[特別企画]『ドラゴンクエストXI』内川毅 ×『モンスターハンター:ワールド』徳田優也 同世代ディレクターが語る「モノづくりの原点」

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●『ドラクエ』らしさ、『モンハン』らしさ。

―― 長い開発期間、どうやって自身のモチベーションを維持したり、ストレスを解消していましたか?

内川 僕は2機種あることで気分転換できたっていうのが正直なところかもしれないです。

―― つまり、3DS版の開発に疲れたらPS4版の開発をするみたいな話ですよね?

内川 そう。

―― おかしい!

一同 (笑)

内川 まぁスケジュール的に予断を許さなかったので、ストレス解消するタイミングがなかったというのが正直なところですね。だからそれを仕事の中に持ち込むしかなくて……
ただ、そもそもゲームを作っていること自体が楽しかったし、徳田さんの話じゃないですけど、自分に任せてもらえている部分がどんどん形になって見えていくっていうのは飽きなかったんです。あくまで自分の感覚ですが、長いこと作っていたというのはあまりなくて、もう日々問題が起こっていますから、それをひとつずつ潰していったらいつの間にか開発が終わっていたという。
そういえば、よく出勤中に電車とかで「メラのダメージ値をいくつにするかで悩めている自分は、日本一幸せな会社員なんじゃないか?」って自分を鼓舞していました(笑)。

徳田 自分を鼓舞するのは大事ですよね。

内川 本当に。

―― 徳田さんは?

徳田 僕たちも新しいことにチャレンジしていたので、開発中にはいろいろな意見が出てきます。でも、スタッフに対して「こっちで道は合っているんだ」って示さないといけない。そこで今回は、いろいろな場所でユーザーさんにテストをしてもらったり、レビューをもらう機会を意図的に設けるようにして、中間評価の結果を大事にしました。そこで評価をもらえるものだったり、辻本さんをワクワクさせられるものを作ってやろうと思っていましたね。
なぜなら、辻本さんって正直な人だから、ワクワクすると、いろいろな人に「すごいねん」って言ってくれるんです(笑)。そういった中間評価の意見をチームにフィードバックして、「俺たちは大丈夫」と思ってもらえることが、自分にとってもいちばんのモチベーションだったし、ストレス解消にもなりました。途中段階でいいものを作れているという感触を持てることが、自分を鼓舞する意味でも大きかったです。なかったら乗り越えられなかったかもしれません。

―― つまりまとめると、2人とも仕事が大好きなんですねえ。

内川 話していて、そして聞いていて自分もそう思いました(笑)。

徳田 ある意味毒されているともいう(笑)。
でもだからこそ、最初の話に戻るんですけど、内川さんが講演で「最後まであきらめないのが勇者なんです」っておっしゃられたとき、この会場内にいるすべて人間の中で僕がいちばん共感できる! って思ったんです。

内川 徳田さんが聞いているとは思っていなかったんで……ありがとうございます。

徳田 その言葉を胸にしながら開発をされてきたんだなぁと思ったら泣けてきました。

内川 そのセリフは『DQXI』で出てくるものなんですが、僕自身が開発中にその言葉で励まされていたんです。
その講演では「『ドラゴンクエスト』は自分のリアルに返ってくるものだというところにすごく価値を感じている」というお話をさせていただいて、オチとして「僕は作っているものから元気をもらっていました。皆さんも自分の目の前にあるゲームと向き合い、諦めない心でゲーム作りをしていきましょう」と締めさせてもらったんですね。

徳田 まさに自分も作品に励まされながら作ったんですよ。だからその言葉で号泣ですよ。これほんとだからね。

一同 (笑)

『DQXI』に登場するセレンのセリフ「……勇者とは! 最後まで けっして…… あきらめない者のことです!」

内川 で、僕はそこで「『ドラクエ』らしさはない。皆で作っていくもの」という話をしたわけですが……

徳田 ええ。そこまでに関わられている人の話をたくさんされた後だったからこそ、その言葉に説得力がありました。人が積み重ねてきたものを大事にして、ユーザーさんがどう思うかを大事にしている人が作っているのが『ドラクエ』であると。

内川 伝わって良かった。それで、逆に聞きたいのは『モンハン』らしさって何ですか? と。

徳田 らしさ……。マルチプレイアクションであること、生きている生態系の中で生きているようなモンスターと対峙するところ、素材を使って自分を強化していくゲームループの3つ。その3つは変えてはいけないところだと思っています。
『MHW』を作るにあたって、素材を集めてちまちま装備を整えるのは農耕民族の遊びで、欧米人には合わないと言われたんです。でも、『ディアブロ』だってそういう楽しみ方がありますし、そうじゃないと思っていました。ですので、その「らしさ」は変えずに、そこに至るまでをわかりやすく変えることにしたんです。

内川 なるほど。徳田さんみたいにそういった明確な答えがあるのもいいですね。僕らは要所要所でその「らしさ」にとらわれたりもするので。

徳田 『ドラクエ』は歴史も長いですから、人によって感じ方も違うのでとくに難しいでしょうね。

内川 ええ。だからこそ「決まったドラクエらしさはないんです」って話になるんです。で、開発に入って驚いたのは、実は堀井さん自身がいちばん「ドラクエらしさ」にこだわっていないということでした。

一同 (笑)

―― 堀井さん自身がこだわりがないというのはとても深い話ですね。

内川 そう思います。僕らのほうが「『ドラクエ』でそこまでやっちゃまずいんじゃ?」ってなりますからね。例えばバトルで攻撃するとき「テリッ」って音が入りますよね。あの音がないと『ドラクエ』らしくならないんです。でも、堀井さんに残すか無くすか相談したら、きっと「別にわかりやすい手段があれば、別の表現でもいいんじゃない?」って言うと思うんですよね。つまり、大事なのは、「『ドラクエ』らしさ」の中にある「わかりやすさ」なんですよ。

―― なるほど。

内川 でも、さっきの下地の話じゃないですが、「わかりやすさ」で入れていたこの「テリッ」という音も海外だと「このテリッて音は何なの?」とか、「階段を降りるのにザザザって鳴るのはどうしてなの?」って、「『ドラクエ』らしさ」のひとつだと考えていた、日本の2D時代からの暗黙のルールが通じないんです。

徳田 僕らにはネイティブすぎて違和感ないですもんね。

内川 立場が変われば感じ方も変わる。だから、「『ドラクエ』らしさ」という言葉だけのこだわりにとらわれず、ひとつひとつの要素を慎重に見定めていく必要があるんですが、それが本当に難しい。
今回、快適さをあげようと思って、室内でルーラを使っても天井に頭をぶつけないようにしたんです。そうしたら、日本のユーザーさんだけでなく、お作法を知っている昔からの海外ファンの方にも「なんで頭をぶつけないんだ」って言われたりもしましたから(笑)。

徳田 そこはやっぱり『ドラクエ』だからこその「らしさ」の部分ですよね。『モンハン』よりも難しいと思います。僕は今回、砥石を無限に使えるようにしましたけど、何も言われませんでしたから。

内川 やっぱり『ドラクエ』がもっている良さと『モンハン』のもっている良さは真逆なんですよね。尖っている部分が『モンハン』の良さであり、わかりやすさが『ドラクエ』の良さである。それでいて、僕らは「もっと尖りたい」と思っているけど、尖ることがどこかで怖い。徳田さんたちも「わかりやすくしたい」と思っているけど、しすぎることが怖い。でも、その「らしさ」を踏まえつつ、そこを突破したのが『MHW』なんでしょうね。

徳田 そう言っていただけるとうれしいですが、本当にそのさじ加減は難しいですよね。

●発売日を迎えて

―― さて、そうやって苦労しながら作られた初ディレクター作品の発売日はどんな気持ちで迎えましたか?

徳田 いやぁそれが、各地でイベントがあって……飛び回ってましてあんまり記憶がないんです。渋谷のショップでイベントをやって直後に台湾に行って……

内川 発売近辺は僕も記憶がないです(笑)。

徳田 プレイヤーさんと一緒に遊べないってところがちょっと辛かったですね。

内川 たくさんお客さんに遊ばれているという実感はどこで得られたんですか?

徳田 最初の週末ですね。販売本数の速報値が出て、それを横にいた辻本さんが「すごいことになっているよ」じゃないですけど、リアルタイムに伝えてくれて、そこで実感したというか受け入れていただけているんだって思いました。

内川 辻本さんはモチベーションを上げてくれるすごい人ですね。

徳田 ええ。本当に尊敬していますね。まぁ自分も上がってるんでしょうけど(笑)、それを皆に共有したくなるタイプなんです。海外ってそもそも予約する文化が日本と違いますし、過去とか実績のデータがわからないですから、正直どこまで売れているのかもわからなかったんです。でも、そうやって実際の数字で教えてくれたので嬉しかったですね。

内川 世界同時発売……恐ろしい……。

徳田 初めての経験だったので、恐ろしいことはよくわかりました(笑)。

―― とはいえ、内川さんも記憶がないぐらい忙しかったんですよね?

内川 ええ。発売直前イベントをやらせていただいて……そこから記憶がない(笑)。

―― シャンパンを開けたとお聞きしましたが。

内川 そうなんですよ。でも、それを飲み明かした記憶もないんです。もちろんちゃんと受け入れていただけるかってドキドキはしていたと思うんですけど、個人としては開発が終わっちゃったなっていう感じが強かったかもしれないですね。

徳田 楽しく作っていたからですね。

内川 (笑)。MMOの『DQX』は、ずっとお客さんの興味を途切れさせないようにと作り続けていきますよね。でも、『DQXI』は真逆で、ずっと打ち上げ花火だと思いながら作っていたんですよ。だから、それが打ち上がってしまった後は、どちらかというと寂しい気持ちになったんです。まあ、それでも、やっぱりお客さんのTwitterでの反応とかを見るのは楽しかったですけどね。


―― では、そろそろ締めに向かおうと思いますが、この対談からユーザーへ向けてのメッセージというのも難しいと思いますので、今回はこれから業界を目指す人に向けてお言葉をいただけますか?

徳田 そうですね。今日の話にも出ましたが、ゲームデザイナーを目指す方は何でもいいからルールを自分で作って、それで人を楽しませる経験をたくさんしておいてもらえるといいと思います。今回僕たちの共通項になっているぐらいですし、後に活きてくる実感があります。
僕はやりたいことがあってキャリアを積ませていただいていますが、根っこにある原動力は楽しんでもらいたい意思や経験だと思っています。その上で「『モンスターハンター』を作りたい」でも、「モンスターを作りたい」でもいいので、こういうものが作りたいという意思を持っている方は、ぜひ一緒に仕事をしましょう!

内川 堀井さんや先輩たちの受け売りかもしれないですが、やっぱりお客さまの気持ちになって考えることは何につけても大事です。そこに向かってものを作れる人は伸びると思っていますので、ゲームデザイナーを目指す方はまず人を楽しませることを考えてみてください。
そして、僕個人としては体験に基づく刺激をくれる人と一緒に仕事をしてみたいです。現在は僕らが今日話してきた時代とも変わって、ゲームだけでもさまざまな媒体があるし、メディアも動画などたくさんの選択肢がある。もちろん自分も努力して触れてはいますが、リアルな体験を持って育った人とでは説得力の値が違います。そういう人たちと一緒に仕事をして、たくさんお話を聞かせてほしいですね。

―― 告知などもあれば教えてください。

徳田 『モンスターハンター:ワールド』は、あと数回のアップデートを考えています。とくに2019年初頭にリリース予定の『ウィッチャー3 ワイルドハント』とのコラボクエストは『モンハン』ファンだけでなく、『ウィッチャー』などのRPGが好きな方にも楽しんでもらえる、ちょっと驚くほどの作り込みをしていますので、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います!

モンスターハンター:ワールド 公式サイト

内川 『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』も2019年にNintendo Switchで発売予定です。キャラクターボイスにも対応して、PS4版、3DS版をプレイされた方もまた新しい体験ができると思っています。
ボイス以外にも、まだまだ新要素の発表を控えていますので、今後の情報を楽しみにお待ちください!

ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて 公式サイト

―― しかし徳田さんも内川さんも原体験から、ちゃんと現在のゲーム作りに活きているところがたくさんありましたね。例えば生物好きから生態系に……

内川 僕の『ドラクエ』のタンスの開け閉めの原点は、シルバニアファミリーでしたね。

一同 (笑)

徳田 いやぁ、それにしてもめちゃくちゃ楽しかったです! もう聞いても聞いても聞きたいことがあります。

―― お話を聞いていると、2人とも真面目で何をするにも真剣に取り組んでいる人柄が伝わってきました。なるべくしてディレクターとなり、大作を任されている理由がよくわかりました。

徳田 今日の話だと、選択肢の重みに共感してお互いゲーム業界に入ったわけですよね。その選択肢という意味で、『ドラクエ』はこのまま広がっていくとして、内川さん自身はこの先にやってみたいことはあるんですか?

内川 もちろんいずれは若手に譲らなきゃいけないとは思っていますが、今は『ドラクエ』を作り続けたいと思っています。しかし、徳田さんはご自身が次のステップに進むための導線を常に考えて行動しているところにそのすごさを感じました。また、それを経験値であったりレベルアップという言葉で表現していましたよね。こういったところも、家庭用機が物心ついたときからある同世代ならではの、ゲームの言葉が浸透しているからこそわかる共通項なんだなと思いました。

―― ありがとうございました。質問に〇×で回答していただく、こちらの映像でお開きにさせていただきます!

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ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて 3DS版開発スタッフ インタビュー

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