カービィ30thフェス レポート後編

前編では6曲目までを紹介しました。「星のカービィ 30周年記念ミュージックフェス」レポート後編では7曲目からお届けします。トークもたっぷりです!

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デデデ大王の生シャウト入り!?ハル研ドリームバンド

7曲目は、特別な演奏を映像で公開!「ハル研ドリームバンドによるデデデ大王フェス」。

「カービィ」シリーズを制作しているゲーム開発会社、ハル研究所のサウンドチームによるバンド演奏です!30周年の想いを込めたユーザーへのプレゼントとして演奏・映像制作されました。

ハル研究所 ウェブサイト
https://www.hallab.co.jp/

しかも収録現場はカービィカフェ!
スタジオ生演奏とはまた違ったアングルで楽曲と演出を楽しむことができました。

ハル研ドリームバンド(敬称略)
担当楽器/カービィサウンドとの関わり

  • 酒井 省吾
    ギター
    TVアニメ劇伴、『カービィのエアライド』から参加
    本フェスのオブザーバー
  • 安藤 浩和
    エレキベース
    2作目『夢の泉の物語』から参加
  • 小笠原 雄太
    ドラム
    『スターアライズ』から参加
  • 大原 萌
    キーボード/フルート/ボーカル
    『タッチ!カービィ スーパーレインボー』から参加
  • 石川 淳
    シンセサイザー/パーカッション
    初代『星のカービィ』から最新作まで作曲に参加
  • 池上 正
    アルトサックス/ソプラノサックス/ウィンドシンセ
    『カービィのピンボール』から参加

ふだんはデスクでサウンド制作に勤しむ、一般会社員の皆さん。
格好良く演奏をキメてくれました。

そして最後のほうで突然現れてシャウトをしていた人物、みなさんはお分かりになったでしょうか。「星のカービィ」シリーズゼネラルディレクターの熊崎信也さんも、デデデ大王ボイスでの参加となりました!王冠の柄のキャップが大王の証!?
ゲーム中のデデデ大王のボイスは初代ディレクターの桜井政博さん(現在は独立)が担当しており、今もそれを引き継いで熊崎さんが担当しているのだそう。

ステージには、フェスの指揮者としても登壇している大原萌(めぐみ)さん小笠原雄太さんがご登場。小笠原さんは遠慮がちに、「アリーナのみんな、楽しんでますか〜!」とコンサート会場ならではのコール&レスポンス。「やってみたかった…」の一言が微笑ましいです。

お二人は、カービィサウンドの若き担い手。今回のフェス楽曲の編曲もそれぞれ担当されています。

1つの楽曲は盛り盛りのメドレーで、それだけでも大変なもの。
また、ゲーム中の楽曲は生演奏を考えて作られたものではないので、「ゲームの雰囲気をいかに崩さないようにするか」「どの楽器に弾いてもらうか考えながら編曲しました」と、制作裏話を披露してくれました。

そして、お二人とも指揮は初めてというから驚き!
ゲームを広げるなかで、さまざまなチャレンジが行われているんですね。

ふだんのサウンド制作のお話も。
音楽だけではなく、効果音もサウンドスタッフが制作します。パソコンで作ることもありますが、実際にいろんなものを叩いて鳴らした音を録音した音を加工して使ったりもします、と話してくれました。

フェス後半は大人のムードもたっぷり!

「激突!カービィのレースフェス」と題した次の曲は、『スマブラ』でもおなじみの「激突!グルメレース」でスタート。
これまで何度もアレンジされてきた曲ですが、今回の編成にあわせたジャズアレンジで一味違う雰囲気を出してくれました。

続く楽曲「アウトロウドライバー」も『ディスカバリー』の「サーキットでGO!」も、アレンジがなんともおしゃれ!ドライブ中に聴きたくなります。

最後に『エアライド』から「ウエライド:草」を楽しげに挟み、「シティトライアル:街」は、これまた哀愁を漂わせ、レースのファイナルをまとめました。
甘く切ないムードを高めるサックスのソロ演奏に、惚れた人も多いのではないでしょうか。

たや!? アフレコ裏話もたっぷり!

そんなこんなで、カービィは眠たくなっちゃった!?
ナイトキャップをつけ、鼻提灯をふくらませてすやすやと眠るカービィ。
「むにゃ…メタナイトぉ…」なんて寝言に、すっかり夢の中の様子。

そこで呼ばれたのが、ゲストのお二人。
ゼネラルディレクターの熊崎信也さん声優の大本眞基子さん

カービィが寝ちゃったって、そういうこと…!
大本さんは、ステージと観客席が見える場所で直接アテレコしていたということをブログで語られています。

25周年のコンサートでも登壇したお二人。
2000人の会場も圧巻でしたが、8000人の会場が埋まるカービィの成長をひしひしと語ります。

熊崎さんはまず、「ゲームクリエイターとして、ゲームの体験をもっとも大事にして制作している」ということを前置きしたうえで、楽曲制作秘話を語ってくれました。

「石川は電子サウンドが得意で、発注を超えた予想外のものを仕上げてくれるので、新しいカービィサウンドを作りたいときにお願いしている」
「安藤は、1ループ5秒くらいしかない『無敵キャンディー』のような短い曲を、1分以上の長い戦闘メドレーにアレンジして欲しいといった、難しいお題にも応えてくれる」
など、サウンドスタッフそれぞれの個性を生かして発注しているそう。

最近の「カービィ」シリーズには歌を取り入れていることにも触れ、その作詞も熊崎さんが担当。しかも最新作『ディスカバリー』の歌詞は日本語でも英語でもありません。

♪ファ ルーティア フェリウァミ〜〜〜
異世界言語での冒頭を長めに暗唱。
他にもひとつひとつ単語を考えてあるそうで、異世界言語で「ニルロ ノディルナァ ラミォ ジャハ レリィーノ(きみのお昼寝は誰にも邪魔できない)」と披露してくれました。
具体的な単語を高いテンションで解説してくれる熊崎さん。
「がんばれば皆さんも話すことができるようになります!」とのこと!

大本さんは、“カービィ語”と呼ぶカービィのしゃべり方について話してくれました。
かつてアニメ版ではカービィのセリフが「ぽよ」と表現され、台本も「ぽよ」と書かれていたのですが、本来のカービィは「ぽよ」とは言いません。
ゲーム用の台本は「はぁーい」「いーゆ!」といった形でカービィのセリフを指定しているそうですが、熊崎さん曰く「本番ではその通りにやってくれない」のだとか。
大本さんは、練習ではそのとおりに演じつつも、本番では大本さんの感じるカービィを衝動的に演じているとのこと。

そしてあるとき、台本に書かれていたという「たや」の文字。
「私、たやとか言ったことないんですけど」
と大本さんが言うと、
「言ってますよ、ほら」と証拠が登場。
「言ってる…!(苦笑)」
そんなやりとりもあったのだとか。
カービィの言葉は日本語に表せないので、台本は難しそうですね!
(※「たや」=「アレ?」のような感覚と思われます)

『ロボボプラネット』の最終決戦では、「うぉぉー」といった叫び声の発注も。「カービィがこんな声を出しちゃっていいんですか!?」「いいんです!」といったせめぎあいをしながら生み出されている様子。
壇上で、「あの叫び声、今ちょっとできませんか」との熊崎さんのリクエストに「えぇ…」と渋る大本さん。叫び声は聴くことはできませんでしたが、25周年コンサートの時に魅せたスージーやクィン・セクトニアのセリフを披露してくれました。

 

ちなみに夜公演では、世界に配信されているとあって緊張気味のご登場!
異世界言語についてもややおとなしめに解説されていましたが、大本さんが例の叫び声やカービィ以外の役のボイスも披露すると、熊崎さんもデデデ大王のボイスを重ねるといった楽しい一面が見られました。

また、夜公演のみのサプライズ発表も!
『カービィのグルメフェス』配信日と、そしてアニメ「星のカービィ」HDリマスター版Blu-ray BOX発売の発表が!まさかのサプライズに、会場に大きなざわめきが!
配信でも、思わず漏れた観客の声が聞こえます。

 

圧巻のクライマックス

続いては、長く険しい戦いになりそうな、ラスボスをテーマとしたメドレー!

まずは『夢の泉の物語』から、「最終ボス」。
前奏のみですが、宇宙を高速で駆け抜けながらナイトメアを追いかけていく緊張感と迫力をあらためて思い出させてくれます。

「VS. マルク」、「VS. ゼロ・ツー」、「CROWNED」、「狂花水月」「回歴する追憶の数え唄」と、どれもこれも、クセあるラスボスたちとの戦闘曲。印象深く刻み込まれた人が多いのではないでしょうか。

なかでも「狂花水月」は、儚く美しい旋律が驚きと強いインパクトを与えてくれるボス曲。ピアノがメロディを奏でる前半はその特徴をよく表し、ジャジーにアレンジされた後半は大人のムードが漂います。
ペンライトが黄色一面に輝くなかから、セクトニアの花の色と緑のツタを表すように会場もカラフルに変化。そんな演出も感動的でした。

10曲目「組曲:星羅征(せいらゆ)く旅人」は、『スターアライズ』のラスボス戦。
ゲーム中でも組曲として成立させたチャレンジブルな楽曲群で、その生演奏が披露されるという鳥肌ものの1曲です。
(楽曲制作秘話は、サントラCDのブックレットにて語られています)

序章から始まるのも嬉しいですが、特徴的なフレーズを繰り返す第一楽章〜を、雰囲気はそのままに、さらにカッコよく壮大に再現。映像も、華麗に対ボス戦を進めていくのですが、追加配信されたフレンズたちも順々に登場する凝りようです。

そして、アップデートによる最高難易度モードで聴けるようになった最終楽章まで!
パイプオルガンやコーラスの音色が神々しく、ピアノの音色による短調での「GREEN GREENS」が機械音に変化していく様子まで再現されていました。映像も、白黒の画面の初代『星のカービィ』各ステージが現れ、さいごには消えていくニルの姿が…。
いつものメンバーとともに、平和になった「ラストフレンズ」も。

ラスボスに関するトークもたっぷり

圧巻のラスボス関連の楽曲を終え、MCの桜野さんからはとある告白が。
「私、トラウマになったボスがいるんです…」
多くの人がきっと予想したであろう、“ゼロ”。
『カービィ3』を子供の頃に遊んで、最後まで行けたものの、ラスボスの(攻撃を受けて変化した)姿がトラウマになったそう。
「あの赤い目玉が…!!」
と、目玉が飛び出すリアクションを見せました。

ラスボスの楽曲の作り込みについては、熊崎さんが「やっとたどりついて倒すべき敵に出会ったときに、プレイヤーの感情を投影するならば、やはり最高の曲を用意したい」と語ります。

また、「カービィのゲームは全体的な見た目がかわいらしいのに、ラスボスは世界観が変わったかのような変化に驚く」という桜野さんの投げかけに、熊崎さんが回答。
カービィは全年齢がターゲットであり、決して低年齢向けのゲームではないという前提のもと、小さいお子さんが怖がらないギリギリを攻めたいという考えを説明しました。

「毎回同じだと驚きがないので、新しい体験のために多様性を出しています」
「これは昔からそうで、たとえば『夢の泉の物語』で、ナイトメア(真のボス)が出てくるとは思わないじゃないですか(笑)」と、(自分自身が開発にかかわっていない)過去のタイトルについても解説しました。
「前作を超える」のではなく、「新しい体験」を目指す。
次回作も、きっとまた違った驚きを与えてくれることを予感させます。

さらに、曲名も気になるところ。
曲名は、ゲーム制作を全力で行ったうえで、熊崎さんが空き時間(お風呂に入りながらとか…)で考えているといいます。
たとえば今回は演奏されませんでしたが、『ディスカバリー』のラスボス曲「いつしか双星はロッシュ限界へ」の名付け。楽曲そのものを「弦楽器でお願いします」と発注したことに始まり、「弦」の字を入れたものにすることから生まれたそう。そのため漢字を「弦界」と当てていたそうですが、複雑になりすぎたため天体用語の「ロッシュ限界」に切り替えてまとめたのだそうです。

序盤はゲームの楽しさ、後半はストーリーの深さなどにあわせてつけることで、プレイヤーの感情を揺さぶります。
ボス戦のポーズ中に見られるキャラクター解説も、ゲーム体験を邪魔しない程度に仕込み、知った上で戦ったらより深く味わえる仕掛け。知らなくても楽しめるけど、知ればより感情移入できるよう工夫されているのですね。

「ボス戦が終わったあとは、大きな感情があってほしい。それこそ、ご飯が喉をとおらないくらい」
そんな思いで作られているクライマックス。もちろんこの会場に足を運んでいる方々は、感情を揺さぶられ続けてきた人が多いことは間違いないでしょう。

プログラムはいよいよ、最後の1曲へ。熊崎さんは「カービィの広がりは、ファンの方々のご愛顧があってこそ」と感動と感謝のメッセージで締め、客席からは熱い拍手が贈られました。

生歌唱によるスペシャルライブ!

実質、2曲の歌モノです!

まずは『スーパーカービィハンターズ』のエンディングソング「グリーンツリーメモリーズ from 星のカービィ」。原曲は、ポップで明るい曲調と、歌手の岩出なつみさんの落ち着いた歌声で、絵本のような世界観になごみます。

スーパーカービィハンターズ テーマソングPV(Nintendo 公式チャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=sfbBH2HLw7Y

ハル研ブログ
https://www.hallab.co.jp/blog/detail/2109/

今回のフェスでは、大本さんが熱唱!
ノリノリのアップテンポになった生バンドのアレンジと大本さんの可愛らしい歌声で、楽しい気持ちを盛り上げてくれました。最後はちょっぴり、終わりに向かう寂しさも。

そして『ディスカバリー』より「WELCOME TO THE NEW WORLD!」は、謎の歌姫NEICHEL(ネイチェル)がステージ上にさっそうと登場。
ゲーム中の世界にかつて存在した歌姫、それがNEICHEL。名前の由来は自然・深緑を意味する言葉だそう(ニンテンドードリーム6月号インタビューより)。
深緑のドレスをまとい、ハットを目深に被る姿は、煌びやかながらも神秘的です。

異世界言語での歌唱に始まり、途中からは大本さんもともに日本語バージョンを熱唱。
期待を裏切らないクライマックス!

素性不明のNEICHELさん。歌唱中の真剣な表情(見えませんが)だけでなく、振る舞いにはチャーミングさも感じ取れました。

あしたはあしたのかぜがふく

ここで本フェスのオブザーバー酒井省吾さんが、歌を口ずさみながら登場!
演奏の各セクション、総勢35名の奏者を華麗にご紹介しました。

指揮の2人もあらためて壇上に呼び、緊張したのか、「あ、自分の会社の人に“さん”を付けちゃった!」と照れ笑い。熱い拍手に応え、アンコールに移ってくれます。
指揮はどなたが…
大原さん、小笠原さんが「どうぞどうぞ」という格好で譲り、ラスト1曲は酒井さんが指揮棒を振ることに!

アンコール「星のカービィ メモリアルエンディング」は、エンディング楽曲のメドレー!
これまた、ポップな曲調からジャズアレンジとさまざま。ラストは初代のエンディング楽曲で、明るくアップテンポなジャズアレンジです。

そして大団円。通常のビッグバンドよりストリングス(弦楽器)が多く参加しているこの編成に、ティンパニも響き、歌謡曲フェスティバルのエンドロールのようなものを匂わせるような懐かしい雰囲気も感じられました。
エレキギターのソロが唸り、フェスらしく締めてくれます。

趣向を凝らした30周年フェス、大きな拍手と笑顔と涙に包まれて終了です。

カービィ「ありがとー!」

感動と高品質の記念イベント

25周年のオーケストラコンサートは、格式高い雰囲気で特別なアニバーサリー感がありました。それとは趣向を変えてきた、30周年のミュージックフェス。カービィの楽曲アレンジにバンド編成がよく合うとともに、大勢の観客と一体になれる特別なイベント空間を演出してくれました。

星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート(CD)
https://www.hallab.co.jp/works/detail/003116/
※DISC2には特別アレンジを収録。生演奏やボーカル入り、ビッグバンドも

そもそもゲームミュージックは生演奏を前提にしていないことも多く、とりわけカービィシリーズは「テンポが速い」「変調が多い」「リズムが激しい」など、人間の奏でる領域を超えた楽曲が多いものです。
それを原曲の雰囲気を壊さず、むしろイメージを広げる素晴らしいアレンジで楽しませてくれたのはお見事。

また、ただでさえメドレーには相当な労力と技量が必要ですが、プログラムすべてがメドレー仕立てなのも驚き。
しかも30年のタイトルのふりかえりだけではなく、「サブゲーム」「レース」といったテーマごとのメドレーを取り入れることで、定番曲以外の楽曲も演奏され、バラエティ豊かな楽曲がそろったことも面白い点でした。

もちろん演奏も素晴らしく、おなじく昼公演を観覧した音楽家の岩垂徳行さんも「すごく上手。通常は夜公演の方があったまってより良い演奏になると言われているけど、すでに素晴らしかった」と絶賛でした。
音自体も、どの席からも違和感なく聴こえやすい会場とのことで、純粋な音楽面でも高いクオリティだったことが裏付けられます。

そして会場に行ったからには忘れられないのは、ペンライトの演出。点灯だけではなく点滅や強弱で会場全体が演出されますが、自分のペンライトが何色を担当するのか、点灯するのかしないとかといった部分も含め、一部分となった気持ちになれました。

映像に登場したカービィに目を輝かせ、ライトを振っていた小学生の兄弟も印象的。
25周年オーケストラは大人の女性層が目立ちましたが、今回は男の子とお母さんといった親子客も多く見られるなど、来場客層が広がったことを感じました。5年のあいだに発売されたゲームのとっつきやすさとさまざまなチャレンジ、グッズやカフェなどの展開を思い返しますね。

今こそ聞きたい演出面についても取材することができましたので、引き続きレポート記事をお楽しみください。

[感動の演出に直撃!スタッフ取材]
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