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『マリオテニス エース』任天堂×キャメロット 開発者インタビュー(ニンドリ18年8月号より)

これまで据え置きゲーム機と携帯ゲーム機で発売されてきた本シリーズ。それぞれ異なる要素を充実させて進化してきました。しかしNintendo Switchになったことでそれらが夢の合体を果たし、さらに駆け引き度もアップして、まさに別次元の集大成タイトルに! というわけで、開発会社のキャメロットに早速お邪魔してお話を訊いてきました。

※ニンテンドードリーム2018年8月号収録

エナジーを使った駆け引きとオンライン対戦が魅力の『マリオテニス』

もはや定番となった『マリオテニス」シリーズの8作目。ショットの打ち分けによるテニスの駆け引きの楽しさはもちろんのこと、エナジーを使用した「ねらいうち」といった新要素に加え、これまで登場したスペシャルショットなども搭載。さらには、これまでは携帯機シリーズで主に遊べたストーリーモードや、オンライン対戦など、これでもかと遊びが詰めこまれたテニスゲームとなっています。

現実のテニスのルールの中で、実際のテニス同様、多彩なショットを打ち分けて相手を崩し、チャンスをものにしていく『マリオテニス』。基本的なショットとして、高い弾道のトップスピン、曲がるスライス、速いフラット、奥を狙うロブや手前に落とすドロップショットがあります。しかし、本作のカギをにぎるのは左上のエナジーゲージ。このエナジーの駆け引きで“ならでは”のショットを戦術に組み込むことが重要となります。

さらに詳しいゲーム紹介についてはこちらの動画と公式サイトをご覧ください。

▶︎『マリオテニス エース』公式サイト

※本インタビューは2018年6月のソフト発売直前に行われたものです。その後、更新データによりキャラクター(ゲッソー、ノコノコ、ディディーコング、キャサリン、パタパタ、ボスパックン、ヘイホー、チコ、ブンブン、ポリーン、カメック、カロン、ファイアパックン、ほねクッパ)などの追加や各種調整がされていますので、あらかじめご了承ください。
※更新データのダウンロードにはインターネットに接続する必要があります。

任天堂×キャメロットで贈る、シリーズ集大成

登場していただいた開発会社キャメロットの高橋兄弟と、任天堂側のプロデューサー伊豆野さんのプロフィールからお届けします。(写真左から)

高橋 秀五さん
キャメロット代表取締役副社長。兄である宏之さんとともに多くのタイトルを手がけてきた本作のディレクター。お兄さんと同じレフティ。

 

高橋 宏之さん
プロデューサー。開発会社キャメロットの代表取締役社長。N64『マリオゴルフ64』より任天堂ハードに参入し、『マリオゴルフ』『マリオテニス』両シリーズをはじめ、『黄金の太陽』シリーズなども生み出してきた。本作ではストーリーモードのシナリオも担当。

 

伊豆野 敏晴さん
任天堂側のプロデューサー。これまでキャメロットとタッグを組んで多くのヒット作を手がけてきた。ほかにも3DS『Ever Oasis 精霊とタネビトの蜃気楼』などのプロデュースも担当している。

マリオがエナジストに!? キャメロット節全開のストーリー

RPGと変わらないストーリー制作!?

—— 本作は『マリオテニス』シリーズの集大成でありつつ、キャメロットの集大成、みたいな印象すらありますね。ソル神殿にエナジーに…、キャメロットさんが昔開発された『黄金の太陽』を思い出しました。

秀五 「精霊が出てくるの!?」って思いましたか?

—— 今回のマリオはエナジストだ! って。

一同 (爆笑)

宏之 …ああ、そうか。「エナジー」っていう言葉は、僕は一般名詞だと思って書いているんです。日本読みでいうと「エネルギー」じゃないですか。日本人からすると特殊な名詞っぽく聞こえるのかもしれないですけれど…。そう言われてみると、『黄金の太陽』に結びつく人もいるんだ、って今思った(笑)。

—— いえ僕らが勝手に『黄金の太陽』を思い出して「テンションがうなりを上げた!」っていうだけの話なのですが(笑)。ソル神殿だし、封印は開かれた! って。

秀五 (宏之さんに向けて)いや僕も(『黄金の太陽』の)エナジーなのかって思ってたよ! 超能力に近いイメージだから。

宏之 僕にとっては「エネルギー」って書いて「エナジー」っていうだけのことなんですよね。

ソル神殿に封印されていた4つのエレメンタルスターが物語の重要なカギとなる、キャメロット制作のRPG『黄金の太陽』。謎解きや戦闘で使える能力“エナジー”を扱える人たちをエナジストと呼ぶ

©2001 Nintendo / CAMELOT

—— そういうわけで、本作は据え置き機のタイトルでありながらストーリーモードもあって、1人でも遊び応えがありますね。

伊豆野 はい。これまで『マリオテニス』シリーズは据え置き型と携帯機で分けてきて、携帯機の方にストーリーモードが入っていましたよね。でもNintendo Switchは携帯機のように持ち運んで遊べるゲーム機ですから、ストーリーもほしいですよねと。

宏之 とはいえ「どうするんだ」というふうには思ったんです。結果、オープニングムービーのとおり、スポーツのゲームとしても、マリオのゲームとしてもありえないような、むちゃくちゃなことが起こるシチュエーションでまとまりましたけど(笑)。

—— どのように考えて今回のお話を作っていったんですか?

宏之 お話作りはイメージが大事で、自分自身で謎解きをしていく感じですね。ラケットの由来はなんなのかとか、ルイージを連れていく理由はなんなのかとか。

—— ルイージをフィーチャーされていることには、どんな理由があるんでしょうか?

宏之 それは…チャレンジですかね。

一同 (笑)

宏之 意外性がほしかったので。一番意外かなと思ったのが、ふだん黒子的な存在であるルイージが主役を張ることかなと思ったんです。マリオの行動も複雑な感じになるんじゃないかなと思いましたし。マリオのお話って、マリオとピーチ姫の関係性はわかりやすいですが、その他のキャラのそれぞれの関係性はわかりにくいものになってしまうと思うんです。その中でルイージはマリオにとって大切な弟という存在であるはずですが、では他のみんなにとってはどんな存在なんだろうとか、この世界にとってはどうなんだろうとか。考えさせられる人物だと思います。

—— そう思うと、深いですね。

宏之 マリオが冒険に出発していくときの気持ちも、悲哀とか切なさみたいなものをもたせると深みが出るんじゃないかなと思いました。オープニングでいうと、まあ、初めて見たときのショックは大きいんじゃないかなと思いますし。

秀五 グリップに巻かれちゃうしね。

宏之 しかもただ巻かれて連れていかれるんではなく、マリオの分身みたいな存在なのに、邪悪なものの化身になってしまうという。それが面白いんじゃないかなと思いました。

—— オープニングの裏側には、そういう意図があったんですね。

宏之 あと僕が作ってきたこれまでのマリオ関連の中では、ピーチ姫が誘拐される物語はひとつもないんです。理由としては、「マリオが冒険してクッパと戦ってピーチ姫を取り返す」ということ自体は良いんですけど、ピーチ姫がさらわれたとして、それは果たしてスポーツで解決することなのか? と。

一同 (笑)

宏之 そんな悠長なことでいいのか、って(笑)。それはいつもの『スーパーマリオ』のシリーズで遊べるからそれでいいと思いますし。そうして全体の構成を考えてからお話を書き進めていくんですが、ゲームのストーリーって、ゲーム性の部分と起こるエピソードとの間に矛盾があってはいけないので、ある意味小説を書くより難しいと思うんですよ。その点、僕はRPGのシナリオをたくさん書いてきているので、おかげさまでなんとかなったと思います(笑)。だから、今回はRPGのお話を書いているのとほぼ変わらなかったです。

秀五 『マリオテニス』シリーズの中でも、キャメロット制作という感じの物語になりましたよね。

伊豆野 ラストのシチュエーションも…ああこれはまだ言えないですけど(笑)。さすがと思いました。

お話にあるように、ストーリーモードではプレイヤーがマリオとなって、連れ去られたルイージを探すことに

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