【ストーリー最終解答】『メトロイドプライム4 ビヨンド』開発スタッフインタビュー

2025年12月4日に発売された『メトロイドプライム4 ビヨンド』。開発スタッフのみなさんに、開発の経緯やデザイン、BGM、キャラクターの設定など、気になる部分をメールインタビューでじっくりお答えいただきました!
後半ではストーリーに深く踏み込んでいる部分を「ネタバレ注意」と表記をしていますので、これから遊びたい! という人はプレイ後に読むことをおすすめします。

※本記事は「ニンテンドードリーム」2026年3月号に掲載したものを再編集したものです

『メトロイドプライム4 ビヨンド』回答者プロフィール

プロデューサー 田邊賢輔さん
任天堂所属。「メトロイドプライム」シリーズをはじめ、多数の作品をプロデュースしている。

デザインディレクター ビル・ヴァンダーヴォートさん
レトロスタジオ所属。『メトロイドプライム3 コラプション』『ドンキーコング リターンズ』等でレベルデザインを務める。

音楽 山本健誌さん
任天堂所属。『スーパーメトロイド』以降、多数の「メトロイド」シリーズで音楽を担当している。

開発の経緯と『ビヨンド』の意味

—— 今作の制作チームは、どのような体制で開発が進められたのでしょうか。また、海外スタッフとの協働はどのように行われましたか?

田邊 レトロスタジオ(※1)との開発を開始したときの任天堂のスタッフは、プロデューサーの田邊とアシスタントプロデューサー兼進捗管理の田端(里沙)さん、そしてサウンドの山本さん、アート監修の佐藤(隆善)さん、それから通訳が当初1名というメンバーが中心でした。その後、通訳兼コーディネーターが1名、テキスト英訳者が1名、終盤にコーディネーションサポート1名とデバッグ担当者が1名追加されました。ほかにもアートの監修や技術的なサポートのメンバーにも数名協力してもらいました。

※1 レトロスタジオ…アメリカのゲームソフト開発会社。「メトロイドプライム」シリーズのほか『ドンキーコング リターンズ』『ドンキーコング トロピカルフリーズ』などを手掛ける。

田邊 一方レトロスタジオ側ですが、内部だけで100名を超えるスタッフが参加しています。ゲームデザイナーとしては、一時期Next Level Games(※2)のスタッフ3名にも協力してもらいました。特にアートやムービーの作成では、外部にも多くの作業を委託しており、延べで300名以上のスタッフが参加しています。

※2 Next Level Games…カナダのゲームソフト開発会社。『メトロイドプライム フェデレーションフォース』のほか『ルイージマンション3』などを手掛ける。

田邊 進め方としては、まずゲームの全体的な構成や設定、世界観などのハイコンセプトを任天堂から伝え、レトロスタジオにはそれに従って、具体的な紙面上の仕様やコンセプトアート、レベルデザインの設計図、また実験的なプロトタイプなどを作成してもらい、それらを任天堂側で確認して修正、変更の指示出しをします。そして、最終的にOKしたものを実データ、プログラムとしてレトロスタジオに作成してもらいます。また、レトロスタジオから提案されるさまざまなアイデアについても同じ工程で進めました。なお、データ作成に関する外注への発注、監修、納品などの管理はすべてレトロスタジオが行いました。
 任天堂からのゲームデザインの監修結果の報告、アートの監修結果の報告、進捗管理とそれぞれ個別に3つの会議を設定し、基本的にそれぞれ毎週1回数時間のZoom会議をレトロスタジオと行いました。コロナ禍では、両社のスタッフは在宅で勤務し、コロナ禍が終了してからは、Zoom会議のほかに年に数回、任天堂からレトロスタジオへ出張し、1回に付き3〜5日間の会議を行って制作を進めました。

—— サブタイトルの『ビヨンド』に込められた意図をお聞かせください。

田邊 今回サムスは、ビューロスという別次元の宇宙にある惑星に時間と空間を超えて転送されます。その「時空を超えて」という言葉を英語で表現するのに、一番適切な言葉として選びました。レトロスタジオやNOA(ニンテンドー・オブ・アメリカ)、NOE(ニンテンドー・オブ・ヨーロッパ)など海外スタッフの意見を特に参考にしました。

アクシデントにより、次元を“超えて”(beyond)惑星ビューロスへと送られたサムス
そこには銀河連邦軍の兵士、宿敵サイラックスも転送されていた

サムスの新スーツと「ヴァイオラ」の成り立ち

—— サムスの新スーツ「ヴァイオラスーツ」、「レガシースーツ」のデザインコンセプトについて教えてください。

ビル サムスのヴァイオラスーツとレガシースーツは、それぞれの機能と、ラモーン文明の各時代における建築や技術がデザインに反映されています。洗練されたヴァイオラスーツは、ラモーンの機械文明をルーツとしています。バリアスーツの要素を受け継ぎながらも、流れるようなラインと機械的なニュアンスで対照をなしています。
 ヴァイオラスーツはサムスがヴァイオラに乗るためのスーツなので、ヴァイオラそのものと視覚的に結びつけることを重視しました。レガシースーツは「選ばれし者」サムスへのラモーンからの最後の贈り物であり、彼女に防御バリアを与えてくれます。このスーツのデザインは、彼らのもっとも神聖な場所である「記憶の神殿」と「クロノタワー」の有機的な美学を反映しています。

ヴァイオラスーツ
レガシースーツ

—— 今回新登場したバイク「ヴァイオラ」は、どのような経緯で誕生したのでしょうか。

田邊 私が企画を立ち上げる2016年ごろ、ちょうど『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(2017年/Wii U、Nintendo Switch)がオープンワールドを採用し、好評を得ていました。そして、ネット上で「オープンワールドのメトロイドを遊んでみたい!」という意見をたびたび目にしました。しかし、「メトロイド」というゲームの特徴である「能力を得て行動範囲を拡大する」という要素と「最初から自由に広範囲を移動できる」というオープンワールドの仕組みは、相反します。
 それでも、限定的な範囲であれば、その声に応えることができるのでは? と考えました。さらには、そこをバイクで爽快に走り回れたら、閉塞感と緊張感が続く「メトロイド」のゲームプレイに緩急のリズムをつけられるとも考えました。ですが、その後、『ブレス オブ ザ ワイルド』のダウンロードコンテンツでリンクがバイクに乗っているのを見たときは「わ〜、これを真似したと思われる!」とどうしようかなと思いました。ですが「いや、真似したわけではないし、バイクに乗っているサムスは、絶対格好いいはずだ」とそれ以上は迷わず、バイクを造ることを決めました。

ヴァイオラ

田邊 そのバイクで走るエリアがソルバレイなのですが、自由に走り回れることを最優先にするために、道もなく、障害物もないだだっ広い場所にしてあります。また、実際に走ってみて感じたのですが、目標物がひとつ目についたらそれに向かって、集中して走っていけるように作ることが重要なのです。複数の目標物が目に入ってしまうと目標に対する意識が散漫になりますし、目指す目標に向かって、だんだんと近づいて行く高揚感も感じられなくなってしまいます。この感覚を実現させるためにレトロスタジオのソルバレイチームは巧妙な地形のアップダウンを駆使して、基本的に目標物が視界にひとつしか入らないようにしてくれています。そして、同時にソルバレイに対して、プレイヤーが実際の面積以上の広さを感じられるように表現してくれました。荒涼とした大地で風を切って「ヴァイオラ」で疾走する感覚を味わってもらえるとうれしいです。
 その「ヴァイオラ」のネーミングですが、バイクにはなにか個性的な名前を付けたいと考えました。私はギターを弾くので「楽器の名前はどうかな?」と思ったのですが、ギター制作会社のブランド名は使えないし「Guitar」では、バイクには合わないし、ちょっと考えて一般的にあまり名前になじみのない楽器でなんとなく響きがいい「Viola」を選びました。発音はあくまで「ヴァイオラ」ですが、ラモーンたちがどう発音していたかは私にも分かりません。

広大な砂漠・ソルバレイ。ここを踏破するにはヴァイオラの機動力が必須だ

惑星ビューロスのデザイン設計について

—— 舞台となる惑星ビューロスについて。多様な自然環境で構成された各ゾーンは、どのようなプロセスで作られていったのでしょうか。

ビル これらのゾーンのテーマに関するおもな目標は、環境を通してラモーンとその大いなる悲劇の物語を伝えることでした。これらの場所は、ラモーンがさまざまな方法で、さまざまな理由によって居住していた場所であり、それらの理由は多くの場合、プレイヤーがゲーム内で行おうとしていることと関係しています。各ゾーンの機能を体験し、徹底的にスキャンすることで、プレイヤーは周囲の世界をより深く理解し、そこが現実にありそうな場所のように感じることができます。
 また、各ゾーンに「アイデンティティ」という概念を取り入れました。つまり、「この場所はなんなのか? この場所でしか起こりえないことはなにか? プレイヤーにとってここでしかできないことで、なにか印象に残ることがあるだろうか?」といった質問を自分たちに投げかけました。嵐の中の工場や氷河の上の研究所、火山の中の巨大な大砲など、地球的ななじみのあるものを、大自然の中に置くことでユニークに表現しています。
 各ゾーンの配色は、空の鮮やかさなども含め記憶に残りやすく、プレイヤーが旅の各段階で抱く感情にマッチするように、意図的にマッピングされています。ある場面では抑圧的な暗さを表現したり、またあるときは明るさと自由を表現したり。また、もちろん各ゾーンにゲームプレイの目標もありました。プレイヤーが達成しなければならない目標、プレイヤーに感じてほしい緊張感の度合い、ストーリーを進めるための目標などです。各ゾーンの構造や構成要素は、それらの目標を達成するために作られました。この過程には大人数で多岐にわたる試行錯誤がありました。そのため、各ゾーンで達成しようとしている体験について、目指している目標をいくつかのわかりやすいフレーズで表現し、それを「柱」としながらチームの足並みをそろえました。

それぞれのゾーンに異なる自然環境と、ラモーン族の遺した特徴的な建造物が組み合わさっている

謎多き宿敵、サイラックスにスポットがあたった理由

—— サイラックスについてお聞きします。前作『メトロイドプライム3』(2008年/Wii)で断片的に登場した時点でもまだ謎の多いキャラクターでしたが、今作で彼にスポットが当たるようになったきっかけを教えてください。

田邊 『メトロイドプライム ハンターズ』(2006年/ニンテンドーDS)を作成していたときに当時の開発会社であるNSTのゲームデザイナーが、登場するハンターの設定をすべて考えてくれていました。その中にサイラックスが「サムスと銀河連邦に恨みを抱いている」という設定があったのです。
 当時私は、「Metroid Prime Universe」を拡大し、いろいろなスピンアウト作を将来的に造りたいと考えていました。そこで、彼なりの設定はすでにあったのかも知れませんが「その設定の詳細を決めないでほしい」と彼に頼みました。『プライム3』や『メトロイドプライム フェデレーションフォース』(2016年/ニンテンドー3DS)の100%エンディングなどに布石を置きながら「いつかサムスとサイラックスをめぐるストーリーをゲームにしたい」と考えてきました。
 その後、そのゲームを造る機会が巡ってくるまでに長い時間が経過し、自分の年齢を考えたときに今回のプライムタイトルの制作が、おそらくその最後のチャンスになるだろうと思いました。そこで、今作をサイラックス編の第一弾として企画したのです。卑屈で執念深く、外道のようなキャラクターとしてサイラックスを設定し、サムスも今作以降「対決を避けられない、絶対に倒さなければならない敵」として、意識することになります。したがって、サイラックスとサムスの決着は、まだついていません。
 ところが、今作の完成までに想像以上の長い時間がかかってしまいました。そして、私はもう今後シリーズの制作に参加できないことが決まっています。ですので、続編の制作については未定ですが、いつの日にか田端さんとレトロスタジオが、この物語を完結してくれたらと、願っています。

その執念深さ、周到さが改めて描かれたサイラックス。サムスと因縁深い相手として今後も出番がありそう

ログブック、仲間のセリフ…物語を彩るテキストたち

—— スキャン時のテキスト、ログブックに掲載されるテキストを製作する際の方針やこだわりについてもお聞きしたいです。

田邊 まず、コンピューターによる解析という設定なので、情緒的な表現は一切行わず、論理的かつ専門的な分析結果と感じるように言葉を選んでいます。また、テキストの量が多すぎるとプレイヤーに読んでもらえないので、基本的に1回に表示される3行以内に収めるように、多くなっても文章の送りが、できるだけ1回だけになるように書いています。そして、特にゲーム進行のヒントとなるテキストに関しては、その量の範囲内でプレイヤーに必要なすべての情報を「キーワード」として記憶に残るように表現を工夫しています。さらには、個人的なこだわりなのですが、文章の改行が絶対に言葉の途中にならないように、1行ができるだけきちっと表示ウィンドウの枠内に収まるよう努力しています。これは、小説家の京極夏彦さんの影響です。
 テキストの内容に関しては、当然プレイヤーの興味を引くように、また、文章からリアルな想像ができるような内容を意識しています。特にアイスベルトの研究者のテキストは、「大いなる悲劇」の真実を隠しながら、それでいて少しずつプレイヤーが理解できるようにキーワードを散らしつつ、さらに実際の研究者のリアルな日記の雰囲気が感じられるようにするのに苦労しました。本当は、パイレーツの日誌のような、読んでいて楽しいテキストも書ければよかったのですが、今回はそういう設定の存在がなかったこともあって実現できませんでした。
 ただ、そもそもは、私はスキャンテキストを書く予定ではありませんでした。これまでは、レトロスタジオのスタッフがゲーム内のテキストを書いてくれていたのですが、その方はもうレトロスタジオに在籍されていません。そこで、今回は、専門のライターさんにお願いすることになりました。ところが、ライターさんは文章を書かれる専門家なので、当たり前ながら、どうしても「いい文章、気の利いた文章」を書かれることに優先順位を置かれます。そうすると、なかなかこちらの望むゲームプレイのための文章にならなかったのです。ゲームの仕様まで完全に理解していただくことも難しく、このままでは納期に間に合わないということで私が書くことにしました。が、正直に言うと作業に追われて調整の部分でミスをしてしまったりしたので、楽しかったですが、やるべきではなかったです。
 一方、銀河連邦兵のセリフは、英語のニュアンスの表現などが私にはわからないので、これはライターの方にお任せしました。ただし、日本語訳に関しては、単なる翻訳ではなくゲームデザイナーの工藤太郎さんにお願いし、ゲームとキャラクターに合ったセリフとしてより自然になるように書いていただきました。

フューリーグリーンの記録の間では、これまで戦ったボスのさらなる詳しい情報を読むことができる

ミュージックとSE制作秘話

—— 本作のBGM・SE制作における意図やこだわりをお聞かせください。

山本 「メトロイドプライム」シリーズの音楽は、作曲はすべて任天堂で行い、効果音や音声はレトロスタジオが担当するというかたちで制作しています。
 このゲームはプレイヤー自身がサムスの目線で楽しむFPA(ファーストパーソンアドベンチャー)ですので、音楽制作を進めるにあたっては「自分がビューロスの世界に舞い降りたら、どんな音楽が聞こえてくるだろうか」といったことをイメージしながら作曲を行いました。
 また、効果音については、レトロスタジオオーディオチームのみなさんと、没入感を目指して、リアルで臨場感の手ごたえがある効果音制作を進めました。フューリーグリーンでは、ジャングルへの侵入から、ジャングルの深い奥地へと探索を進めますが、背景で聴こえるメロディは、美しいジャングルから、その奥地へ誘いこむようなメロディへと変化していきます。 
 各ゾーンでもゲームを進めていく中で、電力復旧や施設への落雷など、施設の状況が、特別に変化するシーンと出会うこともあります。こういった場面では、その変化にともない、音楽も特別体験になるように変化していきます。たとえば、ボルトフォージでは、落雷と同時にフライトドローンという敵の群れが サムスに襲い掛かるシーンがあるのですが、このときに、「ゾゾゾーっと鳥肌が立つ」ような音楽を準備していたり、寒く凍り付いた研究施設でも、施設の変化によって、音楽がプレイヤーに勇気を与えます。
 また、今作から登場したヴァイオラでは、バイクをテーマにした、エネルギッシュな音楽を聴くことができます。
 メインテーマ音楽は、ビューロスで戦うサムスの気持ちがみなさんに伝わるよう作りました。すべての音楽はサムスの目線に立って作曲しています。プレイヤーの皆様には、ぜひサムスになった気持ちで、惑星ビューロスでのさまざまな体験で耳に聴こえてくる音楽や効果音を楽しんでいただければと思います。

フューリーグリーンに初めて足を踏み入れたとき、「新たな旅路」が始まったことがBGMからも感じ取れる
Nintendo Switch Online(有料)へ加入することで楽しめる「Nintendo Music」で本作のBGMを配信中
このシーンのこの曲に注目!
 ボス戦では、ボスごとに異なるBGMにも注目。特にサイラックス戦は、彼の歪んだ悪意を象徴するかのようなギターリフがインパクト大。機会があればじっくり聴いてほしい。
 ヴァイオラのテーマは、ボルトフォージでテスト走行をするときに聴ける曲。amiiboでヴァイオラ・ラジオを解放すれば、ソルバレイ探索中のBGMを変更できる。サイバースペースのようなテスト走行中でも、日光照り付けるソルバレイの砂漠でもしっくり来る一曲だ。
 サムスが登場するとき、アイテムを取得するときに流れるシリーズおなじみのジングルは今回も健在。前者はセーブステーションからの再開時のほか、初めてフューリーグリーンに到着するシーンでも流れるのが印象深い。
サイラックスの曲は死闘も相まって記憶に残りやすいかも
アイテム取得時のジングルは達成感をより高めてくれる
サムス【メトロイドプライム4】のamiiboを読み込むと、ヴァイオラ・ラジオで曲を聴けるようになる

難易度と遊びやすさへのこだわり&おすすめ操作

—— 今作は従来以上に「遊びやすさ」への配慮を感じました。全体的な難易度について、意識された点はありますか。

ビル 今作が初めての「メトロイドプライム」になる人もいれば、待望の「メトロイドプライム」の世界への帰還になる人もいると思っています。すべての人が楽しめるような構成にしたかったため、「メトロイドプライム」の冒険譚を進めつつ、新しいプレイヤーを引き込めるような形でこれまでのプライム作品にあった機能を採用しました。
 また、ゲームのストーリーやキャラクターに対する目標もあり、それが選択の原動力となることもありました。たとえば、ゲーム内のほとんどのゾーンでは最初の道は直線的で、それがゾーンと中にいる連邦兵たちの物語を語るのに効果的でした。プレイヤーのモチベーションを、なじみのある物語的に構成された方法で駆り立てたかったのです。初めて訪れるエリアでも逆戻りする箇所や探索がありますが、その流れは初代『メトロイドプライム』ほど複雑に織り込まれていません。ゲームの後半でプレイヤーが自らこれらのゾーンに戻れば、(特に新しい能力を持って戻る場合は)新しい体験や細かい発見をすることができます。これは、特に好奇心が旺盛なプレイヤーや、より自由な探索を望むプレイヤー、あるいは「このゾーンでの主な出来事が展開したあと、ここにはなにがあるのだろう?」といった疑問を持っているプレイヤーにとって、ご褒美があるということになります。
 そしてもちろん、プレイヤーの熟練度にかかわらず、敵やボスとの対峙を通じてしっかりと遊びごたえを感じてもらえるようにしました。難所を乗り越えたときの安堵感や達成感を感じてもらえるよう、何度も調整と改善を行っています。

—— 初心者向けの設定について。ジャイロ操作・マウス操作の選択、オプションも充実していますが、シリーズ初心者におすすめの設定があれば教えてください。

ビル 操作の選択肢はたくさんありますね! 初めてのプレイヤーには、まずデフォルト設定でプレイし、最初のゾーンでゲームプレイに慣れてきたら調整してみることをお勧めします。感度や方向反転など、個人的な好みに応じてすぐに調整したくなる設定もあると思います。敵にロックオンしたまま好きな場所を狙える「ロックオンフリーエイム」は、ジャイロ、Rスティック、Switch 2 のマウスなど、さまざまな方法で操作できます。どの操作も、いつでも試すことが可能です。更にこだわる方には、ボタン同士の入力を入れ替えることができる細かいボタンマッピングもご用意しています!

ロックオンフリーエイムをONにするとボス戦で快適

最後に…読者へのメッセージ

—— 「メトロイドプライム」シリーズでは久々のナンバリングタイトルとなりましたが、今作に込めたテーマや、プレイヤーに伝えたい想いがあれば、改めておうかがいしたく存じます。

田邊 私が任天堂に入社してから40年が過ぎました。この『メトロイドプライム4 ビヨンド』が任天堂で制作する最後のタイトルとなります。しかし、特別なことをするわけではなく、これまで制作された任天堂タイトルと同じく、あらゆる年齢層、プレイヤー層に向けて、おもしろくユニークな体験を届けられるようにとレトロスタジオと力を合わせて完成させました。
 願わくば、遊んでくださったみなさんの記憶に残るゲームとなれば幸いです。そして、まだ遊んだことのない方には、ぜひビューロスの世界をサムスの目を通して、体験していただけたらと思います。

以下ネタバレ注意!

ラモーン族の外見・設定はこう生まれた

※物語中盤で明らかになる事実に触れています。

—— ラモーン族の文化や歴史、そして彼らの末路は、物語の中でも非常に印象的でした。外見や設定はどのように決められていったのでしょうか。

ビル ラモーンの見た目は意図を持って計画的にデザインされています。ラモーンは平和的で、優雅で、教養があり、とてもスピリチュアルでした。彼らの司祭職は世界観の中で強力なテーマであり、彼らの文明内で起こる主要な出来事の多くに関連しています。
 司祭がおもにサイキック・エネルギーを扱っていましたが、すべてのラモーンはサイキック・エネルギーを操れる可能性を秘めていました。これらの要素はすべてラモーンの外見的デザインにも組み込まれています。水生生物的な要素、司祭に付けられたローブ、エネルギー制御に適した流れるような手足、口が見えないことでテレパシーによるコミュニケーションを暗示するなど。また、グリーバーの腐敗感とは対照的に、ラモーンにはどこか神聖さを表現する、という点を大切にしていました。

田邊 今回の舞台を別の時空の惑星と決め、さらにそこでサムスが、サイキック能力を得るという設定を決めた時点で、ビューロスの住人はサイキック能力を中心に発展させた文化を築くということが、自然と決まりました。ただ、そこに至るまでに機械文明を通過しヴァイオラを発明したことも、バイクが先にありきだったので、確定事項となりました。
 次に、今回、サムスと戦う象徴的な敵をパイレーツ以外にしようと思い、その敵をどう設定しようかと考える中で、ラモーンが滅びた原因が、彼らのグリーバー化=「大いなる悲劇」であることを思いついたのです。また、同時にゲームのある時点以降ソルバレイの敵の難易度レベルをアップさせるきっかけとしてグリーンシャワーが使えると気づいたことも、この設定を確定させる要因のひとつとなりました。
 シャトヤと12人のラモーンは預言に従い「選ばれし者」を探すため、帰還用の小型テレポーターを携えて、多元的宇宙の各惑星へと転送されました。しかし「選ばれし者」を見つけることは叶わず、それぞれの地で朽ち果ててしまったのです。ただ、そうなるとまだ11のテレポーターが存在していることになります。その全部に個別の物語を造ることは難しいですが、いくつかの話を将来的に造る可能性を残せたと思っています。

特徴的な器官が伸びる頭部、ひれのようなものが付いた腕部などが水生生物を思わせるラモーン族。滅亡の危機に瀕したラモーン族は、彼らの歴史と文明を別の宇宙へ運び出す者を待つ。その「選ばれし者」は、ビューロスに降り立ったサムスだった
悲劇に見舞われた一族、ラモーンの歴史
 ビューロスのラモーン族は、原始的な「古代文明時代」、ヴァイオラやサイボットを生みだした「機械文明時代」を経て「サイキック文明時代」を迎える。これまで一部のみが扱えたサイキック能力をすべてのラモーンに与えるため、彼らはサイキック・クリスタルを埋め込む手術を行った。だが、手術を受けたラモーンたちは凶暴なグリーバーに変異してしまう…。彼らの文明と歴史は、安寧を求めようとした彼ら自身の手により崩壊してしまったのだ。
ビューロス各地にラモーンの記憶が遺されている
グリーバーは非常に攻撃的な生物。群れで獲物に襲いかかる獰猛さを持つ
グリーバーを元のラモーンに戻す研究も行われていたが、うまくいかなかったようだ

サイラックスの動向、仲間たちについて

※この先には物語のクライマックスに関わる記述があります。ゲームをクリアしていない方はお気を付けください。

—— サイラックスは惑星ビューロス到着後、具体的にどのような行動を取っていたのでしょうか。

田邊 サイラックスは、転送時に大きなケガをした状態で、偶然クロノタワーのピナクルに転送されました。その場に置かれていたヒーリングポッドに潜り込み、クロノタワーと同期します。それによって、ラモーンの情報を得て、ビューロスを脱出するためにはマスターテレポーターを使う必要があり、テレポーターの起動のためには5つのマスターキーが必要だということを知ります。
 そこで、いっしょに転送されたサイラックス・メトロイドを使ってキーガーディアンを支配し、キーを手に入れようとしたのですが、キーガーディアンの精神力の強さがサイラックス・メトロイドの精神支配力を上回り、結果として両者ともに正常な思考を失って凶暴な敵意だけを持つ存在となってしまいます。サイラックスの回復には時間がかかり、その間、基本的に彼は意識を失っているのですが、覚醒している間だけ、サイボットを使ってサムスを攻撃し、サムスが手に入れたキーを奪おうとします。その覚醒のタイミングで、サイラックスの意識とサムスの意識が一時的にリンクして、サムスはサイラックスの記憶をフラッシュバックのように観ることになるのです。

—— 銀河連邦軍の仲間たちについておうかがいします。彼らのキャラクター設定や、「仲間との共闘」というシリーズでは比較的珍しいシチュエーションは、どのような経緯で生まれたのでしょうか。

田邊 私は、実はほとんどゲームを遊びません。その代わりというか映画をよく観ます。大学生のときに専攻していたのも映画の制作についてでした。したがって、ゲームをデザインするときもほかのゲームを分析、研究することはあまりなく、またゲームのシステムを考える以上に「プレイヤーの感情の起伏をどう生みだすか?」といった観点から、「Wow Moment」(※3)をどれだけ作れるかだったり、そのタイトルで表現したいテーマを決めたりすることにより重点を置きます。そして、今回はそのテーマを起点にゲーム全体の設計を行っていきました。

※3 Wow Moment…「感動や驚きを与える瞬間」を指す言葉。

田邊 『メトロイドプライム4 ビヨンド』では、ゲームをクリアする最後の瞬間に、プレイヤーがAボタンを押すこと=ゲームをクリアすることに、躊躇や葛藤を感じるようなゲームを造ってみたいと考えました。実は、これは『ゼルダの伝説 夢をみる島』(1993年/ゲームボーイ)で、一度やったことではあるのですが、今回はさらにプレイヤーが「えっ!これで終わりなのっ?」と戸惑いを抱いたまま、エンドロールを眺めるという状況を提供することで、より記憶に残るゲームにしたかったのです。おそらく、ネガティブな反応があるだろうと予想していますが、個人的にハッピーエンドの映画よりも、観終わったあとに心に刺さるようななにかを残す映画のほうが印象的に感じるので、ゲームでそれができないだろうか?というチャレンジです。
 そこで、まずラストシーンを設定してからゲーム全体の構成を考えました。そして、そのためにサムスといっしょに戦う連邦兵を設定し、ゲームを進める中で彼らとサムス(プレイヤー)との絆を深めるようなゲームプレイを計画しました。本当は、もっと絆を深めるイベントをいくつか計画していたのですが、製作時間の関係上カットせざるを得ませんでした。そこは、本当に残念に思っています。

<関連リンク>
▶︎ メトロイドプライム4 ビヨンド 公式サイト

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<製品概要>

■メトロイドプライム4 ビヨンド
発売日:2025年12月4日(木)
価格:パッケージ版 7,980円(税込)/ダウンロード版 7,980円(税込)
対応ハード:Nintendo Switch
CERO:12歳以上対象

■メトロイドプライム4 ビヨンド Nintendo Switch 2 Edition
発売日:2025年12月4日(木)
価格:パッケージ版 8,980円(税込)/ダウンロード版 8,980円(税込)
対応ハード:Nintendo Switch 2
CERO:12歳以上対象
▶︎公式サイト

©︎ Nintendo

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