフっていたっけ?

八木 テスターの人はクリアできてましたね。

岡本 こんなんできねーよって怒号が聞こえたけど(笑)。

八木 「しばりプレイ」はボス戦の難易度がこちらの状況で一変するんですよね。そこを楽しんでほしいですね。

岡本 「主人公がやられたら全滅」は、主人公をパーティに入れないとかもすれば、なんとかできるか。

内川 ただ、どうしてもそれができないシチュエーションもある(笑)。

八木 しばりプレイの難易度に関しては相当ですからね。全員遊び人でプレイしているみたいなイメージですし。

岡本 3DS版やPS4版の時は、久しぶりに『DQ』をやる人もいるから難易度はやや低めで、気軽にプレイできるようにと堀井さんがおっしゃられてた部分があって。だからもっと歯ごたえが欲しいという要望があったので、「しばりプレイ」の追加でケアしました。

八木 どうしてもツライ時はいつでも外せますので安心してください。『DQXI S』の3Dモードでは1個ずつ呪いを解除できるようにしましたので。

※3 「しばりプレイ」のひとつ。戦闘中にさまざまな恥ずかしいことを思い出し、1ターン動けなくなる。

物語も戦闘もとにかくしゃべりまくる!

―― 3Dモードの戦闘中、仲間に近づくとメッセージが表示されるようになりましたね。

八木 『DQXI S』は仲間と冒険している感が欲しいという話が出た際、一緒にいるキャラクターに話しかけると「仲間会話」が見られるのは必然的だなと思いました。それは堀井さんからもアイデアが出ていて、「戦闘中の仲間のメッセージもあった方がいいんじゃないか」とおっしゃったんです。

↑戦闘中では戦うモンスターを見てどんなことを思っているかなど、バリエーション豊富にメッセージが用意されている

―― まずはどういう風に作っていったんですか?

八木 最初は無作為にメッセージが出る試作を作って、堀井さんや内川に見てもらったのですが…「うーん」と(苦笑)。

内川 試作の段階ではカメラの視点とメッセージ表示の位置がバラバラだったので、何が起きているか把握しづらかったんです。3Dモードでは「フリー移動バトル」ができるじゃないですか。その際、仲間たちが何を考えているか、この戦闘状況をどう思っているのかがわかれば、今まで描けなかった一面が表現できるなと思いました。それで、どうせだったら仲間会話にしちゃえって。戦闘中のひとつのエッセンスという感じで、入れたらハマった感じです。

八木 PS4版も「フリー移動バトル」はできるけど、仲間のリアクションがなかったのも寂しかったねって話もしたから、これはあった方がいいなと思いました。

―― これは仲間に近寄りたくなりますね。

八木 そうですね。戦闘中に自由に移動する理由もちゃんと出来ました。

内川 『DQXI S』では仲間と冒険する部分をフィーチャーしているので、そこを軸に考えていって、いろんなことがきれいに収まっていった部分はありますね。

―― バリエーションもかなり多くて。

内川 テキストはたくさん用意しました!

八木 メッセージは多い方が楽しいですからね。シナリオ班ができる限りやってくれました。

↑特別な戦闘では顏グラフィックとメッセージが画面上に表示されるようになって、仲間との冒険感が今まで以上にパワーアップ! 3DS/PS4版との違いを見つけるのも楽しい

―― 声優さんたちの音声収録はどのように行っていったんですか?

岡本 総合的に見たら、収録時間は長かったよね。NPC含めてで200キャラ以上で、キャストは100人以上で、収録時間としては1年半以上やっていましたね。

内川 収録の立ち合いはこの3人で持ち回りのような形でやっていましたが、基本的には岡本が担当していました。

岡本 内川も八木も忙しいから、「岡本が行けばいいんじゃない?」って。

一同 (笑)

八木 最初のうちは方針を決めるというのが目的でしたので、3人で行っていました。音声の収録って1回あたりの時間が長いんですよ。最初は3人揃って行ってたんですけど、開発現場が回らなくなるから…勘弁してほしいって開発スタッフから言われて(苦笑)。

岡本 例えば、ジエーゴ役の大塚明夫さんの強いこだわりだったんですけど、「てやんでいの後にべらぼうめぃがないのはおかしい」って。それを入れるとテキストが3行ではみ出しちゃうんです(苦笑)。でもしゃべらないのはおかしいとおっしゃったので、ご本人の想いを優先しました。

―― と言うことは、3DS/PS4版とちょっと違うセリフに?

岡本 その時だけは、内川が折れましたね。基本的に元のテキスト通りに読んでもらうのを守ってもらっていたんですけど、その部分だけ改行とか、どうにか大塚さんが吹き込んだセリフ通りにテキストを収めるように対応をしました。

内川 あそこまでキャラクターに入り込んでくれたんなら、もうやらざるを得ないですよね。

岡本 ほかの声優さんからもそういったお話をいただいて、収録現場でご意見をとりいれるということをしていました。

八木 声優の皆さん、すごく熱くやっていだたきましたね。ファーリス役の島崎信長さんとか凄かったですよね。

岡本 信長さんは休憩時間に収録ブースの外に出てきていただいて、いろんな話をさせていただきました。いっぱいしゃべってるんで、「信長さん、休憩時間ですよ?」って(笑)。

一同 (笑)

八木 出番としてはそんなにないキャラクターにも入れ込んでいただいてね。

岡本 総合的に『DQ』愛が強い人が多かったのはありがたかったですね。

―― 人気の高いホメロスのエピソードも聞かせてください。担当した声優の櫻井孝宏さんといえば、『ファイナルファンタジーⅦ』の主人公クラウドみたいな、クールキャラを想像しますけど。

岡本 櫻井さんは、最初キレイな演技だったので、もっとねちっこくやってくださいってお願いしました。

一同 (笑)

岡本 それをやり続けて、感覚をつかんでいただいた後は、×××する時の声だったり、微妙な使い分けや憎しみの込め方とか、上から目線の雰囲気とか、そういう細かいニュアンスをきっちり表現していただきました。

―― ロウ役の麦人さんも収録を楽しんで臨まれたとキャラクターブックに記載されていましたね。

岡本 ロウ役の麦人さんはすごく楽しんでましたよ。休憩中もたくさんお話ししていただいて。

内川 優しいところや、おどけるところがイメージ通りで本当にハマり役でしたね。やり直すことはほぼなかったと思います。

CDシアタをオマージュしたボイスドラマ

―― 「ボイスドラマ」は本編ではなく、別途ゲーム内に収録することになったのは?

岡本 京都の開発会社さんと『DQXI』の打ち上げで、淡路島(※4)に向かう車の中の出来事が発端で(笑)。「キャラクターにフォーカスを当てて世界観を広げよう」というのが『DQXI S』の目的だったので、それならキャラクターたちの新しい物語をゲームで実現するのが一番いいなと思いました。でも、そうすると、開発期間や物語の時系列などいろんな問題があって…。

内川 そんな折、一緒に同乗した開発会社さんの方が、懐かしの「CDシアター ドラゴンクエスト」(※5)を持参してきて、車中で聴いたんですよ。

岡本 おもむろにね(笑)。

内川 最初のうちは「懐かしいね〜」…なんて言ってけど、ドンピシャ世代なんで徐々に聴き入っちゃって(笑)。瀬戸大橋を渡るところで『DQI』の虹の橋を渡るシーンが流れて(笑)。そんなこともあって、今回ボイスが付くし、ドラマCDのような形で物語を展開していく構想を岡本と話しました。

岡本 本編が過去の『DQ』シリーズからのセリフオマージュが多かったから、CDシアターもオマージュしようってことで…(笑)。

―― ボリュームを聞くと、ボイスドラマだけで売ってもいいくらいですよね(笑)。

内川 我々もボイスドラマの仕事に慣れてなくて。どんどん追加していった結果、あんなことになってしまって。

岡本 のべ再生時間5時間超えてるとか、信じられないですよね(笑)。

八木 僕は後からその話を聞いて、「ボイスドラマって作れないの?」って突如言われて。「何を言っているのだろう?」と思いましたね。

一同 (笑)

内川 八木は『DQXI S』本編の開発で忙しかったので、脚本の内容やスケジュールなどの管理は僕の方で受け持ちました。そのとき、ボイスドラマの再生途中でNintendo Switch本体がスリープモードになってしまう懸念が挙がりまして、まずは脚本の長さをどれくらいにするか話し合ったんです。

―― 本体機能に自動スリープ時間の設定がありましたね。

八木 確認したら、30分以内だったら放置していても大丈夫とのことでした。ただ、ボイスドラマ再生中にスリープしない機能を作って搭載するのも可能だったので、念のため、自動スリープにならない機能を作ったんですよ。内川は「30分以内に収めるから大丈夫」と豪語してたんですが信用ならないので(笑)。

内川 …で案の定、割と早い段階で「ごめんなさい、30分に収めるの無理でした」って謝りに行きました(笑)。あの機能を入れてくれたのはファインプレーでしたね。

八木 45分とかあるし(笑)。

内川 内容はめちゃくちゃいいんですよ。

八木 すごい説得されましたよ!

岡本 フォトモードもやってみたら面白かったし、ボイスドラマも聴いてみたら面白かったしで、完全に手のひらで転がされてますね。

八木 面白いと思っちゃったからしょうがない(笑)。

一同 (笑)

↑ボイスドラマの案内はロウが担当。ゲーム本編では描かれなかった10本のシナリオを、ボリュームたっぷりの音声とテキストで楽しめるぞ!(※6)

※4 『DQ』30周年記念の際、堀井さんの出身地である兵庫県淡路島にロトの剣とロトの盾の記念碑が設置され、『DQ』の聖地となっている
※5 小説版『DQⅠ』~『DQⅥ』の物語をベースにしたドラマCD。
※6 ボイスドラマを聴くにはゴージャス版のダウンロード番号、または追加コンテンツの購入が別途必要。

開発者イチオシのボイスドラマ

―― 皆さんが一番気に入っているドラマはどれですか?

八木 ボイスドラマは大きく分けてシリアスとギャグがあるのですが、ギャグだったら「おいでませ♡スナック氷点下」ですね。シリアスな方は「火竜の宿命~誕生編~」ですね。朗読劇になっているというのも込みで。

おいでませ♡スナック氷点下

内川 先ほど全体のバランスを見ながらと言いましたが、それぞれのお話のテーマや雰囲気がかぶらないよう差別化するのは意識しました。「火竜の宿命〜誕生編〜」は朗読劇とか少しホラーテイストがウリだったりするので、そこが八木さんの琴線に触れたのかなと思います。
八木 スクウェアのゲーム開発をやっていたので、「火竜の宿命〜誕生編〜」っていかにも昔のスクウェアゲームにありがちだなぁって思ったのですけど、これを『DQ』でやっちゃうんだっていう衝撃も大きかったですね(笑)。

火竜の宿命~誕生編~

岡本 僕は「ああ…青春のメダ女文化祭」かな。単純に話の面白さもあるんですけど、キャストの声優さんたちが劇中劇をやっているので、キャラクターを維持しながら新しいキャラクターを演じているのですが…ヤンキーのセーニャとか、ニュアンスがすごく良く出てるんですよ(笑)。

内川 テーマとして、劇中劇を通して本編では見られないキャラクターの一面を描きたかったというのが根底にあります。
岡本 ボイスのキャスティングをしている時も、できるだけ兼ね役で違う表現ができるみたいな、声優さんの凄いところを伝えたいなと思ったんですよ。全然違うキャラクターをやってもらったというのもあって、面白かったですね。話は超くだらないんですけど(笑)。

内川 ヤンキーとかスケバンとか、言葉が古い(笑)。

ああ…青春のメダ女文化祭

―― 内川さんは?

内川 そうですね…。あえてひとつ挙げるとしたら、「今宵あなたは ぱふぱふマスター」はかなり異彩を放ってると思います!

一同 (笑)

内川 これはぜひやっていただいて、感想いただきたいです。ボイスドラマとしては、結構挑戦的なことをやっているので。

岡本 『DQXI』にはいろんなバリエーションの「ぱふぱふ」を用意したのですが、その一環としてNintendo SwitchのHD振動という機能を使って、新しいぱふぱふの形を発明できないかという話が出たんです。

―― ? ? ? ?

岡本 任天堂さんに、その相談をしたら、ぱふぱふの振動のサンプルをわざわざ作ってくださって。そのサンプルをもとに、みんなで新しいぱふぱふについて議論を交わしましたね。

内川 とても真面目な顔で(笑)。

岡本 ということで、任天堂さんにもご協力いただいて今のかたちになりました。

―― 八木さんはそれに対して何かありますか?

八木 ボイスドラマってお話を聞くだけだと思ってたので、HD振動の話が出てきた時は、「もはやボイスドラマじゃないじゃん!」ってなりましたね。

一同 (笑)

岡本 意表を突くのは大事だから。

八木 しかも、もうHD振動を作ってもらってますよと言われて、「え、そうなの!?」と。個人的には2回意表を突かれました(笑)。

内川 でも、当初想定していたより、かなりリッチな仕上がりになりましたよね。

八木 手間暇はかかっていますよ。

内川 これも工数かからないからって最初は八木に言っていたのですが、最終的にかなり凝った内容になってしまって。

八木 そうなんですよ(苦笑)。本編の開発をしている横目で、そのボイスドラマを見ていたら担当のスタッフたちがもともとなかった仕様を盛りはじめて(笑)。

内川 どんどんどんどんアイデアが出てきてね(笑)。クオリティを上げるために、みんな頑張ってくれました。

岡本 挑戦的だよ、これは。あとはもうJoy-Conを手に取って、目を閉じて感じてもらえればと。でも…何か言われるだろうなと思ってはいます(笑)。

内川 …と、なんだかくだらない話ばかりになってしまっていますけど、もちろんシリアスなボイスドラマもたくさんあります。どれもいい話になっていますので、ご期待ください!

八木 いろんな意味で斬新ですよね。このボイスドラマは、すごい…!

今宵あなたは ぱふぱふマスター

岡本 ところで「愛のこもれび」はオープニングムービーの様子を回収したってことでいいの?

内川 あの、ベロニカがセーニャを探しているシーン?

岡本 そうそう。ボイスドラマを聞いた時、オープニングムービーのあのシーンが想像できたから。それを回収する意図があったのかなって。

内川 なるほど。でも、ボイスドラマの話は年代が違うから、果たして回収できているかどうか…。

岡本 じゃ、そういうシーンをほうふつさせるよってことで。

一同 (笑)

愛のこもれび

3人が推す「S」なところ!

―― みなさんが特に注目してほしい部分はどこですか?

岡本 僕は間違いなくグレイグとホメロスの追加シナリオですね。最初、内川は反対派だったんですよ。どうにか入れられないかと、内川と2人でフレッシュネスバーガーでポテトを食べながら、長い時間掛けて案出しをしました。

内川 すいません、ポテト食べた下り、忘れてました(笑)。(新たな仲間になる話を含め)ホメロスの追加シナリオはどこに入れるかが悩ましくて…。仮に「運命の分岐点」を用意して、それをプレイヤーが任意で選べたらいいんじゃない? とかいろいろ案は出ましたが…。

岡本 ただ、そうすると、以降の話を作り替えることはできないから難しいねって話になって(苦笑)。紆余曲折あって、現在の形になりました。あとは、シルビアの追加エピソードも見どころです。『DQXI S』の中で、唯一6人でバトルするので!

内川 僕はボイスドラマですね。堀井さんや岡本と一緒に、こだわってキャスティングした皆さんの声で紡がれる物語、本編ではないですけれどぜひ聞いてもらいたいですね。

八木 開発ディレクターの立場で言うと…全部。だって、大変だったんだもの(笑)。

一同 (笑)

八木 追加シナリオ、ボイスドラマ、フォトモードなど、旅を楽しむという要素として新要素が増えているので、それらを堪能してもらいたいですね。

内川 確かに。キャラクターとの冒険感はだいぶ上がりましたね。

八木 ライドモンスターも増えましたしね。もともと完成度の高かった『DQXI』に、そこにさらに追加要素をいっぱい入れたので、隅から隅まで触っていただければと思います。

楽しみに待っている勇者たちへメッセージ

岡本 3DS版やPS4版をプレイされた方にとっては、ボイスが追加されたりだったり音楽が変わったり、以前とは違った新しい感じ方ができると思っています。遊んだことがない方にとっては、配信中の体験版にまず触れてもらえたらと。お話はとても楽しいものになっていると思うので、これを機に、まだ触れていない方がいればぜひ『DQXI S』を楽しんでいただけたらと思います。

内川 やっぱり注目していただきたいのは、仲間との冒険というところだと思っています。そのためにいろんな要素を追加しました。すでに『DQXI』を遊ばれた方も、仲間たちとの新たな思い出を作っていただけると思いますので、ぜひ発売を楽しみにしてください。

八木 開発スタッフ一同、どうせやるならこれくらいやったほうが絶対面白くなると思いながら、時間を掛けて作ってきました。ようやく形になって実を結び、お届けできます。追加された新要素もいいのですが、そういうことを考えなくても隅から隅までも楽しんでいただいて、『DQXI S』の世界を堪能していただけたらと思います。

―― 最後に、ニンドリ恒例の質問です。最近食べた美味しいものは?

八木 昨日が娘の誕生日だったので、奥さんが娘のために作ったご飯が美味しかったです。

岡本 それはずるい(笑)。僕は堀井さん、関係者の皆さんと一緒に『DQXI S』の打ち上げで行った焼肉屋「USHIGORO S.」さんの煌びやかなお肉たちですかね。美味しいご飯食べながらワイワイするのっていいですよね。

―― お店の名前にも「S」が付いているんですね(笑)。

内川 僕はトウモロコシ。

岡本 家庭的なもの、豪勢なもの、質素なものでまとまりましたね(笑)。

インタビューこぼれ話
『スマブラSP』勇者参戦について聞いてみた

―― 任天堂から発売されたNintendo Switchソフト『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(以下『スマブラSP』)に参戦した勇者について、原作スタッフの感想を聞かせてください。


岡本 『スマブラSP』に出るって話を初めて聞いた時、本当にびっくりしました。『DQ』のキャラクターが他社のゲームに登場するってほぼやってないに等しいしね。『DQXI S』に絡めて何かやる部分も含めて、いろいろ相談がきまして。カラーごと歴代の勇者にしましょうとか、色んな話をさせていただいて。任天堂さん側のやりたいこと、スクウェア・エニックスとしてはお客さんがこう思うからということを桜井さん(政博さん。『スマブラSP』のディレクター)に受け止めていただいた上で、さらに乗っけてきたっていう感じですね。すごく作り込んでいただいて、本当に嬉しかったですね。

内川 実はこの話がきたときに、監修の依頼が回ってきました。いち早く内容を見させていただいたのですが、個人的にはマップがすごくダイナミックに表現されていて感動しましたね。ロトゼタシアを全部使って、「こう来たか!」とスケールのデカさに驚きました。あとは、下必殺ワザの「コマンド選択」など、『DQ』の特徴をしっかり取り入れてくださっていて、とにかく最高でしたね。

八木 私はまだ遊んでいないのですが、この勇者を見たらやらなきゃって思いました(笑)。

―― 八木さんは勇者で『スマブラSP』デビューですね(笑)。

八木 プレイしている様子を見ると、勇者を使いこなすのは難しいかなぁ? 実はNINTENDO 64の初代『スマブラ』は遊んでいたんですけどね。人がやっている勇者を見ると、結構強いんだなって思いました。あと、『DQ』の戦闘をどうやってアクションゲームに落とすんだろうって思ったんだけど、あんなふうに考えられるってすごいなって思いました。

内川 桜井さんの落としどころの見つけ方がすごいですよね。勉強になります。

八木 桜井さん自らプレイして勇者を紹介する動画を見たのですが、私があんなに使いこなすのは無理なんだろうけど、すごくテキパキと動く勇者の姿はカッコいいなぁ。

内川 『DQ』が他のゲームとクロスオーバーすること自体があまりなかったから当たり前ですけど、勇者がモンスターボールを投げるって、めちゃくちゃ新鮮な絵面でしたね(笑)。

―― 『スマブラ』でも勇者はしゃべりますが、音声収録は立ち会ったのですか?

岡本 僕が行きました。桜井さんって、全部自分でやるんですね。キュー出しも自らやられ、決断も早かったですね。


ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S 公式サイト

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