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ラフスケッチも公開!? 『星のカービィ ディスカバリー』新大陸への軌跡インタビュー

登場順に訊くボスキャラ それぞれのこだわり

ゴルルムンバ

熊崎 3Dとなった新シリーズに登場する最初のボスですから、ビースト軍団の印象を決定づけるデザインを目指しています。町を破壊するほどのパワーを持つ巨体で、3D空間を飛び回れるような迫力あるデザインにしました。リアルな動物の骨格を感じさせながらも、『カービィ』の世界らしいデザインに落とし込み、ビースト軍団ってこういうやつなんだ、ということを最初のボスから印象づけることができたかなと思います。前作『スターアライズ』のエンデ・ニルっぽいところもありませんか?(笑) エンデ・ニル以上にすごくスピーディーに動き回ってますが、難易度的には戦いやすく調整しています。最初のボスとしてかなりインパクトのある3Dボスに仕上がったと思います。

神山 『スターアライズ』のラスボスであるエンデ・ニルの制作を担当した住友(克禎さん。リードプログラマー)が作ってくれた最初のボスなので、エンデ・ニルを参考に組み立てているのだと思います。ビースト軍団の自己紹介的な立場でもあるので、捕えたワドルディのカゴを首飾りのようにして、筋肉モリモリで暴れ回るみたいな。そういう象徴として組み立てさせてもらいました。

遠藤 ゴルルムンバと戦う前にショッピングモールを通るんですけど、バナナが置いてあったり、ズシン! ズシン! と足音が聞こえるようにしたりなど、雰囲気作りも非常にこだわりましたね。

神山 最初にエスカレーターを登るところで、影がスッと動くんですよね。ゴルルムンバが上からカービィを見てるんですよ(笑)。その後通路に行ったら、ドシンドシンと振動がしたりとか、そういう気配を感じるものをいろいろ入れてますね。

遠藤 あと、実はその近くにトイレがありまして。入ると水の流れる音がちゃんとするんですよ。あの演出は私のお気に入りです(笑)。

熊崎 実際にトイレの中は入れません。そうするとボスの手前で分かれ道ができてしまいますから。トイレの音は、隠し要素として音が聞こえるだけなんです(笑)。

トロピカルウッズ

熊崎 ぜひウィスピーウッズ的な存在のボスを出したいと考えて作られたんですが、ウィスピーウッズとは別人で、ビースト軍団とは顔見知りなんですけど、軍団には属してないという立場です。なので、ビースト軍団とは喧嘩するような仲ですね。開発初期はめちゃくちゃ巨大で、ステージの上に登って戦うようなボスとして考えていました。その木の上に指示を出す猿がいて、そいつを倒すとクリアとか…いろいろ考えたんですけど、やはり直接戦いたいよねということで、今の形に落ち着きました。

神山 最初の案は、もうとにかく木が伸びて、そこへ登り、また伸びてって。ただ、この作り方は難しいなと思いました(笑)。

遠藤 やはりゴルルムンバがワールド1のボスとして登場して、続いておなじみのウィスピーウッズを出したいなと思ったので、ワールド2相応の難易度にしたいです。でもウィスピーは動けないから、これをどうやって、簡単すぎずにある程度手強い難易度のボスに仕上げようかって、熊崎と神山がすごく苦心するのを私は側から見ていました。

神山 レベルデザイン的に言うと、ボスの住処感を出すために、だいぶ頑張っています。ウィスピーがいるなら、大きな根っこがいっぱいある中をすり抜けていって、ここは何だろう? と思ったらそのままウィスピーが登場すると。

遠藤 映画的な演出ですね。

神山 カービィの手配書がいっぱい貼ってあったり、いろんな人工物が集められていて怪しい気配を感じたり。今作では、そこにいるボスの気配、雰囲気づくりを大事にしてマップを作成しています。

熊崎 ボス戦前の通路で流れる「こわいケモノのにおい」という曲があるんですが、実はインタラクティブミュージックになっているんです。この曲の担当はサウンドの下岡(優希さん)です。ドキドキしながらボスの所へ行ったらジャーン!と出てくる風にしたかったんです。いきなりボスと戦うのではなく、少しロケーションを味わいながら、ドキドキを最大化したいと考え、ボスまでの通路は最低限必要な分だけ用意し、演出しています。

キャロライン

熊崎 キャロラインはビースト軍団のアイドル的な存在です。最初は声優さんに声を当てていただき、喋らせようかと考えていたんですけども、終盤に登場するボスのみ人の言葉を話せるという設定もあり、また彼女もまた1匹のアニマルであることを強調するために、現在のような声にしました。

—— 猫のような声ですね。

熊崎 私の飼い猫(ソラくん。熊崎さんのInstagramで時々見ることができます)の声を録音して、サウンドチームに使ってもらいました。雄猫ですけど、豹らしい声を出すんですよ。…自前の素材ばかりで申し訳ないです(笑)。デザインは「星のカービィ」シリーズなので、決してセクシーすぎず、しなやかさと美しさを、という意識をしています。シリーズでも珍しい、良いデザインになったかなと思います。ちなみにキャロラインの名前は、爪を持っているしなやかなラインを持つネコ科という意味です。キャット、クロウ、ラインでキャロラインという感じですね。その由来に合わせ、英語版ではClawrolineという名前にしています。

遠藤 このステージはサーカスのテントの雰囲気を味わえるように、ボス戦の前もしっかり雰囲気を作っています。

二宮 これまで大きなボスが2体続いて、ここにきて比較的小さいボスですよね。迫力が出るかどうかって思ったんですけど、鉄塔に登るところとか、すごく迫力があってよかったです。

神山 ゴルルムンバ、トロピカルウッズと大きなボスが続くので、キャロラインは身軽で素早いボスにしようと考えていました。その特徴を印象づけるため、使ってくる技に縦の動きを豊富に取り入れています。ただ、カービィが一頭身で小さい分、ボスのサイズがある程度大きくないと迫力が出ないので、思っていたよりも大きくなってしまいました。

熊崎 大きさでも緩急を付けたかったんですよね。でも身長としてキャロラインは小さい方ですが、ビースト軍団の幹部はは基本的に体格が大きくなっています。

アルマパラパ

熊崎 アルマパラパはインパクトが強めのボスですね。ビースト軍団の幹部として行動していますが…作戦はちょっとうまくいってなくて。おとぼけキャラというか、ちょっとおかしな感じのキャラクターで、目がギョロギョロしていてインパクトもすごいです。手配書の絵を描いたり、物作りして人形を作ったりとか、手先が器用な面も特徴です。このデザインは開発の初期段階から考えられていたんです。

神山 突進してくるボスというのは3Dの遊びの基本なので、かなり初期から考えられていました。

熊崎 「転がるアルマジロボスを出したい」と、最初から抜擢されていました。アルマパラパはアルマジロがモデルで少しリアルなフォルムですが、『星のカービィ』らしさを出すため目に特徴を与え、文明の名残だと思われるものを身に纏っている点も含めて、今回の世界観とすごくマッチしたデザインになりました。これを後半に持ってこれたのはすごくよかったですね。ボス戦のチューニングも神山にお願いしているのですが、開発チームからも強すぎるとよく言われたボスで、私も結構強いなと思っています。ワールド5らしい手強いボスになりました。

神山 そうですね(笑)。今作にはコピー能力が進化して強くなる要素があるので、ボスが弱いと進化させて強くする意味合いが弱くなってしまいます。そのためボスをしっかり強くする必要がありました。ボスの攻撃パターンが多いと、プレイヤーがボスの攻撃を覚えて対応するのが難しくなってしまうので、アルマパラパは特に行動パターンをシンプルにしています。とにかく突進が怖いけど、何度か戦えば勝てるようになっているのではと思います。

熊崎 技の数は少ないけれど、それを感じさせにくいように行動パターンで工夫していますね。

神山 コピー能力の進化や、町のカフェの回復アイテムなど今作ならではの攻略法を活用しないと難しいボスになっています。本当はもうちょっと前の段階からやりたかったんですけど(笑)。

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