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FE無双 風花雪月 キーマンインタビュー 〜もうひとつのフォドラ戦記を尋ねて 後編〜

この世界という1点を縦に深掘りしていく

キャラクターたちの生を感じる、前哨基地でのさまざまな演出

── 皆さんご自身も原作の『FE 風花雪月』ファンだとおっしゃっていましたが、ファン目線ならではのこだわりポイントなどを、もう少しいろいろとおうかがいしたいです。

岩田 前哨基地については、『FE 風花雪月』の大修道院がそうだったように、この場所がきちんと「人々がそれぞれに生きて、生活をしている空間」になることを目指しました。主人公と仲間が食事をするシーンでいえば、一緒に食卓を囲んでいる2人だけではなく、その後ろでも別の仲間が立ち話をしていたりですとか、随所にキャラクターの“生”を感じてもらえるポイントを作ることをすごく大事にしました。ユニットや自軍を強化するためだけのUIにはしたくなかったんです。『FE 風花雪月』の大修道院と比較して本作の前哨基地はかなりエリアを狭めてコンパクトにまとめているのですが、その分キャラクターたちがあの場所で生きている、という臨場感をより強く感じられるよう、密度高めに設計しています。

── 基地に関するお手伝いがいろいろできるのもうれしいですよね。キャラクター同士の掛け合いもそうですが、武器を手入れしたり掃除をしたり、生活感がにじみ出ているなぁと感じました。

岩田 あのあたりの交流システムは、開発を効率化しようと思えば演出をカットして、支援レベルが上昇した結果だけを反映する、ということもできたんですよね。でも、それはやはり違うよね、と。あの演出も含めて交流システム自体を楽しんでもらって満足していただけるよう、掛け合いまできっちりと作り込みました。

── 平和だった大修道院ほどではないにせよ、前哨基地にも猫や犬がいたのがうれしかったです。

探してみると、基地のいたるところに犬や猫の姿が

岩田 はい。前哨基地は戦地なので、置いてもいいのかな、という迷いもあったのですが、そこはやろうと(笑)。『FE 風花雪月』の風物詩のひとつでもありますので。

── 原作と同じように「贈り物」システムがあるのも、犬猫と同じような流れでしょうか?

岩田 そうですね。士気や支援値を管理するためのシステムで、ほかの要素でも補える部分ではあるのですが、気になるキャラクターに贈り物をする、という行動自体に存在価値のあるシステムだと思ってます。ので、これは外せないな、と。

生活するための作業の手伝いや、食事、訓練…。前哨基地では、細部まで作り込まれた空間とこだわりの演出により、「キャラクターたちがそこで生活している」臨場感がたっぷり楽しめる

原作と本作を両方遊ぶことで、より深く広がるフォドラの世界

── ロドリグやホルストなど、生徒キャラ以外のプレイアブルキャラクターはなぜ登場することになったのでしょうか?

早矢仕 やはり、多彩なプレイアブルキャラクターがいるというのはコラボ無双の醍醐味ですから。「原作でユニットではないからプレイアブルにしない」では、『無双』の魅力を逆に損なわせてしまうことになると思ったんです。

── 遊んでいくと、意外なキャラクターもプレイアブルとして登場しますよね。

早矢仕 そうですね。たとえば『ゼルダの伝説 厄災の黙示録』でも、やり込んでもらうと「こんな人も!?」というような意外なキャラクターがプレイアブルとして登場するのですが、ぜひ実際にプレイして驚いてもらいたいと思っていたので、あえてお見せすることはしなかったんです。やはりやり込んでいただいた先にさまざまなご褒美があるのも本作の魅力ですから、いろいろとご用意してます。

── 本作ではホルストさんやベルグリーズ伯(カスパルの父)のように、「話題の中で名前は出てきたけれど姿を見せなかった人」が多数登場しますが、原作でもほとんど触れられなかった新キャラクターも登場しましたよね。クロードの故郷である隣国パルミラの人ですとか。

鈴木 異母兄弟のシャハドですね。彼はクロードが抱えている背景を掘り下げるために必要なキャラだよね、という理由から、開発当初からライターが「このキャラを追加したい」と提案していて、本作で登場を果たしたキャラクターです。

早矢仕 そもそも、『FE 風花雪月』の時から設定自体は作ってあったけれど『FE 風花雪月』には実装されていない設定、というものが実はたくさん存在しているんですよね。その中で、今回せっかく『無双』として再度あの世界の物語が紡がれるので、載せられなかったこの部分をあらためて使いたい、という流れになったんです。なのでパルミラあたりの設定については、本作のために新しく考えたというわけではなく、設定として元から存在していたものを引っ張り出してきた、という感じです。

『FE 風花雪月』でもクロードとの因縁が示唆されていた異母兄が本作で初登場

鈴木 本来なら『FE 風花雪月』で語りたいことがたくさんあったはずなのに、描き切れなかった部分が存在していたんですよね。それならば、今回の『無双』でその部分を語りましょうか、ということになりました。

── ニンドリのインタビューで判明した、クロードの本名も出てきましたね。

早矢仕 そうですね。本作でいろいろ新たに語られましたが、それでもまだ明かされていない部分もたくさんあるんですよね(笑)。

── 『FE 風花雪月』インタビューの際も「表には出されないけれど、1万年も前の出来事から書かれているような、膨大なフォドラ年表が存在している」というお話はうかがいました。『FE 風花雪月』で語られたストーリーは、その長い年月のうちの一部だけを切り取ったお話だ、とも。本作も、そういった原作では描かれていなかった設定を切り出して組み込んでいったんですね。

任天堂の横田弦紀さんとISの草木原俊行さんにお話をうかがった『FE 風花雪月』インタビュー

鈴木 そうですね。お話の展開自体はIFのストーリーなのですが、設定自体は『FE 風花雪月』のものを踏み外していないんです。なので、原作で入りきらなかった設定を補完する存在としての『FE無双 風花雪月』という楽しみ方もできますので、ぜひそうした部分に興味のある方にも本作を遊んでいただきたいです。

早矢仕 本作の制作のために、『FE 風花雪月』の設定資料をちょっと拝見したのですが、知らないことがいっぱい書いてあって。あれは不思議な体験でしたね、「あれ? 『FE 風花雪月』プレイしたはずなのに、私がプレイしたあの物語はなんだったんだろう」という気持ちに一瞬なってしまいました(笑)。プレイしただけではわからないような、そういった“厚み”のようなものがそもそもの『FE 風花雪月』の時から存在していたんだなと、一緒に作ってきて我々も改めて感じました。

── 食事のメニューや建築様式など、細部まで『FE 風花雪月』の時代背景や設定を考慮して制作されているんだろうな、というのは、プレイしている間にもひしひしと感じました。

早矢仕 そうですね。インタビュー前編でもちらっとお話をしたのですが、実は開発当初『FE 風花雪月』だけにフォーカスするのは、話題性的な面で良くないんじゃないかという懸念もあって、あの世界に「異界の門」のようなものを登場させて、他の『FE』シリーズからも英雄を参戦させる形にしようか、という案も出ていたんです。参戦させる歴代シリーズの英雄をリストアップしたりもして…。ですが本作を作っていくなかで、やはり『FE 風花雪月』だけで描いたほうが、『FE 風花雪月』自体の魅力もアップするだろうと感じたので、変に別のタイトルを混ぜるのはやめよう、ということになりました。先ほど言ったように、せっかくフォドラの世界というものがきっちり作り込まれていたので、横に広げてしまうよりもこの世界という1点を縦に深掘りしたほうが絶対に魅力が上がる、と思い直したんです。そういう流れで今の方向性にシフトしていったので、我々自身も『FE無双 風花雪月』を作りながら、原作である『FE 風花雪月』の魅力を再認識していったんです。

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