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ラフスケッチも公開!? 『星のカービィ ディスカバリー』新大陸への軌跡インタビュー

新生した3Dカービィのキャラクターデザイン

3Dアクションになって変わったキャラクター表現

—— カービィは3D作品になってもまんまるですね〜。

熊崎 カービィを改めて原点から見つめ直そうと思ったのですが、やはり彼は彼ですので親しみを減らさないようにその変化は最低限にしています。大きな点では、目の光沢の反射ぐらいですね。

神山 ちょっと目が立体的に膨らんだ形状になったくらいですかね?

熊崎 はい。口も新しい3D用のモデルになって、少しへこんでいます(笑)。カービィはそこまで印象が変わらないですが、他のキャラクターは今回の世界観に合わせて変化する部分が多いかと思います。デデデ大王は特に世界観の影響が大きいキャラクターですね。

—— メインキャラクターの中ではデデデ大王が一番変わってますね!

熊崎 これ、デデデ大王の担う宿命でもあるんですけど、カービィに比べてディテールがあるキャラクターですので、毎回デザインをする際にはその作品の世界観が出るように調整しています。シリーズものとしてデザインを固定させなくちゃいけない、と考え今回も過去のデザインをどこまで継承するか悩みました。カービィがほおばりヘンケイで新たな個性を出したとしたら、デデデ大王もこの世界で暴れるような個性を出さないと、と考えています。カービィと対比して頭身も高いので、デデデ大王は首を体と繋がった「おにぎり体型」にして、ビジュアル面からもどっしりとしつつユニークな感じになりました。

星のカービィ64

星のカービィ スターアライズ

—— 丸に対して三角ですか!

熊崎 最近のデデデ大王は、首と体が離れて等身も高くなっていたので、丸形のカービィに対して三角形のデデデ大王にし、恰幅のいい大王らしい姿を見つめ直しました。コスチュームを豹柄にしたり、カービィより数か月は前に新世界で暮らしているので、そこで敵陣営と出会って、あの服に着替えたという設定です。あと、物語終盤に登場する彼専用のマスクも含めて、その世界ならではのワイルドなデザインに仕上げました。ちなみに、着ているガウンは豹柄ですけど、ワイルドな敵陣営を見て豹柄の服に着替えた、ということで…誰かの毛皮を剥いだ訳ではないです!

一同 (笑)

熊崎 今回も私がデデデ大王の声を担当したんですが、デデデ大王の声は結構たくさん収録したんです。そこまで出番があるとは思いませんでしたが、ワイルドさが出るよう全力で取り組みましたのでぜひ聴いていただければと思います。それにプラスして、デデデ大王は専用BGMで登場するのですが、野生を感じさせるための「うぉー」という雄叫びに合わせて「シャウト オブ デデデ」という曲名になっています。

—— ちょっとNINTENDO 64の『星のカービィ64』時代を彷彿とさせるかも?

熊崎 顔つきはたしかに『星のカービィ64』の頃に近いところはありますが、意識はせず結果的にそうなったという感じですね。ただ、デザイン担当は『星のカービィ64』の頃から関わっている北(健一郎さん)なので、本作の世界観に合わせてデザインし直して、とてもワイルドなあのデザインになったのですが、もしかしたら『星のカービィ64』のデデデ大王に似てしまったことも、自然な流れだったのかもしれませんね。

—— メタナイトは闘技場で登場しますが、彼については?

熊崎 初の3D作品でメタナイトがいないなんてありえないですよね?(笑) 神山と最初に話した時、彼は隠しボスとして登場させようと考えたりもしました。製品版では闘技場で彼の出番がありますが、あれだけの才能と存在感のあるキャラクターですので、もったいなく感じてまして。

—— ……と言いますと?

熊崎 メタナイトがなぜ町にいるのか、バックストーリーを少し考えました。彼はみんなの目の届かないところで新世界を探索していて、カービィとは別の方向を進み、活躍していたんです。今ではなぜ町に常駐しているかと言いますと、町を用心棒のように守っているからなんです。デデデ大王とは違い、精神力の高い彼はビースト軍団に染まることなく戦いを挑み続けています。メタナイトらしい振る舞いで、ひとつの作品になるくらいの活躍をしていたんです。

—— デザイン面はどうでしょうか?

熊崎 今回は原点回帰みたいなことも考えたのですが、カービィ同様シンプルなデザインですので、シルエットを変えることをせず、ディテールを変えました。また、持っている剣のデザインについてはひとつこだわりがあります。バトル中にメタナイトがおなじみの剣を失うと、代わりに昔から使っていた剣を出す、という特別なシチュエーションがあります。

神山 ソード能力で戦い、移動の時に襲われるとつばぜり合いになります。それに勝つとメタナイトの剣が飛び、カービィがすいこむと「メタナイトソード」になってメタナイトの剣を奪えるんです。この状態だとメタナイトは剣を持ってないので、自前のスペアを出すわけです。

熊崎 最初のスペア案は木刀とかだったんですけど、FC『星のカービィ 夢の泉の物語』で使っていたデザインの剣にして、あの剣もまだ持っているんだ! ということにしました。原点回帰ですね。

つばぜり合いに勝つとメタナイトの剣をはじくことが出来ます。まだ見たことがない方はぜひ試してみてね

—— バンダナワドルディは、もうすっかり2Pプレイヤーのポジションでおなじみになりましたね。

熊崎 3DS DL『カービィファイターズZ』から継承し、持っている槍の布がオレンジ色になるなど、とても細かい違いはあります。あとはバンダナの布の質感とかも強化していますね。他のワドルディたちと違う存在であるマークとしてバンダナを付けた、ワドルディたちの代表選手です。本作でその役割も一層定着できたのかなと思います。デデデ大王の忠実な部下であったDS『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』の頃よりは、現在はどちらかというとカービィの友達に近い存在ですね。

—— 本作で新登場のエフェリンは、どのようにして誕生したキャラクターなのでしょうか?

熊崎 過去に登場した、旅人のマホロア、魔術師タランザ、秘書スージー、神官に従う三魔官たちと同様、シリーズ主要キャラになりますが、最初からカービィに同行する新キャラは『星のカービィ64』の妖精リボン以来です。デザインのテーマは、神話に出てくる幻の生物。動物らしさも残しつつ、カービィの友達になれそうな印象を目指しました。後ろ姿はちょっと欠けたハートにも見える、シンプルな造形になっています。声は小さな謎の生き物のキャラクターとして声優の間宮くるみさんアニメ「とっとこハム太郎」のハム太郎役で知られる声優に演じていただきました。

助けるべき存在になった 新世界でのワドルディたち

—— 本作でワドルディは敵のビースト軍団に捕まっていますが、なぜ彼らを必要として捕えているのでしょうか?

熊崎 核心部分に触れるところは伏せさせていただきますが、ワドルディたちは、ある目的のためにビースト軍団ボスの指示で1か所に集められています。この新世界にワドルディが飛ばされてきたのは、単なる偶然ではありません。ニンドリ読者さんの多くは、その真相をゲーム内で目撃されたあとにこの記事を読まれているかと思いますが、最後に判明する真実はぜひ皆さんの目で見ていただけたらと思います…。ひとつだけヒントを出すとしたら、たくさんの彼らが必要だったということです。

—— ワドルディたちを捕えているオリを持って飛んでいる生き物は何者なんでしょうか?

熊崎 名前は「クロッカー」と言います。色とカラスの鳴き声から命名しました。海外版はClockerです。戦闘能力はほどんどないのですが、偵察や物の搬送が主な任務です。現実のカラスなど鳥類も知性が高く物を集める習性があるので、本作のクロッカーもワドルディの入ったカゴを運ぶ役割にピッタリだと思いました。

神山 そうですね。彼らは従順でデデデ大王の言うことも聞くし…働き者ですね(笑)。

—— 『星のカービィ』と言えばステージ最後にある「ゴール扉」ですが、本作ではなぜワドルディが3体いるところがゴールになったのでしょうか?

遠藤 今までのような扉をゴールにしちゃうと、3Dのフィールドでは奥に壁があって扉がないと駄目ですよね。レベルデザイン的なことだけで言えば、奥に壁がないことで、ゴール地点の景色が広々と見えるようにできたり、印象的な景色にしたりといったことがやりやすかったなぁと思います。他にも本作では、ステージ内に捕まっているワドルディがいるわけですよね。例えば、『星のカービィ Wii』のエナジースフィアや『ロボボプラネット』のICキューブみたいな、無機物のアイテムなら地面を掘ったら出てきたり、マグマの底から打ち上がっても大丈夫だったんですけど、オリに入れられたワドルディが水の底から上がってきたらかわいそうじゃない? っていう場面がけっこう多くて(苦笑)。そこで、ワドルディが宝箱から出てくることで直接水やマグマに触れないようにしたり、水の底から地面が上がってきた後で宝箱が出現するといった工夫をすることで、かわいそうに見える場面を少なくしました。そこはとてもこだわりましたね。

熊崎 ゲームの目的をこれまでのシリーズ以上にはっきりさせたいと思っていました。今回、ワドルディがゴールになったという、いわゆる「可視化」がゲームの目的を明確にしてくれたと思います。カービィかこれまで「旅をして何かを追っていたら、気づいたら敵の本拠地に来ていた」というような、ちょっとのんきなところもあったのですが、今回はエフィリンから「助けて!」と言わたり、ワドルディを救出するという、より明確なストーリーで通せました。

—— うまくひとつにまとまったんですね。

熊崎 はい。ゲーム全体としてもその目的を感じることができ、さらに各ステージのゴールでもその都度感じてもらうことができました。オリのデザインを見ていただくとわかるんですけど、ビースト軍団のボスの存在も感じられるデザインになっています。敵を追ってワドルディを救出するという大きな目的を、本作では初めから最後まで明確に感じさせることができたかなと思います。

神山 ワドルディを助けるようにした理由はもうひとつあって、町を作りたかったからなんですよ。本作のゲーム性をアクションの遊びと、相性の良い探索を重視する遊びにしたかったからです。探索って探すアイテムの価値が高くないとわざわざ宝探しする価値が上がらないんですよ。それがすごく難しくて…。そういった面からワドルディの町にいろんな施設が出来て、貨幣価値のある物もちゃんとあって、いろんなものと交換できるっていう選択肢が広がりながら想像しやすい形で価値観を形成しやすいっていうのが町という形だったんです。

—— ワドルディの作る町でいこう、と決めたポイントは?

神山 町を作るのには誰がいいのかというと、そこに住む住民を助けるのがよくて、住民と言えばワドルディが一番付加価値が高いだろうなって(笑)。ゴールにもワドルディを置いているのは、アクションゲームが苦手な人でも最低限のワドルディを集められるようにしたかったんです。

熊崎 ただ、ステージで取り逃したワドルディがいると、エンディングまでプレイしたのにどこかに隠されたまま「わにゃわにゃ〜」って言ってると考えたら…攻略性のあるゲームですので仕方はないのですが、なんとかして助けたくなりますよね(笑)。

遠藤 1人だけ助けられず捕まったままのワドルディって、残したままにせず、全員見つけたい!という気分になりますね。ワドルディを助け出すっていう設定にしたからこそ、出来たことかなと思うんです。

熊崎 ちょっとかわいそうで、助けたいという気持ちが残りますよね。設定上はクロッカーがいろんな場所にワドルディを隠したり搬送する途中に置いていったという設定なんですが、ビースト軍団ってそんなに全員が知性に優れた軍団ではないので、なかなか統率が取れていなくて(笑)。ただお客さんがもっと集めたり助けたくなるよう、心に訴えかける設定にできたかなと思います。

—— ステージのどこかで「わにゃ〜!」って声が聞こえてくると、どうしても前に進めなくなりますね(笑)。

二宮 ワドルディの声は、程よいヒントとして途中で入ったんですよ。

熊崎 二宮さんの案でしたね。最初はもっと変な声でしたよね?

神山 わんにゃーお。わんにゃーお! って。

熊崎 最初は怖いというか、どこかで誰かが泣いているというか。出して〜、助けて〜、という表現だったのですが、真っ暗なステージで聞くとホラーゲームのように(笑)。そこで、わにゃ、わにゃわにゃ!と元気よくしてもらいました。ちなみに、ワドルディの声はサウンドスタッフの声を元に作っています。

—— 『星のカービィ』が30周年を迎えて、まさかワドルディにここまでスポットが当たるとは思いませんでした。

二宮 シリーズでは最初に登場するザコ敵だったワドルディが今回味方になっているのは、新世界に行ったことで敵が変わることによって、本当に違う世界に来たんだという状況が強調されるように、計算して考えられたことなんです。

熊崎 ほのぼのとした敵の象徴が彼らですし、プププランドではやられてもすぐにまたどこからか出てくるような存在です。本編においてカービィとはそんなに深く関わりがなかったのですが、ワドルディのキャラクター性の高さは十分な可能性を感じていますし、1回触れて消えるだけのザコ敵にしておくのはもったいなくて…。ワドルディがたくさん居るという設定を、もっと楽しく押し出せればなと考えて作ったのが町作りになります。

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