• HOME
  • インタビュー
  • 【インタビュー】拡大版! 開発者に訊く拡張された新世界『スターリーワールド』インタビュー『星のカービィ ディスカバリー Nintendo Switch 2 Edition + スターリーワールド』

【インタビュー】拡大版! 開発者に訊く拡張された新世界『スターリーワールド』インタビュー『星のカービィ ディスカバリー Nintendo Switch 2 Edition + スターリーワールド』

星のカービィ ディスカバリー』(以下『ディスカバリー』)を舞台に描かれた、新しい物語『星のカービィ ディスカバリー Nintendo Switch 2 Edition + スターリーワールド』の開発秘話を大公開!
ニンテンドードリーム2025年11月号に掲載した内容に、新たな要素をプラスした拡大版でお届けします。

大地から流星へと変貌を遂げた“新世界”のひみつに迫る!

▼開発者プロフィール

任天堂 プロデューサー
二宮 啓さん

3DS『星のカービィ ロボボプラネット』からシリーズに関わり、本作ではプロデューサーを担当。ハル研究所といっしょに制作を進める。
ハル研究所 ゼネラルディレクター
熊崎 信也さん

カービィのゲーム開発に携わって24年目のゼネラルディレクター。本作もゲーム全体やストーリー、テキスト、BGMやデザイン監修を担当。

Nintendo Switch 2 Editionの『ディスカバリー』開発経緯

二宮 もともと、『ディスカバリー』の世界でもっと遊びが展開できたらおもしろそうという考えはあったのですが、形にはできていませんでした。そこにNintendo Switch 2 の話が出てきまして、その性能を活かせば『ディスカバリー』の世界を魅力的に拡張できそうということで、よろこんで企画を立ち上げました。そこからは、Switch 2 でのカービィの体験をいち早く届けられるように急ピッチで開発を進めました。

熊崎 DSの『タッチ!カービィ』、もう20年も前になりますね。そのときの開発のムードも覚えていますが、どの時代もそのときに出せる範囲で、全力で開発を行います。本作でもそれは変わりません。
当然『ディスカバリー』も、当時の持てる力を出し切って開発したものでしたので、高評価というお言葉は大変うれしく思います。ですが、中にはNintendo Switchでは実現の難しい要素もありました。より彼方まで冒険できるようにするか、フレームレートにこだわるか、当時も多くの検討を行いました。そして今回、新ハードになったことで、より全力で作れる新たな場所も増えました。その結果、今までの『ディスカバリー』で見えていた、見慣れた遠くのビルの向こう側にまで流星の力で冒険できるようになり、より楽しい冒険が実現したその瞬間に、強い手応えを感じました。技術の向上とビジュアルの美しさと遊びが上手くかみ合った瞬間でした。

※『タッチ!カービィ』…2005年3月24日に発売されたニンテンドーDS向けのペンアクションゲームで、「星のカービィ」シリーズ初の「タッチペン」を使ったタイトル。

ゲームボリュームの目指した着地点

二宮 本編クリア後に『スターリーワールド』単体で遊んでも十分満足感があり、バリエーションが感じられる数を用意しました。本編と並行して遊ぶ方もおられるので、両方を同時に進めても重すぎないボリュームになることも意識しています。
余談ですが、各ワールドのどのステージをスターリーステージにするかのチョイスはハル研究所さんにお任せしていたので、私はどのステージが選ばれるかを毎回楽しみにしていました。

熊崎 もともとの『ディスカバリー』のボリュームは、シリーズ全体からみても大きいものでした。また、ビースト軍団との対決の流れもあり、本編全体のバランスが当初の『ディスカバリー』らしさと大きく異なってしまわないようにと検討を重ねました。また『ディスカバリー』にはすでにクリアしたあとも楽しめる要素もあり、今回さらにその先を作るという単純な延長のゲームにしたくもなくて、Switch 2 からはじめて『ディスカバリー』を遊ばれる方にとっても、楽しみやすいサイドストーリー型を目指しました。


熊崎 『スターリーワールド』ディレクターの東藤(由美さん)川合(匡史さん)、そして今回レベルデザインをとりまとめた坂本(竜輔さん)ともステージ数についてはよく議論しましたが、選定基準としてはこれまで見えていた世界のその先へ行けるというロマンを強く感じられる場面を探し、ちゃんと遊びの変化も大きくなるステージを選びました。そうすることで、結果的に元のステージのアレンジBGMもバランスよく収録することができました。多様なアレンジ曲もお楽しみください!

クリア後でなくても遊べる物語にしたワケ

二宮 ゲーム体験の違いについて補足します。『ディスカバリー』本編をクリア済みの方は、『スターリーワールド』の世界を一気に進んでいく密度の濃い体験をしていただけます。流星の世界にどっぷりと浸りたい場合はこちらがおすすめです。
一方で、本編と並行して遊ぶ方は、スターリーステージがあることで体験の幅がより広がるかと思います。本編とスターリーステージのどちらを攻略するか選びながら進めていくこともお楽しみいただけるとうれしいです。

熊崎 2023年にSwitchで発売した『星のカービィ Wii デラックス』も、Wiiで発売された『星のカービィ Wii』というオリジナルがあり、その遊びをパワーアップさせたものです。ワイワイ4人で遊べるゲームとして「マホロアランド」が追加されましたが、メインのアクション要素については、クリア後に「マホロア」を軸にした物語がアンロックされるようになっていました。ただ、やはりクリア後の物語ですと、ストーリーの驚きのため隠し要素のような扱いになり、そこが課題でした。ですので、今回は並行しても物語に破綻のないような、サイドストーリー型にしました。
あの新世界には、一定の長い周期で何者かが飛来して来ている伝説があり、その設定も本編との親和性を高めるものになっているかと思います。新体験として流星という要素はありますが、ビジュアル面の変化が大きくても、まったく異なる世界に行くことがないよう考慮し、物語とアクションを共通の世界で楽しめるようにと考えた結果になります。

熊崎 本編でワールド1のボス「ゴルルムンバ」を倒したあとであれば『スターリーワールド』はすぐプレイできるのですが、本編でエフィリンがデデデ大王にさらわれ不在になってしまう期間があるので、そこで矛盾が生じてしまうのをどう解決するかが課題となりました。いずれエフィリンは救出できますので、普通ならその期間だけは『スターリーワールド』は遊べない、という特殊期間にしてしまえばいいのですが…。
ムービーの担当はアートディレクターの村木(菜津弥さん)だったのですが、どのタイミングでも遊びはじめられるよさを伝えて2種類作成してもらい、また導入のセリフも2パターンを用意しました。

熊崎 これもすべてのお客さまに、速やかにプレイしていただきたいとチーム一同が願っての結果でした。ちなみにここのBGMはサウンドクリエイターの下岡(優希さん)に作ってもらったのですが、「エフィリンが不在のときは、ちょっと寂しげな雰囲気に」とお願いしてこだわってみました。よーく聴くと違いに気づきますので、ぜひ聴き比べてみてください!

エフィリンのいない状態のムービーは、ワドルディシアターでYボタンを押しながら一覧の「闇と光の流星群」や「落とし子の唱」を選ぶと見ることができます!

熊崎 世界に関する直球の質問ですね。今後の楽しみもありますし、今はご想像の余地を残させていただければと思います。ただ、本作はアップグレードされた『ディスカバリー』ですので、もっともっと、あの『ディスカバリー』の世界に浸りたいお客さまも多くいらっしゃるかもしれません。ですので『ディスカバリー』本編以上に奥深く世界や設定面をもう少し、深掘りさせていただきました。

ファンの方に向けて、新ステージやフレームレートの向上だけでなく、もう1回遊びたいと思っていただけるような動機も生み出したかったという思いもあります。流星はなぜあの形だったのか、封印はなぜ結晶化なのか、いろいろと想像していただければうれしく思います。もちろん、気にしなくともアクションゲームとして楽しんでいただけるかと思いますので、ご安心ください!

3Dアクションとしての難易度は少し歯ごたえあり?

二宮 スターリーステージは、本編ステージをクリアしてから解放されるステージなので、本編より歯ごたえの感じられる内容にすることを意識しました。一方で単に難易度を上げるだけだとカービィらしい爽快感が失われてしまいますので、歯ごたえを感じつつも気持ちよく攻略できるバランスを目指しました。スターリーフラワーの位置をほどよい隠し場所に調整したり、迫力があるけれど遊びやすいカメラアングルを探ったりと細かい調整を重ねています。

熊崎 高いビルがある世界ですが、本編のカービィの機動力ではそれを跳び越えるのがむずかしいんです。また、本編のレベルデザイン的には自然と文明が融合した新世界を駆け抜ける部分を大事にし、奥に進むステージや入り組んだ建物内部を冒険する場面が存在します。本編のそれらと大きく体験を差別化するため、まずはあの見えているビルを跳び越える「バネほおばり」が選ばれました。1回のジャンプで跳べる高さとしてはシリーズでも最大級になります。
刺激的なアクションになる反面、序盤から落下の危険の伴うステージ構成になりました。ですが、遊んでいただければわかるかと思いますが、滞空中の移動可能の距離も広く、着地位置も調整しやすくチューニングされています。また、落下の危険が大きい場面ではよりそのシーンに適したカメラアングルに自動的に替わるようになっていて、「バネほおばり」のアクションに最適なカメラアングルでお楽しみいただけるようになっています。

二宮 『ディスカバリー』では落下してもミスにはならずダメージを受けて復帰する形式を採用しました。こうした土台があったこともバネほおばりのような大胆なアクションを導入できた理由のひとつです。

【NEW!】追加されたほおばりヘンケイや新キャラのこと

熊崎 カービィの形状そのものが不可思議に変わってしまい、その形状ならではの遊びの幅が広がるのがほおばりヘンケイの醍醐味です。まずディレクターたちと実現させたい遊びから組み立ていくのですがこの中で唯一、バネほおばりのみは『ディスカバリー』開発中にも一度検証していたものになります。動きとステージと、両方が合わさりはじめて採用されるのですが、今回はスペックアップもあり、より広い場所へ跳べることとマッチし、改めて実現した挙動になります。

はぐるまほおばり

熊崎 「はぐるまほおばり」も、地形攻略アクションではタブーとされがちな、壁を自在に登れる、そして制限も少ない上に、ジャンプで別の面にも飛び移れるという性能をもつものです。これも『ディスカバリー』で体験できないアクションを、より広い面積を流星の力で遊べるようになったこととマッチし採用となりました。

かんばんほおばり

熊崎 「かんばんほおばり」は、上記ふたつとの差別化もテーマで、滑走して長い距離を駆け抜ける遊びを実現するために生まれました。タイムアタックを楽しめることもポイントですが、どの「ほおばりヘンケイ」も、形状から動きが想像できるアクションであることも大事にしています。まずやりたい遊びがあり、それをカービィならではの動きとビジュアルで実現させるにはどういう手法があるかを考えます。

バネほおばり

二宮 「バネほおばり」は、今回追加ストーリーという舞台が整ったことで日の目を見ることができました。登場回数も多く大事な場面も任されることから、本作の主人公的な位置づけだと勝手に思っています。

天もん学者ワドルディ

熊崎 『ディスカバリー』の世界のワドルディたちは皆、カービィたちのいた元の世界、ポップスターから流れ着いた者たちばかりです。その中でも、もともと星の研究をしていた彼は、新世界から見える新しい星や、落ちてきた星の痕跡を見つけ、この世界でもまた、新たに研究に没頭します。古代の人々の文字の解読も進めるなど研究熱心な子です。

そんな個性をひとつのデザインで説明するべく、星座の模様の書かれた帽子をかぶり、背中には天体望遠鏡を抱えたワドルディとしての見た目は保ちながらも、一目でキャラクターの機能がわかるデザインを目指しました。ただ、機能重視ではありますが、ちゃんとオシャレで印象的なデザインになったのではないかと思います。

謎の星の子「スターリー」について

熊崎 スターリーについても想像の余地を残したく、すべてを明言することは控えさせていただきますが、答えられる範囲でお答えします。「スターリー」は、銀河のどこかで生まれた、謎の星の子たちです。彼らがセリフを持つなど強い個性を持っていると、もっとカービィやワドルディたちと関わるストーリーが必要となりますが、なるべくシンプルな物語にしたいと考え、『ディスカバリー』本編のビースト軍団やワドルディの町の住人たちの存在感に影響を及ぼさないようにと配慮した結果、ああいったキャラクターになりました。顔の模様は、実はこれまでのシリーズの空間を超える力と関わりのある、特別なデザインで表現したのですが、喜怒哀楽が明確にわかるようにはせず、模様にメッセージを込めるにとどめました。

熊崎 それでも、モチモチした飛び交う彼らを見るとかわいらしいですよね。スターリーと、カービィやエフィリンとの関係性にはお答えできませんが、これまでも幾度か、銀河の脅威となるものから星を守るために結晶化してきたという、星の守人になります。声にもこだわり、肉声より星の精霊らしく神秘的な音に聴こえるようにサウンドチームに工夫してもらいました。

カービィのサウンドチームオールスターに!?

熊崎 「WELCOME TO THE NEW WORLD!」のB面として発売されたという設定の曲なのですが、今の若い方には伝わらないでしょうか。明るく希望に満ちた前作の曲に対し、本作も力強いながらも、宇宙へ旅立つロマンや夢を描いた1曲になります。
今回も楽曲は外部のアレンジャーさんと、サウンドクリエイターの池上(正さん)にお願いしました。2曲目の構想は練っていましたが、やはり最初に力をかけるべきはゲームデザインですので、その目処が立つまでは制作を止めていました。世界が決まり、アクションも確定した中、それらの冒険のロマンを補強するために、よりこの世界に心惹かれていただくようにと制作を進めました。あの世界にいた歌手のNEICHELさんの気持ちになり、歌詞を書かせていただきました。あたたかく力強い曲でありながらも、どこかわずかに漂う、彼女の複雑な心情も感じ取っていただければと思います。
ゲーム内の設定としては、古から伝わる予言の詩があり、NEICHELさんの手によりその解読が進みこの歌が完成したものになります。そこで彼女は、多くのことを知り、世界中に届くあの歌が完成したのです。

二宮 本作の流星に覆われた世界の空気感がこの曲で完成されたと感じました。不安や美しさ、新しい冒険への期待感などが入り混じった、一言では表せないような感覚が上手く表現されているように思います。

熊崎 「豪華」というのは私たちからいうのは気が引けますが、本作はサウンドチームオールメンバーで挑ませていただきました。これまでのタイトル以上に、多様な個性のカービィサウンドが楽しめるのも本作の特徴になったかもしれません。
エンディングテーマは池上が、楽曲ではなく効果音などの作業は最若手の兒玉(ももさん)が担当していますので、まさにハル研サウンドチームフルメンバーです。
特にリーダーの加藤には最後に聴ける「未完/ラストソング」の作成をお願いしました。カービィのゲームのためとは考えず、歌姫が自らの気持ちを歌うために作られた曲となっているので、みなさんにも新鮮に聴こえたのではないでしょうか。この世界で起きた過去の出来事や、歌姫が夢に見た未来が少し想像できる、ちょっと切ない歌になっています。ただ、歌姫自身はあの星で、最後には自分の気持ちを素直に表現でき幸せを感じたのではないでしょうか。ぜひゲームを最後までプレイして、聴いていただければと思います!
サウンドは最初に安藤(浩和さん)に草原ステージの「はじまりの流星群」を完成させてもらい、それをランドマークに多くのサウンドスタッフに本作らしい楽曲のイメージを固めていってもらいました。はじめからクライマックスというか、前作をプレイ済みの方も遊ばれることを想定し、1面とは思えない温度感にしつつ、本作の楽曲テーマの「歌声」を取り入れて作りました。ですが、さすがに本当にクライマックス過ぎたので、もう1曲、少し温度を下げて作ってもらったのが、今の「はじまりの流星群」になります。

熊崎 ちなみに、最初に作られたバージョンの「はじまりの流星群」は、レッドガル禁足地の最終ステージで使用している曲の後半部分にあたります。あまりにクライマックスらしい楽曲だったので、その後、本当にクライマックスのステージで採用しました。
楽曲は、それぞれのサウンドメンバーの個性を考え、誰がどのステージを担当するかを決めます。次に入れてほしいフレーズを伝え、アイデアがあればこの段階で説明し、前後のステージとの整合性とテンションの上がり具合から全体を調整します。最初は安藤、酒井、石川、とベテラン勢に発注をしていったのですが、ある程度固まってから、加藤や大原、下岡に現状のものを参考に作っていってもらう順序で進めました。多様な個性を育てつつ、うまくバランスの取れたステージ曲が仕上がったかと思います。
最後の敵の曲も、歌によって引き寄せられた敵の存在を想像させるよう、徐々にコーラス部分が強くなっていく構成にしています。ぜひ最後までプレイして、お聞きいただければと思います!

カービィファンへメッセージ

二宮 『スターリーワールド』では、本編のステージが変化してまったく別の遊びになるという新しい試みにチャレンジしました。割れた海の底を探検したり、ジェットコースターのレールに乗ったりと、変化したステージならではのロマンあふれる体験が詰まっています。ぜひ、不思議な流星によってより美しくにぎやかになった新世界をかけぬけてみてください!

熊崎 60フレームで快適に遊べる美しい世界も特徴ですが、その美しい流星により『ディスカバリー』本編で見慣れていた世界の向こう側に進めるという新しい体験こそが最大の特徴になります。本編から数年経ってからの発売になりますので、通常のタイトル以上により奥深く世界を描くことができ、「一度見たことがある新世界」という事実を上手く活かすことができたと感じています。サウンドチーム総出で挑んだステージ曲のフルアレンジも、数々の新しいフィギュアも楽しみのひとつですが、遊ぶほどに謎に迫り、想像力を刺激する物語性も本作ならではと思います。
ゲームの世界に限らず、最近ではカービィカフェのメニューにもいち早く『スターリーワールド』のメニューが登場したり、さまざまなグッズも街で見かけられるようになりました。ゲームを中心に、ときにはゲームを超えてカービィにもっと触れていただける機会も増えてきたかと思います。これからも続く、さまざまな「カービィ」シリーズにぜひ、ご期待ください!

<製品概要>

■星のカービィ ディスカバリー Nintendo Switch 2 Edition + スターリーワールド
発売日:2025年8月28日(木)
価格:パッケージ版 8,578円(税込)/ダウンロード版 8,500円(税込)
※Nintendo Switch版をお持ちの方は、「アップグレードパス」のみの購入で『Nintendo Switch 2 Edition + スターリーワールド』をプレイできます
対応ハード:Nintendo Switch 2
CERO:全年齢
▶︎公式サイト

▼こちらの記事もお楽しみください


© HAL Laboratory, Inc. / Nintendo

関連記事