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FE無双 風花雪月 キーマンインタビュー 〜もうひとつのフォドラ戦記を尋ねて 前編〜

本作は「シミュレーションロールプレイングタクティカルアクション」です!

1つのジャンルに捉われず、新たなジャンルを作り出した

── 前作『FE無双』と比較して、育成シミュレーションの部分が充実している印象を受けました。育成という部分で大きな役割を担っている「前哨基地」についておうかがいしたいです。

岩田 原作の象徴的なシステムとして「大修道院の散策」がありますが、散策パートでのキャラクターの育成や交流という要素は『FE 風花雪月』の大きな魅力でしたので、本作でもあの要素は絶対に入れようね、というところから始まっています。散策パートがあるからこそキャラクターに深い思い入れが生まれてくる。これまでの『無双』ではそういう部分に関して力を入れているものはあまりないのですが、だからこそタイトルの味にもなりますし、『FE 風花雪月』らしさにも繋がる、というのが大きな理由になります。

── 前哨基地自体にも施設の拡張、という育成シミュレーション要素を含ませたのはなぜですか?

岩田 プレイヤーそれぞれの判断によって自軍をどう強化していくか、というような、プレイスタイルの違いによる「揺らぎ」を作りたかったんです。実は、何も考えずに施設を拡張していくと、1周では全ての施設の拡張をコンプリートするのが難しいバランスになっています。何の機能を優先して取得していくか、というのはユーザー次第で、その揺らぎを生むために施設のカスタマイズ要素を入れた、というのが根底にあります。

素材を使いツリーを解放していくことで、施設のさまざまな機能が使えるようになる

岩田 施設拡張のための資源は進軍マップでサブエリアを制圧して、調査して獲得するのが主な入手法なのですが、「この施設を拡張したいからこのサブエリアは制圧しよう」とか、「施設の拡張はいいから必要最低限だけ制圧しよう」とか、マップ上の遊び自体にも選択肢が生まれています。そういった「遊び方の選択肢」をいろんなところに散りばめていて、施設の拡張もそのひとつなんですね。

── 聞けば聞くほど「無双」ではなくシミュレーションゲームのお話をされてるように感じます(笑)。

早矢仕 アクションの話をしてない(笑)。

── ふだんは「無双」を作っているのに、今作ではシミュレーション要素をたくさん作らなければいけないということで、その分苦労されたのでしょうか?

鈴木 まず、単純にアクション以外を担当するスタッフの割合が多かったですね。弊社の『無双』タイトルのなかでも、アクションに関わっているスタッフの割合が少ない方だと思います(笑)。

岩田 戦闘内やアクション面のバランスだけを整えればいい、というゲームではないので、全体としてのバランスを取るという部分では、従来の『無双』とはちょっと違う方向性で難しかったですね。

鈴木 RPGを作っているかのように、ストーリーの開始から中盤、終盤…と順番にバランスを取っていきました。このタイミングはキャラはこれぐらい成長してて、プレイヤーもこれくらいスキルアップしてるだろうから、敵はこうだよねとか、かなり丁寧に調整しました。

早矢仕 『無双』のジャンルってタクティカルアクションなんですが……私は今作において、「シミュレーションロールプレイングタクティカルアクション」というゲームジャンルを提唱したんですよ(笑)。『FE』と『無双』それぞれのジャンル名をくっつけただけなんですが、言い得て妙かなと。長すぎて社内でも流行らなかったんですが(笑)。

鈴木 だって長すぎますしねぇ(笑)。

早矢仕 それこそ『ゼルダ無双 厄災の黙示録』などはあくまでタクティカルアクションがベースでしたが、今回そこに別ジャンルの遊びをくっつけて新しいジャンルを作り上げるぐらいの心づもりでやろう、と言っていたんです。なので「無双ではなくシミュレーションゲームみたい」と言っていただけたことで、そういう意図がちゃんと伝わったんだなと実感できました。これはやっぱり流行らせたいなぁ(笑)。

── 長くて覚えるだけでも大変そうですけどね。

早矢仕 でも実際にプレイしていただければ、本当に全部の要素がしっかり入ってることを肌で感じていただけると思うんです。『FE 風花雪月』っぽいけど『無双』っぽくもあり、両方が混ざることでまったく別味に仕上がっている…という不思議な感覚を味わえるかと。

岩田 事前情報なくこのソフトを触ってくださるユーザーさんが、『無双』と聞いて想像するものとはまったく違うタイトルになっているとは思いますね。

鈴木 本作で初めて『無双』を触る人もいるかもしれませんしね。

岩田 いい意味で裏切れたかなと。

早矢仕 シミュレーション、ロールプレイング、アクション、そのどれかが好きな人であれば刺さるものに仕上がっているんじゃないかなと思います。

軍の準備を整えるための「前哨基地」。キャラクターとの交流なども楽しめる、本作のシミュレーション要素の要だ

じっくり考えて遊ぶタイトルだからこそ、ストレスフリーに

── 施設だけでなくキャラの前にも移動できる機能ですとか、『FE 風花雪月』や『FE無双』にあったシステムが随所に踏襲されていて、さらに遊びやすく面白い形に進化しているという印象がありました。そうした踏襲する要素はどのように決めていったのでしょうか?

鈴木 全体的な方針として、このゲームは軍備パートで準備して、進軍マップで攻める先を決めて戦闘するというサイクルなので、このサイクルを回す際にストレスを感じさせないようにしたい、というのが前提にありました。基本サイクルを何回も何回も回していただくためにはどうすればいいか、という話になった時に、キャラの前へのファストトラベルがあればプレイヤーがストレスなく移動できるよねとか、したい時にしたいことができるようにするために必要なシステムとして、うまく合致するようなシステムがある場合は自然と引用する流れになった、という感じです。

岩田 利便性の面の他にも、キャラクターの育成といったシミュレーションやRPG的な要素に重きを置いているので、育成結果だとか仲間と交流を深めた結果をゲームの中で意味ある形で体感できるようにするためにはどういった要素が必要なのかというのは慎重に検討しました。原作や前作から何を踏襲するかだとか、踏襲するにしてもこういう形に変更した方が育成や交流が活きてくるよねだとか、新規に必要な要素は何かなど、チューニングを重ねていった結果が今のシステムになってます。また、シミュレーションゲームであり、アクションゲームでもある本作のゲームサイクルを、ストレスなく遊んでもらうための手触りには、鈴木が言ったとおり、かなり気を配りました。

── たしかに、最適な戦略を取るために、進軍マップと基地を行ったり来たりすることが多かったのですが、まったくストレスを感じませんでした。

岩田 そうですね。具体的な施策のひとつとして、ローディングの時間を意識しない、という取り組みがあります。ロード時間自体を短くすることはもちろん、ロード中にできることを用意したり。ただ何かを待っているだけの時間というのは、本作ではあまりないのではないかなと思っています。

『FE』ファンも『無双』ファンも両方が満足できるタイトルです!

── ではインタビュー前編のシメとして、これから遊ぼうと思っている方や本作に興味を持っている方に向けて、メッセージをお願いします。

岩田 今作は『FE』らしさや『FE 風花雪月』らしさ、『無双』らしさをすべて詰め込んだゲームです。これらの要素をバランス良く組み合わせることで『FE無双 風花雪月』らしさを生むことができました。その分、すべての要素を遊びつくすには少しお時間が必要にはなってしまいましたが(笑)、飽きることなく最後まで楽しめるような内容になってますので、ぜひ最後まで皆様に楽しんでいただければなと思います。

鈴木 原作元である『FE 風花雪月』の良いポイントをいかに継承し、いかに進化させるかということが、今回の『FE無双 風花雪月』で最も力を入れたところでもあります。任天堂さんやISさんのお力も貸していただいて、「もうひとつの風花雪月」ができあがったと自負しています。歴代『FE』をプレイされているシリーズファンの皆様にも喜んでいただけるような内容に仕上がっていると思いますし、逆に『FE 風花雪月』未プレイの方でもここから新規で楽しめるものになっていると思います。本作をプレイした後に、『FE 風花雪月』をプレイしていただく、というのもまた新鮮な味わいがあると思うので、ぜひ本作をプレイして、『FE 風花雪月』の良さと『FE無双 風花雪月』の良さの両方を感じ取っていただければ嬉しいなと思います。

早矢仕 たしかに、ちょっと前に某大手通販サイトの売上ランキングを見たんですけど、今『FE 風花雪月』が順位を上げていたんですよね。『FE無双 風花雪月』より上にありました(笑)。

鈴木 皆さん予習しようと思ってくださってるんですかね?(笑) たしかに、ぜひ両方買って楽しんでいただきたいです!

早矢仕 さきほどジャンルのお話をしましたが、『無双』というシリーズ自体がそもそも、シミュレーション的遊びをアクションゲームとして体験できる「タクティカルアクション」というジャンルで皆さんにご好評いただいていているものなんですよね。これまでもいろんなIPとコラボして『無双』という遊びにさまざまなキャラクターやIPをお借りして展開してきましたが、今回は『FE 風花雪月』という作品にとことん向き合って、3社で開発をご一緒したことで、皆さんがイメージしている今までの『無双』からひとつ脱皮したものが実現できたんじゃないかなって思っています。今までとはちょっと違う方向性で、価値のある新たな『無双』体験というようなものを形にできたなって、開発スタッフ一同確かな手応えを感じています。もちろん『FE 風花雪月』が好きな方には満足いただけると思うのですが、『無双』単体で捉えたとしても、今の時代にふさわしい『無双』の形として満足してもらえる出来じゃないかなと。さっきの長いゲームジャンルの話じゃないですけど(笑)、『無双』のいいところである一騎当千の爽快感もしっかりと存在ながら、シミュレーションやRPGなどのそれぞれの要素がしっかりと味を出しているので、今までのコラボ無双とは一味違う刺激を感じていただけると思います。ぜひ、ご期待ください。

インタビューこぼれ話
情報初公開時の「べレトいないの!?」騒動のウラ側

── 最初のPVとメインビジュアルの発表時、ベレトがいなかったことで、ファンが「あれ? べレトいないの?」って少しざわつきましたよね。

鈴木 最初から男女とも選べる前提で作ってあったんです。ただパッと見のスクリーンショットや動画を見た時に、それが『FE 風花雪月』(原作)の映像なのか、『FE無双 風花雪月』の映像なのかがわからなくなっちゃう懸念があって。『FE 風花雪月』本編の素材はすべてベレトで通していたので、『FE無双 風花雪月』の方はベレスで通しましょうっていうのがそもそもの理由だったんです。ゲームとしてはちゃんと選べるようにしてはいたんですが、最初のPVの時点では「べレトも出るんですよ」と思いながらも、公には発表できない状況で(笑)。

早矢仕 途中、ベレトのトレーラーも作ろうかって話はありましたね。でもここも逃げちゃいけないってことに(笑)。

── ニンドリ用の描き下ろし表紙絵は、主人公と灰色の悪魔の性別がパッケージビジュアルと逆バージョンになっているとお聞きしまして。これはベレト先生ファンには嬉しいだろうなと思います。

早矢仕 そうですね。ニンドリの読者さんにはコアなファンもいらっしゃると思いますので、良かったと思います(笑)。

本誌2022年8月号の表紙を飾った描き下ろしイラスト。この号では同絵柄のB2サイズポスターが付録になりました。

インタビューは後編へ続きます。

関連インタビュー

キーマンインタビュー ~もうひとつのフォドラ戦記を尋ねて 後編~

前作『ファイアーエムブレム無双』
FE無双 連続インタビュー特集ページ

ファイアーエムブレム無双 風花雪月
■コーエーテクモゲームス
■2022年6月24日発売
■ストラテジー、アクション
■7,920円(税込)
■CERO12歳以上
互いの正義が交錯する戦場を描いた『ファイアーエムブレム 風花雪月』の世界と、数多な敵をなぎ倒す「無双」アクションが融合した、もうひとつの『風花雪月』の形。アクションとシミュレーションが融合した遊びを楽しむことができる。
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