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ソニック生誕25周年記念 ソニックチーム座談会 前編(2016年11月号より)

任天堂さんのハードでずっと出してみたかった

飯塚 10周年記念タイトルとなる『ソニックアドベンチャー2』を作った2001年頃がドリームキャストの最後だったんですよね。それまで、セガの自社ハードにソフトを作ることだけをやってきたので、ずっと他社ハードでの開発には興味がありました。ソフトを制作している側としては、せっかく面白いと思うゲームができて、多くのユーザーに遊んでもらいたくても、セガのハードを持っている人にしか遊んでもらえなかったからです。なので、ドリームキャストが終了という話を聞いたときに、自社ハードが終わって残念な反面、「次は任天堂さんのハードで出してもいいの!?」と縛りがなくなったことが嬉しかった。『アドベンチャー2』の開発が終わった瞬間、Nintendo of Americaに連絡してゲームキューブの開発機を取り寄せたぐらいです。
瀬上 6月にドリームキャストで発売された『アドベンチャー2』を、同じ年の12月にはゲームキューブで『ソニックアドベンチャー2 バトル』としてリリースしましたから。
飯塚 任天堂のハード上で『ソニック』が遊べる。『マリオ』に勝てるチャンスじゃないかと当時はそんな意気込みでした。
大谷 12月の時点で、もうマルチプラットフォームで出していいよってことになっていたんですか?
瀬上 当時は、ゲームキューブのみの展開だったから、マルチプラットフォームとも少し違うかな。
飯塚 そもそもマルチに出すという考えがなかったんですよ。ソフトっていうのはひとつのハード上で出すものだって思っていたから。昔はそれぞれのハード用に用意されたライブラリ上で動かすっていう作り方をしていたので、マルチに出すっていう考えには至らなかったんです。
大谷 サウンドデータの制作に関して言えば、10年前と比較すると開発環境が整備されてだいぶ楽になりましたね。
瀬上 10年くらいの間に、環境がどんどん充実してきた感があります。
上川 機種間の性能が拮抗してくれば、展開はしやすくなりますよね。
大谷 開発するゲームの機種にもよりますが、ハードが違っても同じデータを鳴らせるようになりましたからね。同じ音楽でも、ハードによって出力される音質が違っていたりするんです。例えば、ドリームキャストの出力に合わせて調整していたデータを、他社さんのハードに持っていくと音質が違って聴こえたり。そういうところをハードに合わせて調整したりもしました。
 

『マリオ』はよき目標…『ゼルダ』コラボの経緯

飯塚 世間ではハードの抗争があったので、セガ対任天堂という「ライバル」のイメージが強かったと思うんですけど、ソフトを開発している我々にしてみれば決してそうではなくて、目標だったんです。完成された『マリオ』というゲームに対して、我々はすこしでもそれに近づけるよう目指していましたので、「憧れ」と言っても過言ではない存在でした。それがいまや、『マリオ&ソニック』シリーズ(※6)で同じタイトルに出られるというのは感慨深いものがあります。

初めてクロスオーバーしたのは2007年発売のWiiタイトル、『マリオ&ソニック AT 北京オリンピック™』


飯塚 『ソニック ロストワールド』の時には、ダメもとで提案した『ヨッシーアイランド』と『ゼルダの伝説』(以下『ゼルダ』)のコラボも快諾していただきました。『マリオ&ソニック』というブランドがあるので、『マリオ』以外の任天堂さんのタイトルで、という発想だったんですが、一番やりたかった『ゼルダ』とコラボできたのは本当に嬉しかったです。ちなみに、あのコラボイラストは、『ゼルダ』のパッケージイラストを担当されている方が描いてくださったんですよ。

「ゼルダの伝説Zone」では、リンクの衣装を纏ったソニックが「ハイラル平原」や「ドドンゴの洞窟」を駆ける


大谷 『ゼルダ』とコラボするという話を聞いたときは、「ってことは? …ってことは??」と心が躍っていましたね(笑)。ディスクシステムの『ゼルダの伝説』を小学生の頃にさんざん遊んだので、フィールドの音楽など骨にしみこんでいるぐらい聴いていました。その曲をアレンジするだけでも不思議な感覚なのに、しかも『ソニック』の世界のなかでそれができるというのが面白かったですね。
飯塚 「ソニックが、リンクの服を着ちゃって本当にいいんですか?」と聞いたぐらいです。京都の任天堂本社に行って、青沼さん(※7)に直接提案を聞いていただきました。『ソニック ロストワールド』本編ではソニックがカラーパワーでボムになる仕様があるので、「このボムで岩を割ってあの『ゼルダ』の謎を解いたときの音を鳴らしたい」という案も、青沼さんが快諾してくれました。

飯塚プロデューサーがどうしても実現させたかった『ゼルダ』コラボ。もちろんSEもバッチリ『ゼルダ』のあの音!


※6『マリオ&ソニック』シリーズ

任天堂とセガが共同開発するスポーツゲーム。発売されるタイトルは『マリオ&ソニック AT 〇〇』と、〇〇の部分にはその時に開催されるオリンピックの開催地が入る(画像は『マリオ&ソニック AT リオオリンピック™』)
※7 青沼さん
青沼英二さん。『ゼルダの伝説』シリーズの総合プロデューサー

『ソニック』を彩る音楽の世界

大谷 音楽の話になりますが、まずはFM音源からスタートしましたよね。
瀬上 メガドライブで言うと、同時に鳴る音が効果音とセットで「何音」という世界なので、少ない音の数でわかりやすいという作り方をしていました。そもそも、最初の2作の楽曲制作を担当されたDREAMS COME TRUEの中村正人さんの楽曲が、キャッチーで分かりやすいというところから始まっていて。『ソニック』の曲は短くて覚えやすくてイメージしやすい、それでいて「意外性」がある。というところがキーだったと思っています。私がサウンドディレクターとして携わった『ソニックアドベンチャー』では、いろいろな意味で大きく変化するタイミングでした。どのようなアプローチで挑むかっていうのを飯塚さんと相談しながら方針を決めて制作するなかで、音楽性としてはロック調を取り入れて大きく変化させていて。あとは、キャラクターごとのテーマ曲を用意するなど、それぞれのキャラクター性を僕なりに音楽面からも強く表現していったタイミングだったんですよ。
大谷 僕の場合、サウンドディレクターとして『ソニック』のサウンドを任されたのが、『SONIC THE HEDGEHOG』(プレイステーション3・Xbox360で発売したタイトル)だったんですけれども。表現もリッチになるし、ストーリーも感情移入できるような作品を目指すと飯塚さんから聞いていたので、大作に相応しいスケール感を出していくことになりました。『ソニック』の音楽は、ドリームキャストまでの時代を見ても、海外レコーディングをしたり、かなり完成されているんです。そこからさらに、音楽の表現力をアップさせなければならないということで、これまで評判のよかったヴォーカル曲は継承しつつ、オーケストラなどを取り入れながら、よりドラマチックになるような工夫をしていったところがポイントになっていると思います。
 

ソニックのテーマソングを作りたい!?

大谷 不思議なのは、ダンスミュージックだったりハードロックだったり、オーケストラだったりと、さまざまなスタイルの音楽を取り入れていっても、『ソニック』の音楽になるんです。それだけ作品の器が大きいということだと思います。
瀬上 『ソニック』シリーズの楽曲は、やっぱりメガドライブでの楽曲コアコンセプトとして、覚えやすくてキャッチーで、記憶に残るというのがあったからだと思います。単なるBGMにはならないよう、そういう継承と積み重ねが今に繋がってるのかもね。このフレーズはこのステージ、このフレーズはこのタイトルと、遊んでくれた人がイメージできて感じてもらえるように制作していますからね。
大谷 キャッチーなメロディー、というのは確かにずっと継承していますよね。
瀬上 そこで苦い顔をしている人が…(笑)。
一同 (飯塚さんを見る)
瀬上 飯塚さんに昔から言われ続けていることがあって。「ソニックのテーマソングを作ろうよ」ということなんですけど。
飯塚 ソニックのテーマソングが欲しいんです!!
瀬上 ひとつ、これでいいじゃんっていうワンフレーズ作ろうよというのを、かれこれ何十年も言われているのですが、いまだに実現していないんですよね。
飯塚 そもそも楽曲を使いまわしてくれないから。
瀬上 メガドライブの『ソニック・ザ・ヘッジホッグ1・2』はテーマ曲が一緒じゃないですか。まあ、「このフレーズといえば“ソニック”」というものが欲しいというのは、耳にタコができるぐらい言われてるんですけど。
飯塚 毎回言ってるけど、毎回やってくれない。
上川 「やってくれない」ってどういうことなんだ(笑)。
飯塚 だって「バック・トゥ・ザ・フューチャー(※8)」はあのテーマ曲を聞けば1なのか2なのかわからなくても、すぐ作品のイメージが思い浮かびますよね。「スター・ウォーズ(※9)」もそうです。『ソニック』にも、シリーズを通して「この曲!」っていうのが欲しかったのに、彼らは毎回変えちゃうんです(笑)。
瀬上 でも、それが『ソニック』のいいところでもあると思うんですよ。「この曲はこのタイトルの顔だよね」っていう感じで、一対一で覚えてもらえるからいいでしょ? と言いたいところなんですけども。うーん、せめぎ合い(笑)?
大谷 飯塚さんは、「この作品の特色を出してくれ」っていうオーダーもしますからね。作品ごとに新しいテーマ曲を作り続けてきたからこその感動や歴史がある、ということでどうにか(笑)。
飯塚 唯一使いまわしてるのって、リザルト曲だけだと思うんですけど。
瀬上 確かにリザルト曲はなるべく使いまわそうと意識していますが、アレンジをしたり、タイトル専用に別曲を用意していることも少なくないんですよね(笑)。
※8 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
1985年のアメリカで制作されたSF映画。スポーツタイプの乗用車を改造したタイムマシンで時空移動をする、タイムスリップアドベンチャー作品
※9「スター・ウォーズ」
ジョージ・ルーカスによって生み出されたアメリカのSF作品。「遠い昔。遥か彼方の銀河系で…」と始まるOPはあまりにも有名
 

待っている人がいるから25年経っても変わらずに

飯塚 今日はいろんな話をしてきましたが、『ソニック』で、やり尽くしたと思ったことはないんですよね。
大谷 音楽に関しても、たくさんの曲を作って「もう作れない……」と思っても、しばらくするとまた曲を作りたい欲求が出てくるんです。不思議ですよね。
瀬上 そうねえ。
大谷 プロジェクトが終わった瞬間はやりきったと思っているんですけどね。『ソニック』の音楽は、たくさんのユーザーに支持していただいていて、音楽が「カッコイイ」と言っていただけることも多いんですが、褒め言葉として「安定の」と表現してくださる方もいます。そこを上回るものを作らないといけないな、というのがここ最近のテーマになっています。
瀬上 私も同じで、常に多くのユーザーが期待して待っているシリーズなので、その期待値を上回るものを提供していければ、と思います。あとは、音楽作品やLIVE・イベントなどを通じて、「シリーズを好きで良かった!」と思っていただける機会も大事にしていきたいです。
上川 ゲームはもちろんなんですけど、キャラクターのグッズ展開なども幅広く盛り上げていきたいですね。
飯塚 20周年のときには、これまで続けていたモダンソニックのシリーズに加えてクラシックの時代のファンも一緒に盛り上がろうよという意味で、クラシックソニックを『ソニックジェネレーションズ』に登場させましたけど、それからの5年の間に今度は、『ソニックトゥーン』(海外の名称はソニックブーム)(※10)という、新しいTVアニメーションを中心とした新ブランドが生まれました。25年という歴史の中で「トゥーン」と「クラシック」と「モダン」という3つのタイプの『ソニック』が生まれたわけです。今年(2016年)の10月には『ソニックトゥーン ファイアー&アイス』が国内で発売されました。3つのタイプ、それぞれ別ブランドとしてともに発展させていきたいという思いがありあますので、今後にご期待ください。
※10『ソニックトゥーン』シリーズ
2014年に発売されたWii U『ソニックトゥーン 太古の秘宝』や3DS『ソニックトゥーン アイランドアドベンチャー』、または海外を主軸に放送されていた3DCGテレビアニメなどで展開している、ソニックブランドの1つ。

【ソニック25周年記念ソニックチーム座談会】
ソニック生誕25周年記念 ソニックチーム座談会 後編(後日更新予定)

 


関連リンク
ソニックチャンネル(ソニックシリーズポータルサイト)


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