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『FE無双』全DLCの開発を終えて。ファイナルインタビュー(2018年6月号より)

発表からずっと追いかけ続けてきた『ファイアーエムブレム無双』(以下『FE無双』)。予定されていたDLCもすべて配信完了というわけで、最後のインタビューをお届けします!

すべてのDLC開発を終えたラストインタビュー!

・記事は修正している箇所もありますが、基本は掲載時と同じものになります。
・ネタバレを含んでいる場合があります。
発表時の『ファイアーエムブレム無双』連続インタビュー特集ページはこちら
DLC第1弾のインタビューはこちら
DLC第2弾のインタビューはこちら
DLC第3弾のインタビューはこちら


<プロフィール>

プロデューサー 早矢仕洋介さん(写真右)
コーエーテクモゲームス取締役。Team NINJAのブランド長を務め、『ゼルダ無双』に続いて『FE無双』の仕掛人。
ディレクター 臼田浩也さん(写真左)
Team NINJAブランドシニアリーダー。3DS『ゼルダ無双 ハイラルオールスターズ』に続いて『FE無双』のディレクションを担当。

『FE無双』全DLCの開発を終えて

―― まずはDLCの開発を終えた総括をお願いします。
臼田 「終わった・長かった」というのが正直な感想です。一番最初は3DS『ゼルダ無双 ハイラルオールスターズ』をベースに作っていて、とにかく形を作るために最初はリンクが走っていたんです。発売から半年ぐらい経ちましたが、DLCでいろんなキャラクターを作って、皆さんにお届けさせていただきました。Twitterでご意見も頂いて、リリース後のお客さんの反応が楽しみでした。また、そこから次は何をしようかとか、お客さんとコミュニケーションを楽しみながらやらせていただいたDLCでした。
早矢仕 お客さんから想定通りの評価をいただけたのがありがたかったです。あと、DLCの開発が終わって、やっと兵種のバラエティ感が出せたなぁと(笑)。

新たに設定を考えて作られたキャラクターの裏側

DLC第1弾〜第3弾で追加されたキャラクターのうち、新たに上級職をデザインした5キャラクターの設定について伺いました。

歌姫の上級職 ディーヴァ・アクア
臼田 歌姫の上級職がなかったので、歌姫の上はなんだろうと考えました。できるだけ上級っぽく、神々しい名前にしたくてイタリアやラテンで神を意味するディーヴァにしました。衣装も神々しい感じにしたく、金を取り入れていきました。
―― シスターや巫女さんみたいなイメージがありますよね。あと、花嫁衣裳にも見えました(笑)。
臼田 そうですね(笑)。ディーヴァは宗教的な雰囲気も持つ神っぽいデザインにしたいという話をしていました。アクアは上級職も人気が出たデザインだと思っています。

魔道士の上級職 司祭・リンダ
臼田 『FE 新・暗黒竜と光の剣』キャラクターは上級職の見た目がなかったので、下級職の衣装を元に豪華にしようと金をちりばめていきました。リンダの上級職は司祭なので、魔法の強い感じを宝石や豪華な髪飾りなどを足していきました。他のキャラクターもそうですが、「無双」というアクションゲームはどうしても後ろから見ることが多いので、後ろから見たときも変化がわかるようにデザインしていきました。最初はもっとペタンとした髪飾りだったのですが、湾曲させて立体感を出したりしています。リンダもセクシー枠のキャラですからね!

傭兵の上級職 勇者・ナバール
臼田 『FE無双』本編に登場したリンも同じような感じだったのですが、やっぱり剣士で素早い動きのイメージがありますよね。あんまり他のアーマーを着ているキャラみたいな、ゴツゴツしているのは変だよなぁと思って。逆に身軽になっていくイメージでやっていきました。ナバールはせっかくだから、どこかアシンメトリーなデザインにしようと思ったんですよ。本当は赤い服をどちらかに掛けていて、片側だけ肩を出しているデザインだったんです。でも、それではどう見てもソーンバルケ(『FE 蒼炎の軌跡』、『FE 暁の女神』に登場するソードマスター)だって話になって……。
―― 『FE』シリーズはそういうアジア系のデザインが多いですよね。
臼田 そうですね。最終的にイズさんからも「似すぎていますね」という話になりまして。その結果として、腰に両方下ろしたお陰で、布をひらひら揺らすという意味では、お得なデザインになったかなと。揺れものが増えたことで、アクションゲームとしてプラスになって、いい感じにまとまりました。

ドラゴンナイトの上級職 ドラゴンマスター・ミネルバ
臼田 『FE 新・暗黒竜と光の剣』のキャラクターは、元の設定に細かい指定がなかったので、基本的にはパブリシティで使われた絵を参考に作っていきました。
―― 上級職は鎧が立派ですね。
臼田 下級職のイメージを上級職にした感じを想像していきました。細かい部分では鎧の模様とか、マントがあるからその裏のデザインとかですね。ミネルバも鎧を変えただけですと、後姿を見る機会が多いアクションゲームでは違いがわかりにくいので、頭に付けている額当てを後ろから見えるように強調したり、マントも後ろからよく見えるようにしたりしました。やっぱり原作のイメージを壊さないように、より正統進化みたいなイメージで作っていきました。

踊り子の上級職 プリンシパル・オリヴィエ
臼田 下級職の時はシンプルに肌が見えていましたので、あまりセクシーさを伸ばしていってもしょうがないと思いました。オリヴィエは飾らない感じで肌が出ちゃっているのが、キャラクターの設定上の魅力でもあると思いました。あと、アクアと比較対象になっていて、クラスもアクアがディーヴァになったので、オリヴィエもやっぱり負けないぐらいグレードアップした名前にしたくてプリンシパルにしました。踊り子で上位職っぽいようにして、できるだけ金を取り入れて豪華にしていきました。あと、下級職もそうなのですが、実は1か所だけ原作と変えたところがあって……。
―― それはどこでしょうか?
臼田 腕から出ているひらひらの部分です。元のデザインは繋がっているのですが、これを付けたまま動き回るのはちょっと難しくて。どうしてもアクション中に体に当たっちゃうので、インテリジェントシステムズさんに言ってここだけ切らせて(変更させて)くださいとお願いさせていただきました。あとは露出をせずに、綺麗に可愛くやろうとしていきましたね。腕と足の布の部分とか、ただ入れておくだけじゃなくて少し穴が開いていて見えるデザインにしたりとかしました。
―― うしろから見るとお尻がよく見える点については?
臼田 ここを隠しちゃうと……ね(笑)。もし下級職からウチがデザインしていたら、少し手を加えたかもしれませんが、もともとがこういう格好でしたからね。上級職になって見えなくなったら悲しいですし、下級職のデザインを保ったまま後ろから見ても豪華になるように進化させていきました。
―― デザイン画では、布の部分はすべて不透明なんですね。
臼田 最近のゲームの描画は半透明が扱いづらいところがありまして。普通に半透明にするのではなく、メッシュというか少しずつ穴をあけたりして。デザイン段階では不透明になってもいいよう、上級職をデザインしています。試しに半透明にしてみて、干渉などは起こらなかったので、最終的にはもともと考えていた半透明にしました。『FE無双』のオリヴィエ(下級職の姿)。「無双」のアクションに適した新しい魅力を持ったキャラクターに!

教えて! 『FE無双』の気になるアレコレを追究

最後は『FE無双』をプレイした上で、編集部が気になった3つの質問を臼田さんに答えていただきました。ストーリーの核心に触れる内容もありますので、ストーリーモードを十分に楽しんだ後にご覧ください。

ダリオスはなぜプレイアブルキャラクターにならなかったのでしょう?
臼田 本編のストーリーを作っている頃から、うまくいけばDLCでダリオスを救えるように設定はしていたんですけど……。もともと本編にいるキャラを外して、ダリオスを追加するのもそれは違うかなぁと。
早矢仕 まだ他にも追加してほしいキャラクターの要望が届いている中で、ダリオスを入れるのはどうかなとも思いますし。
臼田 本編のNPCで作っていても、プレイアブルキャラクターにするのは簡単じゃないんです。セリフやアクションも増えますからね。
早矢仕 絆会話も作らなくちゃいけないですし。
臼田 どこかのタイミングでダリオスを助けるヒストリーみたいなものを無料配信でやろうと構想はありました。邪竜が復活する際、ダリオスは時空の穴に落ちていくのですが、あれは死んだのを明確にしないための演出だったんです。続きの物語ができるように、明確にダリオスが死んだという風には描いていません。救われる物語が追加できるように考えてはあったんですけど、他のキャラクターを作るためにオミットしました。
―― 助かったダリオスが主人公で活躍する次回作とかどうですか?
一同 (笑) グストン王国の王子ダリオス。物語のキーとなる兄貴です
こちらがそのシーン。改めて見てみると、ただの奈落ではないのがうかがえます

追加された絆会話の数や組み合わせは、どのように決めて作ったんですか?
臼田 ウードが一番多くなってしまうのは……ある意味しかたないですよね(笑)。もともとキャラ性で登場候補に挙がっていたキャラクターだったので、やっぱり会話が楽しめますからね。絆会話の組み合わせをばーっと考えると、ウードが一番作りやすいというか、いろいろ思いついちゃうんですよ(笑)。そのほかに関しては、どうネタを拾うか話をしながら組み合わせを考えていきました。少なくなっちゃうキャラクターもいますが……、何個も何個も作れない事情もあって。最後は結構迷ったんです。「全員○個になるまで引き上げます」という方向性もあったのですが、無理やり作った会話だと楽しくないですし。最終的に数はアンバランスになりますが、これでいきましょうと舵を取らせていただきました。
―― 思い入れのある絆会話は?
臼田 DLC第3弾ですと、圧倒的にウードですね(笑)。それ以外ですと、オリヴィエとマークスの絆会話です。『FE無双』本編にいるキャラクターでもラズワルドのネタをずっと使わせてきてもらったのもあります。ついにお母さんと上司が出会う時が来たぞとね(笑)。ヒストリーマップの時空の歪みのおまけ会話で、マークスが『FE覚醒』のマリアベル役をやるのがありますね。そもそもラズワルドがナンパをするきっかけを作ったのはオリヴィエなんですよ。小さい頃、恥ずかしがり屋だったラズワルド(アズール)に「度胸を付けるために町へ行って人に話しかけた方がいい」と母として教えた結果、彼はナンパ野郎になったんですね。で、この“町で人に話しかける”のを一番最初にオリヴィエに言ったのが『FE覚醒』のマリアベルなんです。「なんであなたは堂々としないの? 度胸を付けるために町に行って人に話しかけなさい」って。この発言を『FE無双』ではマークスがオリヴィエに言うんです。「部下から聞いた度胸を付ける方法なんだが」って言って(笑)。
一同 (爆笑)
臼田 これは『FE無双』をやった意義があったな、と(笑)。マークスは自分の言ったセリフによって、巡り巡って自分の部下がナンパするようになったという輪廻が出来上がりました! 細かいネタですが、これが個人的には気に入ってます。

服剥ぎ後のコスチュームはどのようにデザインしていったのでしょうか?
臼田 ただ上に着ていた服がなくなって、下着っぽい姿になるのは変に露出が増えるだけで面白くないですよね。どちらかというと、アンダーアーマーのイメージでデザインしましょうと言っていました。このキャラだったらどういう服を下に着ているのが自然かみたいなデザイン案を3パターンぐらい用意して、その中からいいものを決めていきました。だからウードは……、(『FEif』で)オーディンがそういう服を着ていたのと、あと聖痕の位置を隠したかったのもあります。一番最初にデザインしたときは上半身裸だったのですが、スタッフと見ていて「ウード、聖痕なくなっていないですか?」という話になりまして(苦笑)。原作では位置が非公開なので、聖痕がどこにあるかわからないように腕も隠す形にしました。我々が勝手に聖痕の位置を決めちゃう訳にはいきませんからね。あとは男女共に、CERO的なことですが、露出が多すぎる感じになりすぎないようにとは言っていました。
―― サーリャとオリヴィエはあんな姿ですが(笑)。
臼田 服剥ぎの基本ルールは「露出を抑える」なのですが、逆に露出が減っちゃっている案もあったぐらいです。サーリャはタイツ的なものを下に履いているのですが、オリヴィエは…どうしましょうかぁと悩みましたね。作りながら、あれ? よく見たらオリヴィエの布の部分が増えていない? とか新たな問題も出て。もともと存在しないからなくして、パレオみたいなのを新たに付けたりとか、丸出しじゃないようなことを言いながらやっていきましたね。サーリャの服剥ぎデザインが出来上がった時に、スタッフから「あぁ臼田さん、そういう趣味だったんですね」とか言われちゃいましたが……そういう趣味ではないです(笑)。

〜『FE無双』をプレイしたすべてのファンへメッセージ〜

臼田 本当に長い開発だったので、これで一段落ですね。『FE無双』公式Twitterも書かせていただいたりしてたんですが、しばらくユーザーの皆さんとはお会いできなくなりますね。これからもDLC配信後の反応を見ながら、開発の糧にしていけたらと思います。ファンの皆さんには「ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました」の一言に尽きると思います。本当にありがとうございました。
早矢仕 開発期間で言うと、Nintendo Switchは世に出ていなく、『FEヒーローズ』もまだ配信されておらず、それこそ『FEif』が発売されたぐらいの時期から始まったプロジェクトでした。任天堂さんやイズさんと一緒に、『FE』というIPが大きくなるのにお付き合いさせていただいて、その近くにいられたのがすごく楽しかったです。プレッシャーというか、ちゃんと遊んでもらえるかなという不安もありましたが、お客さんにちゃんと評価していただけたので、すごく幸せなプロジェクトでした。機会があったら『FE無双2』を作りたいとは思っていますが、それは今すぐには動いていません。『FE』シリーズ自体は歴史の長いシリーズですし、我々自身も出せなかったキャラクターたちへの心残りがあります。我々もいちファンとして『FE』を好きでいたいし、これからも応援していきたいと思います。


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