絵と音から魅力を紐解く『ソニックフォース』:サウンドインタビュー編(2018年2月号より)

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2017年にNintendo Switchほかマルチプラットフォームで発売された『ソニックフォース』。お買い求めしやすくなった新価格版が11月21日(木)に発売されました!
そこでNDWでは、ニンテンドードリーム誌上で行われた開発者インタビューおよび設定画公開企画を複数回に分けてお届け。最後はサウンドトラック発売記念としてサウンドディレクターの大谷智哉さんにお聞きした楽曲制作秘話です!

【『ソニックフォース』特集】
『ソニックフォース』Wプロデューサーインタビュー
絵と音から魅力を紐解く『ソニックフォース』:設定画公開編
絵と音から魅力を紐解く『ソニックフォース』:サントラ発売記念サウンドディレクター大谷智哉さんインタビュー編
・記事は修正している箇所もありますが、基本は掲載時と同じものになります。
・ネタバレを含む場合があります
ソニックフォースの サウンドを“語る”!
今作の“耳”から楽しむ魅力といえば…やはり、豪華すぎるBGM! 今回は楽曲を手がけた大谷さんに、絶賛発売中のサウンドトラックについても含めて、大いに語ってもらった。


サウンドディレクター 大谷智哉さん
セガゲームス所属のサウンドクリエイター。『リズム怪盗R』などを担当。『ソニック ワールドアドベンチャー』『ソニックカラーズ』などシリーズの楽曲を数多く手がけ、『ソニック ロストワールド』に続きサウンドディレクターを務める。

大谷さんお気に入りの1曲!
STAGE25「インペリアルタワー」

アバター単独で挑む最後のステージ。サウンドトラックで聴けるオリジナルVer.は歌い出しがブレス(息継ぎ)始まりになっており、「決死の覚悟を表現していていい感じ」なんだとか!

ステージに合わせるのではなく ストーリーに合わせた曲に

—— ゲーム発売前からSNSなどを通じてファンと交流され、さまざまな声を耳にされているかとは思うのですが、今の心境はいかがですか?

大谷 長く続いているシリーズなのと、ワールドワイドなタイトルということもあり、世界中から反応があるんです。僕自身、「この演出がユーザーに刺さるといいな」と考えながら作曲していたので、そこをどう感じてもらえたか気になっていました。ですので、そうしたたくさんの反応と自分の考えた演出や狙いとの答え合わせをしているような感覚でした。結果、僕が意図した演出はおおむね気に入ってくれているようなので、よかったな、と思います。発売前にもBGMを公開していたので大きな反響がありましたが、公開していたのは代表的な部分だけだったので、発売後はやはりゲームの流れの中で重要な曲に反応が多く集まったな、と感じています。

—— 今回は近年のシリーズ作とは違って、ストーリーがシリアスな展開でしたよね。音楽面としてはどのようにアプローチされたんですか?

大谷 『ソニック ロストワールド』【※1】やスマホアプリ『ソニックランナーズ』はどちらかというと明るく、楽しく、カジュアルな雰囲気の曲を作っていたので、僕もずっとそういうモードになっていました(笑)。ですので最初は役作りというか、今作に合ったイメージを探る期間を設けたんです。
※1:2013年にWii Uと3DSで発売された『ソニック』シリーズ作品。球体や円柱型のステージを360°自由に走れるのが特徴。大谷さんがサウンドディレクターを務めた。

—— 準備期間が必要だったと。

大谷 さらに今作では、背景が森だから森っぽい音色とか、草原だから草原っぽい曲…というのではなくて、ストーリーと連動した流れに沿った曲を作るっていうのがコンセプトになっていたんです。「STAGE1はお話的にこういう状況だからこういう曲」「STAGE2はアバターの最初のステージで、こういう心境だからこういう曲」というように、最初に1つ1つ全ステージ分の流れをディレクターといっしょに書き出し、その仕様に基づいてステージ曲の制作を進めていきました。「STAGE16のあたりはアバターにもだんだん自信がついてくる。ステージ的にはインフィニットのファントムルビーの効果で大変なことになる場所だけど、イケイケな曲にしよう」とかです。

—— ステージごとではなく、お話ありきで楽曲の構成を考えたんですね。

大谷 そうですね。メインテーマ「Fist Bump」の使いどころについても、テーマ曲がラスボス戦でかかる、というお決まりの演出パターンもありますが、スーパーソニック戦ではないことや、今回はゲームの中の演出にも深く入り込んだ主題歌を作りたいっていう意向もあって、ダブルブースト時の演出の他に、最終ステージより一歩前のソニックとアバターとの「絆」がピークに達する部分で使うことにしました。

—— STAGE24「ヌルスペース」ですね。メインテーマがかかったとき、「ここで来るか!!」と感激しました(笑)。

大谷 最初にゲームに実装してテストプレイしたとき、自分でも「わーこれは、テンション上がるなー」って思いました(笑)。終盤のSTAGE23、24、25あたりがストーリー的にも盛り上がりのピークの1つだと思って作っていたので、皆さんの反応が良くてよかったです。

流れに合わせて盛り上がる! ラストバトルのBGM
 最終ステージの楽曲「Battle with Mega Death Egg Robot」についてと、ラスボス戦にメインテーマ「Fist Bump」を起用しなかった理由もうかがってみた。
大谷 上記の通り、メインテーマ「Fist Bump」は他に使いたい場面がいくつかあり、ラスボス戦のために出し惜しみをすることもしたくなかったので、新たな曲を作ることにしたんです。今回はプレイの状況で曲調が変化するようなプログラムが入っていて、各フェーズを終えて、ちょうどいい小節のタイミングで演出とともに次のパターンに移行するようになっています。今回の「流れに沿う」というコンセプトに合わせて、最初は劣勢のところから、3つ目のフェーズで一気に優勢になっていく流れをグッと押し上げてくれるような演出にしたいと思い、その構成に合わせた新たな曲を用意しました。

ゲーム音楽のルールは “守らないポイント”が大事!?

—— 今回ヴォーカル曲やチップチューンなどさまざまな手法が取り入れられているにもかかわらず、1つのタイトルとしてまとまって感じるのは、ストーリーに沿って作ったからこそ、ということなんでしょうか。

大谷 たしかにそれもあるかもしれないですが、ストーリーの大筋に沿った曲の流れと、キャラクターごとの方向性を決めたあとはわりと自由に制作していました。作品ごとのある程度のルールさえ守れば、あとはどんな曲を入れても、わりとどうにでもなるのが『ソニック』という作品の音楽的な懐の広さなんです。

—— 今作では操作キャラクターごとに楽曲のジャンルが割り振られていますが、それぞれステージ曲で統一している部分というものはあるんですか?

大谷 モダンソニックのステージ曲であれば“歌心のあるインスト”を狙って作曲して同じメンバーのバンドでレコーディングしたり、アバターのステージ曲では特定のリズムパターンを採用し、いくつかの同じ音源を使用してしたり、そういうところでも統一感を出しています。例えばクラシックソニックの曲は「メガドライブの音源で作ろう」というルールを決めまして。クラシックソニックのステージ曲は僕と幡谷(尚史さん。メガドライブ『ソニック・ザ・ヘッジホッグCD』、ニンテンドーDS『きみのためなら死ねる』などを担当)が一緒に作ったんですが、幡谷はメガドライブの開発基板を持ち出してきて、直に鳴らして作っていました。

—— まさに本物で!(笑)


実物のメガドライブの開発基板!(写真は大谷さん提供)

大谷 はい、ただ作りづらそうでした(笑)。でも、ルール通りなだけでは固まりすぎてしまうので、ルールは決めつつも「守らない」ところも用意しています。

—— 例えばどんなところですか?

大谷 モダンソニックでいえば、終盤のSTAGE23の「メトロポリタンハイウェイ」では、それまでのバンドサウンドとは違ってトランステクノ調な曲にしていたり、アバターのステージも、ドラムンベースのリズムの曲が続くんですが、最後のSTAGE25だけは違うノリ(リズムパターン)にしていたりとか…。築き上げてきたルールや予想を裏切るポイントも大事なんです。

—— そういった予定調和を崩すポイントを、ストーリー的にも最も盛り上がるところに持ってきたんですね。

大谷 そういう曲がやはり良い評判をたくさんいただけているということは、やはりルールはありつつもどこかで“壊す”のは必要なのかなと思います。

DLC「シャドウストーリー」BGMの選曲の秘密!
 今作には過去作からのリミックス曲も多く収録されている。その経緯についても語ってくれた。
大谷 やはり知っている曲のアレンジとかリミックスがあるとうれしいと思うので、どこかには入れたいと思っていたんです。メタルソニック戦やザボック戦は、それぞれ関連する曲があるのでそれをリミックスしたんですが、DLC「シャドウストーリー」に関してはもう少し自由に取り入れていこうと思いまして。『ソニックアドベンチャー2』【※3】や『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ』【※4】の過去曲をリミックスしたり、カットシーンでもギターのフレーズを引用したりしました。でもまったく脈絡なくというわけではなく、『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ』の「ウェストポリス」は市街地つながりだったり、『ソニックアドベンチャー2』の「ホワイトジャングル」は、水流のあるジャングルのステージだから、ジャングルつながり、ということで選曲しているんです。若干こじつけかもしれないですけど(笑)。
※3:ドリームキャスト用ソフトとして2001年に発売。ソニックのライバルキャラクターとしてシャドウが初登場。
※4:2005年発売のニンテンドーゲームキューブ/PlayStation (R)2/Xbox用ソフト。シャドウが主人公となったスピンオフ作品。

↑シャドウファンにはたまらない曲・フレーズがそこかしこに!

テーマ曲に込められた インフィニットの個性

—— キャラと言えば新キャラのインフィニットのテーマ曲も人気ですよね。

大谷 インフィニットのテーマは、デモの制作に入る段階で、すでに設定もストーリーもできている状況でした。ですので、テキストの情報をもとにイメージを膨らませながら制作することができたんです。

—— サウンドコラム【※2】では「“中二病”感のある歌詞」と語られていましたね。
※2:『ソニック』シリーズ公式サイトで連載中のコラム。大谷さんと、同じくソニックチームのサウンドディレクター瀬上純さんがシリーズ作の楽曲などについて語っている。

大谷 ただごとじゃない中二病感ですよね(笑)。海外含め、「シャドウより中二病な奴が出てきた!」って盛り上がっていて。

—— シャドウから更新されたと(笑)。

大谷 更新されましたかね?(笑)。でも今も一番再生されているような、人気の曲になりましたので、みんなそういうのが好きなのね、と(笑)。

一同 (笑)

大谷 自分を強く見せようとして(弱い部分を隠そうとして)仮面をかぶったり、ファントムルビーの力による、偽りの強さを誇示しているようなキャラクターなので、曲も過剰に強いサウンドにしようと思い、ダークでヘビーな曲調にしました。ただ作ったときは、どのシーンで使おうっていうのを決めていなかったんです。新キャラクターを打ち出していくうえでもテーマ曲は欲しいな、とだけ考えていて。なので、まずは曲だけ作って「じゃあどこに使おう?」っていう感じでした。曲ができて、ヴォーカルバージョンを作りながら、それをどこで使うかは厳密には決めずに…同時並行でボス戦用のアレンジを進めていったんです。

—— インフィニット戦は3度ありますが、どのような変化をつけていったんですか?

大谷 インフィニットのテーマは、疾走感のあるメインテーマと対極に重心低くどっしりとしたサウンドにしているんです。とはいえ、ボス戦ではもうちょっとテンポアップしたアレンジにしないとゲームの勢いを落としてしまうので…。じゃあリミックスにしよう、ということで1戦目用のリミックスを作りました。2度目は遊びも違うし、まったく同じだとつまらないので、違う形で。3度目の戦闘は、クライマックスらしくオーケストラアレンジにして、というふうに…。「じゃあヴォーカルバージョンはどこで使うんだ」って感じなんですが、同時にカットシーンの制作もしていたので、初登場シーンに一部を使用しました。


戦闘ではテンポを優先し、ヴォーカルバージョンはこのシーンのみの採用に

—— 実は最初「どこ?」と思ってました。

大谷 海外の方からも「いつフルバージョンがゲーム中で聴けるのか」と言われ続けましたね(笑)。今作では、歌詞の内容と演出の効果的な組み合わせをいろいろ考えていたので、インフィニットのテーマの使いどころに関して、僕は最初「インフィニットが敗北する最期のシーンに使いたい」って言っていたんです。「俺は弱くない!」って虚勢を張っているキャラなので、消えていく間際でも、「俺に終わりはない / 俺が誰だったかの爪痕だけが残る」という歌詞の内容に合わせるような使い方も面白いんじゃないのかなと思ったんですが、その意図がうまく演出担当に伝わらず(笑)。最終的には、登場シーンのみで使われることになりました。

世界をまたにかけるソニックらしいメインテーマ
 海外アーティストも多数参加している今作。大谷さんがレコーディングの際に印象に残ったエピソードとして、メインテーマ「Fist Bump」のレコーディングでの1コマを挙げた。
大谷 ヴォーカルの録音をしてくれたレコーディングエンジニアが曲を聞いて、「この曲はJourney(旅)だね」と言っていたのが印象に残っています。「Fist Bump」って1曲の中で転調がたくさんあるんですが、ざっくり言うと、洋楽のロックだとそこまで転調を多用せず、もっとストレートな作りなんですね。対して日本のポップスは音楽的なギミックが盛りだくさんなんです。欧米のファンも日本のファンもどっちもつかめる曲にしたい、という想いがあったので、結果、洋楽っぽいけど邦楽らしい仕掛けも詰め込んだメインテーマになりました。インターナショナルなソニックにふさわしく、音楽的にもそういう日本の要素と海外の要素をMIXして、いろんな文化がまじりあったからこそできた、インターナショナルな「ソニック」ならではのメインテーマになったと思います。

イキの良い生の音源で ソニックの曲を

—— 発売になったサウンドトラックについて、CDだからこそ聴いてほしいオススメのポイントを教えてください!

大谷 最近は配信でお手軽に一曲だけでも買える時代ですよね。それによって間口は広がっていると思うんですけど、でもやっぱり配信だとゲームで聴くのと同じく圧縮された音源で…。録音にもこだわって作られたオリジナルの音源はもっとポテンシャルが高く、迫力があるんです。なのでぜひCDの良い音で聴いてもらいたいという想いがあります。とはいえ、配信とCDの差をどうやって説明したら、みんなにもわかりやすいかな…とずっと考えているんです。それで、「CDの音質で聴くのは、朝とれた魚をその場でさばいてすぐに食べるような鮮度。圧縮された音源は、それが冷凍されてスーパーに運ばれ、加工され切り分けられてパックになったものを食べる感覚」というような例えを考えてみました。もちろんスーパーのお刺身(=配信音源)も美味しいんですが、そんな感じの説明で…伝わりますかね?(笑)

—— なんとなくわかります。加工されてない生の良さを味わってほしいと。

大谷 そうです。あと、ゲーム中のステージより長く作っている曲があって、それを全部聴けるのも美味しいポイントです。先ほどお話ししたヴォーカルバージョンのインフィニットのテーマの他にも、ステージ尺の都合で全編は再生されていない曲がいくつかあって…。STAGE24「ヌルスペース」の前半の曲も、実はもうちょっと長いんです。「後半にはこういう展開があったんだ!」みたいな部分も聴けるので、音楽面から広がりを感じてもらえるんじゃないかなと思います。あと、CDならではの良さとしては、解説テキストがあります。コンポーザー陣4名で全曲にそれぞれ書いているので、それを読んでもらうのも楽しいと思いますし、飯塚(隆シリーズプロデューサー)と中村(俊プロデューサー)もメッセージを寄稿してくれています。

—— もう、びっしりですね。

大谷 びっしりです(笑)。文字だらけで申し訳ないんですが…。でも、CDをCDプレイヤーに入れて解説を読みながら聴くって言う楽しみ方は、時代が変わってもいつまでも残ってほしいなと思います。

—— では最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

大谷 みんなのお気に入りのソニック・ミュージックを更新したいと思い、高い志を持って作りました。ゲームの制作が終わってハードな時期が過ぎて、サントラのパッケージをどんなデザインにしようか…と考えている時がすごく楽しいです。プレッシャーもないですし(笑)。アートワークにもこだわって作ったサウンドトラックなので、ぜひ皆さんにも楽しんでいただけたら嬉しいです!


Sonic Forces Original Soundtrack – A Hero Will Rise
12月13日発売 4500円(込) 発売:株式会社ウェーブマスター

『ソニックフォース』の全楽曲をあますところなく収録した豪華3枚組サウンドトラック。ソニックサウンドを心ゆくまで楽しめる。

メインテーマ「Fist Bump」や「Infinite」に加え、アバターステージのBGMなどヴォーカル曲、全10曲を収録したヴォーカルトラック「Sonic Forces Vocal Traxx – On The Edge」も発売中、2400円(込) 。さらに、ロンドン交響楽団などによるオーケストラ楽曲など一部楽曲は『Sonic Forces Hi-Res Collection』として、ハイレゾ音源を配信中。

【『ソニックフォース』特集】
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絵と音から魅力を紐解く『ソニックフォース』:サントラ発売記念サウンドディレクター大谷智哉さんインタビュー編
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