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『ゼルダ無双 厄災の黙示録』エキスパンション・パス完結インタビュー

コーエーテクモゲームスから発売中の『ゼルダ無双 厄災の黙示録』(以下『厄災の黙示録』)。予定されていたDLCもすべて配信完了というわけで、完結インタビューをニンテンドードリーム1月号(11月20日発売)との連動企画でお送りします。
本誌のみに掲載している情報もありますので、あわせて手にとっていただければと思います。

(NDW×ニンテンドードリーム1月号 連動企画)


アートディレクター 大星悠さん(写真左から1番目)
プロデューサー 早矢仕洋介さん(写真左から2番目)
ディレクター 松下竜太さん(写真左から3番目)
開発プロデューサー 古澤正紀さん(写真左から4番目)


追加ダウンロードコンテンツ購入特典「古代兵装」制作秘話

―― 追加ダウンロードコンテンツ(以下、DLC)「エキスパンション・パス」の購入特典について、なぜ「試作古代兵装」が選ばれたのでしょうか。

松下 DLCの第1弾と第2弾はどちらも、プルアとロベリーの王立古代研究所が物語の軸になっています。古代研究所を通して、本編では体験できなかったエピソードや新しいアイテムが登場する、というようなストーリーになっています。なので特典アイテムについても、古代研究をテーマとしたものとしました。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、『BotW』)では、「古代兵装」という全身装備をロベリーの研究所で開発することができます。そこで、厄災との戦いの後…100年後の時間軸に完成した装備である古代兵装の元になった遺物や兵装の試作品については、100年前からロベリーもすでに研究を進めていたのではないかと。また、謎のガーディアンが100年前の過去の世界に来たことで、遺物の解明や研究も元の歴史より進み、あの古代兵装が完成するまでの期間も早められたのでは……という今作ならではの展開として、「試作古代兵装」という装備が生まれました。

大星 試作品っぽさの表現も『BotW』を参考にしています。『BotW』の古代兵装の矢は普通の木の矢にくっつけて作られていたりですとか、結構アナログな作り方をしていて、紐でぐるぐる巻きにしてあったりするんです(笑)。なので古代兵装の試作具合に関してもそのあたりを参考に、同じようにアナログ感というかDIY感を持たせました。「鎧だったらどのあたりに試作感がでるか」「じゃあこの部分は包帯でぐるぐる巻きにしてみるか」というようにいろいろ配分を変えて、試行錯誤のすえに今作の古代兵装のデザインを作っていった感じです。

―― 『BotW』は100年後であり、『厄災の黙示録』は100年前の物語である、という部分は随所で意識されているんですね。

松下 そうですね。二作品の繋がりを感じていただくという点と、今作でしかできない絵であったり体験を楽しんでもらいたいという点で、時代軸の違いによる差異をエッセンスとして取り入れさせていただいています。

リンクの新しくてユニークな武器「フレイル」

―― 追加DLC第1弾では、ゼルダ姫の「マスターバイク」と並んでリンクの武器に「フレイル」が追加されました。ヌンチャクのような武器で敵の武器をコピーするという、仕様としてはユニークな武器ですよね。フレイルはどのようなコンセプトで作られたのでしょうか?

松下 第1弾の追加武器はバイクとフレイルですが、バイクは第1弾の目玉であり、かつアクションもちょっと変わり種で飛び道具的なものでした。なので、それに対してフレイルの方は比較的実用的といいますか、リンクが無双するための新たな相棒としてしっかりと使いやすいものを、という方向性で設定していました。そういったコンセプトが根底にあるので、まずアクション面では従来の無双キャラでいうところの鎖分銅のようなアクションで、攻撃速度も攻撃範囲もある使いやすさを重視しました。

松下 そして、さらにそこに『BotW』らしい遊びを組み込みたいなという気持ちがありまして。『BotW』って、リンクがいろんな武器を拾って使いこなしては壊して、壊れたらまた次の武器を…という流れがありますよね。ガーディアンのクロー(足)を投げ縄のように回し飛ばして相手をつかむアクションに、敵の武器を奪ってそれが壊れるまで使い、最後には投げて攻撃…という仕組みを加えることで、『BotW』のリンクを彷彿とさせるプレイフィーリングを再現しよう、という狙いがありました。

古澤 「『BotW』といったら武器を取っ替え引っ替えするのが良かったよね」という『BotW』ファンの皆さんや、本作をプレイして武器の仕様の違いは理解いただきつつも「こういうこともできたらよかったのにね」という思いを持っていたユーザーの皆さまの声を拾い上げた形です。もちろん完全に同じ仕様にはならないのですが、『BotW』を楽しんだ方にもより『厄災の黙示録』を楽しんでいただきたいという想いを、敵の武器を奪ってコピーするという部分に入れ込みました。

―― 大星さんはフレイルに関してなにか思い入れはありますか?

大星 そうですね…フレイルはバイクに比べるとすごく素直で…。

一同 (笑)

古澤 でもかなりギミックはこだわってたよね?

大星 そうですね。仕込んだギミックはかなり多かったです。伸ばしたり振り回したり…。

松下 バイクと同時期だったんでちょっと記憶が霞んでるだけで、アクションやギミックにはこだわりがたくさん詰まってますよ(笑)

既存キャラクター全員に新アクションを追加

―― DLC第2弾で既存キャラクター全員に新たなアクションが追加されましたが、全員追加に踏み切った経緯などをお伺いしたいです。

松下 プレイアブルキャラクターがたくさんいるというところは本作の魅力のひとつです。ありがたいことにキャラクター全員のアクションがユーザーの皆さまに愛されていたので、愛してくださった皆さまに向けて感謝の気持ちをお返しするコンテンツという意味をこめて全員を対象に追加を行いました。皆さまの期待の声から実現したイーガ団筆頭幹部の参戦と同じような経緯ですね。「エキスパンション・パス」を遊んでいただくお客様にとって、お気に入りのキャラクター全員が新しく、より活躍できるように、という願いを込めています。

―― 全参戦キャラに、しかもすでに完成されているアクションにさらに追加していくというのは、かなり大変だったのでは?

松下 たしかに大変な面もありましたが、現場としては楽しく制作できていました。追加アクションの案を出す時も、「本編でもっとこういうことができればよかったと思っていたから、追加はこうしよう」だとか「このキャラにこんな技があったらもっと強くなるし楽しいよね」というふうに、みんな前向きにどんどんアイデアを出せていました。

―― 印象に残っている追加アクションはありますか?

松下 リンク(片手剣)ですね。もともと片手剣には強攻撃を1度出した後、そのまま長押しすると力を溜めてさらに追撃が出せるというアクションがあるんですが、力を溜めている間の移動が盾を構えた突進になって、敵をガンガン吹っ飛ばせる…という技を追加しまして。一部の『BotW』ファンの方には「厄災リンク」とも称されるような(笑)、えげつないほどのリンクの強さや容赦のなさという部分をより表現することができて、とてもしっくりきました。

エキスパンション・パスの描き下ろしイラストに込めた思い

―― DLC第1弾「古代の鼓動」・第2弾「追憶の守護者」それぞれの描き下ろしイラストについて、デザインコンセプトや制作秘話を教えてください。

大星 『厄災の黙示録』本編のキービジュアル(パッケージイラスト)は、厄災に立ち向かうリンクやゼルダ姫、英傑たちをストレートに表現したので、それに対してDLCのビジュアルは戦いの中の一幕を切り取るような、DLCで楽しめる内容を直接的に感じ取れる絵にしようと考えました。それと同時に、それらのキービジュアルとプロモーション映像がしっかりとリンクしたものにしたいなとも思っていて、ユーザーの皆さまが映像を見た時にワクワクできるようなもの、というのをコンセプトに掲げました。

まず第1弾の「古代の鼓動」ですが、こちらは「プルアとロベリーの研究が主軸になっていて、その研究が行き着く果てがゼルダのバイク」という内容になっています。そうした内容や魅力を絵でどう伝えようかと考えたんですが、一枚に込めるには情報が多すぎて厳しかったので、プロモーションの中で2段階に分けて伝えられればいいんじゃないか、と提案しました。その分、作る量が2倍になっちゃったので、少し後悔はしましたが(笑)

一同 (笑)

大星 頑張って作りました(笑)。第1段階は主軸となるプルアとロベリーを中心に据えつつ英傑たちと並び立って、ともに厄災に立ち向かっている…というコンセプトで作成し、第2段階はゼルダのバイクをここぞとばかりにカットインさせてインパクト満点にしました。

松下 バイクがインした瞬間を見た時は、早くも感無量でしたね。

大星 バイクの制作に際して、いろいろありましたからね…(笑)
※ゼルダのマスターバイクについての制作秘話は、ニンドリ1月号にて掲載中!

―― 最初にDLC第1弾のイラストを見た時、なぜゼルダ姫がいないんだろうとは思っていたんですが、後から更新されてびっくりしました。

早矢仕 第1段階のビジュアルにも、実はバイクのヘッドライトだけ映り込んでいるんですよ。あえて匂わせたんです。

古澤 ユーザーの皆さまの中にも、いろいろ細かい部分まで見て考察される方がいらっしゃるので、そういう方たちに向けてのヒントですね。「後ろからのライト」と「ゼルダ姫がいない」という点、「ちょっとここ隙間空いてない?」「後ろからなにか来てない?」と総合的な視点でみれば予想できなくはないような形にヒントを散りばめておいて、発売直前に答え合わせとしてバイクに乗ったゼルダ姫がカットインしてくる…という設計でした。


―― (イラスト右側を見ると)たしかに映ってます! 秘密を知ったうえで、もう一回映像を見返してもまた楽しそうですね。

大星 第2弾の「追憶の守護者」の方は、謎のガーディアンの記憶をたどる、というのが物語の主軸なので、追加されたさまざまなエピソードの断片が垣間見える…というのをコンセプトに作成しました。

―― あのガラスのようなものは、謎のガーディアンの記憶のカケラなんですね。トレーラー映像の、ムービーからキービジュアルに繋がる演出もカッコよかったです。

大星 ありがとうございます。トレーラーのコンテとキービジュアルのレイアウトを両方並行して考えたのでしんどい部分もあったんですが、カチッとハマったときのパワーはすごくて。個人的にも良くできたと思うので、ああいう試みは今後もやっていきたいです。

松下 第2弾の追加ストーリーは、ひと続きの物語というよりはいろいろな戦いや個々のキャラクターのサイドストーリーがオムニバス的に登場する形に近かったので、そのゲーム体験と結びついているビジュアルになっていて、すごく気持ちよかったなと思いました。

ボリューム&コダワリたっぷりな新マップと追加ムービー

―― DLCで初登場した新マップでは、ラネール参道やカカリコ村マップの神獣ヴァ・ルーダニアの上など、本編ではあまりなかった「2つに分断されていて行き来ができないマップ」が複数登場していますが、行き来できない形にした意図などがあればお伺いしたいです。

松下 本編を遊んでいただいた皆さまに、追加DLCで新しい体験をしていただきたいということで、ある種の応用編のような位置付けとして、本編ではやらなかったことをDLCで取り入れようという意図はありました。やはりリンク以外のいろんなキャラクターを切り替えて操作できる、という部分が今作でしか体験できない要素だと思うので、そうした部分をより生かすためにもキャラの切り替えが必須になるようなマップ設計を行い、複数のキャラの視点から戦いを描く…というところを新しい体験として盛り込みました。

―― ―― 分断マップの中でも、「ラネール参道」のマップがとても印象的でした。あの戦いは物語の時間軸的にもゼルダ姫たちとハイラル軍が合流してしまうわけにはいかない、という意図もあったのかなとは推測したのですが(笑)。

松下 そうですね(笑)。物語の裏で実はニアミスしていたんだよという秘話を、実体験として遊んでいていただきたいという意図もありました。

―― 謎のガーディアンのお話しかり、追加DLCの追加ストーリーは、遊ぶことによって本編のストーリーを補完できる形になっているんですね。

松下 そうです。もともと本編では描いていない時系列の部分の設定がありまして、謎にしていた部分の答え合わせという形で、彼らの知られざる100年前の姿として見ていただこう、という想いがあるんです。


―― 第2弾で追加された謎のガーディアンのムービーでは、随所でボコブリンが活躍している印象を受けました。本家『BotW』でもボコブリンは愛嬌のある敵キャラとして有名でしたが、そのあたりを意識されて制作されたのでしょうか?

松下 はい。その部分はまさに『ゼルダ無双』では表現できなかったところで、我々の中でやり残した気持ちがあったんですよね。『BotW』のボコブリンって食事したり宴会したりしている印象があると思うんですが、『厄災の黙示録』のステージは戦場なので、その中で日常のボコブリンを描く機会はなかなかなく、開発中に作ったもののオミットした部分などもあったんです。ただ、謎のガーディアンが未来から過去にやってきた直後のあのタイミングは、まだ『厄災の黙示録』の物語になる前ですよね。なのであそこの時点では大きな戦争になる前のボコブリンの日常の生活も行われているはず。彼らなりに平和に過ごしていて、獲物を運んでいたところにリンクがやってきて、ある意味では日常を壊された……というシーンがあるんですが、あそこがまさに『ゼルダ無双 厄災の黙示録』の戦いの物語が始まるターニングポイントである、という意味を込めています。

―― 双方の世界の繋がりを感じられるシーンなんですね。

古澤 ボコブリン自体もいろいろゼルダチームと話をしていて。知性を感じすぎても、逆に無知すぎてもダメなので、そのあたりの見え方は気をつけて調整しました。

大星 「リンクに気づくのが早すぎる」とか、リアクションの速度まで細かく調整しましたね。

松下 100年前と100年後という違いはありますが、NPCにおいても違和感やズレが出ないよう、気をつけながら描いていきました。

―― プレイアブルとなったイーガ団筆頭幹部とコーガ様との出会いの過去がムービーで描かれていましたね。

松下 あのシーンでの彼は子供時代なので、本来は素顔でいるはずなんですけど、だからといって彼の素顔まで見せてしまうのは違うなと思いましたので…一人称視点の映像になりました。最後の最後でミステリアスは守った、という認識でいます。

―― イーガ団のお話が追加エピソードで描かれたので、彼らの仲間だった占い師のことも少々気になるのですが…?

松下 そうですね。イーガ団にはハイラル陣営とは違った魅力がまたあると思っています。そういった、コーガ様や、イーガ団筆頭幹部などをより好きになっていただけるような物語になっていると思いますので、ぜひ楽しんでいただければと思います!

早矢仕 たしかにあの占い師は開発現場ではかなり細かくキャラ設定をしたんですけど、本編ではほぼほぼなにも語られずに終わってしまいましたからね。

―― 今回そのあたりに少し切り込んだり?

松下 そうですね、…“少しだけ”わかります、程度ということで。

一同 (笑)

古澤 これも『BotW』とおなじ文法なのですが、謎は全て明らかにせず、遊んでいただいた皆さまそれぞれに想像してもらったり感じ取ってもらう余地を意図的に残しています。

松下 占い師は謎をすべて取り去ってしまうというよりは、謎がより深く広がって「え、じゃあつまりこういうこともあるのかも?」と想像を膨らませられるような、楽しみを広げるような形で掘り下げたキャラクターになります。

―― オリジナルキャラクターたちの新たな活躍も見られて、ファンとしてはとても嬉しいです。ありがとうございました!



ニンドリ1月号では、マスターバイクに乗ったゼルダ姫や歴戦のガーディアン、プルア&ロベリーについてを掲載しています。こちらもあわせてチェックしてくださいね。

ゼルダ無双 厄災の黙示録 公式サイト
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