『大逆転裁判2』開発スタッフと回想する冒險浪漫談 Vol.2 第1話「弁護少女の覚醒と冒險」(2017年10月号より)

『大逆転裁判2』の開発スタッフインタビューの再掲載をお届けします。今回は第1話「弁護少女の覚醒と冒險」の物語と登場キャラクターについて、開発スタッフの皆さんと一緒に掘り下げていきます。


『大逆転裁判2』開発スタッフと回想する冒險浪漫談
Vol.1 開発スタッフと回想する冒險浪漫談(全体編)
Vol.3 第2話 回想「吾輩と霧の夜の回想」
Vol.4 第3話 回想「未来科学と亡霊の帰還」

・記事は修正している箇所もありますが、基本は掲載時と同じものになります。
・ネタバレを含んでいます。

<プロフィール左から>

プロデューサー 江城元秀●シリーズプロデューサー。シリーズには『逆転裁判2 Best Price!』から参加。『逆転検事』シリーズ、『逆転裁判5』『逆転裁判6』を経て、『大逆転裁判』シリーズも本作から統括
ディレクター 巧舟●総監督にして『逆転裁判』シリーズの生みの親。『逆転裁判1』〜『逆転裁判3』をはじめ、『逆転裁判4』『ゴースト トリック』『レイトン教授VS逆転裁判』、『大逆転裁判』を手掛ける
アートディレクター 塗 和也●『逆転裁判 蘇る逆転』よりシリーズに参加。『逆転裁判4』や『レイトン教授VS逆転裁判』、『大逆転裁判』シリーズのキャラクターデザイン、アートディレクションを担当


第1話「弁護少女の覚醒と冒險」

御琴羽寿沙都が日本に帰ってきて2か月。大日本帝国と大英帝国が緊張した関係にある中、留学生ジェゼール・ブレットが殺害される「海辺の英国婦人殺人事件」が発生する。容疑者は帝都勇盟大学の女学生にして、事件現場の海辺で被害者と2人きりだったという寿沙都の親友、村雨葉織。そして、この国交問題にも発展しかねない事件に弁護士として名乗りを上げたのが成歩堂龍ノ介のイトコ、成歩堂龍太郎。大審院に立つ若き弁護士の前に立ちふさがる検事は亜内武土。無実を訴える葉織を救うため、成歩堂龍太郎の初めての法廷が始まる——。


第1話 制作秘話

—— なんといっても、まずはこの日本でのイラストですね(上)。

江城 「東京ゲームショウ2016」で初めて発表するときに、映像に入れて公開したやつですね。

—— この絵は発表用に用意されたものだったんですか?

江城 いや、チームでイメージボードを作ってくれていたものの中から選んだんだと思います。ゲームショウは9月とはいえまだ暑かったので、時期的にもちょうどいいなって思ったのを覚えています。

 本編の序盤のワンシーンですが、象徴的に使えるものだったので、この絵でいこうと提案したんです。

—— 寿沙都とお墓というイメージは最初からあったんですか?

 そうですね。日本に帰って来た寿沙都さんがすることと言えば、まずは報告だろうと。

—— たしかにそうですね。

 風景としても、海を背にして、日本の松の木の下にお墓があって蝉が鳴いているというのは、塗くんともみんなが共通して浮かんだものでした。

 墓石に文字を入れるかどうかは、結構話し合いましたよね。何度も文字を入れたり消したり。一時ツルツルになったこともありましたが、個人的にはツルツルだと墓石に目がいく構図なのに何もないと目が泳いでしまうので文字は入れたかったんですよね。

 最初は遠景だけで見せる予定だったので、ツルツルだったんですけど、アップで使うことになったので文字を入れることになりました。

—— この発表を見たとき、『大逆転2』ってどこから始まるんだろうって考えたのを思い出しました。

江城 そこで龍太郎くんです。

—— 『逆転』シリーズの1話は、これまで記憶喪失であったりとかいろいろとありましたけど、まさか主人公が出てこないっていう!

一同 (笑)

江城 だから宣伝的にも大変だったんです。今は発売されているからいいですけど、発売前は主人公が変わってしまうわけなので、告知の仕方が難しくて。しかも龍太郎はずっと出てくるわけじゃないのに、正体が言えないんですから。

 僕は龍太郎の正体がわかってもいいと思ってたんですけどね。ただ、たしなみとして正体は明かさないと(笑)。

 でも、ふつう見たら一発でわかりますよね!

一同 (笑)

江城 体験版にも入れましたから、今は公式ネタバレみたいになっていますが、発売前の僕の立場としては「主人公は龍太郎です」って言い続けるしかなかったんです(笑)。

—— ではその龍太郎はどこから発想されたのか教えてください。

 前作が完成したとき、『大逆転2』を作るなら、オープニングはこれしかないと思っていました。寿沙都さんが日本に帰ったわけですから、始めるならばそこだろうと。やはり、前作と合わせて、日本の法廷から物語が再び動き出すのが美しいと思ったんです。

—— 龍太郎以外にも、前作を遊んだ人は事件の被害者がジェゼールというだけで驚いた人も多いと思うんです。

 龍太郎が弁護をするのと、ジェゼールさんが被害者になるのは、最初からセットで考えていました。

—— そうなんですか。でも当然1作品構想だったときは違うわけですよね?

 そうですね。当初の構想では、ジェゼールさんの物語は別の形で用意していたのですが、作り直しました。ただそれによって、物語として問題もできてしまって。

—— どんなところでしょうか?

 冒頭でジェゼールさんが死んでしまうことで、前作のある事件の真実がいったん、闇の中になるんですね。それをプレイヤーがどう受け止めるかというのが気になりました。その謎は後で解けるよ、という伏線を入れて、かなり気を使って書きましたね。2回目のプレイでそのへんを気にしながら遊んでもらうと、いろいろなことがわかると思います。

—— 事件の舞台を海にしたのはなぜだったんですか?

 最初、巧さんから「今作も日本から始めようと思うんだけど」という話があったとき、「どんな舞台がいいか?」という相談もあって。そこで「海がいいと思います」と提案した形ですね。

—— なぜ海を?

 まずパッと見のわかりやすい変化がほしかったんです。極論キャラクターがみんな水着になったりしたら、同じ登場人物たちでも大胆に変化を出せるかなと思ったんです。

江城 この時代の水着は特徴的ですし。

 寿沙都にも水着を着せたい……という話もしていたんですが、彼女は現場に来ないという話になって。代わりに葉織ちゃんが水着になりました(笑)。

いきなり主人公が変わってビックリ!? した人も多かったかもしれない、龍太郎こと凛々しい寿沙都さん

第1話 登場人物秘話

成歩堂 龍太郎

成歩堂龍ノ介のイトコで、地方大学で法律を学ぶ学生。寿沙都の親友である葉織を助けるために御琴羽教授とともに法廷に立つ

 もっと誰だかわからないように調整するか、お約束的に「これ寿沙都じゃないの?」って思えるようなギリギリのラインを狙うか、どちらかの方向だったんですよね。最初のラフのときは、リボンとかはあからさまに描いていましたが。

—— 設定画(下)には描いてありますね。

 最終的には、色などで寿沙都イメージを出すことにして、直接的な答えになる要素はあまり残さないようにまとめました。

—— 巧さんは龍太郎のデザインに関しては何か言ったんですか?

 お任せしていました。唯一言ったのは「寿沙都ってわかってもいいんだよ」ぐらいかな。

—— その一言は大きいですね。

 そうなんです。結局、その一言がないとポイントとなる髪の毛とかも完全に隠さなきゃいけなくなってくるんです。どちらにしても帽子は絶対外せないとは思っていたんですけど。彼女はこの後に倫敦へ戻るわけですから、髪を短く切ったりするわけにはいかないですからね(笑)。

 たしかにそれはまずい(笑)。

 だからデザイン的にできることが限られていたので、その一言は大きかったです。そういえば、江城さんは、最初もっとハッキリと別人のような、見た感じ寿沙都だとはわからないイメージになると思ってたんですよね。

江城 うん。絵がない文字だけのときはそう聞いてたし。

 で、絵を見せたら「これまんま寿沙都やん!」って言われて(笑)。

江城 こっちはバレたらダメだと思ってるし、聞いてたのと違うしで驚いて「まんま寿沙都だけど、どうするのよ!」 って。

 いや、むしろ寿沙都ですけど!

江城 えー! みたいな。

一同 (笑)

江城 だからチームはバラす気満々だったんです。まぁ結果的にはおもしろいパターンにはなりましたよね。ちゃんとお話の流れにもハマっていましたし。ユーザーさんにも「主人公じゃない!」って怒られるわけではなく、体験版や製品版を触って「なるほどね」って納得してもらえたんじゃないかと思っています。

 でも、遊ぶ前にわかりますよねこれ。

龍太郎の設定画


亜内 武土

かつて成歩堂龍ノ介を追い詰めた因縁の検事。明治の世にまだ馴染んでいない

—— 扇子が前作の罪から罰になってましたね。

 ちょっとしたことなんですけど、そういうのに気づくと楽しかったりしますよね。

 デザイン的には前回で髪の毛をスッパリやっちゃっていたんで、そこからさらにどう展開させるかということで考えていきました。

 自然の流れだったんではないかと。あ、辞世の句は結構こだわって考えました。


村雨 葉織

帝都勇盟大学の研究室で助手を務める16歳。被害者のジェゼール・ブレットと同じ研究室に在籍しており、事件発生時に一緒にいたため逮捕されてしまう

 葉織ちゃんは当初の巧さんのシナリオにはいなかったキャラなんです。

—— そうなんですか。

 最初は豆籾さんのみが新キャラとして登場する話が展開していたんですけど、なんか前作と比べると地味な気がしちゃって。だって、御琴羽教授に漱石さんとアウチ……なんか並べるとおじさんばかりだなと(笑)。

 もともとは御琴羽教授が被告人で、寿沙都さんがお父さんを守る話だったんですね。だから「おじさんばかり」とか、そういう視点は抜けていました。

 そうだったんですけど、その流れも含めて意見を言わせてもらいました。もちろんおじさんばかりということだけではなく、寿沙都が弁護士側に立つので、本来の寿沙都ポジションにこういった女の子を出せば、前作でいう龍ノ介と亜双義の関係性が寿沙都と葉織にカタチを変えて表現できるんじゃないかという目論見もありました。また2人の友達関係の描写で、寿沙都のキャラ自体にも新たな一面が出て深まるかなというのもあったので、巧さんに提案をしたんですね。

—— 巧さんは書いたものに意見を聞いてから書き直していくんですね。

 そうですね。第1稿の段階でチーム内で意見をもらって、そこから取捨選択して第2稿を書くんです。キャラクターデザインに合わせてセリフも変えていきますね。

—— ではデザインのポイントは?

 もう完全に僕のイメージでまとめてしまいました。寿沙都のことをずっと陰ながら憧れ的に想っている。寿沙都のことをお慕いしているイメージです。

—— だからラフには忘れな草って書いてあるんですね。

 はい。私のことを忘れないで……というような。前作での寿沙都の描かれ方をみて、僕の中で寿沙都は明るい元気な子というイメージに更新されたので、僕がもともと大和撫子にもっていた、もうちょっと健気というか、おしとやかなイメージを葉織に投影して描きました。

葉織の設定画


細長 悟

海辺にて任務遂行中に事件を目撃した帝都警察の刑事。完璧な証言を行うため、事件当時の格好を再現している

 これはもう見たままです。

一同 (笑)

—— 頭につけている亀は木製なんですね。

 木製の玩具ですね。カタカタって鳴る。

—— これも塗さんの頭の中にあったものなんですか?

 頭に乗せたいというのは巧さんのイメージからです。潜って頭に乗せているものが水面から顔を出しているという。

 はい。これは指定ですね。この人は潜入捜査が得意ですから。だったらどこに潜入していたのか? ……海だ! って。

—— そ、そうですね(笑)。

 これ、詳しく意図を話すと自分のギャグを解説する感じになるから恥ずかしいですね。

一同 (笑)

細長の設定画


夏目 漱石

「吾輩は猫である」を連載中の小説家。英国留学中に事件に巻き込まれ、その際に龍ノ介とは顔見知り。 密着取材中に事件を目撃する

—— 証人として第1話から全開でしたね(笑)。

 せっかくの日本だし、先生に登場していただきました。

 漱石は巧さんのお気に入りキャラですしね。

 うん。漱石さんはいつも、僕の頭の中にいます。

 ただ漱石がお気に入り過ぎて、一時メインキャラみたいに全話に登場する勢いでした。最初は万博にも証人で来ていて、「さすがに出すぎでしょ!」って(笑)。

—— デザイン面はいかがでしょうか?

 漱石は前作でスーツ姿が出ていましたが、あれはどちらかというと本来メインの服装の予定ではありませんでした。最初は下宿でずっと震えている設定だったので、もともとのデザイン画では褞袍みたいなものを着せていたんです。

 前作では、最初から最後まで留置所にいて、出せなかったんです。

 なので、今回はそのときの元デザインのイメージに近づけつつ、舞台である日本の要素を強める意図もあって着物へ置き換えた感じです。結果的に最初の漱石の持つイメージにもなったかなと思います。彼は文豪という立場に変わってますし、より作家らしい服装としてもいいかなと。堅苦しい恰好ではないんですけど、着物のカジュアルなものを羽織ってるというか。

 前作のとき、洋装のデザインもあったんですよ。

 さっきの万博に行ってたかもしれなかった話のときは、その洋装で行くイメージでした。

 でも今回は下半身は洋装だね。

 というのは、上下を着物にすると和装としてキレイにまとまりすぎてしまって、漱石の本来持つ、動き回る元気闊達なイメージが弱まってしまうと思い、あえて下はアクティブな感じを残しました。ちなみに、最初本作の第1話では、漱石は水着としてふんどし一丁でいけるかなと構想していました(笑)。


豆籾 平太

「大黒新報」の新聞記者で、事件の目撃者のひとり。夏目漱石を密着取材中に事件に遭遇する

—— 豆籾は漱石とのセットが最高でした。

 あの登場の仕方は最初からイメージがあったんです。元ネタとしては、カプコンから発売した格闘ゲーム『MARVEL VS. CAPCOM 3』の背景に、転がりながら写真を撮っているヤツがいて、それが妙に印象に残っていて。

 過去に成歩堂龍一が参戦してましたよね。そのときに巧さんがチェックプレイしていて、記憶に残っていたみたいです(笑)。

—— 豆籾があれだけ動くから、漱石のアクションが映えるんですよね。

 あの2人のアクションのリンクをやりたかったんです。これも元ネタがあるんですけど、あえてここでは言いません(笑)。ちなみに名前は、イニシャルから考え始めて、「まみむめも」が全部入る名前にしよう! ということで「まめもみ」に落ちついたという。豆も籾も意味はありません。

—— てっきり何か意味があるのかと思ってました。

 僕も豆籾という名前の由来を何度も聞いたんですけど、当時から回答がフワッとしていましたから(笑)。

—— 塗さんはどんな発注を受けてデザインしていったんですか?

 豆籾って名前と新聞記者という設定だけでした。で、最初いぶし銀の年季の入った記者を描いていたんです。でも巧さんからもう少し元気なイメージがいいという話がありまして、だったら胸板が厚くて、いっそ若いイメージにしようかなと。胸板をアピールするキャラクターを考えたんですね。そうしたら名前も宗倉に変えようという話になりまして。

一同 (笑)

 で、宗倉に変わったので、今度は名前も宗倉のつもりでデザインを詰めていったんです。それまでのいぶし銀の新聞記者から、今の元気な勢い系にイメージを変えて、夏に外を取材で動き回っているだろうから日焼けもさせて、みたいな。

—— じゃあ今の豆籾は宗倉なんですか?

 はい。しかしデザインが完成してしばらくして、なんと再び豆籾に名前が戻りまして。

—— 宗倉から豆籾にまた戻ったと。

 「ごめん、やっぱり……」って。というのも、彼のセリフの「マメモミズム」ってフレーズが自分で妙に気に入っちゃって……つまりマメモミズムが言いたかったんです。

一同 (笑)

 デザイン自体は宗倉時代から変わってないんです。でも、その宗倉が思わぬ形でほかのキャラに大きな影響を及ぼしかけたことがあったんですよ!

—— 宗倉がですか?

 はい。宗倉の名前が消えてしばらく後に、宗倉というネーミングだけがある日突然復活したんです。よりによって葉織の名前として!(笑)

—— 何て言う名前だったんですか?

 むなぐらつまみ…。

 「宗倉妻美」。ムナグラをつまんで投げますからね。つまみちゃん。

江城 それはアカンね。

一同 (笑)

 僕も寿沙都の親友としての何かが失われる気がしたので、必死に抵抗しました(笑)。

江城 よく止めてくれた!

 葉織の絵を見ながら、一週間ぐらい「むなぐらつまみかぁ…」って考えていたんですけど、やっぱり「つまみ無理!」って。

 塗くんの情熱に負けて折れました(笑)。



関連リンク
大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險- 公式サイト
大逆転裁判2-成歩堂龍ノ介の覺悟- 公式サイト
逆転裁判シリーズ 公式サイト


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