【インタビュー】 システム、デザイン、サウンドすべてを訊きました!『スプラトゥーン レイダース』

ウズシオ諸島のシャケたちの秘密
—— 音と言えば、シャケ戦のBGMも本編の「サーモンラン」と相変わらずの不穏な感じですね。
田村 今回はシャケをタイトルの主軸に据えて、BGMもシャケの音楽を中心にするというすごく挑戦的な部分がありまして……。どこまで受け入れていただけるか、わりと不安ではあったんですけど、「やっぱりシャケってこういうものだよね」という共通認識を、より根付かせることができたのではという感触があります。
—— 今回はシャケたちにスポットが当たるシーンも多かったですが、そもそも「シャケ」ってどういう存在なんでしょうか?
井上 もともとのサーモンランは「協力して敵を倒すモード」として始まったんですけれども、「大量に出てきて、わーっと押し寄せてくる」みたいな敵がほしかったんです。そこで“海産生物で、大量に押し寄せてくる”という生態を持つ鮭がモチーフとして適していると考えました。
—— 鮭は川を遡ってやってきますし。
井上 サーモンランはシャケの遡上現象なんです。ゲーム用語では押し寄せてくる敵を「ウェーブ」と表現しますが、まさに波のようにやって来る鮭がイメージと合致していたんです。
伊藤 シャケを倒すためにはそれぞれ異なるアクションが必要ですけど、それも今作のガジェットでアクションを拡張して戦えるというシステムとうまく噛み合いました。
井上 本作ではシャケが塩をつけて美味しくなってパワーアップするんですが、それも鮭の特徴をベースにして発展させたという感じですね。あと、鮭について調べると、鮭にもいろんなタイプがあるんです。ずっと川にいるやつもいれば、1回海に行ってたくましくなって戻ってくるやつもいる。鮭という分類の中でもいろんな種類がいるので、本作のようにいろいろなバリエーションを出すのには向いている生き物かなと思います。
—— 実際の鮭も研究したうえで、シャケのデザインに組み込まれたりもしたんですか?
井上 そうですね。ただシャケはもう、あらゆる姿をしていますが……(笑)。
—— ハネツキなんて、もう空を飛んでいますしね(笑)。
園山 ハネツキも、実は構造上はちゃんと鮭をベースにはしているんです。あの羽のようになっているのはすごく発達した腹ビレで、胸ビレのほうは小さく退化していて、ナイフとフォークを握っているという構造です。骨格まで追っていくと意外と鮭っぽい、という点はこだわっていたりします。
—— シャケの生態もおもしろいですね……!
園山 コレクションの「シャケ調査レポート」の解説文にもちょこっと生態が書かれていたりするので、ぜひ見ていただければと。
伊藤 ハネツキは新しく登場したシャケですが、今作は上方向に飛び上がるというアクションをフィーチャーしていたので、そのアクションを使ってかっこよく倒せる敵として生まれました。
—— ハネツキ以外も、個性的なオオモノシャケたちが追加されましたね。
伊藤 オオモノシャケは、もともとサーモンランならではの協力感、「協力して倒す」という点にフィーチャーした遊びで設計されているんです。たとえばカタパッドだったら「両方の肩にふたりで1個ずつボムを入れたら一気に倒せる」とか、ヘビだったら「ひとりが引きつけているあいだに後ろを攻撃する」とか。
—— マルチプレイならではですね。
伊藤 『レイダース』ではその協力の要素の代わりに、プレイヤー自身が成長していくというのが大きな要素だったので、「倒すのに時間がかかった敵も、成長したおかげで短時間で倒せるようになった!」という手ごたえが大事だと考えました。それをわかりやすく実感できる敵として生まれたのがタンシオですね。
—— タンシオがタフなのは、プレイヤーの火力の成長をわかりやすく実感させるためなんですね。
伊藤 スモーカーに関しては、戦いの中で明確に、倒す優先順位を変えざるを得なくなるようなシャケを作りたい、というのがありました。
—— 私もスモーカーを見かけたら速攻で倒しにいきますが、最初から「早く倒さないとやばいやつ」として作られていたんですね(笑)。
園山 はい。顔つきでも「ちょっと嫌なやつ」という感じを表現しています。「いつも奥のほうにいて、自分の代わりに他人を戦わせているやつ」という感じですね。
伊藤 スモーカーも、けっこう紆余曲折あって生まれたシャケなんです。最初は『3』の要素を使ってなにかできないかと、スペシャルウェポンの「スミナガシート」みたいな、大きな壁を張ってくる敵として作られたのですが、あまりうまくいかなくて、現在の形に落ち着きました。
園山 スモーカーのモチーフになっているのはチンアナゴなんですが、これは「スミナガシートを使ってくる敵」時代にデザイナーから来た案だったんです。こだわりのデザインだったので、仕様が変わってからもチンアナゴ感があるままになっています。
伊藤 スモーカーはやっかいですが、体力はだいぶ少なめなので、あのチンアナゴっぽいか細さもそこにはまっていたのかなと。
—— キワモノシャケのウデジマンに関してはどうでしょうか。初めて見たときのインパクトがすごくて、「とんでもないのが出てきたぞ!?」と思いました。
伊藤 未知の島を冒険するというゲームなので、なんだか説明できない、よくわからないものを出したいなと考えていました。キワモノシャケはオオモノシャケの進化系のような雰囲気ですが、ウデジマンについてはそういう説明がつかないところが重要だなと思っています。
—— 一応、シャケではあるんですよね(笑)。
園山 腕が4本あるように見えるのですが、あれも実はパンプアップした胸ビレと腹ビレなんです。腕を壊すと、シュッと小さくなってヒレがパタパタしているのを見ることができます。

完成までの過程が楽しい! 秘宝のデザインについて
—— オタカラ、秘宝のデザインも眺めていて楽しいですね。
園山 最初に獲得したときは「なんだろうこれ?」となるような、かけらみたいなものがやたら出てくるんですよね。コレクションの秘宝図鑑では、1個めのかけらから「これはこういうものに違いない」と想像を膨らませて解説文を書いているのですが、2個めのかけらを組み合わせると全然違うものに見えてきて、前言撤回も甚だしい形で、まったく新しい解説文を書いているという(笑)。
—— 3個めのかけらが集まって完成すると、前の解説とまったく違うものになっていたりするんですよね。
園山 1個ずつ秘宝を集めていく過程もおもしろいですし、最後に出来上がる完成品も、シャケたちの文化の幅広さや技術の高さ、高度な文明をもっていることを表す興味深いものになっています。秘宝はけっこうな数があるんですけど、デザイナーがひとつひとつこだわり抜いて作っています。
—— 秘宝は文字通り、シャケたちに伝わる財宝と考えていいのでしょうか。
園山 今のウズシオ諸島のシャケたちは特殊な塩に魅了されていて、あまり物事を考えていないところもあるのですが、かつては高度な文明が栄えていたんです。ラスボスの存在につながるような時代のものが大事に保存されていて、秘宝として扱われているという感じです。
—— それぞれの秘宝は、完成品になっている段階でデザインされていたのでしょうか?
園山 そうですね。完成品をデザインするとき、頭のどこかで「3つに分かれたときに、どういう状態になるか」ということも考えておかなければいけないので、けっこう担当のデザイナーが悩んでいました。最初から「これは3つあることが前提だな」とわかるようなものがあってもいいんだよ、ということを伝えたら、ぐっとバリエーションが広がりましたね。
—— 意外な形になるものもあれば、完成後が想像できるものがあってもそれはそれでよいと。
園山 分解のパターン自体は被ってもいいので、ひとつひとつの秘宝の魅力を大事にしました。完成品はシャケの文化、文明として「調理されて食べられる」というのが大きいので、世界の珍しい調理器具をたくさん調べて、グッときたものをしっかり要点として入れていきました。




