[後編] パラノマサイト×都市伝説解体センター|プロデューサー&ディレクターと解き明かす共通点と相違点
『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』と『都市伝説解体センター』両タイトルのプロデューサー、ディレクターが集結。お互いがお互いのタイトルについて気になるところを尋ねる座談会です。
2記事にわたってお届けする後編となります。
▼前編はこちら!
※本座談会は2025年7月に収録されたものです。現在、『パラノマサイト』2作目『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』および『都市伝説解体センター』1周年企画が発表となっています。
(本記事は「ニンテンドードリーム」2025年12月号に掲載したものを再編集したものです)
プロデューサー&ディレクター座談会 後編
後編は、シナリオ作りやアドベンチャーゲーム制作への思い、続編についての考えなどを語っていただきました!
『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』:プロデューサー 奥州 一馬さん・ディレクター 石山 貴也さん
『都市伝説解体センター』:プロデューサー 林 真理さん・ディレクター ハフハフ・おでーんさん




目次
伝承の余白を生かした『パラノマサイト』のシナリオ作り
おでーん シナリオのことをもっと聞いてみたいのですが、もともとの「本所七不思議」って話としてはちょっと地味だと思うんです。それをメインテーマにしている『パラノマサイト』のシナリオは、どのように作られていったんですか?
奥州 「本所七不思議」を題材にしたのには、いくつか意図があるんです。
まずはエリアをある程度絞って、そのエリアの中で起きるミステリーを仕上げたかったことがひとつ。そして「本所七不思議」はそれぞれの逸話が個性的で、ゲームとして能力に活かせそうだということがひとつ。で、これを題材にすれば墨田区さんともいろいろできそうだと思ったので、「本所七不思議」を題材にまとめてほしいと石山に振ったんです。
石山 それで初めて「本所七不思議」の伝承をちゃんと調べたんです。そしたら、ひとつひとつの話は割とシンプルなんだな、って。
「どこかでなにかが聞こえてきた、不思議だね」で終わっているような話ばっかりだったんで、逆にいえば余白を埋め放題だなと思いました。しかもそれぞれの出来事が最終的に全部つながったら、おもしろいんじゃないかと。
おでーん はい。
石山 七不思議といいながら11個ぐらいあったんで、そのなかから9個に絞って、当時の出来事を言い伝えているうちに全然違う話になって伝わっちゃったんだよ、という設定でネタを考えていきました。
おでーん もともとの余白があれば、遊んだ人から「元の話と違う!」とも言われなさそうですし。
石山 そうです、そうです。
ゲーム性も必要なので、ひとつひとつの七不思議に紐づいた呪殺の能力も設定して。じゃあ、その力で命を奪い合ってまで得たい報酬ってなんだろう、そこまでするんだったら死んだ人を蘇らせるぐらいの見返りがなきゃいかんかなと広げていって。
あと、それぞれの七不思議を持っている呪いの主(呪主)が必要になるので、キャラクターを9人作って、それぞれにパートナーがいたり目的があったりというのを埋めて、今の形になりました。

おでーん 時代設定はどのあたりで決まったんですか?
石山 それは最初からでしたね。まず今回の絵柄をどうしようかということをコバゲンさん(小林元さん)と話したんです。コバゲンさんはすごい器用な方で、美少女ゲームのキャラからポップな絵までいろんなタッチが描けるんですよ。
奥州 そうなんです。
石山 で、ホラーミステリーなので、ちょっとリアル寄りで、ちょっとレトロな感じでいこうと。いわゆる昭和レトロの時代ではなく、昭和後期の高度経済成長期が終わってバブルが始まる前、テレビでUFO特番とか心霊特番をやっていたころですね。
林 うん、わかります。
石山 みんなが、集合写真を撮ったら心霊写真を探していたような、オカルトブームの時代です。時代的にも相性がよさそうだし、絵的にもノイズや色収差をのせて古いテレビの画面みたいな効果を出したら特徴になるかな、って。
…ただ、そのせいで背景を作るのは大変でしたけど!(笑)
おでーん たしかに、背景は相当取材してなかったら作れないなと思いながら見てました。
奥州 昭和後期っていう設定は、墨田区という舞台ともすごくハマりやすいと思うんですよ。それで、石山さんが自転車を借りてひとりでロケハンしてます。
おでーん 本当ですか!
奥州 ホラーをやるんだったら天球背景(パノラマ背景)がいいよねっていうのはデザイナーの小林の案で、墨田区で実際に撮影して背景に組み込んでいるんです。
石山 墨田区を何度もまわって、いいと思った場所で360度カメラを置いて撮影しましたね。
奥州 とはいえ時代が異なるので、その調整のため自治体の人に当時の雰囲気を確認したところ…
石山 「こんな綺麗じゃないんでもっと汚く」と言われたんですよ(笑)。
おでーん 汚く(笑)。
石山 自分が小学生くらいの時代なので、たしかに道路のあちこちに大量の吸い殻が捨てられてたよねとか、野良猫とか野良犬がいたよねとか思い出しながら…
奥州 やっていいなら調整します、ってかなり汚しをかけました。
石山 3階建て以上の建物もどんどんカットしていきましたね。たいへんでした。
おでーん でもあの背景は石山さんが360度カメラで撮影したものだったとは、遊んでいるほうはまるで思いませんよね。
タイトル作りと今後の展開
石山 『都市伝説解体センター』は、タイトルに「解体」ってキーワードを入れたのがうまいなと思ったんです。解決や解明、究明とかじゃなくて。インパクトがあったし、いろいろなイメージができるじゃないですか。すごい特徴になってるなと思ったんですけど、そのあたりはこだわって付けたんですか?
おでーん タイトルを付けるときには、読んだ人の頭の中にクエスチョンマークが付くようなものにはしたいと思っていますね。仮の段階では、コールセンターが舞台だったんですよ。
林 そう、市役所みたいなセンター。
石山 助けてください、みたいな依頼がくるんですね。
奥州 名残はありますよね。
おでーん なので「センター」はそこから。それとテーマの「都市伝説」をつなぐのに普通の言葉じゃないものがいいと思って、「解体」になった感じです。
『パラノマサイト』はサブタイトルに「23」って付いていますが、これは23区からですか?
奥州 僕らは『パラノマサイト』をどんどん作り続けていきたいと思っているんです。そのときにナンバリングタイトルのように1から振って、1をやっていないから遊べないって思われるようなことにしたくなかったんです。なので「FILE」という形で中途半端な23って数字を付けています。
おでーん じゃあ、続編が出るとしたら、FILE何々という番号が飛んだ数字がつく可能性があるってことですね。
石山 実際、ミヲちゃんのスピンアウトコミックは「FILE 25」という扱いなんです。

奥州 もともと23って、仮で置いてた数字なんですよ。あとで皆と練ろうと思っていたんです。それがずるずるっていっちゃって、もうこれがいいやってなったんです。
石山 意味のない中途半端な数字であればよかったんで、特に反対する強い理由もなく。ただ、インタビューのたびに23はどういう意味ですかって聞かれるので、その都度、「2023年に出たからです」とか「僕の名前の総画数です」とか、適当な理由を答えてます。
おでーん (笑)。続編はあり得るんですか?
奥州 皆様の応援があったら作りたいですよねー。
石山 ですよねー。
おでーん ぜひやっていただきたい。
伊勢志摩を舞台にした、『パラノマサイト』の新たなFILE。
新たな土地、新たな伝承、新たな登場人物で始まる青春群像伝奇ミステリーアドベンチャー。2026年2月19日配信予定です。
[公式サイト] [マイニンテンドーストア]
奥州 逆に『都市伝説解体センター』は今後どうするんですか?
おでーん 僕らは、続編のこととか考えず余すことなく作ってしまいまして…。
石山 個人的にはこのビジュアルさえあれば、なにを作ってもシリーズに見えるのは強いと思ってます。キャラクターを引き継いでもいいし、引き継がなくてもやりたいことができそうで、うらやましいなと思いますね。
林 墓場文庫とは次もいっしょにやろうって話はしてるんですけど、そこまで続編にこだわっているわけじゃぁないですね。続編を作りたいのであればそれでいいし、新作を作りたければそれを進めようと。集英社ゲームズからこれを作りましょうと進めることはしないですね。
石山 じゃあ、いまは充電しながら考えているところですか? 墓場文庫としてはなんかしら作り続けていくわけですよね。
おでーん なんかしらは作っていきます。
林 『都市伝説解体センター』はアップデートが終わってやっとプログラマーが休みに入れたんですよ。おでーんさんたちがひと呼吸置いて、次になにを作ろうかってなったときに一番モチベーションが上がるものを作ったほうが、最終的にアウトプットがよくなると思ってるんです。それ次第かなとは思ってますね。
石山 なるほど。それを楽しみにしてます。
おでーん まだまだ、調子に乗らないでやっていこうと思ってます。
2026年2月12日に発売1周年を迎える本作。5都市で開催される全国解体大巡廻をはじめ、キャラクターミュージックビデオや新グッズなど、さまざまな催しを展開中です。
[都市伝説解体センター発売一周年記念特設サイト]
墓場文庫がアドベンチャーゲームを選んだ理由
石山 墓場文庫さんは、やっぱりアドベンチャーゲームを作りたいチームなんですか?
おでーん それが、もともとはふたりでターン制のシミュレーションみたいなのを作っていたんです。だけど、そのときの僕らはゲーム開発の終わらせ方をわかっていなかったんです。そのリハビリとして、アドベンチャーなら開発し終わるだろうと思って作り始めたんですけど…
石山 すぐ作れそう、と。
おでーん それが、結局できなかったんです。そんなところにほかの人が入ってくれたことで、ようやく開発できる環境になったと気づきました。とりあえず3か月に1本出すことにして、その1年で3本出せたので、アドベンチャーって可能性がいっぱいあるな…って思ったんですよね。
石山 そうなんですね。
おでーん それに今って、アクションやFPSのようなゲーム性の高いタイトルを楽しんでいる層もたくさんいるけど、ゲームに疲れている層もいて、ゲームのクリア体験が乏しい時代になっていると思うんです。そんな時代に自分たちが作るべきなのは“ちゃんとクリア体験が得られるゲーム”なんじゃないかということで、アドベンチャーを中心にしたというのはありますね。
林 プログラマーのモチキンさんはミステリーが好きなので、僕から見ると自然な流れだなと思ってますけどね。
おでーん そうですね。僕自身も子供のころから江戸川乱歩の「少年探偵団シリーズ」や横溝正史作品で育ったような世代で。あと京極夏彦もですね。
石山 なるほど、もともとミステリーが好きなんですね。アドベンチャーゲームは遊んでいなかったんですか?
おでーん 『ポートピア連続殺人事件』とか遊んでいますよ。僕の実家がポートアイランドなのもあって。『SNATCHER(スナッチャー)』(※)の舞台も神戸市でしたし…。
石山 アドベンチャーの聖地で暮らしてたんですね(笑)。
※『SNATCHER(スナッチャー)』:小島秀夫監督作品。1988年にPC用のSFアドベンチャーゲームとしてKONAMIからリリースされ、その後さまざまなハードで展開された。架空の都市ネオ・コウベ・シティを舞台に人間を殺害してその人になりすますアンドロイド「スナッチャー」と、それを追う捜査官「ジャンカー」の物語が展開する


『SNATCHER』(画面はPCエンジン mini版)。開発前、墓場文庫のメンバー全員で再履修したそう
おでーん 作るものはどちらかというと映画とか小説とか、そういうものの影響が大きいかなと思いますが、昔のアドベンチャーゲームの影響も少なからず受けているだろうなと思います。
林 『都市伝説解体センター』は、とにかくゲームをふだんやらない人に遊んでほしいという思いと、ラストまでやってほしいという願いがあります。ミステリーなんで、最後までいかないとおもしろくない可能性があるんですよね。そこだけはかなり留意して作っていますね。
おでーん そうですね。
林 ストーリーとストーリーの間に各話のエンディングと予告風の演出を入れているのもそのためです。連続10時間のお話は遊ぶのがつらいかもしれないけど、各話2時間くらいなら1話分を満足してくれたお客さんが次の話を遊んでくれるかな? って思っているんです。
奥州 よくわかります。

林 ゲームオーバーをあえて作らないとか、間違え続けていると正しい選択肢が選びやすくなるというのも、本当にお客さんにシナリオを読み切ってほしいからです。だから、最後まで到達された人が今も増えてるのは僕らとしてはすごくうれしいですね。

アドベンチャーゲーム制作に懸ける共通点と相違点
林 最近アドベンチャーが元気な感じがしますよね。カジュアルに遊べてクリアまでいけることが評価につながって、そういうところからジャンル全体のイメージに影響しているのかなと感じます。
奥州 『パラノマサイト』のあとに『都市伝説解体センター』が出たのも、流れとしてよかったですよね。
林 はい。お客さんに次のものを提供できないと、ジャンルはしぼんでいっちゃいますもんね。アドベンチャーのヒット作品や新作が立て続けに登場したことで、アドベンチャーを楽しんでる人たちが増えてきている感じがします。
奥州 そうですね。週末ちょっと遊ぶぐらいでクリアできるおかげで、カジュアルに始める人たちも増えて。
林 配信ドラマを一気見するくらいの感覚で楽しんでくれればうれしいですよね。
おでーん それにゲームであれば自分の体験として物語を吸収できるので、ドラマ以上に物語に入り込めるんじゃないかなと僕らは思っているんです。
石山 …僕はむしろ、アドベンチャーゲームってどちらかというと“お客さんを選ぶニッチなゲーム”だと思っています。自分がそうなんですが、やっぱりゲームするなら文字を読むよりもキャラクターを動かしたいじゃないですか。
おでーん そうなんですか?
石山 そうだと思ってます。だから、基本的に文字は「読みたくないもの」という前提で、文章を読むのが苦手な人でも最後まで楽しめるよう、なるべく負担にならないようにと気を遣っています。
奥州 難しい操作が必要ない点ではプレイするハードルは低いのかなと思いますが、ゲーム業界的にはアドベンチャーゲームってどうしても下火になりがちなジャンルで、売上的にも厳しく新作を企画しづらい面があるわけです。
石山 なので『パラノマサイト』はむしろ、「これまでアドベンチャーをやらなかった人にこそ遊んでほしい」っていう願いがあったんです。
奥州 うん。
石山 もちろん、文章を読むのが苦じゃないアドベンチャー好きの人に評価していただいたことはうれしいいっぽうで、「小説を読むのは苦手だけど『パラノマサイト』はおもしろかった」とか、ニンドリで連載中のあやたろすさん(※)のようにゲームは遊ぶけどアドベンチャーゲームにはあまり手をつけてこなかったという方が楽しんでくれたという感想をいただくと、届けたかったところにも届いたかな…って気持ちになります。
※あやたろすさん:連載コミック「おとうさんは早起きゲーマー」の作者。ニンドリ2024年10月号では『パラノマサイト』を題材にしたコミックを掲載しました
―― 大手ゲームメーカーで『ドラゴンクエスト』シリーズのような大規模開発にかかわってきた石山さんたちと、ゲーム業界を経験せずインディーのコミュニティで少しずつ育まれてきたおでーんさんたちの、アドベンチャーゲームに対するアプローチの違いが見えて興味深いです。
石山 といっても“ハードルを下げることで多くの方に遊んでもらいたい”という気持ちは同じなので、「今日はなにをしようかなー」ってときなんかにふと思い出してもらって、ぜひ気軽に始めてもらえたらと思います!
低価格でリリースした背景にも、アドベンチャーというジャンルを遊ぶプレイヤーの少なさへの懸念があるわけですよね。箸にも棒にも掛からないというのが最悪なので、どこかしらで引っ掛かるようインパクトのある値段にするために、がんばってがんばってコストを抑えて作る必要があるわけですけど。
奥州 林さんとの飲みの場でも、やっぱり値段の話になりましたよね。「『パラノマサイト』が1980円という価格をつけたせいで、我々もそれを踏まえた値段をつけざるを得なくなった、どうしてくれるんです(笑)」って。
石山 あ。やっぱり、うちの価格は意識されてましたか?
林 ものすごく意識しましたよ! だからダウンロード版は『パラノマサイト』と同じ1980円にしたんです。
石山 そうでしたか。正直、我々もこの値段で出すことに関しては、とくにインディーで出されている人から「大手が値段で殴ってきたぞ」みたいに思われたら嫌だな…という気持ちは、ちょっとあったんです。
奥州 そうですね。
石山 でもこっちとしても、このぐらいの値段で攻めていかなければと。
林 すごくわかります。それで僕も、Xで「集英社ゲームズ決死の1980円!」ってポストしたんです。そうしたらネットニュースで取り上げられちゃって。
おでーん そうでしたね。
林 で、そのあと僕の誕生日におでーんさんがキャップをプレゼントしてくれたんですけど、そこには「決死の1980円」って書かれていました。…なんか、ネタとしていじられましたね。
石山 フットワークの軽さがすごい(笑)。楽しそうだなぁ。

林 集英社ゲームズってまだ4年目なので、どのくらいの求心力を自分たちが持ってるのか、正直つかめていなかったんですよ。ゲーム会社として受け入れられるか不安だったので、東京ゲームショウのピラミッドや電話を使った謎解きといった施策をできるかぎり盛ったんです。
奥州 話題性抜群でしたよね。実際、売上本数はどれぐらいいったんですか?
林 発売3か月で30万本をセールス、というところまでは公表しているんです。
石山 30万は全世界合計ですか?
林 はい、ワールドワイドです。とはいえ日本がメインでしたが。ただ驚くことに、Nintendo Switch版は2025年の上半期ダウンロードランキングで5位だったんです。
奥州 有力タイトルが数あるなか、ランクインしていましたね。

林 あれはさすがにびっくりしましたね。任天堂さんからもすごいですねって言っていただけて。
石山 そういうこと褒めてくれるんだ。いいなー。
奥州 うちは褒めてもらってないですからね(笑)。
両作品のローカライズ戦略
林 しかし今回の反省として、次回はプログラマーを増やさないといけないな…というのがあります。というのも、世界に出ていくというのが集英社ゲームズの目標なんでたくさんの言語に翻訳してもらったまではいいんですが、プログラマーが本当にキュウキュウになっているときに言語対応まで組み込んでもらわないといけなくなって…。右から左に文字を出す、とか。
奥州 アラビア語の対応までプログラマー1人でやってるんですか!
林 はい。マスターアップ前、オンラインミーティングで集まると日に日にプログラマーの髪の毛がボサボサになっていて…。全然切りにいけてない感じが伝わって、申し訳ないなと思いながら打ち合わせをしていました。
石山 たしかにすごいですもんね、ローカライズの言語数。しかもアドベンチャーのテキスト量でやるって、よく思い切ったなと思いました。
林 インピタスっていう翻訳会社さんと組むことができて、そこが全力で協力してくれたのが大きかったんです。じゃないとあの言語数はできなかったですね。
奥州 なるほど。『パラノマサイト』の場合まずは日・英でトライして、反応を見て追加していこうという戦略を取ったんです。テーマも日本特有ですし、コストと市場規模を考えないといけないですし…。それで1年後に中国語の簡体字と繁体字を追加しました。
言語追加って本当に大変なので、集英社ゲームズさんが1作品目からあの言語数を用意してくるというのは、すごいことだなと。




『パラノマサイト』の言語を切り替えたタイトル画面と、簡体字表記でのプレイ画面
林 僕ら集英社ゲームズって、始めたばかりなのでリリースしているタイトルが少ないんですよ。海外に出てくっていっても、売るものがないとどうしようもないじゃないですか。だから多言語展開を重要視したんです。
奥州 1作目だからこそ、と。
林 そうです。ローカライズさえしておけば国外で配信できるぞと。なのに組み込むプログラマーは1人だったので、そこは失敗したところですね。でもそういう理由があったので、無理を言ってがんばってもらいました。


『都市伝説解体センター』の言語を切り替えたタイトル画面。左が簡体字表記、右が繁体字表記
石山 海外での反応って、どうだったんですか?
林 ローカライズで一番反応が返ってきたのは韓国ですね。自国産のタイトルだと思ったっていう反応があるくらい。というのも、韓国向けのローカライズだけはキャラクター名も韓国の人名になっているんですよ。翻訳の方からやってみたいって提案を受けて、おでーんさんたちに名前を見てもらったらOKがでたので、やってみるかってなったんです。結果的に、評判よかったですね。
奥州 それはおもしろい試みでしたね。

韓国語表記でのプレイ画面
林 あとは都市伝説を国内のものと海外のものと半々にしたんで、その点もよかったかなと思ってます。ドッペルゲンガーとかはどこの国でも知ってますから。
奥州 たしかに。
林 逆に日本のネットロアである「コトリバコ」は、日本にはこういう都市伝説があるんだっていう興味を持たれました。海外でインタビューを受けると、どこの国からも「自分の国の都市伝説を入れてほしい」って言われますね。
交わした開発者同志の思い 今後のコラボにも期待
―― そろそろ終わりの時間になります。本日はいかがでしたか。
奥州 プロデューサー目線で申し訳ないですが、ファンの方になにかできることとして双方でいろんなコラボをやれたらなーなんて思いました。
林 できたらいいですよね。
奥州 やるやらないの判断は僕らだけではできないですけど、意思は伝えておきたいなと。ファンの皆さんもなにか見てみたいものがあったら、ぜひ後押しをしてほしいです。
林 両チームの今後にも期待してほしいですしね。
石山 ディレクターとしては、ちょっとうらやましい感覚も覚えました。
『都市伝説解体センター』は少人数ならではの開発スタイル、分業体制とかみんなで決めるとか、とりあえず実装してみるフットワークの軽さとか。そういったところがすごいし、だからこそ生まれたタイトルだなと感じました。
―― はい。
石山 これってきっと、最初からやろうとしても多分できなくて…。やりたいものをどんどん積み上げていくことで磨き上げられていくというのも、インディー開発の魅力なんだなと。そのあたりを感じられたのがとても刺激になりました。ありがとうございます。
おでーん ありがとうございます、恐縮です。僕、いちユーザーとして『パラノマサイト』と『都市伝説解体センター』どちらが好きかって聞かれたら、『パラノマサイト』が好きなんです。
一同 (爆笑)
奥州 爆弾発言だ!
おでーん いちユーザーとしてですよ、いちユーザー! 僕はじっとりした日本のオカルトが大好きなんですよ。なので今日の僕は半分は開発者、半分ファンとしてお話しをさせてもらえたので、非常に光栄な対談でした。ありがとうございました。
林 プレッシャーをかけるわけじゃないけど、次もがんばらないと。
おでーん はい、またイチからがんばります。
一同 (笑)

[余話] コミカライズ単行本発売中! 原作との関係性は?
石山 『都市伝説解体センター』のコミカライズは、なぜ「りぼん」で連載することになったんですか?
林 もともと、集英社ゲームズで出すならぜひ集英社と横展開をやってみたいとは考えていたんです。そうしたら「りぼん」編集部のほうから『都市伝説解体センター』に興味があるって話をいただいて。ゲーム発売の半年前ぐらいだったのでサンプル版をお貸ししたところ、「おもしろかったんでやらせてください」という打診がきて、決まりました。
奥州 なにも違和感なく「りぼん」で決定に?
林 正直なところ、最初は「少女漫画誌で作品のテーマが受け入れてもらえるのだろうか?」というような疑問も少しありまして。
おでーん そうなんですよね。青年誌のほうが向いているんじゃないのかなノとか。
林 けど、りぼん編集部がアテンドしてくれた漫画家のいしかわえみさんはベテランの先生なんです。編集部の本気も感じられて、よろしくお願いしますってなったんですよ。
おでーん はい。『都市伝説解体センター』の新たな一面をいしかわ先生に引き出していただきました!
石山 でも考えてみれば、主人公は女の子ですし、少し変わったイケメンと出会って不思議なことに巻き込まれていく話ですから、なるほど少女漫画としても違和感ないなと読んで思いました。
奥州 そうですよね。
林 うちの社員たちは、ネームを見て「わーー! こんな展開になるのか」と叫ぶんです。さすがです。りぼん編集部の方々に感謝ですね。
石山 内容は、ゲームに準ずる形でコミカライズしているんですか?
林 墓場文庫に確認して、ゲームを踏襲しても、設定だけ使って新規のお話でもかまいません、とお伝えしました。
石山 ほー。
林 で、先生からは、ゲームのシナリオを使いつつ少し変化を加えたい、最後はこんなオチにしたい、という提案をいただいたんです。それを墓場文庫にも確認してOKになったので、あとは自由に描いていただいています。
石山 細かくチェックしてるわけではないんですね。
林 1話目ぐらいですね。それもチェックというより、ネームを見て「プロの漫画ってこうやってるんだ」とか喜んでいたのに近いです。他業種のそういうものってなかなか見れないですし。
おでーん しかもめちゃくちゃうまいんです。僕らもここはこうすればよかったんだって学んでますね。
石山 なるほど。うちもコミカライズがようやく出るので、がんばらないと…。
奥州 こちらは、石山さんががっつりネームを監修してるんです。
石山 スピンオフの新ストーリーなので、ゲームの設定とブレがあっちゃいかんと思って、がっつり原作シナリオを書きましたし、ネームの段階から細かく確認させてもらっています。
林 それは大変そうですね。
奥州 設定もそうですが、石山さんの作品のよさってウエットなところとドライなところが入り混じるところなんです。そこをうまく表現できるかも、心を配っています。
石山 でもその甲斐あって、『パラノマサイト』のコミック、超おもしろいですよー! ネーム修正や下書き修正が来るたびに、続きが気になって頭から最後まで何度でも読んじゃってます!
奥州 はい。僕もびっくりするぐらいおもしろいものができてます。それに今回、ゲーム開発側からもプロモーションとしていろんな企業や自治体さんと協力しながらしっかり売っていくつもりです。ぜひごいっしょに楽しんでください!
製品情報とその他の記事

対応機種:Nintendo Switch 他
発売日:2023年3月9日
価格:1,980円(税込)
ジャンル:ホラーミステリーADV
CERO:17歳以上対象
▶︎公式サイト
▶︎マイニンテンドーストア購入ページ

対応機種:Nintendo Switch 他
発売日:2025年2月13日
価格:パッケージ版 3,740円(税込)/ ダウンロード版 1,980円(税込)
ジャンル:怪異を解き明かすミステリーアドベンチャー
CERO:15歳以上
▶︎公式サイト

ともに、ゲーム大賞優秀賞を受賞するなどユーザーから大きな支持を得て、近年のアドベンチャーブームを牽引した2タイトル。
そのつくりかたや考え方の共通点と相違点が見える座談会、いかがでしたでしょうか。
それぞれのインタビューもあるので、他の記事もどうぞお楽しみください。
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