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ラフスケッチも公開!? 『星のカービィ ディスカバリー』新大陸への軌跡インタビュー

本編シリーズ初の3D作品として作られた『星のカービィ ディスカバリー』。そこに懸けた思いを開発者の皆さんにお聞きしていきます。
※ニンドリ2022年6月号の記事を再掲載したものです。

開発秘話&キャラクターの秘密に迫る!

開発者プロフィール

カービィシリーズ30周年王道2Dから王道3Dに

—— 『星のカービィ ディスカバリー』(以下、『ディスカバリー』)がどのような思いで作られたのか教えてください。

熊崎 初のフル3Dとなる『星のカービィ』を作るために、まずは数々の問題を克服する必要がありました。そのひとつに、前作『星のカービィ スターアライズ』(以下『スターアライズ』)を2Dの集大成として作ろうというのが最初にありました。

—— 最終決戦では3Dパートもありましたよね。

熊崎 はい。次の「3Dカービィ」を作るための下地作りは、その後に出た派生作品なども含めて下準備と考えていました。全てをやりきった次にやることは「これ(3D)だよね!」ということを、カービィチーム、特にハル研の社内で覚悟を固めるために作られたもので、『スターアライズ』から『ディスカバリー』までは一つの繋がった大きなプロジェクトと捉えられると思います。

『星のカービィ スターアライズ』

—— 地続きの計画だったのですね。

熊崎 『スターアライズ』は多くのシリーズファンに向けて、小さなお子様でもメインモードまではクリアできるようなテンポ感や、間口の広さを意識しました。対する『ディスカバリー』のテーマは、コアなプレイヤーさんや海外の方に「歯応えのあるアクション」が求められているという話をよく聞きますので、そこに応えられるような奥深いフル3Dアクションを目指しました。そしてまだ『スターアライズ』が届いてない層にも届けるべきだとも考え、導き出されたテーマは「間口が広くて深いカービィのフル3Dアクション」を実現することと、加えて新シリーズの始まりですので「変幻自在でヘンテコなヤツ」というカービィが持っている特徴を改めて見つめ直す、それらをテーマにしました。

—— 『ディスカバリー』の言葉に込めた意味や思いを教えてください。

熊崎 サブタイトルは、本作の世界観を一言で言い表したものになります。一言で「忘れられた文明の眠る新大陸の発見」という世界観を表現した言葉から生まれました。日本版タイトルはこの新大陸の発見、という部分からディスカバリーとなりました。新しいカービィですので、ゲーム全体にも様々な新発見を張り巡らせてありますので、それも含めてふさわしいものだと思います。実はこのタイトル、一番最初のラフスケッチに「NEW World discovery!」って書いてあるんですよ。新大陸って、英語では「New World」になるんですけど、新大陸発見なので「New World Discovery」って書いてあって。ちなみに北米版では『Kirby and the Forgotten Land』というタイトルで「忘れられた大陸」を意味します。大陸そのものも忘れられてますし、世界観の説明としても、この世界には何か大きな忘れ物が存在する、ということを伝えています。ただ「Forgotten」を日本語でカタカナ表記にした場合、あまり一般的ではない英語ではないかという意見があり、日本においては『ディスカバリー』の方がテーマが伝わりやすいと考え、国ごとによりよく伝わるサブタイトルが採用された形になりました。

最初のラフスケッチ

二宮 本作は「忘れられた大陸を発見する」がテーマなので、「発見」の部分を採ったのが日本版タイトル、「忘れられた大陸」を採ったのが海外版タイトルになりますね。今回初めて「星のカービィ」シリーズが3Dになるということで、しばらくシリーズから離れていた人や、まだ遊んでいない層も含めて注目が集まるタイミングでしたので、このタイミングに合わせてしっかりと新しいことに挑戦しました。その上でカービィって面白いな! って思ってもらえることがすごく重要だと感じましたので、それを体験できるようなゲームにしていきたいなと思いました。

神山 任天堂ホームページ「社長が訊く」にも掲載されていますが、「過去にもカービィの3Dアクションの開発に挑戦したけどうまくいかなかった」と社内でも聞いたんです。そこから少しずつ開発チームが経験を積み上げていき、3Dアクションに挑戦できる土台を作っていきました。それがやっと整ったのが今回だったので、その大きなプロジェクトで、王道のカービィシリーズでディレクターを初めて任されたんです。

「社長が訊く 星のカービィ Wii」より幻の作品

—— プレッシャーですよね!?

神山 はい。絶対に失敗できないなというプレッシャーがすごかったです。これだけ準備が整った状態でもなかなか作れないと思うので、「もしこれで失敗しちゃったらハル研で3Dアクションゲームに挑戦できる機会がまた遠のくんじゃないか」って思っていましたので、無事に完成することができてすごく嬉しく感じています。

熊崎 今思えば、彼らスタッフを励ましていたところもあるかもしれないのですが、本当に心から、今ならできる、機は熟したと思っていました。私としては実現出来る実力はもうあると感じていて、あとはチャンスをうかがっているだけという状況だと思っていました。ハル研内ではずっと準備している部分があり『スターアライズ』の完成をもって、満を辞してという気持ちではじめました。

神山 それまで社内で積み重ねてきた3Dアクションの経験を踏まえて、ニンテンドー3DS DL『カービィのすいこみ大作戦』で一度ディレクターとして実践経験を得られたことが大きかったです。この経験によって、3Dの大規模開発に必要な環境整備が、どうすると良いのか具体的にイメージできるようになったので、その後の開発に耐えられる土台作りをしっかり行うことができました。

『カービィのすいこみ大作戦』

遠藤 作り始めは「3Dアクションでカービィって本当にできるんだろうか?」と、開発チーム内でけっこう懐疑的な声がありましたね。「次のカービィも2Dで作るんだろう」ってチーム内の多くの人が思っていたりする中で、熊崎や神山が「3Dでやるぞ!」と言っていて。「本当に出来るのか!?」と思いながら序盤の数面を作っていくと、「これはいけるね!」という手応えを感じたので、その感触を大切にして作っていきました。

—— レベルデザインディレクターの遠藤さんとしては、どういう風に作っていこうと考えたんですか?

遠藤 いきなり3Dアクションを作るといっても、何ができるかは分からなかったので、まずは『星のカービィ』の得意分野の2Dの遊びをひとつずつ「3Dになったらどうなっていくんだろう」と考えていきました。でもただそのまま3Dになっただけだと何も変わらないので、3Dになるならどんな遊びができるかっていうアイデアを考え、2Dの遊びをひとつひとつパワーアップさせて作っていきました。

—— 2Dをただそのまま3D化しただけじゃないと。

遠藤 その上で、3Dになってパワーアップした遊びは出来たとしても、いま世の中に出ている3Dアクションゲームに見劣りするんじゃないかなぁと思いました。そこでステージクリア型の3Dアクションゲームでありながら、ある程度の広さのフィールドを用意して、そこを探索しながら進むようなゲームを作ろうと考えたんです。序盤に広々としたステージに行くような調整をすることで、本作の楽しさがはっきりと伝わるような作り方をしました。

新たな冒険のはじまりは初のテーマソングで彩る

—— オープニングでは不思議な言語の歌が流れます。そのテーマソングについてのエピソードを聞かせてください。

熊崎 本作はサウンドにも力を入れています。例えば、場面によってBGMが変化するインタラクティブミュージックを取り入れたのですが、それ以上にもっとサウンドでも新しいことにチャレンジしたいなと考えていました。Switch DL『スーパーカービィハンターズ』でも同じように考えていて、物語の最後に流れるエンディングソングを取り入れました。

—— 3DS『星のカービィ ロボボプラネット』でもありましたね。

熊崎 カービィらしいフレーズであれば、歌もユーザーになじんでご理解いただけるという手応えを感じていました。実はあの頃からひとつずつ準備をしていていて。本作でも世界観と自然になじむ形の演出となるようにと考えてきました。「かつて文明が栄えていた時代に流行した歌」という設定にすることで「この世界にもかつてそういった娯楽があったんだ」「人の息吹があったんだ」と感じてもらえるものが出来ました。その歌った人物の姿はもう見えないけど、その声があったという事実からさまざまな想像ができ、世界観が深まるようにと「WELCOME TO THE NEW WORLD!」という歌を作ったのです。ただ、カービィらしさはできるだけ担保したかったので、突然の歌声にびっくりされすぎないように、『スーパーカービィハンターズ』のころから計画し、かなり慎重に進めました。

—— 作曲担当はどなたですか?

熊崎 GB『星のカービィ2』の頃からカービィのBGMを担当している池上(正さん)に、編曲は小笠原(雄太さん)と外部のアレンジャーさんにお願いしました。外部の方に全てお願いするという方法もあるのですが、ハル研でできるだけ担当し、カービィらしさを取り入れて作りました。作詞は私が行い、まず日本語で歌詞を書いて、その後にあの世界の言葉に組み替えて作っていきました。お昼寝は「ノディルナ」、美味しいは「マーシャス」、ようこそは「ハァロア」、キャンバスさは「アドゥレシア」、ハートは「ファルダ」、NEW WORLDは「ルゥ ワァ」…と言った感じで、英語的にも聞こえるし、日本語的にも聞こえる言語、特に日米の言葉を織り交ぜつつ歌いやすい響きになるようにし、また架空言語ながらもなるべく意味が通じることを目指しました。単語ごとにもなるべく意味を持たせたことで説得力が増し、大陸名さえわからない、架空の世界に深みを出せたと思ってます。

—— 歌っているNEICHELさんはどんな方なんでしょうか?

熊崎 本作のために生まれた架空の歌手です。物語の設定として現在はどこかに行ってしまっていませんが、かつてその世界に存在した歌姫のアーティスト名になります。ちなみに名前は、あの世界で自然や新緑を意味する「ネイチェル」からです。

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