バディミッション BOND 開発者インタビュー #2 誌面上のランデブー

モクマさんの笑顔の影に忍ぶチャーミングな秘密

一見フレンドリーだけど 本音や本質を隠せる大人

杉原 モクマとチェズレイは、「タヌキとキツネの化かし合い」を想像しながら、セットで設定していきました。モクマはチェズレイとは反対に、登場した時、できるだけ早くお客様に受け入れていただくことが目標でした。それで、ゆるくておちゃめなムードメーカーとして描くことにしました。コミュニケーション力が高く、常に自分を下げ、相手を立てるタイプです。とにかく気安くて接しやすい、良い人に見えるよう努めました。ただ、本当はいい意味でも悪い意味でも大人というか、自分の本質や本心を隠すことに長けている人物です。逃避、見ないふり、妥協といった、いわゆる「大人の対応」も必要ならできるところが、他の3人と違うところですね。老練の駆け引きを一見そうとわからない形で展開することもあり、この点では相棒のチェズレイより曲者かもしれません。そういった内面が少しずつ垣間見えるように、ただし見せすぎないように心掛けました。デザインで意識していただいたのは、茶目っ気とだらしなさです。同時に、どこか渋さもあり、ギャップが出た時に引き立つようデザインしていただきました。

村田雄介先生によるモクマさんの全身像ラフ画。大人の渋カッコ良さを感じる表情も多く描かれている

公式Twitter(@BDMBOND_INFO)にて公開されたモクマさんの着彩ラフ

本性を出し抜く相棒との 人間味溢れる魅力的な関係

杉原 モクマとチェズレイのバディについては、中盤でチェズレイがモクマの本性を暴くシーンがひとつの山場なのですが、最初はチェズレイが「あなたは私が思っていたような下衆ではなかった。苦しみながらも使命を手放さない人間だった」という結論をモクマに対して出し、誤解を詫びる流れにしていたんです。その際、中山さんが「今一歩、驚きや盛り上がりが足りないのでは」と問題提起してくださいまして。なぜそう感じるのか、細かく分析したエクセルをご送付いただきました。

中山 私たちの間で交換日記と呼ばれていたものですね。モクマが下衆でないことは、中盤までの彼の人となりを見ていれば読み手にも十分予測できるはずなので、改めて「モクマさん、あなたは下衆ではなかった」とチェズレイから言われても、読み手としては「うん、それは知ってた」と感じてしまい、意外性の不足につながっていると思う、と所感をお伝えしましたね。同時に、旧案ではチェズレイがいまいち彼らしくない点も気にかかっていました。チェズレイはその異名「Outwitter(出し抜く者)」のとおり、読み手の理解より一歩先の解釈を提示してほしいキャラクターでした。そんなチェズレイの探究が最高潮になるシーンでは、読み手がすでに十分理解しているモクマの側面に言及して強調する方向ではなく、新しい事実を開示したほうがよいのでは、とご提案した覚えがあります。モクマとチェズレイ本人たちが仰々しく騒ぐほどの事実なんて明かされてない! …とユーザーに感じられてしまうと、そこでゲームに置いていかれるというか、乖離が生じてしまうため、それを避けたかったんですよ。

杉原 ご指摘をいただいて考えた結果、いっそチェズレイの結論を反転して「あなたは下衆だった」にしようと思い立ちました。もともとあった、モクマの逃避癖やエゴイスティックな側面を、チェズレイの前ではもっと立てていこうと。調整後のシナリオをお読みになった中山さんから「ぐんと面白くなりました!」という反応をいただけたとき、とても嬉しかったことを覚えています。

中山 モクマに限らず、人間であれば誰にだって、ズルい側面や、自分に都合の良い考え方をしてしまうことは、自然とありますよね。綺麗ごとだけで語れない形に決着したことはシナリオ制作上の課題を解決しただけでなく、加えて彼らの魅力にもなりましたし、共感ポイントにもなったのではないでしょうか。…こんな感じのあーでもないこーでもない議論を、数年間杉原さんとやりとりしてました(笑)。杉原さん、いつも汲み取ってくれてありがとうございました!

モクマさんへのお忍びQ&A

Q.モクマさんが女性に対して軽い態度をとるのは、なぜでしょうか?

杉原 嫌われようとまではしていないと思いますが、深い関係にならないよう、わざと軽薄に見せている部分はありますね。軽い会話を楽しみたいという、ポジティブな思惑も持っています。

Q.モクマさんは放浪中にいろいろなお仕事をされていたみたいですが、どんなお仕事をされていたのでしょうか?

杉原 一部にはなりますが、用心棒、警備員、消防団員、レスキュー隊員、土木作業員、トラック運転手、特殊清掃員、漁師、サーカス団員などでしょうか。とある国で、伝説の整体師になりかけたという裏話もあります。基本的に、筋力を活かす仕事が多かったイメージです。

Q.モクマさんのシャツの柄はなんの模様でしょうか?

杉原 菊の模様です。CGスタッフがいろいろな柄を合わせてみた結果、菊が一番しっくりきたようです。

Q.モクマさんの家族との関係はどうなんでしょうか?

杉原 モクマの家族は内陸部(現在のブロッサム)に住んでいましたが、島のグローバル化にともない、アッカルドに土地を売って、海外へ移り住みました。モクマは小さいころからマイカの里へ修行に出されており、家族とは疎遠だったこともあって、残留を選んでいます。また、不言実行を美徳とする父親がつけたモクマという名前には、「黙して真を為せ」という意味が込められています。

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