バディミッション BOND 開発者インタビュー #3 熱狂は留まらない

純真な輝きを放つルークの光に触れる!

犬のように人懐っこい 人々に希望をもたらす青年

杉原 目指したのは、等身大で親しみが持てる主人公です。基本的に、お客様はルークと一緒にこのゲームを経験していくので、なによりもまず共感性を大事にしたいキャラクターでした。真面目だけど茶目っ気があって、人間が好き。イメージしたのは、あだ名のとおり、犬です。少年のような熱い一面を持ちつつ、年下のキャラクターに対しては意外と大人の一面を見せたり、ボヤいたりボケたりする時は振り切ったりと、幅をもたせることも意識しました。他の3人と大きく異なるのは、お客様に対して隠し事をしない点です。内心まで開示するので、嘘もつけません。そこに、本作で一番大きな仕掛けを設けました。ルークという名前にも、「光」という意味があります。出会う人々に希望をもたらすようなキャラクターであってほしいという思いでつけました。「ルーク」の親もまた、そのような願いをこめて名づけたのだと思っています。顔立ちや服装などのテーマは、平凡でクセがないことと、好感が持てることです。性格とあわせて見た時に、「片道5時間の新幹線で、ぐうぜん隣り合っても緊張しない」「出会った初日に、自分の財布を預けられる」などと思っていただけたら、大成功です。

作品の方向性を形づけた 「ヒーローになるという夢」

杉原 ルークの重要な特徴である「ヒーローを目指している」という要素は、中山さんからいただいた案でした。結果、『BOND』全体のシステムの大きな要にもなりましたね。

中山 制作初期に杉原さんからいただいた案では、ルークは刑事で、エドワードの死をきっかけに動き出すという流れはありましたが、それだけでしたよね。私としては、初期案だと2つの点で物足りないと思っていました。1つは、本作のアイデンティティである「少年漫画っぽさ」がわかりやすく表現されているかという点です。ゲーム開始してすぐに、プレイした人が「このゲームはどういう雰囲気のものか」がつかみやすいほうが良いだろうと思っていましたので、「父の死の真相を突き止めるために動く刑事」…という要素だけですと、少年漫画ではなくサスペンス刑事ものの印象がついてしまうだろうなと気になっていました。2つ目は、ルークの行動の動機が弱いと感じたところですね。初期案ではエドワードが単なる良い父親・平均的な正義漢の警察官に見えていたと言いますか…ルークをひきとって良くしてくれはしたけど、それだけな人物に見えていたんですよね。ルークがなぜ父親のことで大きく突き動かされるのか? の動機付けに対し、読み手に序盤でぐっと共感してもらうには力不足な印象でした。それらを解決する手段の一例として、「ルークは、ヒーローの夢を養父から与えてもらったっていうのはどう?」と提案したんですよね。

杉原 はい。例の「交換日記」で、熱い思いやご提案を、いろいろ送っていただきましたね。

中山 当時の交換日記を見返したら、エドワードの序盤のキャラクター性のご提案として、厚かましくも私の方で具体的なセリフ案まで書いて、杉原さんへお送りしていました。資料の内容をそのまま書きますと、「『俺はな…子供の頃からヒーローになりたかったんだ。で、最近はもう一つ夢が増えてな。世の中にヒーローは1人じゃ足りないだろ、だから…ルーク、俺はお前と一緒にヒーローになりたいと思ってんだ。勝手だけどそれが俺の夢だ、駄目か?』としたらどうですか?」でした。「ヒーローは2人必要」という本作の根幹のテーマが生まれたのは、思えばこの時だったのかもしれません。

杉原 中山さんのご提案をプロットに落とし込んでみた時、気持ちよくハマったのをとてもよく覚えています。ルークのキャラクター性にもばっちり合った、わかりやすい行動動機であると同時に、ストーリーのテーマのひとつとして、非常に強力だと思いました。

中山 0章のタイトル名「ふたりのヒーロー」も、このセリフ案と同時期にご提案としてお送りしたと思います。

杉原 そうですね、「ヒーローが2人」というのは特にアーロンとの関係を描くうえで、エモーショナルなコンセプトになるだろうという手ごたえを感じました。あれは本当に素晴らしい瞬間でしたね。

中山 ここまで大きくシナリオやシステムの要になるとは自分も想像していなかったんですが、いろいろと広がっていきましたね。杉原さんの何気ないアイデアを私が拾うこともあれば、このエピソードのように私からのご提案を杉原さんが鮮やかに広げてくださったり、その繰り返しで二人三脚で歩んできました。互いのアイデアが掛け算となりバチッとはまった時は、長かった開発の中でも本当にワクワクした瞬間の一つですね。

国家機密情報…!? ルークのナイショ話Q&A

Q.ルークが歴史好きになったきっかけはなんでしょうか?

杉原 直接的なきっかけは、小学校の歴史の先生が、面白い授業をする人だったことです。ただ、ルークはもともと物語性があるものや、時間的・背景的な奥行きがあるものが好きなんだと思います。自分が失ったものにあこがれる気持ちがあるのかもしれません。

Q.ルークの学生時代の得意科目はなんでしょうか、また周りの友人からは、どのような評判でしたか?

杉原 国語と歴史です。次いで、生物と体育ですね。逆に壊滅的だったのは美術です。ゲーム中では出す機会がありませんでしたが、画力はゼロどころかマイナスという設定です。友人からの評価は「いい奴」です。ふざけて「いい奴どまり」とも言われていました。エリート気質の国家警察では周囲に馴染めていませんでしたが、学生時代の友人は多いです。ただ、忙しくて疎遠になっているイメージですね。

Q.ルークの身につけている腕時計には、なにか思い出などがありますか?

杉原 あれはルークが初ボーナスで買った時計です。エドワードが「昔、初ボーナスでいい時計を買ったんだ」と言っていたのを覚えていて、真似した形ですね。

Q.ルークの小さい頃の思い出に残っているエピソードなどを教えてください。

杉原 8歳の頃、友人になったばかりのおとなしい少年が、少ししか残っていない貴重なチョコレートを半分わけてくれました。その時、生まれて初めてチョコレートを食べて、大感激したというエピソードがあります。

Q.ルークの実の家族について教えてください。

杉原 物心ついた頃には両親ともに亡くなっており、ルークにも周囲の人々にも今や追えない事項になっています。出生地は海沿いの街です。昔、大きな爆撃を受けてから、ずっとそのままになっており、今もほとんど人が住んでいません。この街については、今後、ドラマCDの中で出てくる予定ですので、よかったらチェックしていただけると嬉しいです。

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