熊崎ゼネラルディレクターと振り返る「星のカービィ 30周年」

記念年となった2022年から、2023年4月26日までの約1年間。「星のカービィ」の生誕30周年は、1年を通じてたくさんの出来事がありました。そこでハル研究所のゼネラルディレクター熊崎信也さんと思い出を振り返ります。(ニンテンドードリーム23年6月号掲載)

盛りだくさんだった30周年を熊崎さんに訊く

「星のカービィ」シリーズのゼネラルディレクター熊崎さん。ゲーム開発で多忙な日々を送りつつも、催しやグッズなどの監修も行っています。ゲームではデデデ大王の声も担当
30周年の中で特に盛り上がったのは「星のカービィ30周年記念ミュージックフェス」ではないでしょうか。YouTubeでも中継が行われ、世界中のカービィファンがフェスを楽しみました
「星のカービィ」30周年の主な出来事
2022年3月7日〜:全国のローソンで30周年キャンペーン実施
2022年3月25日:Switch『星のカービィ ディスカバリー』発売
2022年7月22日:SFC版『カービィのきらきらきっず』Switch Onlineに追加
2022年8月11日:「星のカービィ30周年記念ミュージックフェス」開催
2022年8月17日:Switch DL専用『カービィのグルメフェス』配信
2022年10月24日:業務用ゲーム『星のカービィ ぱくぱくグルメレース』稼働開始
2022年10月27日:「KIRBY ホロスコープ・コレクション」フェア開催
2023年2月24日:Switch『星のカービィ Wii デラックス』発売
2023年3月14日:アニメ「星のカービィ」HDリマスター版 まるごとコンプリートBOX発売
2023年3月16日:GB『星のカービィ2』Switch Onlineに追加
2023年4月13日:テイクアウトスイーツ専門店「カービィカフェ PETIT 東京駅店」オープン
2023年4月26日:テイクアウトスイーツ専門店「カービィカフェ PETIT 天王寺店」オープン

星のカービィ」30周年の1年を振り返って

—— 30周年は濃密な1年でしたね。

熊崎 「星のカービィ」30周年を盛り上げるという目標のために、日本だけでなく各国のいろいろな部署やチームがひとつの目標に向かって動けたのはすごく良かったと思います。とにかく大変だったんですけど、それぞれのセクションで「お客様に楽しんでいただきたい!」「30周年を盛り上げる!」という思いを抱きながら、みんな一生懸命準備をしていきました。
明確な目標があったからこそ、私もみんなも迷わずに同じ方向に向かってリンクし合いながら進めたので、どれもとても楽しくお届けできたのではないかなと思います。チームの底力を感じましたね。

—— この1年間でバラエティに富んだ新作ゲームが3本発売されました。

熊崎 私個人としては「3本のゲームを作る」というのが一番の課題でした。30周年だからという理由だけで新作ゲームを発売するのではなく、まずは今できる最高のゲームを作ろうとして制作を進めていった結果、3本の新作が30周年の期間にぴったりはまりました。
ただ、その中でも「ミュージックフェス」に関しては、30周年だからこそ行えることを目指して準備をしていきました。

東京ガーデンシアターで開催された「ミュージックフェス」には昼夜で合計1万6000人が集まりました

—— それを実現できたところが本当にすごいです。

熊崎 30周年の1年間にあった多くのイベントを経て、「星のカービィ」がひと回り大きくなったように感じました。私がハル研に入社した頃(2002年)はカービィが9周年で、10周年になる少し前の時期でした。あれから20年以上経ち、現在はいろんな場所でカービィの姿を目にすることが多くなりました。街に出かけると、学生さんのカバンにカービィのマスコットがぶら下がっているのを見かけたり、キャラクターグッズ売り場やゲームセンターの景品などでカービィを目にする機会が多くなりました。
思えば20周年の頃などは、まだカービィのグッズを見かけること自体が珍しく、ゲームやそれ以外の場所でカービィに出会える場面が、ここ10年でかなり増えたように感じています。第1作から『星のカービィ ディスカバリー』まで長年発売してきた「星のカービィ」シリーズの作品群を経て、日本国内だけでなく、広く世界中でカービィのゲームや、カービィそのものを支持してくださる方は本当に増えたと思います。
「ミュージックフェス」の規模も、5年前の25周年のときに開催した「オーケストラコンサート」より大きな形で実現することができましたし、カービィが多くのお客様にかわいがっていただけるようになったことを感慨深く思っています。

2022年10月7日にはGUとのコラボ商品が発売。カービィはファッションでも人気でした
この1年間アミューズメント施設のゲームコーナーではカービィのぬいぐるみをよく見かけるように

ゲームを作りながら準備をしていた「ミュージックフェス」

—— 「ミュージックフェス」では、ゲームをつくりながら、サウンドスタッフとマンツーマンでやりとりもされていましたよね?

熊崎 本当に大変でしたね(笑)。『カービィのグルメフェス』の開発と「ミュージックフェス」の制作のラストが重なった時がピークでした。片耳で「ミュージックフェス」の音楽監修をしながら、片耳でゲームの曲を聴いていたこともありました。
「ミュージックフェス」のステージ上で『カービィのグルメフェス』の配信日を発表する計画だったので、「今まさに作っていますよ!」と思いながら発表の準備を進めていました。

—— 熊崎さんは「ハル研ドリームバンドによるデデデ大王フェス」でデデデ大王役としてボーカルを担当していましたよね。

熊崎 実はあれ、私のパートは事前に練習してないんですよ(笑)。カービィカフェ TOKYOの営業が終わった後、その夜から次の日のオープン時間までの短い時間でリハーサルから一気に収録しました。お客様に喜んでもらえるなら! という思いで「やるよ!」って参加させていただきました。

「ハル研ドリームバンドによるデデデ大王フェス」ではないですが、『星のカービィ 30周年記念ミュージックフェス』のイベント楽曲の制作映像は今でもみられますよ

31年目に向かって走り出す「星のカービィ」

—— 『ディスカバリー』が発売されたとき、「星のカービィ」が持つゲームの幅が広がって、次回作はなにが出るかなってすごく楽しみになった人は多いと思います。

熊崎 新しい遊びの中に、進化や強化なども増えていき、世の中にある最近のアクションゲームも、成長してパラメーターが変化するものが増えてきているんですけど、基本はなるべく、手についたアクション操作の習熟性でプレイヤー自身が成長してほしいなと思っています。
ゲームの幅は広がりますが一定の線を超えるとまさしくRPGになっちゃうので、アクションとその習熟が大切なカービィにおいて、そのバランスと向き合いながら考えていっているのですが…難しい点ですね。

—— そのチャレンジが「マホロアエピローグ」になったわけですね。演出面ではマホロアにセリフをしゃべらせないで、最後まであんなふうに物語を描いていたのが…すごくよかったです。

熊崎 ありがとうございます。アクションシーンの中で表現された、行間のあるストーリーっていいですよね。ちなみに、マホロアの耳の中身が黒いという設定はちゃんと最初に考えていたんですよ(笑)。

—— それでは最後に、31年目に突入する「星のカービィ」シリーズ。今後の意気込みを聞かせてください。

熊崎 30周年は多くのスタッフの努力があって、そしてなにより、たくさんのお客様の応援のおかげで、ゲームや「ミュージックフェス」、イベントやグッズフェアなどを盛り上げることができました。
ゲームでは『ディスカバリー』で本編シリーズ初の3Dアクションを実現し、オンラインでみんなと対戦ができる『カービィのグルメフェス』を配信し、11年前のゲームをデラックスにした2D本編の『星のカービィ Wii デラックス』を発売し、多様性のあるラインナップをお客さんにお届けできたのではと思います。

—— 3Dアクション、オンライン対戦ゲーム、2Dアクション、どれもゲームの方向性が異なりますね。

熊崎 はい。20周年を越えた辺りから感じていたのですが、開発チームの成長もあり、「カービィ」シリーズをあまり間隔を開けずに発売できるように体制が整ってきました。とはいえ、王道の横スクロールアクションの「星のカービィ」だけを提案していては、さすがにマンネリ化してしまうんじゃないかと危機感も持ってました。かなり工夫して、遊びや世界観のグラフィックなど、毎回変えてはいたんですけど、もっとシリーズの多様性も必要だと感じていたんです。
そして今、30周年にはチームとしてさまざまな経験を経て、これまで以上に新しい遊びへのチャレンジもできるようになりました。多様性のあるラインナップを出せるようになったのは、すごく大きいですね。そのうえで、やり残したことや、チャレンジすべきことがまだあると考えています。
本編や特定のジャンルだけに限定せず、もっと多様な「カービィ」シリーズを世界中のお客様に楽しんでいただけるように、あらゆる準備をしていければと考えてます。今後も続く、新しい「星のカービィ」シリーズにも、どうぞご期待いただければと思います!

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<商品概要>

星のカービィ Wii デラックス
対応機種:Nintendo Switch
発売日:2023年2月24日
価格:パッケージ版6,578円(税込)/ダウンロード版6,500円(税込)
CERO:全年齢
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