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新価格版発売記念!『ソニックフォース』Wプロデューサーインタビュー(2017年12月号より)

2017年にNintendo Switchほかマルチプラットフォームで発売された『ソニックフォース』。お買い求めしやすくなった新価格版が11月21日(木)に発売されました!
そこでNDWでは、ニンテンドードリーム誌上で行われた開発者インタビューおよび設定画公開企画を複数回に分けてお届け。まずは本作の発売前に、プロデューサーを務めたお二人に想いの詰まった開発秘話をたっぷりお伺いしたスタッフインタビューから!
・記事は修正している箇所もありますが、基本は掲載時と同じものになります。

《登壇者プロフィール(上の画像左から)》
『ソニック』シリーズプロデューサー 飯塚 隆さん
ロサンゼルスのセガ・オブ・アメリカから、日本の開発スタジオも含めてすべての『ソニック』関連タイトルを指揮する。シリーズにはメガドライブ『ソニック・ザ・ヘッジホッグ3』から本格的に関わる。代表作は『ソニックアドベンチャー』シリーズ。
『ソニックフォース』プロデューサー 中村 俊さん
セガサターン『ソニックR』やドリームキャスト『ソニックアドベンチャー』、プレイステーション3/Xbox360『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』などを手掛ける。Switch/プレイステーション4/Xbox One/PC『ソニックフォース』で約11年ぶりに『ソニック』シリーズをプロデュース!


ソニック・ザ・ヘッジホッグ

通称モダンソニック。自由気ままで曲がったことが大嫌いな音速ハリネズミ。今回もエッグマンの野望を止めようとしたが、謎の敵に襲われ囚われの身に…
 
クラシックソニック

別次元の世界で活躍するもう一人のソニック。謎の力の影響でこの世界にやってきた。過去にはこちらの世界のソニックと協力し世界を救ったことも

2Dと3Dの『ソニック』が揃って発売されることの狙い

—— 先日(ゲーム発売前)行われた東京ゲームショウ(以下TGS)や海外のイベントなどでファンの反応を見て、現在の心境を聞かせてください。
飯塚 近年はTVアニメーションをベースとした『ソニックトゥーン』(以下『トゥーン』)という違うブランドの『ソニック』シリーズを3タイトル続けていたのですが、その流れで「『ソニック』は『トゥーン』だけになってしまうのか?」と、ファンの方から不安の声が寄せられました。その不安を払拭すべく、2017年にクラシックシリーズの新作『ソニックマニア』(以下『マニア』)、そしてモダンシリーズの新作でソニックチームが手がける『ソニックフォース』(以下『フォース)』を同時期にリリースすることによって、従来のファンの方に「クラシック/モダン『ソニック』も健在ですよ」とアピールすることが大目標でした。先に発売した『マニア』はゲームの評価も売り上げも非常に良かったので、次の『フォース』にも期待しているところです。
—— 去年アメリカで行われた「Sonic 25th Anniversary Party」で初めて発表されてから、期待の声も大きかったですね。
飯塚 その頃は「Project Sonic 2017」という名称で出させてもらっていて。ずっとモダンソニックを待っていてくれたユーザーさんは、最初に出したティザー映像ですごく期待が高まったようで、その期待に応えられるゲーム内容になったと思います。 中村 私は『ソニック』に関わるのは2006年に発売した『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』以来なんですけど、ユーザーさんが求めていることや、自分なりに「『ソニック』はこういうものなのかな」ということを、今回改めて見つめ直しながらやってきました。久々のモダンソニックの正統タイトルということで、『ソニック』らしいかっこよさが出たタイトルになったんじゃないかと思います。

ソニックはスピードあふれる3Dアクションステージで活躍する


クラシックソニックはスクロールのステージでその力を発揮


 

「ソニックをかっこよく見せる」ため生み出された「軍と軍との衝突」

—— 今作は『トゥーン』シリーズとは違って、シリアスな雰囲気が前面に押し出されているように感じます。この雰囲気を作り出す物語はどのように考えられたんでしょうか?
飯塚 『フォース』のプロジェクト前半は私が見ていまして、具体的にゲーム内容を固める段階から中村が指揮をとりました。私が最初の部分を大まかに固める段階で、今までは「対エッグマン」だったものをレジスタンス軍とエッグマン軍との「軍と軍との衝突」にしようという、ベースのコンセプトは決めていました。そこから中村が、もう少しシリアスなトーンを加えて「99%征服された世界」という具体的な設定を詰めていったという流れです。
中村 今作は「シリアス」という設定が先走るんですけど、どちらかというと「ソニックをかっこよく見せるためにはどうしたらいいのか?」というところが始まりでした。また、ピンチからの脱却だったり、今までにない強敵と戦って打ち勝つソニックが見たいという思いが強くあったので、そこをアピールするためには最初は絶望から始まり、そこから一気にソニックの力で世界を取り戻すという物語が描けるといいなと思ったんです。また、今回は「アバター」という新しいキャラクターが出ていまして、今までのソニックというヒーローでは見せづらかった「成長」や「弱さ」といった面をアバターで見せることで、今までの『ソニック』とは違った物語の深みが出せたと感じています。それはシリアスなトーンだからこそできたことなんじゃないかな、とも思いますね。
 

開発のコンセプトは 「ソニックオールスターズ」

—— 『ソニックヒーローズ』(以下『ヒーローズ』)などに登場したカオティクス探偵事務所の3人や、『ソニックアドベンチャー2』(以下『アドベンチャー2』)で初登場したトレジャーハンターのルージュなど、お久しぶりなキャラクターも多数登場しますね。
中村 今作は世界各地でカオティクス探偵事務所のメンバーをはじめ、シルバーやエミーたちが頑張ってエッグマン軍と戦っているんです。 飯塚 ステージをプレイしている最中も、無線通信の会話でいろんなヒーローたちが各地で戦っている様子がわかるんです。今回はそういったところで世界の広がりを楽しんでいただけるかなと思います。

レジスタンスのアジトに集合した仲間たち。そこにはエミーやシルバーたちの姿が!


—— そこで気になることが。シルバーは未来人という設定ですが、今回はどうやって参戦したんですか?
飯塚 そうですね…今回も未来からやってきた、ということで(笑)。
—— そこは実際に遊んでみて、ということですね(笑)。そういえば、敵キャラとして登場するカオスもずいぶん久しぶりですね。
飯塚 『ソニックアドベンチャー』(以下『アドベンチャー』)以来なので、本当に久しぶりですね。カオスは現行機になって、当時ドリームキャスト時代にやりたかった水の表現が、今ようやく実現できました。「そう、これだよ、これ!」って(笑)。
カオス

古代に究極の破壊神と恐れられた謎の生命体。ソニックの活躍で天に還ったはずだが…
 
—— カオスの登場は飯塚さんと中村さんが『アドベンチャー』を一緒に作られていたこともあってなんですか?
中村 そういうわけではないです(笑)。『ソニック』シリーズが時代を経てきた中で、各ユーザーさんの思い出のボスもそれぞれ違うんです。なので、なるべくいろいろな時代のものをピックアップしていった結果です。
—— その結果、オールスターになっていったんですね。
中村 コンセプトとして「オールスターバトル」もあったので、どの程度のオールスターにするかという感じでした。振り返ってみると、昔の作品もオールスターなんですよね。「これまで以上のオールスターにする!」となると、もう敵を入れ込むしかないじゃないか、と(笑)。それがどんどんキャラクターが増えていった理由の1つです。
飯塚 あと、歴代『ソニック』シリーズの中で、死んだはずの敵キャラクターが再び登場するのは今作が初めてですね。
—— シャドウは今回敵として登場するのですね。
飯塚 なぜエッグマン軍に加担しているんだろう? そこは気になるところですよね(笑)。「シャドウストーリー」というDLCを発売日に無料で配信します。その中で本編では語られなかった、この物語が始まる前のお話をシャドウ目線で知ることができるんですよ。
—— そこでシャドウがエッグマン側に付いた理由がわかると。
飯塚 う〜ん、そうですかねぇ…。
一同 (笑)
中村 DLCも併せて楽しんでいただければいいかなと思います(笑)。
〜編注〜
DLC「シャドウストーリー」は現在配信中で、新価格版でも無料でダウンロードして遊べます。そのほかDLCについて詳しくは公式サイトをチェック!

—— 「シャドウストーリー」は本編をクリアしていなくても始められるんですか?
飯塚 できますよ。本編をある程度遊んで、「実は…」というところを楽しむのか、本編より先にプレイするかはユーザーさん次第です。個人的には本編をある程度プレイして、インフィニットがどういうキャラクターなのかを知ってから「シャドウストーリー」を遊ぶことをオススメします。
中村 もちろん、先に遊んでも支障はないですよ。
—— 今回初登場の敵インフィニットの誕生経緯やデザインについてもお聞きしたいと思います。
中村 実はインフィニットという敵を作る前に、ゲームの中で「こうしたい」と思う仕組みがありまして。それを実現するにあたって、それが可能なキャラクターを作ろうというのがあったのが1つと…。
飯塚 (笑)。
—— 飯塚さん、どうして笑われたんですか?
飯塚 いや、言えない単語の部分を知っているので、皆さん今、中村が何を言っていたのかわからないだろうと思いまして(笑)。
一同 (笑)
中村 とにかくソニックの敵としてすごく印象深いものを作りたいと思いまして。過去の敵を引き連れるようなキャラクターなので、よほど強く見えないと今までの敵に負けてしまいますから。なので、まずソニックを上回る力を持っている設定で、それはなぜなのか? というところから始まっています。また、「悪としてかっこいい」デザインにこだわったところですね。マスクを被っていたり、そのマスクも左右対称になっていないところも、悪らしい強さを強調したデザインになっています。
インフィニット

ソニックのスピードをも凌駕する謎の力を持つ。エッグマンが世界を99%支配できたのも、その力によるところが大きい
 
—— ちなみに、インフィニットという名前にした理由はどんなものでしょうか?
中村 今は名前の由来は言えないんですが、ゲームをクリアしたときにはその意味を感じてもらえるんではないかと思います。
—— インフィニットはテーマ曲「Infinite」も公式サイトで発表されていますが、これもすごくかっこいい曲ですね。ほかの曲はロック調がメインの中、この曲は少し異質ですよね。
飯塚 まさしくインフィニットのキャラクター性を出した曲ですね。YouTube ではこの曲もメインテーマの「Fist Bump」に匹敵する再生回数を誇っていまして、海外でも本当に人気の高い曲なんですよ。
中村 そうですね。この曲のおかげでヒーローと悪が双方際立った感じになったので、結果、よかったなと思います。
 

ソニックと異なる視点から描く新しい存在「アバター」

アバター

エッグマン軍に襲撃された市街地の生き残り。レジスタンスの新入りとなって、ソニックとともに戦うことになる
“ウィスポン”を使って戦うプレイヤーの分身
アバターは、動物のタイプや衣装といった外見を好きなようにカスタマイズができるキャラクター。そのほか、いろいろな効果を持つガジェット「ウィスポン」も使用可能。ウィスポンを使うときは、ステージ内で「ウィスプ」を捕まえる必要がある。ウィスポンはここで紹介しているもの以外にも存在するぞ。
BURST(バースト)

火炎放射ができるバーストはレッドウィスプの力が必要
LIGHTNING(ライトニング)

アイボリーウィスプの力を使うライトニングは電撃の鞭を繰り出す。電撃は移動にも使えるぞ
—— (2017年当時の)TGSのステージで「自分で作ったキャラクターでプレイしたい」というユーザーの声からアバターが生まれたものだと話されていましたが、その経緯を聞かせてください。
飯塚 実は過去作でもアバターを出したいという希望はあったんです。今回その引き金が引かれたのは、「ヒーローだけではなく一般市民もレジスタンスとして立ち上がる」という物語の設定が、ユーザー自身が作り上げて育てていく「アバター」というキャラクターにしっかりマッチしたからなんです。
—— 以前から検討はされていたのですね。そして実際に作る様子を女性アバターの声を担当した悠木碧さんがステージイベントで披露していましたが、いろんな意味ですごかったですね!
飯塚 個性的な仕上がりで、すごい能力を持ってそうでした(笑)。
中村 あれはもはや、一般市民を超えたレベルですよね(笑)。
—— ちなみにアバターの見た目はゲームの途中で変更はできるんでしょうか?
飯塚 アバターのカスタマイズ要素は、「キャラクタークリエイト」と、服や靴などといった「着せ替え」、武器の「ウィスポン」の3種類になります。キャラクタークリエイトに関しては、最初にしかできません。
中村 大元のキャラクター自体は変えられないですが、それ以外はゲームを進めていくといろいろなものが手に入るので、それを変えることはできます。

悠木さんがカスタマイズしたアバターがこちら。強烈な個性を放つガスマスクや、チャオのリュックがデザインのポイント

グローブやシューズ、ボディにマークを付けられたりと、カスタマイズできる要素は盛りだくさん!


—— キャラクタークリエイトではいろいろな種類の動物が選べますが、その種類はどのように決められたんでしょうか?
飯塚 『ソニック』の世界の中にいて不思議ではないもの、つまり今までに登場したソニックの仲間たちを基準に考えています。例えば、猫や鳥などといった生き物から、当然求められるであろうヘッジホッグなどです。あとは…「少し意外なもの」を加えたセレクションになっています。
中村 実は動物の種類はアクション能力も変わるんです。最初はどの動物を選ぶかが重要になるんじゃないかなと思います。
—— アバターの動物の種類を変えることで、プレイの感覚も変わるのでしょうか?
中村 実際にその変化を体験していただきたいので、いろいろと種類を変えて何度もプレイしていただければと思います。あと、ウィスポンの種類によって、同じステージでも進めるルートが変わってきたりします。「スキル」もいろいろあって、少しスピードが速くなったり、バリアが付くといった効果がたくさんあるので、そこまでしゃぶり尽くして遊んでいただければ、開発冥利に尽きますね。
—— ウィスポンは2人のソニックと差別化を図る目的で作られたんでしょうか?
中村 『ソニック』シリーズにはいろいろ新しいキャラクターが出てくるんですが、アクションがソニックのスピーディーなプレイと違うベクトルに向かうと、ユーザーの方が困惑してしまう部分もあって。それとゲームのテンポ感も大事で、FPSのように物陰に隠れて撃つような操作だと、満足いただけないかなとも考えました。ですので、アバターの操作は3D空間を広く使い、自分でいろいろな場所を探していけるものにしようと、現在の形になりました。
—— ロープをぶら下がって進むような操作ができるウィスポンもありますね。
中村 これは一般人のアバターが、ソニックに負けないスピードでついていくのは難しいだろうという問題から生み出されたものです。ウィスポンの力を借りることで、ソニックに近いアクティブな活動ができるようになるなら、設定として無理も出ないですしね。
CUBE(キューブ)

ウィスプを獲得すると、左下のゲージにエネルギーがたまりウィスポンが使用可能に。ブルーウィスプの力を使うキューブは、敵をキューブ化し、足場に利用したりできる


—— アバターの性別は任意で選べるんでしょうか?
飯塚 もちろん男女選べます。細かいところでは、声質も3タイプから選べるようになっています。TGSのステージに登壇した悠木さんは、女性タイプの声を担当してもらいました。
—— 男女の違いでセリフや物語が違ったりすることはあるんでしょうか?
中村 物語の中身は変わらないです。でも、”気持ち”だけは変わります(笑)。
—— そこは大変気になりますが…(笑)。
中村 女の子アバターを選んでプレイすると、「ソニックかっこいい!」とソニックに惚れちゃったり、女の子に対しての態度がかわいいな、と感じるようなことがあるみたいですよ。伝聞ですけど(笑)。
一同 (笑)
飯塚 性別については最初にどうするかを考えました。『ソニック』のファンは男性が多いので、必要ないという話もありました。あと、男女を選べるようにすると、英語だと「she」と「he」で主語が変わるじゃないですか。そこを逐次変えるのが結構大変な作業なんですよ。でも、ユーザーさんの選択肢を狭めるのは良くないと思い、ちょっと無理をしてでも選べるようにしようという結論になりました。
—— そうだったのですね。
飯塚 性別は入れて良かったと思います。あと、先ほど声質の話をしましたが、実はアバターはセリフをしゃべらないんですよ。ゲーム中のアクションボイスくらいなんです。
中村 アクションボイスがないと「プレイしている感」が薄くなるのと、個性も出せないですからね。
飯塚 アバターは”自分自身のキャラクター”だと思ってもらいたかったので、プレイヤーの意思と違うことをベラベラしゃべると、気持ちが冷めてしまうと思ったんです。
—— アバターはプレイヤーの分身ということなんですね。シリーズキャラクターと物語上、いろいろ関わるシーンもあるのかな、という部分が気になるんですが…。
中村 最初はナックルズからレジスタンスの新入り扱いされるところから始まって、いろいろな『ソニック』シリーズのキャラクターたちと関わりながら冒険していきます。あと、カットシーンにも自分でカスタマイズしたアバターがそのままの姿で出てくるんです。公開したシーンは都合上、赤い狼のアバターになっていますが、実際は自分の作ったものが登場します。ソニックとグータッチする場面なんかもありますので、アバターに対する思い入れも深くなるんじゃないかなと。

レジスタンスの先輩・ナックルズとの師弟関係は大変そう?


飯塚 副次的な部分ですが、今回アバターが登場したことで、やり込んだご褒美の「リワード」も増やせたんですよ。メガネがもらえたり、グローブがもらえたりするんです。今までの『ソニック』ではクリアのご褒美は出しづらかったのですが、今回はいっぱいあるので、がんばってみてください。
—— 集めてコンプリートする楽しみもあるんですね。
中村 コンプリートするのは相当大変だと思いますが(笑)、ぜひ達成していただきたいと思います。
 

ソニックとアバターが共闘するタッグステージの魅力


タッグステージではスピード感とウィスポンを使う楽しさがいっぺんに楽しめる。超高速移動ができる「Wブースト」のときは、Yボタン連打で「Fist Bump」(グータッチ)の感覚を味わえる
—— 今作ではモダンソニック、クラシックソニック、アバターの3人を操作できますが、それぞれが活躍するステージはどんな配分になっているんでしょうか?
飯塚 それぞれ1/3ずつくらいですね。その中でタッグステージというのは、特別なシチュエーションで登場します。モダンソニックの特徴である「ブースト」と、アバターの特徴である「ウィスポン」を同時に使ってプレイするんですよ。
中村 物語の中でも大事な場面で、アバターがソニックの背中を追いながら、ついていくという特別なステージです。
—— タッグステージは2人を操作するステージですが、「キャラクターの切り替え」という操作がないですね。
飯塚 よくぞ気づいてくれました!
一同 (笑)
—— アバターで攻撃したいときはアバターが攻撃してくれますし、走りたいときもソニックが行ってくれるし、プレイしていてすごく気持ちいいです。
飯塚 今まで複数のキャラクターを同時に操るのは、『ヒーローズ』と『トゥーン』シリーズでもやっていましたが、どちらもキャラクターの切り替えボタンがあったんです。それが複数キャラを操作するスタンダードなやり方なんですけど、ボタンで切り替えではどうしてもワンテンポ遅くなってしまうんですよね。それがイヤで、今回のタッグでは切り替えボタンを使わず自分がやりたいアクションをしたときに、そっちが主役になる操作を考えたんです。最初の企画書に書いたときは、誰にも理解してもらえなかったんですが、思い描いた形で入れ込んでもらえました。
—— 飯塚さんのこだわりの部分だったんですね。それを受けて、中村さんは「切り替えなし」の操作をどうやって実現したんでしょうか?
中村 いえ、そこは苦労したということはなく、ゲームに組み込んでみたら意外と自然にと言いますか、特に誰からも文句は出ず…という感じだったので(笑)。そこは『ソニック』というゲームの“ある種のアバウトさ”という部分と合わさって、いい感じになったんじゃないかと。
飯塚 ゲームの流れも、まずソニックのステージをプレイして、次にアバターのステージをプレイ、それからタッグステージという順番でプレイしていきますからね。そうすると、何も意識しなくてもウィスポンを使うときにはRボタンを押すし、ブーストを使うときはBボタンを押すんです。特に新しい操作を意識せずにタッグステージを遊んでもらえるようになっていると思います。

—— 敷居が高そうなステージだと思っていたのですが、実際にプレイしてみるとボタン1つでもサクサク進めて、「俺、やれるじゃん!」みたいな気分になれますね。
中村 そこは昔からの『ソニック』シリーズのいい部分なのかなと思います。私の子供もほかのゲームだとすぐゲームオーバーになって進めないのですが、昔の『ソニック』なら十字ボタンを押して、いい感じにジャンプしているだけでゴールできるんですよ。そこに”かっこよさ”などを加えて、爽快感も体験してもらえるように作ることで、難しそうに見えてそうではないというか、「俺かっこいい!」と感じるようなプレイをしていただけるんじゃないかと思います。
—— タッグステージは、ソニックとアバターが力を合わせて繰り出す「Wブースト」の際、音楽でメインテーマがかかったり、演出もすごくかっこいいなと思いました!
中村 アクションゲームなので、アクションが盛り上がるところに盛り上がる曲がかかるようにすることは、サウンドディレクターの大谷(智哉さん)も意識していますね。ストーリーでも2人の絆を表現するというところで、「Fist Bump」という、絆を象徴するメインテーマ曲を入れていますし、ゲーム中のWブーストの操作も相まって、うまくゲームにハマったのかなと思います。
 

『ソニック』シリーズに おける物語の時系列

—— タッグステージで『アドベンチャー』の雰囲気を感じました。ステージ内に登場するピラミッドが基地になっていたりして。何か関係があるのかなとも思ったのですが…。
中村 それは関係ないです(笑)。ゲームの作りとしては『アドベンチャー2』を意識していますけどね。いろんなアクションが出てくるけれども、お話のトーンに合わせてアクションを使い分けて、興味を持って先に進みたいと思っていただけるような形にしています。
—— 『アドベンチャー』『アドベンチャー2』『ヒーローズ』の3作はつながりがある物語でしたが、今作とつながっているんでしょうか?
飯塚 カオスも出るし、ザボックも出るし、外伝ではなく本流であるストーリーラインに乗ったお話になっています。
—— 今までの作品の流れの1つで、一番新しい物語ということなんですね。
飯塚 そうです。海外のファンの方は、そこをものすごく気にするんですよ。新作が出るたびに「これは本流なのか?」って(笑)。
 

フォースのタイトルと ロゴに込めた思い

—— 『ソニックフォース』というタイトルはどのように考えられたんでしょうか?
飯塚 ”フォース”という言葉には「エアフォース」などで使われる「軍隊」という意味と、単純に「パワー」という意味があります。レジスタンス軍とエッグマン軍との「軍と軍とでぶつかり合う」という力強さを『ソニックフォース』というタイトルに込めています。
—— レジスタンス軍のマークで星が2つ使われているデザインは、どんな意味があるのでしょうか?

レジスタンス軍のシンボルマーク
飯塚 星は『ソニック』シリーズでは長く使われているモチーフなので、「レジスタンス軍は星」というイメージはすぐに出てきました。
中村 実はこの2つの星は、ソニックとアバターなんですよ…っていうのは後付けなんですけど(笑)。
一同 (笑)
中村 シンプルだけど、グッズにしたときにも「欲しい!」と思っていただけるようなデザインをオーダーをしたので、デザイナーは「大変だ」と言いながら作業をしていました。エッグマン軍のマークも、いつものエッグマンよりもちょっとリッチになっていて。デザインとしては、そっちのほうが大変だったみたいです(笑)。

エッグマン軍のシンボルマーク
 
飯塚 私は昔ながらのエッグマンマークでいいかなと思っていたんですよ。レジスタンス軍もシンプルなので、ちょうど釣り合いも取れますしね。
中村 今回はエッグマンが世界を99%支配しているので、”調子に乗った感”を出したかったんです。
飯塚 「世界はもうワシのもんじゃ!」と(笑)。
—— 今回のエッグマンはいい気になるほどの状況ですし。
中村 でも、今後の作品を入れても、今作が最高の状況なんじゃないですかね。
飯塚 世界を99%支配できるなんて、金輪際ないだろうし(笑)。
一同 (笑)
 

日本と海外で 異なる映像の見せ方

—— ゲーム情報より先にムービーや楽曲を公式サイトで公開していましたが、その狙いについて教えてください。
飯塚 あれは海外での情報の出し方の特徴ですね。日本ではゲームのテーマソングを使って、ゲームの雰囲気がわかるトレーラーを作るのが普通ですが、海外ではトレーラー映像を映画っぽく仕上げることが多くあるんですよ。そこに乗る音楽って、実際にゲームで聴ける音楽ではないこともあるんです。なので、テーマソングを何らかの形で事前にユーザーさんに聴いてほしかったんです。それで最初の試みとして「ストリームで曲の配信をやってみたらどう?」とアメリカの担当者と話をして、試しにやってみたら、ものすごい再生回数になってしまって(笑)。ファンの反響もすごくて、「曲だけっていうのもコンテンツとしていいね」ということになり、何回か連続で曲を公開したんですよ。
—— メタルソニックやインフィニットの曲もありますね。
中村 私個人はいわゆる日本的なディザームービーをどうしても作りたくて。基本『ソニック』はアメリカ主体で作るんですけど、今回のTGSに合わせて「プロモーション映像を作らせてくれ!」とお願いしたんです。そして、なるべく入れ込みたい場面を詰め込んで、飯塚に「いや、そんなに出しちゃダメだよ」と言われながら今回の映像を作りました。
飯塚 物語の雰囲気がわかる映像は、TGSで披露したのが初めてでした。
中村 レジスタンス軍とエッグマン軍がぶつかっている設定の部分はゲーム単体では見せづらいので、そのあたりも今回の映像でわかっていただけたんじゃないかと思います。
—— 「Fist Bump」がかっこよくて、毎日作業用BGMとして聴かせていただいています(笑)。
飯塚 そういった方もたくさんいらっしゃいますね(笑)。最初インスト版を公開するとき、「これはインスト版なんだよ」と言って出したら、それにファンの方が勝手に歌詞をつけてしまって。これは早く公式の歌詞を公開しないといろんな歌詞の曲が生まれちゃう! と、急いで公開してもらいました(笑)。
中村 『ソニック』ファンはボーカル曲が好きな方が多いですね(笑)。今回の楽曲は、モダンソニックはロック調、クラシックソニックはFM音源をいじった感じで、アバターがボーカル曲です。それに加えてオーケストラも使っていまして、全体のトーンはオーケストラで背負いながら、それぞれのキャラクターを見せるみたいなことをやっています。おかげで音楽も、オールスター感があふれるものになったじゃないかと思います。

そのほか『ソニックフォース』関連動画はこちら
 
—— それでは今後の『ソニック』への意気込みをお願いします。
中村 『マニア』を遊んだ方には「『ソニック』ってやっぱり面白いよね」と思ってもらって、その流れで『フォース』も遊んでいただきたいです。そして『フォース』のほうにもクラシックソニックが出ていますので、そちらで楽しいと思った方は、メガドライブ時代を知らないお子さん共々『マニア』のほうに移っていただいて、トータルで『ソニック』を盛り上げていければいいなと思っています。
飯塚 実は『マニア』を遊んだことのあるユーザーさんがプレイすると、ちょっとニヤッとするようなことがあったりしますので、2本の『ソニック』タイトルを同時に遊んでいただけると、より楽しめるかと思います。
中村 飯塚がアメリカに転勤したことで、全体的なつながりがタイトルとして出てきたと思います。今まではアメリカと日本で施策が別だといったこともあったんですが、『ソニック』シリーズを1つのものとして楽しんでいただくために、「こうやっていこう」という姿勢がいい感じにつながれてきているので、今後のタイトルを含めて、もっとユーザーさんに楽しんでいただけるようになるんじゃないかと思います。
—— まさに飯塚さんが架け橋になったわけですね。
飯塚 そのためにわざわざアメリカに身を挺して行ったわけです(笑)。その成果が今年この2本という形で出たので、とてもよかったですね。
—— それでは最後に読者へメッセージをお願いします。
中村 『フォース』ではオールスターが登場し、ワクワクするストーリーに、モダンソニックのハイスピードとアバターのキャラクターメイクといった、ゲームの広がりの部分もしっかりと作っています。ですので、『ソニック』が好きな方であればたまらないタイトルになっているかと思います。ぜひ遊んでいただければと思います。
飯塚 先ほども少し話しましたが、この2017年に26年間の『ソニック』の歴史の中の、一番いい2D新作タイトル『マニア』と、一番いい3Dタイトル『フォース』を同時に作ることができました。ファンの方には2タイトルとも喜んでいただけるものになっていると思います。また、とてもNintendo Switchというハードに向いているゲームだと思いますので、手に取って楽しんでいただければと思います。

最後に『ソニック』に関するグッズニュース!
『ソニック』と有名スポーツウェアブランド「PUMA」とのコラボアイテムが本日より発売となっています。

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ソニックチャンネル トピックス
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関連リンク
『ソニックフォース』 公式サイト
ソニック公式ポータルサイト 「ソニックチャンネル」


ⓒSEGA

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