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FE風花雪月インタビュー vol.2-1【フォドラの世界ができるまで 前編】〜開発体制とキャラクターデザイン秘話〜

フォドラの大地に“存在感”を与えた 緻密な世界設計とキャラクターたち

世界の背景から人物たちの発する一言まで、さまざまな部分で垣間見える、作り手のこだわり。『ファイアーエムブレム 風花雪月』におけるフォドラの世界と、そこに生きる人々が形作られるまでの道のりについて、改めて尋ねました。
※こちらはニンドリ2020年5月号に掲載されたインタビュー記事のアーカイブです

『ファイアーエムブレム 風花雪月』開発者インタビュー トップ

任天堂 
横田弦紀さん(よこたげんきさん)

インテリジェントシステムズ
草木原俊行さん(くさきはらとしゆきさん)

キャラクターとともに暮らす、学校生活への“没入感”を大切に。三社体制で行われた仕組みづくり

── ニンドリでは『風花雪月』のインタビューは初になりますので、改めて本作の制作体制やそれぞれの役割について簡単におうかがいできればと思います。

横田 本作は開発としてインテリジェントシステムズ(以下、イズ)さんに加えてコーエーテクモゲームス(以下、コーエーテクモ)さんに入っていただいています。これまでも開発に協力いただいた会社はいっぱいありましたが、メインの開発をイズさんと任天堂以外の協力会社にお願いしたのは、本編では初めてですね。

任天堂としての役割はこれまでのタイトルと大きな変化はなく、新しい『FE』をどういう方向性にしていくか、ゲームとしての遊びの部分が面白くできているか、といったところを俯瞰的に見て、みんなで調整していく役割をしました。そして、草木原さんはディレクターとして今作の基盤となる世界観設定やストーリー、メインキャラクターの原案などを制作されました。

草木原 まず1つのルートのプロットを作成して世界観などの根底となる土台を作ったんですが、大半のキャラクターの原形は、その段階で出来ていました。そこからコーエーテクモさんのチームに細かい設定を広げていってもらった感じです。あとは全体を見ながら「ファイアーエムブレムらしさ」みたいなところの監修ですとか、今作で実現したいことや、新しい遊び部分の相談とか。美術関係のデザイン・楽曲ほかサウンドの制作は大半をイズが行っています。

横田 イズさん側のスタッフは、これまでに比べてかなり少ない人数での構成になりましたね。コーエーテクモさんには、プログラム全般、シナリオ、修道院とバトルの遊び一つ一つの企画、もちろん難易度調整やネットワークの遊びも含めたプランニング全般、3Dモデル、モーション、エフェクト、UIデザイン、イベントシーン等々のグラフィック制作というように開発の核をご担当いただきました。さらに、ムービーパートはコーエーテクモさんに加えてサンジゲンさんにもお願いしました。

── コーエーテクモさんとは開発中はどういう風にやり取りされていたんですか?

草木原 月に2〜3回くらい横浜のほうに出張して開発チームと打ち合わせしたり、あとは専用チャットを用意して、逐一相談を受けられるようにしていました。遠隔ではありましたが、終始円滑にディレクションできました。

── 遠隔ディレクターというのは初めての体験ですか?

草木原 ディレクション側は初めてでしたが、逆の立場はやったことはあります(笑)。

横田 僕のほうは、途中まではそういうやり取りは草木原さんにお任せしていて。ゲームサイクルが固まってきた中盤あたりからは一緒に横浜に行って、細かい部分含めガンガン詰めていきました。

── 任天堂側から注文したことで、何か印象に残っていることはありますか?

横田 ゲームサイクルについてはかなり注文しましたね。せっかく今回は“学校”が舞台なので、そこに浸れるように没入感を大事にしたくて。草木原さんやコーエーテクモさんにお願いして、みんなで仕組みを組み上げました。ファンタジー世界における学校生活って夢があるじゃないですか。戦争が起きるから後々は殺伐としちゃうけど、大修道院で生活している間は幸せでいてほしいな〜という想いがあって…。

一同 (笑)

── 草木原さんとしては注文を聞いてどう思いましたか?

草木原 閉じた空間でたくさんの仲間たちと暮らせるのはやっぱり魅力的ですよね。今までの『FE』では章が進むにつれて新しい人物が登場してきますが、『風花雪月』は最初から主要な人物がみんな揃っている状態から始まるので、思い入れも深くなります。そこの構造は非常にうまくいったなと思いました。

横田 最初は少しドキドキしましたけどね。最初からこんなに人数がいて大丈夫かな、と。

── 全員の名前を覚えきれないのではないか、とか(笑)?

横田 自らフルネームを名乗ってくれる人は覚えやすいんですけどね。

一同 (笑)

草木原 まずは自分の学級の人から覚えてもらって、そこから広げて覚えてもらえたらいいなとは思っていました。

 

キャラクター作りへのこだわり
士官学校の3つの学級はまさにフォドラの縮図!

── 各学級に所属する生徒たちの人物像など、それぞれのキャラクター作りはどのように行われたのでしょうか?

草木原 原案をベースにして、シナリオ担当とか開発現場のほうで広げていってもらいました。キャラクターによってはわりと細かい部分も先に決めていて、たとえばメルセデスはこういう家庭環境で、実は無くなった家の紋章を持っていて…という感じです。そのうえでエミールが弟で…という設定などがシナリオを深めていく過程で肉付けされて、現在の形になっていたりします。

メルセデスの母はメルセデスが生まれる直前に夫と家をなくし、別の家の当主と再婚。しかし紋章を持つ弟が生まれ、母娘ともども家を追い出された過去を持つという

 

── たとえば黒鷲の学級であれば、確固たる信念を持っていて、ちょっと我が強い人が多いですとか、所属する学級によってもキャラクター性に傾向があるように感じたのですが…。

草木原 各学級のキャラの傾向が、三国のイメージの縮図になっているんです。ファーガスは騎士の国なのでみんな真面目なところがあって、アドラステアは昔は栄えていたんだけど最近はだんだん国土が減って、国家としては全体的に斜陽ムードがただよっているという背景から、特有の面倒臭さがある貴族、みたいな感じですとか(笑)。レスターは…人の足を引っ張りたがるイロモノが揃っている…というようなイメージでしたね。

一同 (笑)

草木原 もともとレスターのコンセプトが「円卓の会議による共和制をとっているが、貴族同士が足を引っ張りあっていて、決定力に欠ける国」というものだったので。そういうキーワードから始まったんですが、最終的にはみんないい子になりましたね(笑)。各国のお国柄を学級にも醸し出したいという狙いはありました。

横田 あとはキャラ設定においては、髪型とか髪の色もすごく重要だと思います。被ると覚えにくくなりますから。

草木原 キャラクターの印象は髪色でもかなり大きく左右されてしまうので、そこは倉花さん(倉花千夏さん。本作のキャラクターデザインを担当)と相談しながら慎重に配置しています。

── 騎士の国で王道っぽいファーガスの人は、金髪や実際にいそうな髪の色の人をわりと多くしたり、など?

草木原 じつは現実にいない色の髪の人も結構いますけどね(笑)。学級の中で並べた時と、キャラクター全体で並べた時の両方を考慮しながら決めていったので、結構苦労しました。

── 金鹿の学級はカラフルだなぁと思っていました(笑)。

草木原 イロモノ揃いだからですかね(笑)。デザイン上の遊びも多い学級なのかなと思います。

横田 ベレト・ベレス・級長3人は倉花さんにだいぶ早い段階でテストで描いてもらったんですが、ほぼ一発で「このイメージだね」と決まりました。級長たちは貴族感を出したかったのですが、そこがしっかり出ていると思います。

プレイヤーが初めて出会う“貴族”である3人は、高貴な身分が感じられるデザインに

 

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